帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

文字の大きさ
30 / 53
仲間たちと挑戦

第30話 異世界の記憶

しおりを挟む
 ハヤトは深呼吸をして、記憶を辿り始めた。スタジオの空気が一瞬凝固したように感じる。

「約10年前、俺はある日突然、まばゆい光に包まれて……」

 ハヤトは言葉を選びながら語った。その声には懐かしさがあった。

「気がつけば見知らぬ世界にいた。そこで最初に出会ったのが」

 ハヤトがリリアのアバターに視線を向けると、その表情が柔らかくなった。彼の声のトーンも自然と優しくなる。

「リリアだった」

 そう言われたリリアのアバターも懐かしい記憶を辿るように目を細めた。彼女の瞳には過去の光景が映っているかのようだ。

「私は……とある儀式の担当者だった」

 彼女も言葉を選びながら話した。その慎重さには、何かを隠しているわけではなく、表現を探っている様子が窺える。大切な思い出を語るために。

「そして、その儀式によって現れたのがハヤト。予想していたのとは少し違った人が来て」

 彼女は含み笑いをした。その笑みには、当時の困惑と今の愛おしさが混ざり合っていた。

「最初は戸惑ったわ」

 ハヤトが一番最初に出会った仲間がリリアだった。冒険の始めから、仲間たちとの出会い。もう10年も前のことだから記憶も薄れている。だけど、はっきり覚えていることもある。それを思い出しながら、語り合う。

 莉々が求めていたのは、きっとこういう場所なんだろうとなとハヤトは理解した。異世界のことを隠すことなく語り合える場所。ずっと隠し続けるのは大変だから。

 自分が警備会社に就職して、全力で体を動かせる場所を求めたように。仲間たちと異世界のことを話し合える場所。仲間たちの心の拠り所になれるように。向こうの世界のことを忘れないために。

 城介はモニターの端でこれらの反応を分析するように目を走らせながら、ジョンのアバターも昔話に参加する。

「その頃、俺は王都の市場で情報屋として生きていた。勇者を召喚するっていう噂を耳にして、それを探っていた」

 ジョンのアバターは洗練された動きで、言葉に合わせて軽く肩をすくめる。その仕草には、情報屋だった彼の性格が表れていた。

「ジョンとの出会いも偶然だったな。俺は勇者として認めてもらうための試練を与えられて、古い遺跡に向かうことになった」

 ハヤトは過去を思い出すように視線を落とした。

「最初は、本当に色々と大変だったな。正直、怖かったよ」

 ハヤトは素直に認めた。

「何もわからない状態で、そんな場所へ行けって言われたんだから」
「でも、あなたは行った」

 リリアの声は静かに、しかし何かを確かめるように響いた。

「それが、私があなたを信じるきっかけになったの」

 彼女の言葉には、長い時を経ても色褪せない確信があった。

「俺も、偶然だが仲間として同行することになって、今まで関係が続いている」

 最初の冒険は、ハヤトとリリア、それからジョンの三人で。そんな会話をしている最中、小さなハプニングもあった。画面上のアバターが一瞬フリーズして、不自然な角度で固まってしまう。

