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番外編「王の休日と手作りのお弁当」
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人間との和平条約が結ばれ、魔王領に本当の意味での平穏が訪れてから数ヶ月が経った。
領地はますます豊かになり、魔族たちの暮らしは安定し、笑顔が絶えることはなかった。
俺は領主代行改め、アシュトの正式な伴侶として彼と共に領地の運営に携わっていた。
忙しいけれど、充実した毎日だ。
ただ、一つだけ悩みがあった。
それは、アシュトが働きすぎることだ。
彼は元々、永い時を一人で過ごしてきたせいか休むという概念があまりないらしい。
和平後の様々な取り決めや人間との交流政策など仕事は山積みで、ここ最近はずっと執務室に籠りきりだった。
「アシュト様、少しは休んでください。顔色も優れませんよ」
「問題ない。これくらい、どうということはない」
そう言って、彼は山積みの書類に再び視線を落としてしまう。
このままでは、彼が倒れてしまうかもしれない。
『何か、良い方法はないかな……』
そう考えていた時、町の子供たちが楽しそうにピクニックをしているのを見かけた。
青空の下、お弁当を広げて笑い合う姿。
それを見て、俺はいいことを思いついた。
次の日、俺は朝早くから厨房に立った。
アシュトには内緒で、特別な計画を立てていたのだ。
俺は腕によりをかけて、お弁当を作ることにした。
卵焼きに、タコさんウィンナー、鶏肉の唐揚げ。
どれも、俺が昔いた世界ではお弁当の定番だったものだ。
もちろん、魔王領で採れた新鮮な野菜もたっぷり使う。
【慈愛の奇跡】を込めて作った料理は、見た目も味も我ながら最高の出来栄えだった。
大きめのバスケットに、お弁当と水筒、それにレジャーシートを詰めて準備は万端だ。
俺は、そのバスケットを持ってアシュトの執務室の扉をノックした。
「アシュト様、入りますね」
「ユキか。どうした、何か問題でも……」
書類から顔を上げたアシュトは、俺の格好を見て言葉を失った。
俺はピクニックに備えて、少し動きやすい軽装に着替えていたのだ。
「アシュト様、今日はお仕事はお休みです」
「は……?何を言って……」
「問答無用です。今日は、俺とデートしてもらいます!」
俺は有無を言わさずアシュトの手を取り、執務室から半ば強引に連れ出した。
呆気に取られている彼を連れて、俺たちが向かったのは城から少し離れた場所にある見晴らしの良い丘の上だった。
そこは俺のお気に入りの場所で、領地全体を見渡すことができる。
丘の上には大きな木が一本だけ生えていて、気持ちの良い木陰を作っていた。
「さあ、着きましたよ」
俺はレジャーシートを広げ、アシュトをそこに座らせる。
彼はまだ状況が飲み込めていないようで、きょとんとした顔で周りを見回していた。
「ユキ、これは一体……」
「王様の休日、です。たまには、こうしてのんびりするのも大事ですよ」
俺は得意げにバスケットを開け、お弁当を広げた。
色とりどりの料理を見て、アシュトがわずかに目を見開く。
「お前が、作ったのか?」
「はい! 腕によりをかけて作りました。さあ、冷めないうちにどうぞ」
俺が卵焼きを一つ彼の口元に運んでやると、アシュトは少し戸惑いながらもそれをぱくりと食べた。
「……美味い」
彼の顔が、ふっと和らぐ。
その表情が見たくて、俺はこの計画を立てたのだ。
「よかった」
俺たちは並んで座り、ゆっくりとお弁当を食べ始めた。
遠くには活気のある町並みが見え、畑では魔族たちが楽しそうに働いている。
そよ風が頬を撫で、鳥のさえずりが聞こえる。
なんて、平和な時間だろう。
「……こんな時間は、初めてだ」
アシュトが、ぽつりと言った。
「生まれてからずっと、休むなどという考えはなかった。常に、魔王としてあらねばならないと、そう思っていたからな」
「これからは、もっと休んでください。俺も、手伝いますから」
「……ああ。そうだな」
彼は、どこか眩しそうに俺の顔を見つめた。
「お前といると、私が今まで知らなかった感情を、たくさん教えられる」
「俺もですよ。アシュト様と出会って、本当の幸せを知りました」
食べ終わった後、俺たちは木の根元に背中を預けてしばらくぼーっと空を眺めていた。
アシュトが、俺の肩にそっと頭を乗せてくる。
「少し、眠ってもいいか」
「はい、どうぞ」
彼の規則正しい寝息が聞こえ始める。
こんなに無防備な彼を見るのは、初めてかもしれない。
俺は、その愛しい寝顔を見ながら幸せを噛み締めていた。
これからも、彼と一緒にこんな穏やかな時間をたくさん過ごしていきたい。
領地の未来も大事だけど、まずはこの誰よりも頑張り屋な王様を、俺がちゃんと甘やかしてあげなくちゃ。
そう心に誓いながら、俺もゆっくりと目を閉じた。
