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第21話 切り札 ※マティアス視点
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「ようこそ、マティアス」
「おはよう、クリスティーナ」
クリスティーナの屋敷を訪ねてみると、思っていた以上に彼女は元気だった。いつものように、優しげな微笑みを浮かべて僕を出迎えてくれる。ショックを受けてなくて、本当に良かったと思った。
それから、いつものように彼女と商売の話。
今まで進めてきた事業をどうするのか。予定を変更するのか、それとも中止にするのか。意見を出し合って、計画を修正していく。
それから数日後、一気に状況が激変する。アーヴァイン王子の命令により、王都のあちこちで、様々な計画が強制的に中止させられた。
多くの取引がキャンセルされて、大打撃を受けた商会も多数。短期間で、これほど状況が一変するなんて驚いた。これから、どんどん悪くなっていくだろう。
王都の衰退は、止めることは不可能に近い。
耳が早い商人は、ロアリルダ王国での取引を諦めて、他国へ移る準備を始めているようだ。僕たちの商会も、全ての取引を終了。別の国へ移る準備を始めた。この国に居ても、もう意味がないから。
もともと、僕たちは世界各地を旅しながら商売してきた。これほど長くロアリルダ王国に留まる予定ではなかった。だから商店を畳んで旅立つ準備は、すぐに整った。今すぐに旅立つことが出来るぐらい。
気がかりなのは、クリスティーナのこと。彼女は、どうするつもりなのか。予想はついている。おそらく、ロアリルダ王国が崩壊する未来を予測して、民を助けたいと考えるだろうな。
民を助けるためには、どうすればいいのか。王国の混乱に巻き込まれないように、王都で生活している人達を移住させる。
だとすると移住先と、移動手段を考える必要がある。
移住先については、いくつか候補がある。僕の友人が、とある土地を開拓するため多くの人材を求めていた。そこに連れていけば、仕事はある。生活できるように、僕たちがサポートする。移住した皆で、新たな街を作り上げる。そうすれば、大丈夫なはずだ。
移動に関しては、数万人を三ヶ月ほど飢えさせないだけの食料を運良く在庫に用意してある。それを提供すれば、何の問題もない。
この食料は、僕の特殊能力で取り出しが自由だった。だから、移動の計画を立てる必要がない。ただ、皆で目的地に向かうだけ。こんな無茶なことが出来るのは、特殊能力のおかげ。クリスティーナにも教えていない、僕の切り札だ。特別な能力があるから、道中での食料の問題は心配なくなる。
とにかく、大勢の民を連れて移住することが可能だ。これで、彼女の求める方法を提示できるはず。
民の問題を解決するために、クリスティーナが僕に会いに来るのを待つ。そして、僕の予想した通りに彼女はやって来た。民を助けたいと、協力を求められた。
僕は、彼女のお願いを聞き入れた。
王国の混乱に巻き込まれないように、移住を希望する人たちを連れて行く。そこで、住む家と仕事を用意する。生活できるようにサポートする。それが、彼女の求めることだろう。それを、僕は提供することが可能。
「その代わり」
「……?」
クリスティーナに協力する。その対価を求めようとして、僕は迷ってしまう。考え込んでしまい、口を閉ざした。彼女が不思議そうな目で、僕を見てくる。
どう答えるべきなのか。
クリスティーナに結婚してほしい、と正直に言ってみようかと思った。けれども、彼女の気持ちが分からない。僕と彼女は、仲良くしている。だけど、それが恋愛感情なのか。つい最近まで婚約相手が居た彼女が、僕のことをどう思っているのか。急に言って、結婚するのは嫌だと言われないだろうか。自信がなかった。
それに、婚約破棄された直後に結婚を申し込むなんて、取引の対価として結婚してほしいと言うなんて、不誠実だと思われたら最悪だろう。
だから、その場で結婚を申し込むことは止めておいた。タイミングは今じゃない。