「あれ?」
「モーションの追跡が一瞬途切れたみたいね」

 莉々が素早くキーボードを叩く。眉間にかすかな緊張の皺が寄るが、その場の対応は冷静そのもの。

「大丈夫、すぐに復旧するわ」

 一瞬の沈黙の後、アバターの動きが再び滑らかになった。急いで対処して、すぐに問題は解消された。

 コメント欄でも反応があった。

-リアルタイムで直したの?
-すごい技術力!
-一瞬だけだったね、全然気にならない
-むしろ生々しさが増した感じ

 ハヤトはなるべく問題には触れずに、会話を再開する。

「とにかく、ジョンと市場で出会った時に」
「そんなこともあったな」

 懐かしそうに応じるジョン。

「君の情報がなければ、俺たちは何度も危機に陥っていただろうね」

 ハヤトの言葉には、かつての苦難と仲間への感謝が込められていた。

 それから、セレスティアのアバターが優雅に頷いた。その仕草には気品があって、かつてのエルフの神官の面影を感じさせる。

「私とハヤトが出会ったのは、彼が負傷して森の神殿に運ばれてきた時ね」
「あの時は」

 ハヤトは言葉に詰まり、どこか遠くを見るような目をした。

「あの世界に召喚されて、しばらく時間が経った頃。戦いを重ねて運良く生き残ったが、慢心していた時期だった」

 その声には自省の念が滲んでいた。

「あれもこれも助けようとして、無謀という言葉がぴったりな状況だったわね」

 セレスティアは優しく微笑んだ。

「でも、その時のあなたの選択が、多くの者たちを救ったのも事実」

 彼女の言葉には、過去への肯定と受容が感じられた。

「ガレットと出会ったのは、それよりもっと後のことだった」

 ハヤトは話題を変えるように、別のアバターに視線を移した。ガレットのアバターは他の四人と比べて体格が良く、その存在感はスクリーンを通しても伝わってくる。

「そうだな」

 ガレットのアバターが深く頷いた。その低い声には、力強さの中に温もりが感じられる。

「あの戦いで、危機に瀕していた我々を助けてくれたお前たちを見て」

 ガレットがその時のことを思い出し、言葉を選びながら続けた。

「最初は人間なんて信じられなかったが、お前たちが戦う姿を見て、共に歩むことを決めたんだ」

 彼らは交互に語り、それぞれの視点から同じ出来事を思い出しながら話した。時には冗談を交えながら、時には真剣に、かつての冒険の記憶を紡いでいく。

 出会いの思い出を語っているだけで、あっという間に時間が過ぎていく。それだけ彼らの記憶は濃密だった。

「おっと、もうこんな時間だ」

 終わりの予定の時間になっていたことに気付くハヤト。コメント欄は熱気に満ちていた。

-このストーリー、めちゃくちゃ引き込まれる!
-妙なリアル感があるな
-キャラクター同士の絡みが自然すぎる
-アバターの完成度が高いからか、感情が伝わってくる
-それで、続きは? どうなった?

 莉々はコメントを見ながら小さく微笑んだ。彼女の願いは叶い始めていた。異世界での記憶を、この世界の人々と共有している。ハヤトの活躍を、多くの人が知ってくれている。まだまだ、彼の英雄譚は始まったばかりだ。

「とりあえず、今日の配信はここまで、ですね」

 まだまだ話足りない。心残りな気持ちを抱えながらも、莉々は締めくくりの言葉を述べた。コメント欄も反応する。

-えー、もっと聞きたい
-続きが気になる
-すごい話だった。のめり込んだ

 視聴者たちのコメント。楽しんでもらえたようで良かった。そう思うハヤトたち。

「続きは、次回の配信でお話ししましょう」

 ハヤトが優雅に一礼した。

「皆さん、今日は本当にありがとうございました」

 ハヤトが柔らかな笑顔で。

「ありがとうございます」

 セレスティアが穏やかに微笑み。

「またな」

 ジョンが軽く手を振って。

「また配信に遊びに来てくれ」

 ガレットが力強く頷く。

「待ってるね」

 そして、リリアが柔らかな笑顔で締めくくった。

 五人のアバターが次々と視聴者にお別れと感謝の言葉を述べ、ハヤトが配信終了のボタンを押した。そして、ほっと一息つくハヤト。

「ふぅ……」

 配信が終わった瞬間、彼らはそれぞれほっとした表情を見せた。緊張から解放されたように肩の力が抜ける。特にメインで喋っていたハヤトは椅子に深く身を沈めて、疲労と達成感が混ざった表情を浮かべていた。

「ごめんなさい。一瞬、モーションキャプチャーのシステムが不具合を起こしてしまって」

 莉々は申し訳なさそうに言った。彼女の完璧主義的な性格からすれば、小さなミスでも気にしてしまった。

「それは、仕方ないさ。すぐ対処できたし、大きな問題にならなくて良かった」

 ハヤトが励ますように言う。どんなに完璧に準備を完了したと思っても、そういうこともあるだろう。だから、仕方ない。

「そう、ですね」

 莉々は一瞬、悔しそうな表情を浮かべたが、すぐに決意の表情に変わった。その眼差しには、次への挑戦への意欲が燃えていた。

「次回までには完全に修正しておきます」

 ハヤトは莉々を信頼していた。彼女の真剣な目を見れば、次回までには必ず問題を解決するだろうことが分かる。それに、今回のトラブルも大きな問題にならなかったのは幸いだった。

「それにしても、予想以上の反応だったな」

 城介がタブレットを手に、データを確認していた。その表情には、満足感が浮かんでいる。

「視聴者のコメント、すごく温かかったわね」

 星華が感慨深げに言った。

「久しぶりに仲間と過去を振り返るのは……不思議な感覚だったわ。でも、この世界で私たちの物語を共有できるというのは、いいものね」
「ですね!」

 星華と莉々が頷き合っている。

「楽しかったな」

 剛も、モニターを見ながら満足そうに頷いていた。

 スタジオに拍手が沸き起こった。

「お疲れ様でした!」
「素晴らしかったです!」
「初回から大成功ですね!」

 スタッフたちが次々と労いの言葉をかけてくる。その表情には純粋な興奮と感動が浮かんでいた。

 視聴者も多く、ハヤトたちの話を興味を持ち聞いてくれて、コメント欄の反応も良かった。

 こうして、ハヤトたちの初配信は大成功のうちに終わった。かつて異世界で戦い抜いた彼らの物語は、現代の技術を通じて新たな命を吹き込まれ、多くの人々の心に届き始めたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...