不吉な『影』の力で追放された僕、流れ着いた砂漠の国では『聖なる天蓋』と呼ばれ、若き王に『我が国の至宝だ』と溺愛されています

水凪しおん

文字の大きさ
22 / 24

第21話「太陽の下の誓い」

しおりを挟む
 サルディスとの戦争は、バシラの完全勝利に終わった。

 奇跡の力で国を救ったノアは、国民的な英雄となった。倒れた後、彼は王宮で手厚い看護を受け、数日後に無事意識を取り戻した。

 そして今日、ジャファルが軍を率いて、王都へ凱旋する日。

 王都は、勝利を祝う民衆で埋め尽くされていた。誰もが、王の名と、そして「影の聖人」ノアの名を、熱狂的に叫んでいる。

 ノアは、民衆の歓声に迎えられ、王宮の門前でジャファルを待っていた。少しだけ痩せたが、その顔にはもう、かつてのような翳りはない。自信と喜びに満ちた、穏やかな表情をしていた。

 やがて、堂々とした足取りで、ジャファル率いる凱旋の行列がやってきた。先頭で愛馬にまたがるジャファルの姿は、まさに国の英雄そのものだった。

 彼は、ノアの姿を認めると、馬からひらりと降りた。そして、他の誰にも目もくれず、まっすぐにノアの元へと歩み寄る。

 そして、ジャファルは、満場の民衆が見守る前で、ノアの前に深くひざまずいた。

「……!ジャファル様!?」

 驚くノアの手を、ジャファルは恭しく両手で取った。

「ノア」

 彼の声は、拡声器を使ったかのように、広場全体に響き渡った。

「かつての私は、民を愛しながらも、この国を焼く太陽に無力感を覚えていた。王でありながら、日陰者だったのは、むしろ私の方だったのかもしれない」

 民衆が、固唾を飲んで王の言葉に聞き入っている。

「そんな私の前に、お前が現れた。お前は、私を、そしてこの国を照らす、唯一の光だ」

 ジャファルは、懐から小さな箱を取り出した。それを開くと、中には、夜空の星を閉じ込めたような、美しい瑠璃色の宝石がはめ込まれた指輪が収められていた。

「ノア。私の妃となり、永遠に俺の隣にいてくれないか」

 それは、王から一人の青年への、最高のプロポーズだった。

 ノアの青い瞳から、大粒の涙がいくつもこぼれ落ちた。追放され、絶望の雨に打たれていた自分。そんな自分が、こんなにも多くの人に祝福され、世界で一番愛する人から、永遠を求められている。

 答えは、決まっていた。

 ノアは、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、最高の笑顔で、力強く頷いた。

 その瞬間、広場を埋め尽くした民衆から、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。

 ジャファルは、歓喜の表情で立ち上がると、ノアの指に誓いの指輪をはめ、その体を強く抱きしめた。

 そして、灼熱の、しかし今は祝福の光となって降り注ぐ太陽の下で、二人は永遠の愛を誓う口づけを交わした。

 忌み嫌われた影の力は、国を救う奇跡となり、日陰で生きてきた青年の人生は、太陽よりも眩しい光で満たされたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる

レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。 ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。 死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。 ※諸事情により、本編、番外編「嫁溺愛大将と幼馴染み達」「イザームさんとルーカスくん」のみ再掲します。 「羽化」 「案外、短気」 「飴と鞭」 は未公開のままで失礼いたします。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される

黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」 無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!? 自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。 窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...