ダンボール無双~実家を追放されたホームレスの俺が、ダンボールの妖精に導かれて鬼畜ゲーム世界で英雄やってるけど質問ある?~

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ホームレスと旅行

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 そして、俺は女王陛下への報告をすませる。

「ということで、現在はまずは戦略の発展史をまとめながら、クリスタ少佐を中心に輸送計画の見直しを進めているところです」

「ええ、よくわかったわ。順調に計画が進んでいるようで、私も安心します。何か問題はありませんか?」

「軍務大臣が国立図書館の入場許可証を発行してくださると聞いているので、かなり作業スピードは向上すると思います」

 実際、たくさんの資料が手に入るようになれば、かなり楽になる。

「なるほど……」
 少しだけ、ムッとした表情になる女王陛下。
 俺はちょっとだけ心配になる。

「いや、女王陛下にはいつもよくしていただいていますから……」

「それでも、最近はあなたに助けてもらってばかりじゃないですか。なにか力になりたいなって、思っているんですよ」

 少しだけ首を横に向けて、女性的な魅力を出す彼女にドキリとする。
 今は、女王と臣下だからきちんとした感じに話さないといけないのに、ウィリーは少しだけガードを弱めているように見える。

「なら、現地視察に行ってみたいんですが!!」

「現地視察?」

「はい、実際の輸送経路とかですね、港湾施設が実際どんな感じかとか!! 直接見てこないと分からないところも多くてですね。もし可能だったら視察の許可をいただきたいんですが?」
 
 百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。
 やっぱり机上の空論にならないように実際の場所を見た方が絶対に良い。

 結局、それができなかったから、無謀な作戦が実施されてしまい、破滅的な被害を出すことになるんだよ。

 補給路が崩壊したインパール作戦しかり、鉄道の規格が違うという基本的なミスで作戦が遅れた独ソ戦などなど。

 逆に地理に詳しかったからこそ、織田信長の桶狭間の戦いや長篠の戦いはうまくいったと思う。
 
 地理は戦争において重要なファクターだ。できる限り地形は実際に見ておいた方がいいに決まっている!!

「なるほど、婚前旅行か。悪くないですね」

「うん??」

「気にしないでください。こちらの独り言ですから」

「でも、いま……婚前旅行って」

「なんで、いつも察しないのに、そういうところだけは鋭いのよ!!」

「いや、その……」

「わかりました。ならば、私の巡幸と合わせて、あなたを随伴員に任命します。部下を選抜して、一緒に同行させなさい。港湾都市と物流の中心を一緒に確認します」

「ありがとうございます!! すぐにこちらでも準備を整えます」

「出発は1か月後とします。それまでに、確認したいところをまとめておきなさい!」

 こうして、俺たちの異世界旅行が決定した。

 ※

 仕事は効率重視で、休息も重要だ。
 ということで、できる限り早くみんなを帰宅させる。

 あとで、視察旅行の準備もしなくちゃな。
 クリスタは「どうだ、一杯飲まないか?」と誘ってくれたんだんだけど、「悪い、先約がある」と言って断った。

 クリスタはニヤニヤしながら「さすがは色男だねぇ」なんて茶化していたけど、俺は苦笑いでごまかす。

 家で待っている後輩妖精が怖いからな。

「ただいま」

「おかえりなさい、センパイ! ご飯にします? お風呂にします? それとも私?」

「う~ん、ご飯かな?」

「そこは、私でしょ!!」

「そんな古いラブコメみたいな展開は望んでねぇよ」

 まあ、いつものような受け答えをして俺は受け流した。

「まぁいいや。今日はたくさん飲みましょうね。私もダンボールの妖精だから年齢に関係なく飲めますよ~安心してくださいね」

「いや、いつも飲んでいるじゃん!」

「そんな細かいことは、おいておいて! 実は、今日は市場で珍しいお酒を見つけたんですよ。センパイ、蒸留酒も好きだからちょうどいいかなって。じゃーん、グレタ産ウィスキーです!」

