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第29話 お姉様の計画書※イザベラ視点
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置いている荷物を取りに来た。そういう口実で、私は実家を訪れた。
お父様は書斎で当主としての仕事をしていたらしく、簡単な挨拶だけで済ませた。忙しそうにしていたので、ちょうど良かった。誰にも邪魔されずに、ゆっくりと探せそう。
一人で廊下を歩きながら、私は周囲を確認する。使用人たちも、特に私を気にする様子はない。いつも通り仕事をしている。誰も私を不審に思っていない。
まず向かったのは、お姉様の部屋。
扉の前で、一瞬だけ立ち止まる。そこはもう、誰も住んでいない部屋。お姉様は、リーベンフェルト家に行ったらしいから。
ここに、何か残っているかもしれない。
扉を開けると、相変わらず整然とした部屋が広がっていた。お姉様らしい、几帳面な部屋。
私は、引き出しを開け始めた。
一つ目。空。
二つ目。空。
クローゼットも確認する。服はほとんど持って行ったようだ。わずかに残っている古いドレスだけ。書類は? 計画書は? ノウハウをまとめた資料は?
見当たらない。
書棚も調べる。本が置いてあるだけ。文学書、歴史書、社交マナーの本。どれも、私には必要のないもの。日記のようなものもない。
机の引き出しも、全て開ける。でも、やっぱり何もなかった。空っぽ。からっぽ。何一つ、残されていない。
「どこにあるのよ!」
焦りが、苛立ちに変わる。時間が過ぎていく。長く留まっていると、誰かが来るかもしれない。使用人に怪しまれるかもしれない。早く見つけなければ。でも、どこにもない。
ベッドの下まで確認してみる。埃一つない、綺麗な床だ。部屋を出ていった後も、使用人たちが掃除していたらしい。何もない。
何もない。ここは、駄目ね。
お姉様の部屋を出るときも、誰かに見られないように気をつけながら出た。廊下を確認して、使用人がいないことを確かめて、そっと扉を閉める。
次は書斎。そこには、何か残っているかもしれない。お姉様が使っていた資料が、用意されているかも。お父様が保管しているかもしれない。
誰も居ない書斎も、丁寧に探してみた。だけど、やっぱりない。お姉様の資料は、一切見つからなかった。
「もしかして、全部持って行った?」
何も残していないなんて。虚しさが、胸に広がる。せっかく探しに来たのに。期待していたのに。
奥の方に、何かを隠すように置いてあるものを見つけた。古い資料入れ。埃をかぶっている。手に取る。内容を確認する。
「やった!」
ここにあったのね! 大量の資料を見つけた。下書きや、書きかけの資料だけど、これは使えそうね。お姉様の字で書かれた、パーティーの計画書。これなら、十分に参考になる。
「全部、ヴァンデルディング家に持って帰りましょう」
私は資料を抱えて、実家を後にした。
目的のものを見つけて、私はヴァンデルディング家に戻ってきた。早速、手に入れた資料を確認する。かなり量が多い。期待が膨らむ。これだけあれば、活用できるでしょう。
一つ一つ読み進めるうちに、期待は失望に変わっていく。
書きかけの計画書。途中で終わっている装飾案。完成していない予算表。下書きばかり。完成版は、どこにもない。どれも中途半端なものばかり。
「ちょっと、これじゃあ使えないじゃない!」
苛立ちが、声に滲む。労力と時間の無駄だった。せっかく良さそうと思ったのに! お姉様に騙された。お姉様に騙された。完成版を持っていって、下書きだけ残していくなんて。意地が悪い。
使えない資料を、机に叩きつける。
不満を抱きながら、次の方法を考える。
そうよ。もう一つ、可能性が残っている。ロデリックの書斎に。
お姉様は婚約者だったロデリックに、資料を共有していた。前に一つ、計画書を拝借した。あの時、ロデリックの机から見つけたもの。
もしかしたら、もっと過去の資料がロデリックの書斎に残っているかもしれない。完成版の計画書。実際に使われたもの。成功したパーティーの、使えそうな情報。
ロデリックが外出している時間を狙って、誰にも邪魔されない完璧なタイミングで、書斎に侵入する。
見つかっても、言い訳は考えてある。次のパーティーの準備を進めるために必要だとか言っていれば、彼も納得してくれるでしょ。それに、婚約者の書斎に入ることくらい、おかしくない。
なので緊張感もなく、私は書棚の奥を探り始めた。
引き出しも、一つ一つ確認する。
書類が、適当に重ねられている。整理されていない。ただ、無造作に積まれているだけ。ちゃんと確認しているのかしら。相変わらず、だらしない。
でも、その中に。見覚えのある筆跡を見つけた。
「ふふっ。あった」
お姉様の字。間違いない。丁寧で、真面目ぶった文字。几帳面に、綺麗に書かれている。
