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11. もう届かない
マークが学園に復帰して三日ほど過ぎた頃だろうか。
アリシアがいつまでたっても登校してこないことを心配してマークは教師に尋ねてみたのだが。
「あれ? 聞いていないのかい? アリシア嬢は隣国クライドルの高等学院に転校したよ」
「え?」
◇
あの日、マークに言いたい放題言って去っていったキャロルは、翌日から学園に来ていない。
どういうことか、などもう考えなくてもマークにはわかっている。
それはマークが失態を犯して、二人の婚約が無くなることを狙った誰かがいたということで。
(一体誰が……)
などと考えてみても、もうアリシアとの関係が元には戻らないことをマークも徐々に理解していった。
理解はできたが、追いつかないのは心のほうで……
キャロルもいなくなった学園で、マークはずっと一人で過ごしている。
そうやって一人きりでいると、色んな場所でアリシアの残像が浮かんでくるのだった。
中庭のベンチから見上げる二階の窓。
食堂で、いつもマークが座る席から一列飛ばした端っこのテーブル。
それに教室のアリシアの席。これはしばらくして撤去されてしまったけれど。
あと、アリシアは噴水そばのベンチでよく本を読んでいたが、アリシアがどんな本を読んでいたのか、マークはついぞ知ることはなかった。
「もう来ないのか……」
アリシアがよく座っていた噴水そばのベンチに、マークは腰掛けている。
今は放課後で、段々とオレンジ色に染まっていく空を見上げてはまたアリシアの手紙を思い出していた。
『マークさまはオレンジ色がおすきでしょう?』
マークはあれからもずっとアリシアに宛てて手紙を書いては送っていた。
謹慎が解けてからは花束だって自分で見繕っているし、贈り物もした。
以前読んだ手紙に、髪飾りを気に入ってずっとつけていたと書いてあった。その件でケインに尋ねたら、銀の髪飾りを贈ったとのことだった。
アリシアの長くて艶やかな黒髪には、確かに銀色が映えるだろうな、と今更ながらマークは思った。
もしかしたらまた喜んでつけてくれるかもしれない、とも。
『マークさま、だーいすき』
『マーク様、大好きです』
『マーク様、お慕いしております』
(僕は、そのどれにも応えてやらなかったんだな)
「アリシア……」
見上げるオレンジ色の空が、マークには淡く滲んで見えた。
◇
この日、帰宅したマークを出迎えたのはアリシアに送ったはずの手紙の束と、リボンの解かれていないたくさんの箱だった。
『謝罪は受け入れます。もうこれ以上何も送らないでください』
そこにはアリシアの字ではない、無機質なメッセージが添えられていた。
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