とりあえず僕の生まれ故郷まで一緒に行ってもらう。そこで両親に会ってもらい、結婚の話をする。それまでに彼女の気持ちを確認して、距離を縮めておく。
「おはよう、クリスティーナ」
クリスティーナの屋敷を訪ねてみると、思っていた以上に彼女は元気だった。いつものように、優しげな微笑みを浮かべて僕を出迎えてくれる。ショックを受けてなくて、本当に良かったと思った。
それから、いつものように彼女と商売の話。
今まで進めてきた事業をどうするのか。予定を変更するのか、それとも中止にするのか。意見を出し合って、計画を修正していく。
それから数日後、一気に状況が激変する。アーヴァイン王子の命令により、王都のあちこちで、様々な計画が強制的に中止させられた。
多くの取引がキャンセルされて、大打撃を受けた商会も多数。短期間で、これほど状況が一変するなんて驚いた。これから、どんどん悪くなっていくだろう。
王都の衰退は、止めることは不可能に近い。
耳が早い商人は、ロアリルダ王国での取引を諦めて、他国へ移る準備を始めているようだ。僕たちの商会も、全ての取引を終了。別の国へ移る準備を始めた。この国に居ても、もう意味がないから。
もともと、僕たちは世界各地を旅しながら商売してきた。これほど長くロアリルダ王国に留まる予定ではなかった。だから商店を畳んで旅立つ準備は、すぐに整った。今すぐに旅立つことが出来るぐらい。
気がかりなのは、クリスティーナのこと。彼女は、どうするつもりなのか。予想はついている。おそらく、ロアリルダ王国が崩壊する未来を予測して、民を助けたいと考えるだろうな。
民を助けるためには、どうすればいいのか。王国の混乱に巻き込まれないように、王都で生活している人達を移住させる。
だとすると移住先と、移動手段を考える必要がある。
移住先については、いくつか候補がある。僕の友人が、とある土地を開拓するため多くの人材を求めていた。そこに連れていけば、仕事はある。生活できるように、僕たちがサポートする。移住した皆で、新たな街を作り上げる。そうすれば、大丈夫なはずだ。
移動に関しては、数万人を三ヶ月ほど飢えさせないだけの食料を運良く在庫に用意してある。それを提供すれば、何の問題もない。
この食料は、僕の特殊能力で取り出しが自由だった。だから、移動の計画を立てる必要がない。ただ、皆で目的地に向かうだけ。こんな無茶なことが出来るのは、特殊能力のおかげ。クリスティーナにも教えていない、僕の切り札だ。特別な能力があるから、道中での食料の問題は心配なくなる。
とにかく、大勢の民を連れて移住することが可能だ。これで、彼女の求める方法を提示できるはず。
民の問題を解決するために、クリスティーナが僕に会いに来るのを待つ。そして、僕の予想した通りに彼女はやって来た。民を助けたいと、協力を求められた。
僕は、彼女のお願いを聞き入れた。
王国の混乱に巻き込まれないように、移住を希望する人たちを連れて行く。そこで、住む家と仕事を用意する。生活できるようにサポートする。それが、彼女の求めることだろう。それを、僕は提供することが可能。
「その代わり」
「……?」
クリスティーナに協力する。その対価を求めようとして、僕は迷ってしまう。考え込んでしまい、口を閉ざした。彼女が不思議そうな目で、僕を見てくる。
どう答えるべきなのか。
クリスティーナに結婚してほしい、と正直に言ってみようかと思った。けれども、彼女の気持ちが分からない。僕と彼女は、仲良くしている。だけど、それが恋愛感情なのか。つい最近まで婚約相手が居た彼女が、僕のことをどう思っているのか。急に言って、結婚するのは嫌だと言われないだろうか。自信がなかった。
それに、婚約破棄された直後に結婚を申し込むなんて、取引の対価として結婚してほしいと言うなんて、不誠実だと思われたら最悪だろう。
だから、その場で結婚を申し込むことは止めておいた。タイミングは今じゃない。
とりあえず僕の生まれ故郷まで一緒に行ってもらう。そこで両親に会ってもらい、結婚の話をする。それまでに彼女の気持ちを確認して、距離を縮めておく。
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