最後に開ける手紙

天使の輪っか

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手紙と終焉

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恋人が死んだ。

俺は遺影の前でただ、昨日のことを思い出していた。


ーーーーー


夏休み。蝉がうるさく鳴いている、普通の月曜日。
ただいつもと違うのは、俺の誕生日だということだけ。

誕生日なんだし、デート行こ?と俺を誘った恋人は、暑いのに手を繋ぎながら俺に問うた。


「お前はさぁ、俺のことどう思ってる?」
俺の恋人は、よく同じことを聞く。

それに俺はいつもこう返すのだ。
「まぁ、アイスの次に好き」

アイスは美味しい。世界で一番好きなものは?と聞かれれば、必ずアイスと答えるし、お前ってアイスで出来てるんじゃね?と言われたこともある。

そんなアイスの次とは、とても高い順位である。
それを知ってか知らないのか、俺の恋人は嬉しそうに笑うのだ。

「ねぇ、今日。俺の家誰もいないんだよね」
恋人はいたずらにそう告げた。

だが俺には用事がある、その申し出は断るしかないだろう。

「今日はムリ。でもセックスはする」
「どこで?」
「どっかのラブホ」

断ったのにやった、とニコニコ笑う恋人に、思わず溜息が出る。
こんなクズな返答にも喜ぶなんて。

どこまで俺を好きなのだろう。
呆れて言葉も出ない。

しばらく歩いていると、目に悪い外観の建物が増えてきた。何度もラブホには来ているが、まだ慣れない。

「こことか良いんじゃね?」
恋人が指差したのはその中でも目を引くほどの、派手な場所だった。

うげぇ、こんなところでやるのか。
まぁ良いか。どうせやることは同じだしな。

「どこでも良いよ」

慣れた手つきでパネルを操作する恋人が選んだのは少し高い綺麗な部屋。

「そんな金あるの?」
「まぁ、今日くらいはな」

鍵を受け取り、部屋へ入るとそこは今までいた所とは切り離されているようで、特別感があった。
「すっげ~、このベッド、貝殻の形だ!」

嬉しそうな恋人を見て、まぁコイツが喜んでるなら良いかと思った。

シャワーを浴びて、中も洗浄する。
この行為は結構大変で、恥ずかしい。
挿れられるのは気持ちいいけれど、こういうとこが大変なのが女側の嫌なところだ。

さっさと終わらせてベッドに戻る。
恋人は俺の体を見て、一瞬赤面すると、それを隠すようにそそくさとシャワーを浴びに行った。

何度も見た体なのに照れるなんて、不思議なものだな。
そうだ! 

