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第4話
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「婚約破棄が成立したので、両家の協力関係もこれで断ち切りですね」
「はぁ?」
パークス男爵家とダウズウェル男爵家の協力関係は、婚約破棄によって終わった。急にそんな話をされても、納得できないとイアンは抗う。
「お前は何を言っている? ただの令嬢が、そんなこと出来るわけないだろッ!」
「出来ますよ。一年間、学園で遊んで領地に戻ってこなかった貴方は知らないみたいですが、私はパークス男爵家当主としての権限を委譲されましたから。色々と決める権利を持っているのですよ」
「なんだよそれ。僕は聞いてないぞ!」
優秀だったシエラの働きが認められて、一年ほど前にパークス男爵家の当主が彼女に権限を委譲していた。だからシエラは、婚約を破棄することが出来る立場だった。
「協力関係は無くなったので、ダウズウェル領に派遣していた技術者や労働者など、全ての人員を引き揚げさせます。それから、商会も撤退させるので」
「ふん! 脅しているつもりか? そんなことをされても、ダウズウェル男爵家は、困らないさ!」
今後の動きについて軽く説明するシエラの言葉を聞いて、自信満々に答えたイアンだった。そんな脅しに屈しないと、得意げに笑っている。
困惑したのは、シエラの方。
「本気で、困らないと思っているの?」
「当然だ。昔のダウズウェル領だったら困っていたかもしれないが、今は、王国でも上位に並ぶぐらい領地は発展しているのに。パークス男爵家が派遣した奴らなんて、引き揚げても困らないさ」
「貴方、本当に遊び呆けていたのね。学園に入学する前も、自分の家の領地を気にもしていなかったようだけど」
確かにイアンの言う通り、現在のダウズウェル領は発展している。しかし、それが維持できているのは誰のお陰なのか。彼は全く理解していなかった。それを理解した時には、全てが手遅れになっているだろう。
だから、シエラは呆れた。自分の状況を全然理解していない彼の様子に。
「今のダウズウェル領があるのは、私やパークス男爵家の協力があったからなのに。本当に、協力関係を断ち切っても良いって言うのね?」
「ハッ! 何を馬鹿なこと。お前みたいな若い女が協力したから、ダウズウェル領が発展したって? 一体、どんな妄想だ?」
もちろん、自分の力だけで領地を発展させてきたなんて、シエラは思っていない。だけど、自分の力があったからこそダウズウェル領は豊かになったと、今の豊かさを維持できているんだと、自信を持って言えるぐらいには貢献してきた。
イアンは、シエラの言葉を信じようとはしない。馬鹿にしたように笑うだけ。
「そうですか。まぁ、信じないなら別にいいです。数カ月後、気付くでしょうから。その時になって後悔しなさい」
「ふん。後悔するのは、お前の方だ」
最後までシエラの言葉を信じないで、強気で返すイアン。
「それでは、ごきげんよう」
「あ、おい。待て!」
婚約を破棄するという目的は達成した。それで満足したシエラは、その場から立ち去る。後ろから怒鳴りつけるイアンの声を無視して、学園の中庭を後にした。
「はぁ?」
パークス男爵家とダウズウェル男爵家の協力関係は、婚約破棄によって終わった。急にそんな話をされても、納得できないとイアンは抗う。
「お前は何を言っている? ただの令嬢が、そんなこと出来るわけないだろッ!」
「出来ますよ。一年間、学園で遊んで領地に戻ってこなかった貴方は知らないみたいですが、私はパークス男爵家当主としての権限を委譲されましたから。色々と決める権利を持っているのですよ」
「なんだよそれ。僕は聞いてないぞ!」
優秀だったシエラの働きが認められて、一年ほど前にパークス男爵家の当主が彼女に権限を委譲していた。だからシエラは、婚約を破棄することが出来る立場だった。
「協力関係は無くなったので、ダウズウェル領に派遣していた技術者や労働者など、全ての人員を引き揚げさせます。それから、商会も撤退させるので」
「ふん! 脅しているつもりか? そんなことをされても、ダウズウェル男爵家は、困らないさ!」
今後の動きについて軽く説明するシエラの言葉を聞いて、自信満々に答えたイアンだった。そんな脅しに屈しないと、得意げに笑っている。
困惑したのは、シエラの方。
「本気で、困らないと思っているの?」
「当然だ。昔のダウズウェル領だったら困っていたかもしれないが、今は、王国でも上位に並ぶぐらい領地は発展しているのに。パークス男爵家が派遣した奴らなんて、引き揚げても困らないさ」
「貴方、本当に遊び呆けていたのね。学園に入学する前も、自分の家の領地を気にもしていなかったようだけど」
確かにイアンの言う通り、現在のダウズウェル領は発展している。しかし、それが維持できているのは誰のお陰なのか。彼は全く理解していなかった。それを理解した時には、全てが手遅れになっているだろう。
だから、シエラは呆れた。自分の状況を全然理解していない彼の様子に。
「今のダウズウェル領があるのは、私やパークス男爵家の協力があったからなのに。本当に、協力関係を断ち切っても良いって言うのね?」
「ハッ! 何を馬鹿なこと。お前みたいな若い女が協力したから、ダウズウェル領が発展したって? 一体、どんな妄想だ?」
もちろん、自分の力だけで領地を発展させてきたなんて、シエラは思っていない。だけど、自分の力があったからこそダウズウェル領は豊かになったと、今の豊かさを維持できているんだと、自信を持って言えるぐらいには貢献してきた。
イアンは、シエラの言葉を信じようとはしない。馬鹿にしたように笑うだけ。
「そうですか。まぁ、信じないなら別にいいです。数カ月後、気付くでしょうから。その時になって後悔しなさい」
「ふん。後悔するのは、お前の方だ」
最後までシエラの言葉を信じないで、強気で返すイアン。
「それでは、ごきげんよう」
「あ、おい。待て!」
婚約を破棄するという目的は達成した。それで満足したシエラは、その場から立ち去る。後ろから怒鳴りつけるイアンの声を無視して、学園の中庭を後にした。
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