 立派な陶器のウィスキーが出てきた。この時代にこんな立派な入れ物を用意できるなんてさすがは大国だな。

「でも、こんな立派なウィスキー高かったんじゃないか?」

「大丈夫ですよ。センパイはもう中佐ですもん! 官舎生活で生活費はほとんどかからないですからね。ちょっと贅沢するくらいは罰があたりませんよ!」

「そうか。まぁ、たまにはいいか」

「ですです! センパイ、この前話していたカクテル作ってくださいよ! 氷魔力で氷はたくさん作れますし! この辺の井戸水は炭酸入りですからね~ちゃんと汲んでおきましたよ」

「おう、じゃあ作るか。オレンジに炭酸水、ショウガ、はちみつね。クロンダイク・クーラーは作れそうだな」

 これもニート時代に映画で見たカクテルだ。

 ウィスキーにオレンジジュースとジンジャーエールを混ぜて作るカクテルだ。
 作ったらオレンジの皮を入れてよりフルーツ感たっぷりに!

 ウィスキーとオレンジジュースって意外と合うんだよな。このカクテルはカナダで発明されたやつだから、もしかしたらバーボンやライウィスキーのほうが合っているかもだが。

 グレア帝国の位置的に、たぶんスコッチウィスキーだろうな。
 煙くて甘いやつが俺は好みだ。

「ターニャ。できたぞ!!」

「わー、きれいなカクテルですね。オレンジがオシャレ!!」

「つまみはできたか?」

 俺はカクテル作りを。
 ターニャはおつまみを担当していた。

「はい!! ピクルスと塩漬け肉のパテとジャガイモとソーセージのチーズ焼き、ナッツ盛り合わせですよ」

「うまそうだ」
 俺は、ストレートウィスキーをコップに注いで台所に持っていく。

「「かんぱーい」」

 楽しい食事が始まった。

 ※

 俺はグレタ産ウィスキーのコルクを開ける。
 この時代は瓶なんてものはないから、陶器で栓はコルク。歴史を感じるな。

 向こうではニートだがウィスキーは好きでいつも飲んでいた。
 
 俺の時代は、ブランデッドウィスキーとシングルモルトという2つの種類があった。
 ブランデッドとはそのままの意味で、複数の蒸留所が作ったウィスキーを混ぜ合わせて作るものだ。あと味を整えるためにモルト=大麦のウィスキーと、グレーン=トウモロコシや小麦などウィスキーを混ぜる。この製法なら、味は均一になって安価で美味しいウィスキーを作ることができる。

 だが、このブランデッドウィスキーは19世紀前後に完成された技術で、実はこの世界にはまだない発想だ。

 つまり、俺の目の前にあるのは「シングルモルト」ウィスキー。
 現代なら超高級品だぜ!

 シングルモルトとは簡単に言ってしまえば、一つの蒸留所のみで蒸留した大麦だけのウィスキーのことだ。これは製造も大変だし、一つの蒸留所だけのウィスキーしか使わないから大量生産には向かない。必然的に高級になるってわけだ。

 ウィスキーを寝かせるタルの状態や蒸留所の気候などによって味も違うため、個性が出やすいウィスキーになる。

 その蒸留所で特に美味しいというものが出てくるんだよ。
 飲むのが楽しみすぎる。

「センパイは、ストレートですか!! 相変わらずお酒強いですね。ローザンブルク皇帝とも強いカクテルとウォッカ飲み干してましたし」

「あの後は2日酔いがやばかったけどな」

「私は見て大笑いしていましたけどね」

「おいっ!!」

「あっ、このカクテル甘くて美味しいですね。オレンジジュースみたいでいくらでも飲めちゃう」
 本来ならこんな高級品で作るのには、もったいないんだけど喜んで貰えて嬉しいからツッコむのはやめておこう。まあ、こんなことを考えると伝わっちゃうんだけどな。