アシュトの温もりを感じながらうとうとと微睡む時間は、何にも代えがたい宝物のようなひとときだった。
領地はますます豊かになり、魔族たちの暮らしは安定し、笑顔が絶えることはなかった。
俺は領主代行改め、アシュトの正式な伴侶として彼と共に領地の運営に携わっていた。
忙しいけれど、充実した毎日だ。
ただ、一つだけ悩みがあった。
それは、アシュトが働きすぎることだ。
彼は元々、永い時を一人で過ごしてきたせいか休むという概念があまりないらしい。
和平後の様々な取り決めや人間との交流政策など仕事は山積みで、ここ最近はずっと執務室に籠りきりだった。
「アシュト様、少しは休んでください。顔色も優れませんよ」
「問題ない。これくらい、どうということはない」
そう言って、彼は山積みの書類に再び視線を落としてしまう。
このままでは、彼が倒れてしまうかもしれない。
『何か、良い方法はないかな……』
そう考えていた時、町の子供たちが楽しそうにピクニックをしているのを見かけた。
青空の下、お弁当を広げて笑い合う姿。
それを見て、俺はいいことを思いついた。
次の日、俺は朝早くから厨房に立った。
アシュトには内緒で、特別な計画を立てていたのだ。
俺は腕によりをかけて、お弁当を作ることにした。
卵焼きに、タコさんウィンナー、鶏肉の唐揚げ。
どれも、俺が昔いた世界ではお弁当の定番だったものだ。
もちろん、魔王領で採れた新鮮な野菜もたっぷり使う。
【慈愛の奇跡】を込めて作った料理は、見た目も味も我ながら最高の出来栄えだった。
大きめのバスケットに、お弁当と水筒、それにレジャーシートを詰めて準備は万端だ。
俺は、そのバスケットを持ってアシュトの執務室の扉をノックした。
「アシュト様、入りますね」
「ユキか。どうした、何か問題でも……」
書類から顔を上げたアシュトは、俺の格好を見て言葉を失った。
俺はピクニックに備えて、少し動きやすい軽装に着替えていたのだ。
「アシュト様、今日はお仕事はお休みです」
「は……?何を言って……」
「問答無用です。今日は、俺とデートしてもらいます!」
俺は有無を言わさずアシュトの手を取り、執務室から半ば強引に連れ出した。
呆気に取られている彼を連れて、俺たちが向かったのは城から少し離れた場所にある見晴らしの良い丘の上だった。
そこは俺のお気に入りの場所で、領地全体を見渡すことができる。
丘の上には大きな木が一本だけ生えていて、気持ちの良い木陰を作っていた。
「さあ、着きましたよ」
俺はレジャーシートを広げ、アシュトをそこに座らせる。
彼はまだ状況が飲み込めていないようで、きょとんとした顔で周りを見回していた。
「ユキ、これは一体……」
「王様の休日、です。たまには、こうしてのんびりするのも大事ですよ」
俺は得意げにバスケットを開け、お弁当を広げた。
色とりどりの料理を見て、アシュトがわずかに目を見開く。
「お前が、作ったのか?」
「はい! 腕によりをかけて作りました。さあ、冷めないうちにどうぞ」
俺が卵焼きを一つ彼の口元に運んでやると、アシュトは少し戸惑いながらもそれをぱくりと食べた。
「……美味い」
彼の顔が、ふっと和らぐ。
その表情が見たくて、俺はこの計画を立てたのだ。
「よかった」
俺たちは並んで座り、ゆっくりとお弁当を食べ始めた。
遠くには活気のある町並みが見え、畑では魔族たちが楽しそうに働いている。
そよ風が頬を撫で、鳥のさえずりが聞こえる。
なんて、平和な時間だろう。
「……こんな時間は、初めてだ」
アシュトが、ぽつりと言った。
「生まれてからずっと、休むなどという考えはなかった。常に、魔王としてあらねばならないと、そう思っていたからな」
「これからは、もっと休んでください。俺も、手伝いますから」
「……ああ。そうだな」
彼は、どこか眩しそうに俺の顔を見つめた。
「お前といると、私が今まで知らなかった感情を、たくさん教えられる」
「俺もですよ。アシュト様と出会って、本当の幸せを知りました」
食べ終わった後、俺たちは木の根元に背中を預けてしばらくぼーっと空を眺めていた。
アシュトが、俺の肩にそっと頭を乗せてくる。
「少し、眠ってもいいか」
「はい、どうぞ」
彼の規則正しい寝息が聞こえ始める。
こんなに無防備な彼を見るのは、初めてかもしれない。
俺は、その愛しい寝顔を見ながら幸せを噛み締めていた。
これからも、彼と一緒にこんな穏やかな時間をたくさん過ごしていきたい。
領地の未来も大事だけど、まずはこの誰よりも頑張り屋な王様を、俺がちゃんと甘やかしてあげなくちゃ。
そう心に誓いながら、俺もゆっくりと目を閉じた。
アシュトの温もりを感じながらうとうとと微睡む時間は、何にも代えがたい宝物のようなひとときだった。
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