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第7話 増えるもふもふ家族と、小さな診療所
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リリが持ち帰った「森の聖人様」の噂は、村人たちの間に瞬く間に広まった。初めは半信半疑だった人々も、リリの母親がアルのくれたハーブティーでみるみる元気になったことで、その噂を信じるようになった。
そして、最初の来訪者から数日後。村人たちが、恐る恐るという様子で、アルの住処を訪れるようになった。
「あ、あの……森の聖人様、でございますか?」
最初にやってきたのは、一人の年老いた農夫だった。彼は腕の中に、ぐったりとした子ヤギを抱いていた。
「この子、もう何日も乳を飲まなくて……。村の獣医も、もうダメだと……。どうか、この子を助けてはいただけないでしょうか」
アルは困惑した。自分はただの料理人であって、医者ではない。しかし、農夫の必死な目と、苦しそうに息をする子ヤギの姿を見過ごすことはできなかった。
「医者じゃないから、治せるかは分からないけど……。でも、元気が出るようなご飯なら、作ってあげられるかもしれない」
アルは子ヤギの状態を注意深く観察した。体が冷え、胃腸が弱っているようだ。彼は、体を温め、消化に良いものをと考え、特別な薬膳スープを作ることにした。
滋養強壮に効く根菜をすりおろし、温めたヤギの乳と混ぜ合わせる。そこに、フェンが採ってきてくれた、胃腸の働きを助けるという特殊な薬草をほんの少しだけ加えた。味付けはせず、素材の持つ自然な甘みと香りだけを活かしたスープだ。
アルがそのスープを指につけて子ヤギの口元に運んでやると、初めは嫌がっていた子ヤギも、その優しい匂いに誘われて、ぺろりと舐めた。そして、まるで乾いた大地が水を吸うように、ごくごくとスープを飲み始めたのだ。
スープを飲み干した子ヤギの体から、淡い光が放たれる。冷え切っていた体にはみるみる血の気が戻り、弱々しかった鳴き声は、元気な「メェー!」という声に変わった。
「お、おお……!立った!この子が自分の足で!」
農夫は、奇跡を目の当たりにして涙を流して喜んだ。この出来事は、決定的なものとなった。
噂は噂を呼び、アルの元には、病気のペットや家畜を連れた人々が次々と訪れるようになった。熱を出した犬には、解熱作用のある野草を使った冷たいジュレを。食欲のない猫には、匂いの強い魚を使ったリエットを。アルはそれぞれの症状に合わせ、知識と愛情を総動員して、特別な料理を振る舞った。
すると、どうだろう。彼の料理を食べた動物たちは、まるで魔法にかかったかのように、たちまち元気を取り戻していくのだ。
いつしか、アルの住処は「聖獣様のいる森の診療所」と呼ばれるようになり、人間も動物も、助けを求めて彼の元を訪れるようになった。彼は薬の代わりに料理を作り、患者(?)たちは皆、笑顔で帰っていく。
最初は人間と深く関わることに戸惑いを覚えていたアルだった。王宮での辛い経験が、彼を臆病にさせていたのだ。しかし、村人たちの素朴な感謝の言葉や、元気になった動物たちの嬉しそうな姿に触れるうち、アルの心には温かい喜びが満ちていくのを感じていた。
「ありがとう、聖人様!」
「アルさんのおかげだ!」
自分を「無能」と罵った王子とは違う、まっすぐな感謝の言葉。それは、アルが料理人として、ずっと求めていたものだった。
今日も、アルの家の前には、もふもふした患者たちが列を作っている。フェンは少し呆れた顔をしながらも、訪れる人々を追い払うことはしない。グリフォンは上空から、診療所の平和を見守っている。
アルは、この森で、新しい自分の居場所を見つけたのだ。人間と聖獣、そして動物たちが分け隔てなく集う、温かくて、美味しい匂いのする場所を。
そして、最初の来訪者から数日後。村人たちが、恐る恐るという様子で、アルの住処を訪れるようになった。
「あ、あの……森の聖人様、でございますか?」
最初にやってきたのは、一人の年老いた農夫だった。彼は腕の中に、ぐったりとした子ヤギを抱いていた。
「この子、もう何日も乳を飲まなくて……。村の獣医も、もうダメだと……。どうか、この子を助けてはいただけないでしょうか」
アルは困惑した。自分はただの料理人であって、医者ではない。しかし、農夫の必死な目と、苦しそうに息をする子ヤギの姿を見過ごすことはできなかった。
「医者じゃないから、治せるかは分からないけど……。でも、元気が出るようなご飯なら、作ってあげられるかもしれない」
アルは子ヤギの状態を注意深く観察した。体が冷え、胃腸が弱っているようだ。彼は、体を温め、消化に良いものをと考え、特別な薬膳スープを作ることにした。
滋養強壮に効く根菜をすりおろし、温めたヤギの乳と混ぜ合わせる。そこに、フェンが採ってきてくれた、胃腸の働きを助けるという特殊な薬草をほんの少しだけ加えた。味付けはせず、素材の持つ自然な甘みと香りだけを活かしたスープだ。
アルがそのスープを指につけて子ヤギの口元に運んでやると、初めは嫌がっていた子ヤギも、その優しい匂いに誘われて、ぺろりと舐めた。そして、まるで乾いた大地が水を吸うように、ごくごくとスープを飲み始めたのだ。
スープを飲み干した子ヤギの体から、淡い光が放たれる。冷え切っていた体にはみるみる血の気が戻り、弱々しかった鳴き声は、元気な「メェー!」という声に変わった。
「お、おお……!立った!この子が自分の足で!」
農夫は、奇跡を目の当たりにして涙を流して喜んだ。この出来事は、決定的なものとなった。
噂は噂を呼び、アルの元には、病気のペットや家畜を連れた人々が次々と訪れるようになった。熱を出した犬には、解熱作用のある野草を使った冷たいジュレを。食欲のない猫には、匂いの強い魚を使ったリエットを。アルはそれぞれの症状に合わせ、知識と愛情を総動員して、特別な料理を振る舞った。
すると、どうだろう。彼の料理を食べた動物たちは、まるで魔法にかかったかのように、たちまち元気を取り戻していくのだ。
いつしか、アルの住処は「聖獣様のいる森の診療所」と呼ばれるようになり、人間も動物も、助けを求めて彼の元を訪れるようになった。彼は薬の代わりに料理を作り、患者(?)たちは皆、笑顔で帰っていく。
最初は人間と深く関わることに戸惑いを覚えていたアルだった。王宮での辛い経験が、彼を臆病にさせていたのだ。しかし、村人たちの素朴な感謝の言葉や、元気になった動物たちの嬉しそうな姿に触れるうち、アルの心には温かい喜びが満ちていくのを感じていた。
「ありがとう、聖人様!」
「アルさんのおかげだ!」
自分を「無能」と罵った王子とは違う、まっすぐな感謝の言葉。それは、アルが料理人として、ずっと求めていたものだった。
今日も、アルの家の前には、もふもふした患者たちが列を作っている。フェンは少し呆れた顔をしながらも、訪れる人々を追い払うことはしない。グリフォンは上空から、診療所の平和を見守っている。
アルは、この森で、新しい自分の居場所を見つけたのだ。人間と聖獣、そして動物たちが分け隔てなく集う、温かくて、美味しい匂いのする場所を。
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