幸せな空

ベル

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祖父と祖母③

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『娘がっ....喜美子がいないの!!』



顔面蒼白になりながら祖母の母が祖父の家を訪ねて来たのは、真冬の吹雪の日。



野菜の配達の仕事を終え、両親と共に自宅でくつろいでいた時だった。



『喜美子がっ.....うっ......』



玄関で泣き崩れる祖母の母を、祖父の母が慌てて抱き抱え、居間へ案内した。


祖母の母が言うには、いつものように旅館での仕事を終えて帰宅した時、いつもあるはずの祖母の靴が無かったと言う。


友達と寄り道をして帰るにしても、既に8時を過ぎている。


辺りは真っ暗で、裏に回ると祖母がいつも送り迎えをしている車が置いてあった。


寄り道をしているなら、迎えの車がここにあるのはおかしい。


震える手で、祖母の母はいつも送り迎えをしている運転手に電話をかけた。



『え?喜美子様でしたら、もうとっくにご自宅に送りましたが.....』



その言葉に、祖母の母はパニックになった。


祖母の父は従業員全員に娘を探すように指示し、警察にも連絡したと言う


祖母の学校にも連絡を入れ、総出で捜索していた。


もしかしたら祖父が何か知っているのではないかと、藁にもすがる思いで祖父の家に来たらしいが、祖父があの日以来全く接点が無いことを知ると、絶望したように泣き出した。



『あの子にっ.....あの子に何かあったら私っ.....』



『....あなたは悪くない。きっと大丈夫だから、落ち着きましょう』



取り乱す祖母の母をぎゅっと抱きしめ、優しく声をかけ、祖父の母はばっと祖父を見た。



『あんた、なぁにぼーっとしとんね!大事な子なんやろ!はよ探しに行きぃ!!!』



その瞬間、祖父は家を飛び出した。


その時、祖母の母が泣きながら話す間に外に出かけていた祖父の父が玄関に戻ってきた。


祖父の父は祖父を見るなり、やっぱりなぁという表情になる。



『今、滑らんように自転車にチェーンを巻いたから。けど、あんま無理せんようにな。母ちゃんはあぁ言うとるけど、お前の事を一番に心配しとるからな』



そして、祖父に自転車の鍵と「これも着て行き」とダウンを渡した。



『こんな時に車やバイクでもあったら良いんやけどなぁ。....正一、気をつけて行くんよ』






全速力で自転車を漕いだ。


雪が降り注ぐ中、祖父は真っ赤になりながら汗だくで祖母を探した。


祖父はこの時、祖母がいる場所がなんとなく分かっていた。


両親に隠れて会っていた時、約束していたのだ。


お互いの誕生日は、ここで一緒にお祝いをしようと。



そしてその日は、祖父の誕生日だった。
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