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第13話: 過去からの来訪者
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学園祭当日。校内は朝から、生徒たちと招待された外部の客でごった返していた。
晶たちのクラスのカフェも大盛況で、晶は寮長としての仕事とクラスの雑務に追われ、猫の手も借りたいほど忙しくしていた。
結は、やはり参加を拒否し、部屋に引きこもるつもりだったらしい。だが、晶が「頼むから、レジの近くで金庫番だけでもやってくれ。お前なら、一番信用できる」と真剣な顔で頼み込むと、渋々ながらも頷いてくれた。
カフェの喧騒から少し離れたカウンターの隅で、結は黙々と会計の記録をつけている。その姿は、やはり周りから浮いてはいたが、それでも彼がこの場所にいるという事実が、晶には何より嬉しかった。
そんな穏やかな時間は、突然、破られた。
「あれ……もしかして、雪村結?」
馴れ馴れしい声と共に、カフェに数人の男子生徒が入ってきた。他校の制服を着ている。どうやら、学園祭の交流イベントでやってきた生徒たちらしい。
声をかけた中心人物の男は、結を見るなり、嫌味な笑みを浮かべた。
「うわ、マジじゃん! こんなとこにいたんだ。どこの学校行ってるのかと思ったら、こんな田舎の進学校に逃げてたのかよ」
結の体が、ぴしりと凍り付いたのが分かった。顔からすっと表情が消え、再び氷の仮面を被る。
晶が止めに入る前に、男はさらに言葉を続けた。
「まだピアノから逃げてるのか? いやー、懐かしいな、三年前のコンクール! お前のせいで、あのコンクールは最悪だったよな。優勝候補がステージで無音の演奏会だもんな、傑作だったぜ」
下品な笑い声が、カフェに響き渡る。周りにいた客やクラスメイトたちが、何事かとこちらに注目している。
男は、結の中学時代のライバルだったのだろう。その言葉には、嫉妬と侮蔑が粘りつくようにこびりついていた。
「なあ、一曲弾けよ。自慢のピアノでさあ。あ、ごめんごめん。もう弾けないんだったっけ?」
やめろ。
晶は男に掴みかかろうとした。だが、それよりも早く、結が動いた。
彼はゆっくりと立ち上がると、震える声で、それでもはっきりと男を睨みつけた。
「……帰れ」
「あ? なんだよ、その口の利き方」
「聞こえなかったのか。ここから、出ていけ」
結の瞳には、憎しみと、恐怖と、そして深い絶望が渦巻いていた。
過去からの来訪者が告げた残酷な言葉は、結が必死で、何年もかけて蓋をしてきたトラウマの箱を、容赦なくこじ開けてしまったのだった。
晶たちのクラスのカフェも大盛況で、晶は寮長としての仕事とクラスの雑務に追われ、猫の手も借りたいほど忙しくしていた。
結は、やはり参加を拒否し、部屋に引きこもるつもりだったらしい。だが、晶が「頼むから、レジの近くで金庫番だけでもやってくれ。お前なら、一番信用できる」と真剣な顔で頼み込むと、渋々ながらも頷いてくれた。
カフェの喧騒から少し離れたカウンターの隅で、結は黙々と会計の記録をつけている。その姿は、やはり周りから浮いてはいたが、それでも彼がこの場所にいるという事実が、晶には何より嬉しかった。
そんな穏やかな時間は、突然、破られた。
「あれ……もしかして、雪村結?」
馴れ馴れしい声と共に、カフェに数人の男子生徒が入ってきた。他校の制服を着ている。どうやら、学園祭の交流イベントでやってきた生徒たちらしい。
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「うわ、マジじゃん! こんなとこにいたんだ。どこの学校行ってるのかと思ったら、こんな田舎の進学校に逃げてたのかよ」
結の体が、ぴしりと凍り付いたのが分かった。顔からすっと表情が消え、再び氷の仮面を被る。
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「まだピアノから逃げてるのか? いやー、懐かしいな、三年前のコンクール! お前のせいで、あのコンクールは最悪だったよな。優勝候補がステージで無音の演奏会だもんな、傑作だったぜ」
下品な笑い声が、カフェに響き渡る。周りにいた客やクラスメイトたちが、何事かとこちらに注目している。
男は、結の中学時代のライバルだったのだろう。その言葉には、嫉妬と侮蔑が粘りつくようにこびりついていた。
「なあ、一曲弾けよ。自慢のピアノでさあ。あ、ごめんごめん。もう弾けないんだったっけ?」
やめろ。
晶は男に掴みかかろうとした。だが、それよりも早く、結が動いた。
彼はゆっくりと立ち上がると、震える声で、それでもはっきりと男を睨みつけた。
「……帰れ」
「あ? なんだよ、その口の利き方」
「聞こえなかったのか。ここから、出ていけ」
結の瞳には、憎しみと、恐怖と、そして深い絶望が渦巻いていた。
過去からの来訪者が告げた残酷な言葉は、結が必死で、何年もかけて蓋をしてきたトラウマの箱を、容赦なくこじ開けてしまったのだった。
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