奪った後で、後悔するのはあなたです~私から婚約相手を奪って喜ぶ妹は無能だった件について~

キョウキョウ

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第5話 罠にハマる男※ロデリック視点

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 セラフィナが卑怯な女であることが判明した。

 正直に言えば、前から彼女のことはあまり気に入っていなかった。優秀で、気楽に付き合えない相手。社交界での評価も高い。そんな相手が婚約者だったから、一緒にいるだけで気が滅入る。いつかは結婚して、セラフィナと一生を共にする。そんな将来が、あまり想像できなかった。考えると、息が詰まりそうだった。

 妹のイザベラは、セラフィナとは対照的だった。姉とは違って、可愛らしくて素直な女の子。セラフィナの完璧主義的な態度と比べると、イザベラの方がずっと一緒にいて楽そうだった。姉ではなく、妹の方が婚約相手になってくれていたら良かったのにと、口には出さずに何度も思ったことがある。

 そんなイザベラと仲が深まったきっかけは、姉のセラフィナのことだった。

「ロデリック様、少しお時間をいただけませんか? お姉様のことで、どうしても相談したいことがあるんです」

 ある日の午後、イザベラの方から二人きりで話がしたいと言ってきた。彼女の表情は深刻で、何か重大な秘密を打ち明けようとしているように見えた。俺たちは人目につかない庭園の東屋で、向かい合った。

 そこで聞いた話に、俺は驚愕した。

「実は……お姉様が、私の功績を横取りしているんです」
「何だって?」

 思わず声が大きくなった。どういう意味なのか、詳しく話を聞く必要がある。

「パーティーのことで姉から相談されて、思ったことをお話してみたら、実は勝手にアイデアを使われていたんです。その後も、本当の発案者の名前は表には出さないで自分の功績として誇っていました。世間での評価も高いですが……それは、本来私が受けるべきものなんです」

 イザベラは涙ぐみながら、悲しそうな表情で語った。その表情は、あまりにも痛々しくて本気に見えた。嘘を言っているようには見えない。演技でこんな表情はできないだろう。

 そして、それが事実なのであれば、とんでもないこと。姉が妹の功績を奪っていたなんて。

 だけど確かに、セラフィナならそういうことをする可能性があるかもしれない。実は裏で汚い手を使っていたとしても、不思議ではない。イザベラの話を聞いて、そう直感した。ありえそう、だと。

「でも、この事実を証明する方法がないんです。お姉様は社交界で高い評価を受けていますから、私が本当のことを言っても、嘘つき呼ばわりされるかもしれません。逆に私が悪者にされる可能性もあります。だから、これはロデリック様にしか相談できないんです。私が信じられるのは、貴方だけです……」

 彼女の瞳から涙が零れ落ちた。その姿を見て、俺の心は決まった。こんなに真剣な表情で訴えているのだから。ならば、本当にセラフィナが妹から功績を奪っていたのか? そこまでする女だったなんて、気づかなかった。

「分かった。事実を証明するために、君に協力しよう。イザベラ、君は一人じゃない」

 俺はイザベラの手を取って、協力することを約束した。そして、セラフィナの動向を密かに調査し始めた。

 だが、セラフィナはそれらしい証拠を出さない。行動に怪しさはない。相変わらず有能そうに振る舞っているし、自分の考えでパーティーを運営しているようにも見える。会議でも的確な指示を出しているし、スタッフたちからの信頼も厚い。少しだけ、イザベラの話は本当なのかを疑い始めた時——



「また姉が、私にアドバイスを求めてきたんです」

 ある日、イザベラが悲しそうに、しかしどこか興奮した様子で言った。

「今度の大きな社交パーティーについてです。『どう思う?』なんて優しい顔で聞いてくるんです。私は思ったことを言いました。するとお姉様は、私の話を聞き終えると満足そうに去っていきました。私のアイデアを利用するつもりなんです。そしてまた、自分の手柄にするつもりだと思います」

 そういえば、今度大きな社交パーティーを開催する予定がある。セラフィナが中心となって指揮する。とても大事なパーティーだと彼女本人が力説していた。それが成功すれば、ヴァンデルディング家の名声が高まると。

「きっとお姉様は、今回こんな装飾を選びますわ。白と金の組み合わせで、バラとカスミソウを使って」
「なぜ、そう断言できる?」
「だって、これは私が少し前に考えて、姉に話してしまったアイデアですもの。お姉様は昔から私の真似ばかりしますから。今回も絶対に使うはずです」

 それから、他にも色々と話を聞いた。料理の選定、音楽の手配。イザベラは具体的に予想を語った。それが本当であれば、当日確認できるだろう。

 本当に、妹のアイデアを盗んでいたのであれば、彼女との婚約関係を慎重に見直す必要がある。いや、見直すどころか、破棄すべきかもしれない。そう考えた俺は、万が一のための準備を進めた。



 そして、パーティー当日が訪れる。

 会場を見回すと、イザベラが言った通りの装飾、料理、音楽。全てが彼女の予想通りだった。

「なるほど……、イザベラの言っていたことは本当だったんだ!」

 俺は確信した。本当にイザベラのアイデアを自分のものにして利用していたのか! 自分の目で見て確かめた。もう疑いようがない。これは偶然ではありえない。

 こうして俺は確信を持って、セラフィナに婚約破棄を告げた。これは正しい行動だ。間違っているのは彼女の方である。その事実を、社交界の皆にも知ってもらう必要がある。だからこそ、セラフィナが逃げ出せないこの場で、公開の場で断罪する。そうする必要があった。真実は白日の下に晒されるべきだから。

 真実を明らかにするために勇気を持って協力してくれたイザベラ。彼女にも何か恩恵が必要だ。いや、恩恵どころか、彼女こそが本当に有能な女性なのだ。イザベラの実力と発想力があれば、これからは彼女がパーティーを取り仕切ってくれたら良い。安心して任せられる人物だ。可愛くて、素直で、そして才能もある——完璧な女性じゃないか。

 だから俺は、彼女に求婚した。それを、イザベラも嬉しそうに受け入れてくれた。
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