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学校 Day 1

第8話 お泊りしてもいいですか?

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…先生方がお偉いさんに話をつけに行き、理科室は生徒だけになった…




その後、奏太が家に電話しにいくというので、乃愛もついていった。
(一応校則でスマホの持ち込みは禁止だが非常に緩い。慧は持ち込まないタイプ。)


電話に出たのは、奏太のお姉さんだった。 
二十歳くらいだろうか。

奏太が手短に友達が泊まりに来るという旨を伝えると、「イイよ。どんな子?」と即答。


あまりにスムーズ過ぎて、乃愛はかなり戸惑った。


奏太からスマホを渡されたので
「あの、えっと、今日からしばらく泊めてほし…」 しゃべり終わる前に

「えっ、女の子!?  いいよいいよ! おいで、片づけとくからぁー! ちょっとカナタに代わってぇ」と言われた後、奏太がしばらく話して、「そんなんじゃねーよ」と言って切った。


けっこう元気なカンジのお姉さんみたいだ。
宮野結衣(ミヤノ ユイ)さんというらしい。
ちなみに、23歳だそうだ。




奏太の家も慧と同じく両親が不在の時が多く、よく突然友達を呼んでお泊り会をするらしい。

どうりでスムーズに話が進むわけだ。 
(慧は奏太を家に呼ぶことは多々あったが、奏太の家に行くことはなかった)



乃愛はお泊りの挨拶をするのにかなり緊張していたようで、電話を切ってからホッとしている。
(慧の人見知りは県内最高レベル)

それと、同時に理科室への帰り際、モジモジとして何か言いたげだった。
(聞いてみても「何でもない」とはぐらかされてしまった)








理科室へ戻ると

乃愛は奏太から引きはがされガールズトークに半ば無理やり加えられた。
そして、その様子を男子が見つめるという構図が続いた。


男子は乃愛が神々しすぎて完全に萎縮してしまっている。
逆に女子は乃愛を口説いているのかと思うくらいに積極的になっている。



奏太は、電話のために二人になった時間で、乃愛が特に慧となんら変わっていないことに気づいた。
そのため、可愛くなりすぎて直視は厳しいが、特に萎縮することはなかった。


ガールズトーク中、乃愛はずっと奏太に「助けて!」と視線を送っていたのだが、気づいてもらえなかった。

乃愛は慣れなすぎる女子との交流に疲弊しきった様子である。












6限が終わり、教室から荷物を回収済みだったため、各自下校となった。
(乃愛のことは口外禁止)

乃愛と奏太は、結衣にお迎えを頼んでいたため、しばらく理科室で待機となる。



皆が続々と帰宅していく。
去り際は「乃愛ちゃんバイバーイ」と共に、全員奏太へ妬み嫉みの視線送っていった。

乃愛はぎこちなく手を振って皆を見送ると共に、何かのタイミングを計っているようだった。









そして、人が減るのを待っていたのだろうか、
突然、乃愛が最後まで残っていた彩葉の袖を後ろからキュッとつまむ。


あまりにベタな漫画のような展開に、彩葉の心臓のバクバクは止まる気配を見せない。

乃愛が無言のままなので「どうしたの?」と動揺を隠しながら尋ねる。



すると、消えてしまいそうな小さな声で恥ずかしそうに言う。








「トイレ・・・いきたい。」









近くで、ぎりぎり聞こえていた奏太の脳内ですべてが繋がった。


挨拶への緊張が解けて、ホッとしたことでトイレに行きたくなったからモジモジしていたんだ。

急に女の子になってトイレの仕方も分からず、男の俺に相談しても意味がない。
理科室へ戻っても特別仲の良い女友達はいないだろうから言い出せなかったんだ。


気づけなかった。 






そんなこと考えているうちに、既に彩葉が乃愛をトイレへ連れて行ってくれたようだ。
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