イイコトを考えた俺は、それの準備を行う。
テーブルに置いてあるこの部屋とはかけ離れたモノたち。
ヤる部屋のはずなのにその道具たちはどこか異質に見えた。

ローションを股間にぶっかけて伸ばす。
冷たくてドロドロしたそれを指に纏い、自分の穴に差し込む。

「んっ」
くちゅくちゅと音をたてながら入り口を広げていく。

シャワー室から聞こえていた水音が止まったのを感じ、そろそろだな、と顔を緩ませる。

「上がったぞ~」

「!?」
驚いてる驚いてる。
予想通り、アナニーしている俺を見て顔を赤くした恋人。

「もう準備してるぞ。早く挿れて」
「ったく、お前は、、、」


自分の足を掴み、早く入れて欲しそうに穴を拡げると、呆れながらも自身を大きくさせた恋人は、屹立を穴に擦り付けて、一気に奥まで入り込んできた。

「んっ、ああああ゛っっ」
奥の気持ち良いところを突かれた俺は、達しそうになりながらも我慢する。

漏れ出た声は自分から出たとは思えないほど艶かしく、こればかりは慣れないな、と心の中で舌打ちする。

そんな俺をお構いなしに腰を振る恋人。
「ああっ、んあっ、きもちっ良いっ」
「俺も気持ちいいよ」

だんだん、自分がわからなくなるほどに快楽が強くなっていく。

「ああっ、は、待って、気持ちっ、あ゛ーーーー!」

意味が分からないまま、奥をたくさん突かれて、前立腺も責められて、俺は達した。

それでも止まらない恋人は、俺が三度目に達した時にやっとイった。

ビクビクと震える恋人の性器にすら快感を覚え、きゅ、と中を締めてしまう。

また自身を大きくさせた恋人は、俺の静止も聞かずに腰を動かし始めた。


それがやっと終わったのは、恋人が三回出した後だった。

「お前、、、やりすぎ」
息も絶え絶えになりながら、なんとか横腹を蹴る。

「ごめんごめん」
心の篭らない謝罪をした恋人は、もっとしたかったな~とかほざいていた。

それから後処理を済ませ、ホテルから出たらもう辺りは暗くなっていて。

家まで送ろうとするアイツをどうにか断わった。
すると恋人はまた俺に言った。

「俺のこと、好き?」
「まぁ、アイスの次くらいには」


ーーーーー


それがアイツとの最後の記憶。
今日、コイツが死ぬと分かっていたらもっと一緒に入れたのに。

ああでも、セックスは気持ちよかったな。


それから四年が経った。
高校生だった俺は、大学生になり、それなりの生活を楽しんでいた。

「おい、今日飲み行こうぜ!」
「悪い、今日はパス」

友人からの飲みの誘いを断って、一人暮らしのアパートではない方向の電車に乗り込んだ。

しばらく電車に揺られていると、目的地である駅に着いた。

そこで降りるのは、俺一人。

とぼとぼと歩く俺を嘲笑うかのように、蝉が鳴いていた。

しばらくすると、ずらっと立ち並ぶ墓石が見えてきた。

その中の一つであるアイツの墓で足を止める。
ひどく汚れているそれは、アイツを知る人がいないことの証明のようで、ひどく寂しかった。

綺麗に掃除をし、花を添える。
手を合わせて目を瞑った。
お前は今、何してる?幸せになっているか?
なぁお前は今、




『俺のこと、、、どう思っている?』

ざぁーっ

風が吹く。

俺は墓に背を向け、歩き出した。





「ん、ああっ、気持ち良いっ」
「お前の穴、マジ名器だわ」

「んああっ、イく、イく」

「オラっ、イけよっ、女みたいに中でイけっ」

乱暴な言葉、乱暴な動き。
アイツとのセックスとは大違い。
けれどそれにすら感じている自分が、惨めで、汚くて。気持ち悪かった。

セックスが終わり、タバコを吸っている男を横目にスマホをいじる。

昨日は楽しかったよ~

また遊ぼうな!

いつ会える~?

色んな男たちから来ていたメールを、一つ一つ確認していく。
そうしていると、一通のメールに目が止まった。

好きだよ。俺と付き合わない?

そのメールを送った相手をブロックする。
暇な時はすぐ相手してくれるし、割と上手いし、良い人だったんだけどな。

「何? メール?」
タバコは吸い終わったのか、男が後ろから覗き込んできた。
「勝手に見るなよ、、、」

「え~、良いじゃん」
「よくない!」
「ごめんってぇ。で、告白? 断っちゃうの?」

「当たり前だろ。、、、お前はそんなこと言うなよ」
「そんなことって?」

この男、、、分かっていってるな。

「付き合おうとか、好きとか」
そう言うと男はあっはっは、と笑い、タバコに火を付けた。

「言わねぇよ。俺にとってお前はただの良い穴だからな」
「知ってる」

だから一緒にいるんだし。
「ねぇ、もう一回しない?俺また気持ちよくなりたいな~」

男は図々しく、俺に強請ってくる。
もう四回したのに、元気だなコイツ。まるで、アイツみたいだ。

「もう無理。流石にギブ」
「じゃあフェラしてよ」

「まぁそれなら」

男のくろくて大きなチンコを咥える。
しばらく舐めていると、気持ち良くなってきたのか俺の頭を押さえ込みながら腰を振った。

この男は、イラマが好きだ。
初めて会った時も、それを強要してきた。
最初は苦しかったソレも、今では喉で快感を拾うまでとなった。

「ん、おごっ、んえ、んん、んーー」
男は俺が精液を飲んだのを確認した後、やっとチンコを抜いた。

「お前、ほんとに全身名器だよな」
それは褒められているのかいないのか。

「うるさい」
そのあともとりあえずダラダラしながら、ラブホを出た。





俺は、アイツが死んでから、色んな男に抱かれるようになった。
アイツが死んで寂しかったというのもあるにはあるが、ただ単純に気持ちよくなりたかったからだ。

頭がおかしくなるほどの快楽が欲しいのだ。


でも最近、やけに虚しくなる。
初めのうちはセックスすればするほどアイツを忘れられたのに、今ではすればするだけアイツを思い出す。

もう、潮時かもしれない。
付き合っていた頃はわからなかった愛しいという感情が、今は手に取るようにわかる。

アイツが何度も聞いてきたあの言葉の意味も。

それはきっと自分が存在することを。自分の生きる意味を忘れないようにするためだったのだろう。

そして俺はまた、電車に揺られていた。
着いた場所は、海。
アイツとよく来た場所。

俺はいつも遊んでいたところに立つ。
赤くて丸い印は、アイツが書いた。

その時はなんのためか知らなかったが、今では分かる。
俺はその印から、

海の上の高い崖から、飛び降りた。


薄れていく意識の中で一つ、考える。
そういえば、



そういえばアイツ、最後の最後まで





俺に好きって言ったことなかったな。



































『春日へ

 誕生日おめでとう。
 俺はもう、いなくなってるよね?
 びっくりしたかな?

 そんなに怒んないでよ、病気のこと隠してた   
 のは悪かったけどさぁ

 お前が心配すると思って隠してたんだよ。
 

 って、嘘。本当は言いたくなかっただけな
 んだ。
 お前はさ、いじめられてた俺に手を差し伸べ
 てくれたよな。お前は俺の太陽なんだ。

 だからなんかさ、お前の隣にいれば病気も治
 る気がしたんだよ。
 なんの根拠もないのにな。
 だから、言えなかった。

 本当にごめん。



 俺、もうちょっとお前と居たかったよ。
 死にたくない。

 でも、もうダメそうだ。
 
 俺、お前に呪いをかけたんだよ。
 何言ってるんだって?本当だよ。いずれ分か
 るさ。

 分かったならさ、いつもの場所で遊ぼうよ。

 ずっと待ってる。
 
 あと俺、お前のこと
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感想 1

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みんなの感想(1件)

カニクイザル

ありがとうございました😭😭
素敵でした😭

2023.06.27 天使の輪っか

こちらこそ読んでくださりありがとうございます!
初めての感想なので嬉しいです♪是非他の作品も読んでみてください!

解除

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