 俺はすべてをごまかすために、ストレートウィスキーを口に含む。

「うわ、安物とは全然違うな」

 香りはとても豊かで、強い度数なのにしっかり寝かせているからとげとげしさはほとんどない。むしろ、甘い。香りもフルーツや森林みたいな感じだ。

「やっぱり、12年物は違うでしょ? 仲良くなった酒屋のおじさん一押しの品ですよ!」

「うん! こんなうまいウィスキー初めてのんだよ。高かったんだろ?」

「おじさんが私のかわいさのおかげでおまけしてくれたから、大丈夫ですよ。センパイはヴォルフスブルクを代表とする軍人なんですから、しっかり語れるお酒くらい作っておいてくださいね。そうじゃないと、社交界で笑われちゃいますから!」

 こういう風にこいつはいつも俺のことを考えてくれるな。
 ありがたいというか、感謝しか出てこない。

「センパイはもっと私に甘えるべきです。だって、私たちは共犯者じゃないですか?」
 妖精は優しく笑う。

 ※

「じゃあ、共犯者に乾杯!」
「乾杯!」

 俺たちはグラスをぶつけ合った。

「ところで、センパイ?」
「ん?」

「さっき、心の中で思っていたことは、実際に言ってくれた方が嬉しいですよ?」
「うっ……」

「センパイはごまかしたかったみたいですけどね。私達、心の中でつながっているんで隠しても無駄ですよ」

「恥ずかしいから知らぬふりをしてくれると助かる」

「でもね、センパイ? 心が繋がっているとわかっているからこそ、そんなふうにふいに言われるとどうしようもなく嬉しくなっちゃうのが乙女心なんですよ。隠すこともせずにポロっと気持ちが表に出ちゃう。それは間違いなく本音で、私に向けられた純粋な好意。嬉しくないわけがないじゃないですか」

 俺は、恥ずかしさとウィスキーのアルコールで体温が上がっていくのを感じた。やばい、心が燃えるように熱い。

「そうやって、心がかき乱されているのがわかるのは、嬉しいな。センパイ、実は私に気があるんでしょ?」

「さあな」

「ごまかすところが余計に怪しい。まあ、心をのぞけばわかるんですけどね? でも、実際のあなたの気持ちは、あなたの口から聞きたいから、そこは見ないようにしますよ」

 どんな風な原理になっているんだよ、その能力……

「でもね、センパイ。私が器が大きい女だからって、女王様や貴族の令嬢に甘えられて鼻の下を伸ばしているのはダメですからね。そんなことばかりしていると、私が家出しちゃいますよ?」

「気をつけるよ」

「はい、気をつけてくださいね。旅行だってあるみたいだし?」

「ぐぬ」
 やはりばれていたか。いや、話すつもりだったよ。ただ、タイミングを逃しただけだし。

「大丈夫ですよ。言い訳しなくてもわかってますから!」

「……」
 くそ、完全に尻に敷かれているだろ、これ。

「さてと、せっかくイイ雰囲気になったことだし、既成事実くらい作っちゃいますか? 酒の力でいろいろ超えちゃいましょうよ?」

「なんだよ、それ! さすがにダメだって、近い、近い、近い!!」」
 妖精は笑いながら、俺のくちびるに近づいた。

「センパイ……冗談ですよ?」
 そう言って人差し指で彼女は俺のくちびるを叩いた。

「完全にからかわれた。俺の純情が……」

「何言ってるんですか。30歳のおじさんが?」

「それは言ってはいけないやつだろ」

「じゃあ、ヘタレ野郎の先輩は放っておきますかね。リンゴのコンポート作っておいたんで、持ってきますね」
 そう言って、彼女は少しだけ席を外した。

『(まぁ、ヘタレなのは私もなんだけどね)』
 妖精は小声でそうつぶやいていた。
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