私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~

キョウキョウ

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第10話 ギクシャクした生活

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 スタンレイ辺境伯であるブレイク様との最初の出会いを終えると、私は彼の屋敷にある一室へ案内された。

「この部屋は、貴女の自由に使って下さい」
「ありがとうございます」
「それでは、失礼します」
「あっ」

 案内を終えると、すぐに彼は立ち去ってしまった。1人残されて、寂しい気持ちになる。やっぱり、最初の出会いがダメだった。でも、これから仲良くなれたらいい。

 こうして、ブレイク様の屋敷での生活が始まった。

 その部屋で自由に過ごせるように用意してもらった立派なお部屋。生活を世話してくれるメイドを何人か付けてもらい、何不自由ない生活を送れるようにしてくれた。王都で暮らしていた頃と比べても、とても良い待遇。心休まる日々を過ごせるぐらい過保護に扱ってくれた。

 辺境の地へ送られた時には、もっと酷い暮らしを予想していた。私の予想していたことは、全く外れていた。大事にしてくれるのは嬉しい。

 だけど、心配もある。



 私が屋敷に到着してから1週間ほど過ぎていた。朝食の時間。一緒に食事していたブレイク様に話しかける。

「あ、あの。ブレイク様……」

 彼の顔を直視は出来なくて、少し視線が斜め下に向かったままで。失礼な行為だと分かっているけれど、恥ずかしくて目を合わせることが出来ない。そんな私に、彼は答える。

「すまない。仕事が忙しくて、君と話している時間が」
「そ、そうですか……。申し訳ありません」
「こちらこそ、すまない」

 そう言って、いつもと同じように会話を断られる。仕事で忙しいというのは本当だろう。広大な領地を管理するなんて、きっと大変なんだと思う。でも、何度も会話を断られ続けると、他にも理由があると思ってしまう。私と会話したくない理由が。

 だとしても、彼の邪魔は出来ない。私は黙って食事を続けるしかない。すぐ食事を終えたブレイク様は、私を一人残して足早に去っていった。

 きっと私は、避けられているのだろう。最初の出会いから大失敗したから。失礼で変な女だと思われているのだろうか。そんな変な女とは、関わりたくない。厄介だと思われているかもしれない。

 そもそも私は王子との婚約を破棄されて、押し付けられるように辺境伯のもとへと送られてきた。厄介だと思われていても仕方ない。急に見知らぬ女と結婚しろと言われて、彼は迷惑だと思ったはず。

 もしかしたら、ブレイク様には他に愛しい相手が居るのかもしれない。

 そうだとしたら、本当に申し訳ないことをした。恋人が居るのか居ないの、それも知らない。彼に恋人がいると思っているのは、私の早とちりかもしれない。そうだといいのに。

 ちゃんと確認しないといけない。

 このまま何も変わらなければ、ブレイク様は不幸なまま生きることになるだろう。私は、彼の負担になる日々が続くだけ。どうにかして決着をつけないといけない。

 何も話し合わず、微妙な距離感を保ちながら暮らしていくなんて駄目ね。ちゃんと話し合わないと、何も変わらない。

 ここに来る途中で出会ったお婆さんとの約束もある。ブレイク様を傷つけないように、私は最大限の努力をすると言った。その約束を守らないといけない。

 それに私は、もっとブレイク様とお話したい。愛しい相手が居ないのならば、私は立候補したい。彼の妻になって、支えてあげたい。今まで生きてきた中で感じたことのなかった感情。これが初恋なのかもしれない。

 今まで自分の感情を押し殺して、相手を優先することが多かった。だけど今、私は自分の感情を優先して動きたい。スタンレイ様だから、そうしたいと思えたの。彼のおかげ。

 その感情を、素直に伝える。ブレイク様のような素敵な男性と運良く巡り合って、一緒になれた。その嬉しさ。このチャンスを絶対に逃したくない。他の誰かに奪われたくない。それが私の本音だった。

 自分の気持ちを再確認した私は、覚悟を決めるとスタンレイ様が居る部屋に直接、会いに行った。決着をつけるために。

 震える手でドアをノックして、中に入る許可を求める。

「ブレイク様、お話したいことがあります」
「……どうぞ」

 しばらく間を置いてから、ブレイク様は入室を許可してくれた。
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