8 / 11
第8話 日常と休息
しおりを挟む
朝目覚めると、國彦は脱ぎ捨てていたジーンズを履き直した。
ラチカは未だ裸のまま眠っていたので、その身体に毛布を掛けてやる。
「暫くはゆっくりできるって言ってたか」
しょぼつく眼を擦り、洗面所で顔を洗う。
鏡を見るのは苦手だ。
その奥にアダムスーツを着ている自分を幻視することがあった。それが現実であったことを証明できないのに、戦いの記憶だけはありありと思い出せる。そんな歪さに、吐き気を催しそうになるからだ。
シャワーを浴びて上下共に着替え、ベッドに戻る。
ラチカは未だ眠っている。
國彦はホテルの内線でモーニングを頼み、脱ぎ散らかした上着も鞄にしまった。
自分達の関係を、正しく言い表わすならばなんであろう、などと煩わしいことを考えた。
仲間? 運命共同体? それとも──。
「阿呆らし」
そんなこと、言葉にする必要もないだろう。
もう一度で良いから、彼女に会いたい。本当に、それだけなのだ。
國彦は何となしにテレビを付けた。
朝から殺人があっただの、事故があって子供が轢かれただの、気の滅入るニュースをやっている。
人類を侵略せんとする、オルムは倒された。
だが、こうした毎日までが変わることはない。
「起きてたのか」
ラチカがむくりと起き上がる。
「朝食、頼んであるぞ」
「ああ、サンキュ」
ラチカは裸のままふらふらと冷蔵庫を開けて天然水のペットボトルを手に取ると、一気に飲みくだした。
「次はいつだ」
「あー……」
國彦が訊くと、ラチカは頭を掻いて暫く考える素振りを見せた。
「いつも言ってるけど、あたしの記憶はぼんやりしてるんだ」
「未来が変わった奴もいる」
「良いんだ。最初から、これはあたしのエゴだから。……あんたも飲む?」
ラチカは少しだけ中身の残っているペットボトルを國彦に差し出した。
國彦は首を横に振る。
「俺は良い」
「そ。次は、本当に先。一ヵ月くらい、何もない」
「珍しいな」
「かもね」
「またバイトでも探さねえとな」
こうした期間は國彦とラチカの二人で短期バイトをやることにしている。
当然というか、肉体労働メインだ。特にラチカの怪力は、何をするにもまあまあ役に立つ。
ただ──。
「たまにゃどっか遊び行くか」
「酒、あんたの奢りな」
「なんでだ。っていうかまず服着ろ」
國彦は床に落ちていた服をラチカに放り投げる。
ラチカはおかしそうに笑いながら、それを受け取った。
ラチカは未だ裸のまま眠っていたので、その身体に毛布を掛けてやる。
「暫くはゆっくりできるって言ってたか」
しょぼつく眼を擦り、洗面所で顔を洗う。
鏡を見るのは苦手だ。
その奥にアダムスーツを着ている自分を幻視することがあった。それが現実であったことを証明できないのに、戦いの記憶だけはありありと思い出せる。そんな歪さに、吐き気を催しそうになるからだ。
シャワーを浴びて上下共に着替え、ベッドに戻る。
ラチカは未だ眠っている。
國彦はホテルの内線でモーニングを頼み、脱ぎ散らかした上着も鞄にしまった。
自分達の関係を、正しく言い表わすならばなんであろう、などと煩わしいことを考えた。
仲間? 運命共同体? それとも──。
「阿呆らし」
そんなこと、言葉にする必要もないだろう。
もう一度で良いから、彼女に会いたい。本当に、それだけなのだ。
國彦は何となしにテレビを付けた。
朝から殺人があっただの、事故があって子供が轢かれただの、気の滅入るニュースをやっている。
人類を侵略せんとする、オルムは倒された。
だが、こうした毎日までが変わることはない。
「起きてたのか」
ラチカがむくりと起き上がる。
「朝食、頼んであるぞ」
「ああ、サンキュ」
ラチカは裸のままふらふらと冷蔵庫を開けて天然水のペットボトルを手に取ると、一気に飲みくだした。
「次はいつだ」
「あー……」
國彦が訊くと、ラチカは頭を掻いて暫く考える素振りを見せた。
「いつも言ってるけど、あたしの記憶はぼんやりしてるんだ」
「未来が変わった奴もいる」
「良いんだ。最初から、これはあたしのエゴだから。……あんたも飲む?」
ラチカは少しだけ中身の残っているペットボトルを國彦に差し出した。
國彦は首を横に振る。
「俺は良い」
「そ。次は、本当に先。一ヵ月くらい、何もない」
「珍しいな」
「かもね」
「またバイトでも探さねえとな」
こうした期間は國彦とラチカの二人で短期バイトをやることにしている。
当然というか、肉体労働メインだ。特にラチカの怪力は、何をするにもまあまあ役に立つ。
ただ──。
「たまにゃどっか遊び行くか」
「酒、あんたの奢りな」
「なんでだ。っていうかまず服着ろ」
國彦は床に落ちていた服をラチカに放り投げる。
ラチカはおかしそうに笑いながら、それを受け取った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる