帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

文字の大きさ
51 / 53
プロポーズ

第51話 日常デート

しおりを挟む
 朝の光が窓から差し込む休日の朝。二人は朝食を済ませて、出かける準備をする。同棲を始めてから数週間、休日でも朝から活発に動く二人の生活リズムはバッチリと合っていた。

「準備できた?」
「うん。行きましょう」

 ハヤトが尋ねると、今日は普段よりもおしゃれした服装の莉々が答える。最寄りの駅まで手を繋いで歩き、電車に乗り込む。休日の午前中だけど、車内は思ったよりも混んでいた。二人は自然と身を寄せ合う。

「そういえば、看板ってどのくらいの大きさかな」
「剛から聞いた話によりると、ビルの壁面を使った特大広告らしいよ」
「私たちのアバターが、そんなことになるなんて」

 二人は顔を寄せると、小声で話し合う。自分たちの配信で使用しているアバター。それが様々な場所に広告として展開していると聞いていた。今日は、その一つを見に行ってみよう、ということになった。

 電気街の駅に到着すると、独特の熱気が二人を包んだ。アニメやゲームの看板があちこちに掲げられ、コスプレした人々が普通に歩いている。若者たちの活気に満ちた声が、街中に響いていた。

「すごい活気ね」
「うん。話には色々と聞いているけれど、実際に来るとまた違うな」

 歩き始めてすぐ、様々な作品のキャラクターが描かれた看板が目に入る。有名な少年漫画、話題のアニメ、人気ゲームのキャラクターたち。その中を進んでいくと——

「あっ」
「ん?」
「ほら、あれ」
「おお」

 莉々が小声で知らせる。ハヤトも視線を向けると、そこにはビルの壁面を全て覆うほどの巨大な看板があった。

 ハヤトとリリア、ジョン、セレスティア、ガレットのアバターが堂々と描かれている。そのダイナミックな構図が道行く人々の目を引いていた。

「凄いな」

 ハヤトは思わず呟いた。異世界で命を懸けて戦っていた自分たちが、今やエンターテイナーとしてこんな場所に登場している。不思議な感覚だった。

「見て、写真撮ってる人たちがいる」

 莉々が指差す方向を見ると、確かに何人かがスマートフォンを看板に向けている。中には、ポーズを真似している若者もいた。

「本当に人気があるんだね」
「ああ。実感が湧いてくるな」

 しばらく看板を眺めた後、二人はアニメグッズを扱う店舗街へと向かった。周囲では、多くの人々が買い物を楽しんでいる。

「ここにフィギュアがあるはずよ」

 大型のホビーのコーナーに入ってみると、所狭しとフィギュアやプラモデルが並んでいる。莉々は目を輝かせて陳列棚を見て回った。

「えーと、Vtuberコーナーは......あった!」

 莉々が見つけたコーナーには、様々なVtuberのグッズが陳列されていた。そして。

「あれ? フィギュアがない……?」

 色々なフィギュアが置かれているけれど、自分たちのフィギュアは見当たらない。もしかして、ここでは売っていないのか。

「すみません」

 ハヤトが近くに居た店員に声をかける。

「異世界パーティーのフィギュアを探しているんですが」

 自分たちのことを聞くのは少し恥ずかしかったが、思い切って店員に聞いてみた。すると、すぐに答えが返ってきた。

「申し訳ございません。その商品は完売してしまって。次回入荷は来週の予定です」
「あ、そうですか。ありがとうございます」

 店員の説明に、二人は顔を見合わせた。

「完売......人気なんだね」
「凄いことだな」

 その後も二人は、他の店舗を回って自分たちのグッズを見て歩いた。アクリルスタンド、クリアファイル、缶バッジ。自分たちのキャラクターが様々な商品になっている。

 そして、彼らのグッズは公式のものだけではなかった。

「あ、見て。小説も出てるのね」

 『異世界パーティー 非公式ノベライズ』というタイトルの本を莉々が手に取る。それは同人作品のようだった。

「中身はどんな感じなんだろう」
「私たちの配信を元にしたストーリーみたい。へえ、結構売れてるのね」


 色々と見て回っていると、デートというより、まるで市場調査のような時間になってしまったが、二人とも楽しんでいた。自分たちの活動が多くの人に注目され、受け入れられていることを実感できる時間だった。
 
「ちょっと休憩しようか」
「そうね。喉も渇きました。休みましょう」

 近くのカフェに入り、窓際の席に座る。店内は落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした音楽が流れていた。莉々はストロベリーパフェを、ハヤトはアイスコーヒーを注文した。

「今日は色々と見れて楽しかった」
「うん。こんなに注目されているなんて、やっぱり不思議な気分だ」

 莉々がパフェをつつきながら言う。ハヤトも今日の感想を莉々に伝えた。

「私たちの本当の姿を知らないのよね、みんな」
「それでいいんだ。あの姿は、みんなの記憶にしっかりと刻まれているから。それを誇示したりする必要はないさ」

 ハヤトは莉々の手を優しく握った。

「今の生活も、悪くないだろ?」
「ええ、とても幸せよ」

 莉々は微笑みながら、ハヤトの手を握り返した。

 休憩を終えてカフェを出ると、夕方の柔らかい光が街を包んでいた。オレンジ色に染まる空が、一日の終わりを告げている。並んで歩いていた二人の前を、若者たちのグループが通り過ぎる。

「ねえ、見た? 異世界パーティーの看板!」
「うん、めっちゃデカかった!」
「ハヤトかっこいいよね~」
「私はリリア推し!」

 聞こえてきた会話に自分の名前が出てきて、ハヤトは思わずドキッとする。莉々と顔を見合わせ、小さく笑う。そのまま横を通り過ぎるが、当然気付かれない。

「気付かれなかったね」
「そうだな。やっぱり、アバターと実物は違うし」



 自宅のマンションに帰ってきて、二人はソファに座り、今日撮った写真を見返していた。大きな看板の前での記念写真、様々なグッズの写真。

「そういえば、SNSでも話題になってるみたい」

 莉々がスマートフォンを操作する。

「『今日電気街で異世界パーティーの看板見た!』『フィギュア売り切れてた(泣)』だって」
「ファンの人たちには感謝しないとな」
「うん。私たちを応援してくれているんだもの」

 窓の外では、都会の夜景が輝いている。異世界の勇者と賢者だった二人は、今や現代のエンターテイナーとして、そして何より愛し合う恋人として、新しい日々を歩んでいた。

「明日は配信の打ち合わせね」
「ああ。明日も頑張ろうか」

 二人の影が、窓に映る夜景に重なった。そんな幸せな日常が続いていく。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

俺の武器が最弱のブーメランだった件〜でも、レベルを上げたら強すぎた。なんか伝説作ってます!?〜

神伊 咲児
ファンタジー
守護武器とは、自分の中にあるエネルギーを司祭に具現化してもらって武器にするというもの。 世界は皆、自分だけの守護武器を持っていた。 剣聖に憧れた主人公マワル・ヤイバーン。 しかし、守護武器の認定式で具現化した武器は小さなブーメランだった。 ブーメランは最弱武器。 みんなに笑われたマワルはブーメランで最強になることを決意する。 冒険者になったマワルは初日から快進撃が続く。 そんな評判をよく思わないのが2人の冒険者。立派な剣の守護武器の持ち主ケンゼランドと槍を守護武器とするヤーリーだった。 2人はマワルを陥れる為に色々と工作するが、その行動はことごとく失敗。その度に苦水を飲まされるのであった。 マワルはドンドン強くなり! いい仲間に巡り会える! 一方、ケンゼランドとヤーリーにはざまぁ展開が待ち受ける! 攻撃方法もざまぁ展開もブーメラン。 痛快ブーメラン無双冒険譚!! 他サイトにも掲載していた物をアルファポリス用に改稿いたしました。 全37話、10万字程度。

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...