やっぱ中身が大事でしょ?

速見 沙弥

文字の大きさ
6 / 11
第2章 新たな出会い

6

しおりを挟む
ドアをくぐると上の方についてるベルがカランコロンと来客を店内に知らせた。入口から一番近い位置にいた女性スタッフがこちらに気づく。

「いらっしゃい、って佳奈ちゃんじゃないのー。」
「なんでそんなにガッカリするんですか!早苗さん!」

早苗さんと呼ばれた女性は私たちよりも少し上の20代後半くらいの綺麗なお姉さんだった落ち着いた彼女とバーの雰囲気がマッチしている。

「こちらが言ってたお友達?」

ぼーっと見とれていると話を振られたのでとりあえず頷く。

「はじめまして、森山美紗と申します。急にお邪魔しちゃってすいません」

すると私が言った一言に彼女は吹き出した。

「やだ、美紗ちゃんってば。ここはバーなんだから急に来ることになるのは当たり前でしょ?友達の家じゃないしね。」
「それも・・・そうですね。」

間抜けすぎる私への早苗さんの指摘に思わず失笑する。初対面の人に向かって早速バカな印象を与えてしまったなあと思っていると彼女は口を開き言った。

「でも美紗ちゃんの律儀そうなところ結構私好きかも。」

フォローまで入れてくれる彼女に私もそういう早苗さん結構、いやかなりもう好きになりました。と思わず言っちゃいそうになりましたよ。

「もーふたりでラブラブしないで下さいよ、私もいるんですよ!」

テレテレした空気を戻したのは佳奈のふくれっ面だった


「あら、忘れてなんかいないわよ?わ・ざ・と。」
「いやもっとひどいよ!ちょっとー尚樹さーん、あなたの奥さん酷いですよー」

えーんとおおげさに佳奈が叫びながら呼びかけたのは少し奥にいた黒髪の爽やかそうな前髪を斜めに流した男性だった。

「大丈夫、大丈夫。早苗はいっつもそんなもんだから。佳奈ちゃんもそろそろなんとも思わなくなるって」
「あらそれは寂しいわね。いじりがいがなくなっちゃう。」

困ったように手を頬に当てる早苗さんだが表情はすごくにこやかである。軽く吹き出してしまい佳奈にじとっとした目で見られる。

「美紗まで笑わないでよー」
「ごめんごめん、なんかこんなにいじられてる佳奈新鮮だなっと思って」
「佳奈ちゃんはあなたといる時はこんな感じではないの?」

びっくりした顔をしてこちらを見る早苗さんに頷く。

「むしろ私がいじられてる方が多いです。」
「じゃあいつものやり返ししなくちゃね!」
「はい!今日はとことんからかってやります」

ぐっと二人で親指を立て合うといつの間にか早苗さんの隣に来ていた尚樹さんが笑い出した。

「いやー、さすが佳奈ちゃんのお友達。面白いね」
「でも今日からは私のお友達でもあるからね!」
「早苗は一言話せばみんなお友達タイプの人間だろ? 」
「失礼ね。ちゃんと話しかけるまでに見極めてるの!」

ぽんぽんテンポのいい会話を繰り返す二人に呆気に取られているとそんな私に気づいた佳奈が紹介してくれた。

「改めてこちらがお昼のカフェで店長をやってる木下早苗さんとバーの店長をやってる旦那さんの木下尚樹さん」
「よろしく」

尚樹さんが出してくれた手を握り握手を交わす。

「佳奈の会社の同僚で森山美紗です。よろしくお願いします」

そういえばと、周りをちらっと見るとまだ開店してから経っていないからか私たちしかお客さんはいないようだった。こんなに騒いでからだから手遅れだったけど周りのお客さんに迷惑をかけていなくて良かった、と、ほっとした。

「ここは少数精鋭のメンバーでやってるから店員さんも仲良くしてくれるんだ」

コソッと佳奈が耳打ちをしてきた。

「あ、今日はもう1人シフト入ってて・・・」

尚樹さんが奥に目をるとスタッフルームに続くドアから出てくる人影が見えた。

「おーい、サク!」

尚樹さんの声に気づいたのかこちらに顔を向けたのが遠目でも分かった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...