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第25話 計画の承認
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「なるほど……君の言う通りだ」
その声には、確信が込められていた。
「変わる必要はない。土台は軍人貴族のまま。ただ、見せ方を工夫すればいい。そういうことか」
「はい」
私は、ホッと安堵の息を吐いた。理解してもらえた。納得してもらえた。私の考えが、ちゃんと伝わった。その事実が実感として湧いてくる。
マキシミリアン様は、もう一度資料を見つめた。今度は、先ほどとは違う表情で。慎重な吟味の目ではなく。期待の色を浮かべながら。
「これなら、軍人たちも受け入れるだろう。居心地の悪さを感じることもなさそうだ」
彼は、私の描いたスケッチを一つ一つ確認しながら続けた。実際の様子をイメージしてくれているのかもしれない。
「むしろ、『これは良い』と感じてくれるかもしれない。自分たちの文化が否定されるのではなく、より良い形で示されるのだと。そう理解してくれるはずだ」
マキシミリアン様の声には、確信があった。彼も、大丈夫だと判断してくれている。
「ありがとうございます」
「いや、感謝するのは俺の方だ。俺の望んでいたこと。具体的な方法を君が言葉にしてくれて、形にしてくれた」
マキシミリアン様は、真っ直ぐに私を見つめた。
「君がリーベンフェルト家に来てくれて、本当に良かった。君でなければ、この計画は生まれなかった。俺たちだけでは、絶対に思いつかなかった。この計画で進めてくれ。君なら、必ず成功させられる。俺は、君を信じている」
その言葉には、迷いがなかった。信じてくれている。私の実力を。私という人間を。
「それで」
マキシミリアン様が、現実的な話題に移る。彼の表情が、再び真剣なものに戻った。執務モードへの切り替え。
「予算は、これで足りるのか?」
何度も計算を繰り返して、無駄を削ぎ落として、それでも必要なものは確保して。そうやって算出した金額。とはいえ、まだ計画段階での概算でしかない。そのことも説明しながら、予算について話し合った。
「なるほど。今までの予算よりも少し多いが……」
彼は、少し考え込むような表情を浮かべた。
「聞いた話によると、文官貴族のパーティーの予算は、これの何倍もかかると聞く。君が見慣れたものと比べて、この予算で本当に足りるのか? 無理していないか?」
その言葉には、心配の色が滲んでいた。私が遠慮して、本当に必要な予算を削っているのではないかと。そう懸念してくれている。
「はい。私がこれまでに開催してきたパーティーの予算は、おっしゃる通りに金額が必要でした。ですが、今のところの計画では、その金額で間違いないと考えます」
予算案の中の項目を、一つ一つ指さしながら説明する。
「もちろん、想定外の状況で予算が必要になる可能性もありますが」
「まず、無駄な要素を排除しました。派手な装飾は減らし、必要なものを厳選していきます。種類を減らしても満足度は下がりません。むしろ、一つ一つの質を上げられます。妥協しないで、工夫していく予定です」
色々とアイデアを出して、試して、選んでいく。より良い方法を、常に模索し続ける。
「リーベンフェルト家の資金を預かる以上、一金貨たりとも無駄にはしません」
私は、真剣な表情できっぱりと宣言した。限られた予算の中で、最大限の効果を引き出すことを目指す。
「わかった」
私の説明を聞いて、マキシミリアン様は満足そうに頷いた。
「この予算で進めてくれ。だが、もし必要なら追加も惜しまない。遠慮せず、何でも言ってくれ」
その言葉に、私は深く頭を下げた。説明し終えた。
「ありがとうございます。必ず、期待に応えてみせます」
そう言いながらも、胸の奥に小さな不安があった。新しいことへの挑戦。それに対する不安。それが、少しずつ大きくなっていく。
計画は承認された。予算も確保された。準備は整った。あとは、実行するだけ。
でも――。
もし、失敗したら?
