私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~

キョウキョウ

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第11話 覚悟を決めて

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「ブレイク様、お話したいことがあります」

 部屋の中に入って、彼を見ながら改めて言う。すると彼は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに申し訳ないという表情で答えた。

「すまない。まだ、仕事が残っているから。後にしてくれないか」

 その言葉を聞くと、いつもは邪魔しないように引き下がっていた。だけど、今日は覚悟を決めて本気で話し合う。ここで、引き下がることは出来ない。

 ブレイク様に邪魔だと思われて、嫌われてしまうかもしれない。だけど、このまま何もしなければ変わらないままだから。

「少しだけでも……。お願いします」
「……わかったよ。どうしたんだい?」

 ブレイク様は諦めたように息を吐くと、私と向き合ってくれた。そんな凛々しい顔で見つめられると、心臓が高鳴ってしまう。

 私は自分の気持ちを伝えるために、勇気を振り絞った。ブレイク様の目を真っ直ぐ見つめる。そして、はっきりと自分の考えを口に出した。

「ブレイク様、私にチャンスをください!」
「どういう意味だい? チャンスって」

 ブレイク様は困惑していたけど、構わず続ける。今を逃したら、きっとこの想いを伝える機会はないと思うから。

「私が、ブレイク様に認めてもらえるよう頑張ります! だから、どうか私を見てください!」

 そう言って頭を下げると、ブレイク様は何も言わなくなった。

 沈黙が流れる中、私は不安になって恐る恐る顔を上げる。すると、そこには真剣な表情のブレイク様がいた。なんて素敵な顔なのかしら。ずっと見ていたくなるわ。

 でも、どうして黙っているのかしら? 面倒な女だと、嫌われてしまったかしら。そんな事になったら、私は。

 悪い予感ばかり浮かんできて、頭が混乱してきた。嫌わないでほしいという思いを込めて、必死に訴える。

「あの、ブレイクさ―――」
「すまなかった。君の気持ちを疑って、どのように君と接すればいいか悩んでいた。チャンスをくれとお願いするのは、むしろ俺の方だ」

 えっ!? それってつまり……私のことを意識してくれていたってことよね!? 嬉しい! 凄く嬉しいッ!! 私は舞い上がりそうになる心を必死に抑えて、冷静を装う。これ以上、品のない女と思われたくないもの。

「ブレイク様……。では、これからも私と一緒にいてくださるんですね?」
「ああ、もちろんだ。君が俺を嫌いになるまで、一緒にいる。俺も、レティシア嬢に認められるよう頑張るつもりだ」

 ブレイク様は微笑みながら優しい声で答えてくれた。その笑顔だけで胸がいっぱいになる。やっぱり、私はブレイク様が好きなんだわ。この気持ちは間違いない。

 その顔が大好きだけれど、それ以外に性格も大好き。優しくて頼りがいがあって、領民に愛されている理由が分かる気がした。

 本当に素敵な人だわ。だからこそ、他の女性には渡したくない。

「ブレイク様、一つだけお願いがあります」
「なんだい?」
「私以外の女性には、あまり愛想よくし過ぎないで下さい」
「今まで女性に愛想よくしても、怖がられてきたんだがなぁ」

 困ったように笑うブレイク様を見て、怖がるなんてもったいないと思った。こんなにも素敵だというのに。きっと皆は、彼の魅力に気づいていないのでしょうね。それなら、私が独占させてもらう。でも、彼を束縛するのはダメだわ。

 嫉妬してしまう。だけど、ブレイク様も仕事しなければならない。部下や領民達と協力し合って、領地を良くしていく。その時のコミュニケーションに笑顔は必要だと思うから、愛想よくするなと言われたら困ってしまうだろう。私は、深く反省した。

「ごめんなさい、ワガママを言ってしまいました」
「わかった。君以外の女性と、親しくなりすぎないように気をつけよう」

 私の不安を理解して、そんな約束をしてくれた。嬉しくて思わず笑みを浮かべると、ブレイク様も嬉しそうに笑った。その顔を見ているだけで、私は幸せになれる。

 ちゃんと話せるようになったら、もう我慢できないかもしれない……。
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