心を閉ざした元天才ピアニストのルームメイトの氷を、寮長の僕が絶対溶かしてみせる。

水凪しおん

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番外編: 副寮長の観察記録

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 俺、副寮長の藤堂健太は、親友である東雲晶のことが、まあまあ心配だった。
 原因は、言わずもがな、あの転校生・雪村結だ。
 最初、あいつが転校してきた時、正直言っていい印象はなかった。人形みたいに綺麗な顔してるくせに、愛想もクソもない。晶が寮長として一生懸命話しかけても、ガン無視だ。見てるこっちがイライラした。
 だから晶には言ったんだ。「あんな奴、無理して関わらなくていい」って。
 でも、晶は聞かなかった。あいつは昔から、真面目で、責任感が強すぎる。寮長の仕事だからって、一人で全部背負い込もうとする。
 だけど、雪村に対する晶の執着は、だんだん「寮長の仕事」の範疇を超えてきているように見えた。
 いつも完璧で、余裕綽々だった親友が、雪村のことになると、ムキになったり、落ち込んだり、本当に分かりやすく一喜一憂するようになった。
 学園祭の時なんて、最悪だった。他校の奴らが雪村に絡んで、あいつがパニックになって逃げ出した後、晶の形相はマジでヤバかった。本気で相手を殴り殺しかねない、そんな目をしていた。あんな晶、初めて見た。
 その日から、俺はなんとなく察していた。
 ああ、こいつ、惚れたんだな、と。
 あの氷の塊みたいな雪村の、どこに惚れる要素があったのかは謎だが、恋ってのは理屈じゃないんだろう。
 そして、驚いたのは、雪村の方も少しずつ変わり始めたことだ。
 晶の前でだけ、本当に微かだけど、笑うようになった。晶が風邪で寝込んだ時、俺がお見舞いに行った後、雪村がこっそり薬を置いてるの、俺は見てたぞ。
 いつも完璧超人だった親友が、雪村の前でだけは、ただの「晶」になっていた。本当に幸せそうに、安心しきった顔で笑うようになった。
 だったら、もう、俺が口を出すことじゃない。
 二人がベランダでキスしてるっぽい影を部屋の窓から見つけた時は、さすがに「お前ら、場所を考えろよ!」って心の中で突っ込んだけど、同時に、なんだかホッとした。
 良かったな、晶。
 苦労した甲斐があったじゃねえか。
 これからも色々あるんだろうが、まあ、お前ら二人なら大丈夫だろ。
 副寮長としては、寮内での過度なイチャつきは謹んでいただきたいところだが、親友としては、末永くお幸せに、ってことで。
 俺は、二人の恋を、陰ながら応援することに決めた。……もちろん、二人には内緒でな。
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