私は、躊躇いながらも口を開いた。これを言ってもいいものか。私が提案したのに、不安を抱えているなんて。でも、この不安を隠しておくべきではない。そう思ったから、隠さずに今の気持ちを彼に伝える。
「ただ……。一つだけ、懸念があります」
マキシミリアン様が、私の顔を見つめた。
「何だ?」
「もし、どちらからも受け入れられなかったら……」
その時のことを想像して、声が、わずかに震えた。喉の奥が、キュッと締め付けられるような感覚。こんな事を話してしまって、もし計画が中止になってしまったら。
「文官貴族の方々が、『中途半端だ』と思ってしまったら。軍人貴族の方々が、『変わってしまった』と違和感を持ってしまったら。両方から、拒絶されてしまったら」
不安が、言葉になって溢れ出す。完璧な計画を立てたつもりだった。計画を考える段階で、リスクを潰してきたつもりだった。
だけど、実際にやってみなければわからない。頭の中で考えただけでは、本当に成功するかどうかなんて、誰にもわからない。失敗する可能性は、ゼロではない。
失敗してしまったら。リーベンフェルト家に迷惑をかけてしまう。せっかく温かく迎え入れてくれた家族に、申し訳ない。そして、『妹から功績を盗んでいた』という噂が、真実として定着してしまうかもしれない。
そんな恐れが、心の奥底にあった。
「セラフィナ」
マキシミリアン様が、穏やかな声で呼んだ。
その声に、ハッと我に返る。いつの間にか、俯いていた顔を上げる。
マキシミリアン様は、優しい表情で私を見つめていた。厳しい軍人の顔ではなく、温かな。まるで、家族を見守るような、そんな優しさを湛えた表情。
「その慎重さは、好ましいと思う」
彼は、優しく微笑んだ。その笑顔が、私の不安を少しだけ和らげてくれる。
「君は、リスクを理解している。だから、失敗を避けるための準備を怠らない。その姿勢があるからこそ、俺は君を信頼できる」
彼の言葉が、胸に染み入る。
「もし君が、『絶対に成功します』『失敗するはずがありません』なんて根拠のない自信を持っていたら、俺は心配しただろう。でも、君は違う。リスクを認識して、それでも最善を尽くそうとしている。その謙虚さと慎重さがあれば、たとえ問題が起きても、必ず対処できる」
マキシミリアン様は、机に置かれた資料を見つめた。
「それに」
マキシミリアン様は、真っ直ぐに私を見つめた。
「その時は、また考えればいい。もし、計画通りにいかなかったら。予想外のことが起きたら。その時は、その時で対応すればいい」
マキシミリアン様は、力強く言った。
「君は一人じゃない。俺も、母も、弟たちも、妹たちも。皆で支える。失敗しても、責任は俺が取る。だから、君は思い切りやってくれ」
この人は、こんなにも私を信じてくれている。守ってくれると、約束してくれている。一人じゃない。失敗しても、見捨てられない。責められない。一緒に考えてくれる人たちがいる。
その事実が、どれほど心強いか。
前の婚約時代の時は、違った。彼は、私が完璧であることを当然だと思っていた。失敗は許されなかった。いつも結果を求められ、プレッシャーに押し潰されそうだった。
失敗を恐れなくていいと言ってくれる。一緒に乗り越えようと言ってくれる。そして、信じてくれている。
私は、深く息を吸い込んだ。不安を押し込めて、決意を胸に刻む。
「わかりました。やり遂げます」
その言葉は、もう震えていなかった。力強く、はっきりと言えた。
「期待している」
その言葉が、何よりも嬉しかった。期待されている。信じられている。その重みが、私の背中を押してくれる。頑張ろうという気持ちが、心の底から湧いてくる。
こうして、リーベンフェルト家の新たな挑戦が、動き出した。
その声には、確信が込められていた。
「変わる必要はない。土台は軍人貴族のまま。ただ、見せ方を工夫すればいい。そういうことか」
「はい」
私は、ホッと安堵の息を吐いた。理解してもらえた。納得してもらえた。私の考えが、ちゃんと伝わった。その事実が実感として湧いてくる。
マキシミリアン様は、もう一度資料を見つめた。今度は、先ほどとは違う表情で。慎重な吟味の目ではなく。期待の色を浮かべながら。
「これなら、軍人たちも受け入れるだろう。居心地の悪さを感じることもなさそうだ」
彼は、私の描いたスケッチを一つ一つ確認しながら続けた。実際の様子をイメージしてくれているのかもしれない。
「むしろ、『これは良い』と感じてくれるかもしれない。自分たちの文化が否定されるのではなく、より良い形で示されるのだと。そう理解してくれるはずだ」
マキシミリアン様の声には、確信があった。彼も、大丈夫だと判断してくれている。
「ありがとうございます」
「いや、感謝するのは俺の方だ。俺の望んでいたこと。具体的な方法を君が言葉にしてくれて、形にしてくれた」
マキシミリアン様は、真っ直ぐに私を見つめた。
「君がリーベンフェルト家に来てくれて、本当に良かった。君でなければ、この計画は生まれなかった。俺たちだけでは、絶対に思いつかなかった。この計画で進めてくれ。君なら、必ず成功させられる。俺は、君を信じている」
その言葉には、迷いがなかった。信じてくれている。私の実力を。私という人間を。
「それで」
マキシミリアン様が、現実的な話題に移る。彼の表情が、再び真剣なものに戻った。執務モードへの切り替え。
「予算は、これで足りるのか?」
何度も計算を繰り返して、無駄を削ぎ落として、それでも必要なものは確保して。そうやって算出した金額。とはいえ、まだ計画段階での概算でしかない。そのことも説明しながら、予算について話し合った。
「なるほど。今までの予算よりも少し多いが……」
彼は、少し考え込むような表情を浮かべた。
「聞いた話によると、文官貴族のパーティーの予算は、これの何倍もかかると聞く。君が見慣れたものと比べて、この予算で本当に足りるのか? 無理していないか?」
その言葉には、心配の色が滲んでいた。私が遠慮して、本当に必要な予算を削っているのではないかと。そう懸念してくれている。
「はい。私がこれまでに開催してきたパーティーの予算は、おっしゃる通りに金額が必要でした。ですが、今のところの計画では、その金額で間違いないと考えます」
予算案の中の項目を、一つ一つ指さしながら説明する。
「もちろん、想定外の状況で予算が必要になる可能性もありますが」
「まず、無駄な要素を排除しました。派手な装飾は減らし、必要なものを厳選していきます。種類を減らしても満足度は下がりません。むしろ、一つ一つの質を上げられます。妥協しないで、工夫していく予定です」
色々とアイデアを出して、試して、選んでいく。より良い方法を、常に模索し続ける。
「リーベンフェルト家の資金を預かる以上、一金貨たりとも無駄にはしません」
私は、真剣な表情できっぱりと宣言した。限られた予算の中で、最大限の効果を引き出すことを目指す。
「わかった」
私の説明を聞いて、マキシミリアン様は満足そうに頷いた。
「この予算で進めてくれ。だが、もし必要なら追加も惜しまない。遠慮せず、何でも言ってくれ」
その言葉に、私は深く頭を下げた。説明し終えた。
「ありがとうございます。必ず、期待に応えてみせます」
そう言いながらも、胸の奥に小さな不安があった。新しいことへの挑戦。それに対する不安。それが、少しずつ大きくなっていく。
計画は承認された。予算も確保された。準備は整った。あとは、実行するだけ。
でも――。
もし、失敗したら?
