君の待つ家

天使の輪っか

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希望の光

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「泣かないで、風鈴。必ず帰ってくるから、ね?」

……あれは、誰だったっけ?


ピピピピピピピピ!


目覚ましの音により目を覚ました午前4時。今日は朝から新聞配達のバイトがあった。急いで準備を済ませ、新聞を受け取る。
今日もいつも通りバイト三昧の一日が始まる、はずだった。

「君、明日から来なくていいよ」
「……え?」

突然告げられたクビ宣告。特に何かヘマをしたわけではない、どちらかというと頑張っていた方だと思う。それなのになぜ? しかも、こんないきなり決まるなんて……

「あの、なんでですか? 俺、何か」
「正直、失望したよ。まさか君がこんなことをする人だったなんて」
「こんなこと……?」
「知らないふりをしても無駄だよ。女の子をストーカーした挙句、監禁しようとまでしてたらしいじゃないか」

何を言っているのか、正直分からなかった。
俺が、女の子をストーカー?

人並みに付き合ったことはある。けれどここ数年は恋人はおろか、好きな人すら出来たことがない。それに、俺が好きなのは男。女の子を襲うはずはない。

「そんなことはしていません!」
「ここまで来てまだシラを切る気か! それに、もしやっていなかったとしても噂が立ってしまっているのだ、そんな人を雇っているなんて思われたくないからな」
「そんな……」
「とにかく! もうここには来ないでくれ。今日までの給料は払っておくから、じゃあな」

バタン!

無理矢理外に押し出され、扉を閉められてしまった。

どうしよう……。いや、まだ色んなバイトをしてるじゃないか! それがあれば大丈夫……

「君、クビね」
「君みたいな人をここに置いておくわけには行かないな」
「次から来ないでくれ」

俺がバイトしてるところ全てからもうここには来るなと言われてしまった。

これからどうしていけばいいんだ……

それから数日が経った。応募サイトのバイトに片っ端から電話してみたものの、答えは全てNOだった。

お金がほとんどなくなってしまった。当然家賃は払えず、今日ここを出て行くようにと言われた。

少ない荷物を持って外へ出る。

「はぁ」

ため息をつきながらベンチに座る。すると、とある看板を目にした。
男性が男性の相手をする、所謂いかがわしいお店だった。

もう、ここで働くしか……

「ねえ、君」
「え?」

そんなこと考えていると不意に声をかけられた。振り返るとそこには優しそうな青年が立っていた。歳は同じくらいだろうか、美しい顔立ちをしていて、思わず見惚れてしまった。

「こんなところで何をしているんだい?」
「えぇと、ちょっと色々あって……」
「もしかして、家がないのかい?」
「……まぁ、そんな所です」

青年は少し考えてからこう告げた。

「君、僕の家に来ない?」

突然のことで頭がフリーズしてしまう。

「ちょうど家政婦さんが辞めてしまってね、新しい人が欲しいんだ。どうかな? 住み込みで生活費は免除、日給二万円」

条件はかなり、いやとても良い。けど、見ず知らずの男にこんな話を持ちかけるなんて怪しすぎる。

「あはは、ごめん。怪しいよね」
「いえ……」
「家政婦になるかは別として、とりあえず今日は家に泊まりなよ。何かあったら警察に連絡してもらって構わない」
「……じゃあ、お願いします」

着いていくとどんなことをされるか分からない、でも本当だったらこんな良い話は二度とない。それに、俺には彼が人を騙すようには見えなかった。

「ふふ、行こっか」

彼の笑顔に目を細めながら青年の手を握った。



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