私は、躊躇いながらも口を開いた。これを言ってもいいものか。私が提案したのに、不安を抱えているなんて。でも、この不安を隠しておくべきではない。そう思ったから、隠さずに今の気持ちを彼に伝える。
「ただ……。一つだけ、懸念があります」
マキシミリアン様が、私の顔を見つめた。
「何だ?」
「もし、どちらからも受け入れられなかったら……」
その時のことを想像して、声が、わずかに震えた。喉の奥が、キュッと締め付けられるような感覚。こんな事を話してしまって、もし計画が中止になってしまったら。
「文官貴族の方々が、『中途半端だ』と思ってしまったら。軍人貴族の方々が、『変わってしまった』と違和感を持ってしまったら。両方から、拒絶されてしまったら」
不安が、言葉になって溢れ出す。完璧な計画を立てたつもりだった。計画を考える段階で、リスクを潰してきたつもりだった。
だけど、実際にやってみなければわからない。頭の中で考えただけでは、本当に成功するかどうかなんて、誰にもわからない。失敗する可能性は、ゼロではない。
失敗してしまったら。リーベンフェルト家に迷惑をかけてしまう。せっかく温かく迎え入れてくれた家族に、申し訳ない。そして、『妹から功績を盗んでいた』という噂が、真実として定着してしまうかもしれない。
そんな恐れが、心の奥底にあった。
「セラフィナ」
マキシミリアン様が、穏やかな声で呼んだ。
その声に、ハッと我に返る。いつの間にか、俯いていた顔を上げる。
マキシミリアン様は、優しい表情で私を見つめていた。厳しい軍人の顔ではなく、温かな。まるで、家族を見守るような、そんな優しさを湛えた表情。
「その慎重さは、好ましいと思う」
彼は、優しく微笑んだ。その笑顔が、私の不安を少しだけ和らげてくれる。
「君は、リスクを理解している。だから、失敗を避けるための準備を怠らない。その姿勢があるからこそ、俺は君を信頼できる」
彼の言葉が、胸に染み入る。
「もし君が、『絶対に成功します』『失敗するはずがありません』なんて根拠のない自信を持っていたら、俺は心配しただろう。でも、君は違う。リスクを認識して、それでも最善を尽くそうとしている。その謙虚さと慎重さがあれば、たとえ問題が起きても、必ず対処できる」
マキシミリアン様は、机に置かれた資料を見つめた。
「それに」
マキシミリアン様は、真っ直ぐに私を見つめた。
「その時は、また考えればいい。もし、計画通りにいかなかったら。予想外のことが起きたら。その時は、その時で対応すればいい」
マキシミリアン様は、力強く言った。
「君は一人じゃない。俺も、母も、弟たちも、妹たちも。皆で支える。失敗しても、責任は俺が取る。だから、君は思い切りやってくれ」
この人は、こんなにも私を信じてくれている。守ってくれると、約束してくれている。一人じゃない。失敗しても、見捨てられない。責められない。一緒に考えてくれる人たちがいる。
その事実が、どれほど心強いか。
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失敗を恐れなくていいと言ってくれる。一緒に乗り越えようと言ってくれる。そして、信じてくれている。
私は、深く息を吸い込んだ。不安を押し込めて、決意を胸に刻む。
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その言葉は、もう震えていなかった。力強く、はっきりと言えた。
「期待している」
その言葉が、何よりも嬉しかった。期待されている。信じられている。その重みが、私の背中を押してくれる。頑張ろうという気持ちが、心の底から湧いてくる。
こうして、リーベンフェルト家の新たな挑戦が、動き出した。
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