資料は一つだけじゃない。次々と見つけた。引き出しの中、書棚の奥、書類の山の中。適当に、保管していたみたいね。
どうやら、中身もよく確認していなかったみたい。でも、こうやって保管してくれていたことには感謝する。捨てずに残してくれてありがとう、ロデリック様。
何の役にも立たない。傍観者で、無能で、理解のない男。そう思っていた。でも、今回は本当に感謝している。
意図してではないだろう。ただ、整理するのが面倒だっただけで、破棄する必要も感じなかっただけかもしれないけれど。それでも、結果的には私の役に立った。
「ふふっ」
笑みが、自然と溢れる。
発見した資料を持って、私は自分の部屋に戻ってきた。それから、中身を一つ一つ確認する。
パーティーの計画書。複数回分。それぞれ、丁寧に作られている。
スタッフへの詳細な指示書。誰が何をするか、細かく書かれている。
料理の手配表。レシピと手順まで書かれている。どの料理を、どのタイミングで、どう提供するか。
装飾の配置図。図解入りで、わかりやすい。寸法まで正確に記されている。
タイムテーブル。分単位のスケジュール。開始から終了まで、全ての流れが書かれている。
予算管理表。詳細な内訳付き。何にいくら使うか、明確に記されている。
トラブル対応マニュアル。想定されるトラブルと、その対処法が書かれている。
私は資料を抱きしめた。これは使える。その確信が胸の中で輝いていた。温かく、力強く、私を満たしていく。
これを使って、私のパーティーを運営するための計画書を作りましょう。
お父様は書斎で当主としての仕事をしていたらしく、簡単な挨拶だけで済ませた。忙しそうにしていたので、ちょうど良かった。誰にも邪魔されずに、ゆっくりと探せそう。
一人で廊下を歩きながら、私は周囲を確認する。使用人たちも、特に私を気にする様子はない。いつも通り仕事をしている。誰も私を不審に思っていない。
まず向かったのは、お姉様の部屋。
扉の前で、一瞬だけ立ち止まる。そこはもう、誰も住んでいない部屋。お姉様は、リーベンフェルト家に行ったらしいから。
ここに、何か残っているかもしれない。
扉を開けると、相変わらず整然とした部屋が広がっていた。お姉様らしい、几帳面な部屋。
私は、引き出しを開け始めた。
一つ目。空。
二つ目。空。
クローゼットも確認する。服はほとんど持って行ったようだ。わずかに残っている古いドレスだけ。書類は? 計画書は? ノウハウをまとめた資料は?
見当たらない。
書棚も調べる。本が置いてあるだけ。文学書、歴史書、社交マナーの本。どれも、私には必要のないもの。日記のようなものもない。
机の引き出しも、全て開ける。でも、やっぱり何もなかった。空っぽ。からっぽ。何一つ、残されていない。
「どこにあるのよ!」
焦りが、苛立ちに変わる。時間が過ぎていく。長く留まっていると、誰かが来るかもしれない。使用人に怪しまれるかもしれない。早く見つけなければ。でも、どこにもない。
ベッドの下まで確認してみる。埃一つない、綺麗な床だ。部屋を出ていった後も、使用人たちが掃除していたらしい。何もない。
何もない。ここは、駄目ね。
お姉様の部屋を出るときも、誰かに見られないように気をつけながら出た。廊下を確認して、使用人がいないことを確かめて、そっと扉を閉める。
次は書斎。そこには、何か残っているかもしれない。お姉様が使っていた資料が、用意されているかも。お父様が保管しているかもしれない。
誰も居ない書斎も、丁寧に探してみた。だけど、やっぱりない。お姉様の資料は、一切見つからなかった。
「もしかして、全部持って行った?」
何も残していないなんて。虚しさが、胸に広がる。せっかく探しに来たのに。期待していたのに。
奥の方に、何かを隠すように置いてあるものを見つけた。古い資料入れ。埃をかぶっている。手に取る。内容を確認する。
「やった!」
ここにあったのね! 大量の資料を見つけた。下書きや、書きかけの資料だけど、これは使えそうね。お姉様の字で書かれた、パーティーの計画書。これなら、十分に参考になる。
「全部、ヴァンデルディング家に持って帰りましょう」
私は資料を抱えて、実家を後にした。
目的のものを見つけて、私はヴァンデルディング家に戻ってきた。早速、手に入れた資料を確認する。かなり量が多い。期待が膨らむ。これだけあれば、活用できるでしょう。
一つ一つ読み進めるうちに、期待は失望に変わっていく。
書きかけの計画書。途中で終わっている装飾案。完成していない予算表。下書きばかり。完成版は、どこにもない。どれも中途半端なものばかり。
「ちょっと、これじゃあ使えないじゃない!」
苛立ちが、声に滲む。労力と時間の無駄だった。せっかく良さそうと思ったのに! お姉様に騙された。お姉様に騙された。完成版を持っていって、下書きだけ残していくなんて。意地が悪い。
使えない資料を、机に叩きつける。
不満を抱きながら、次の方法を考える。
そうよ。もう一つ、可能性が残っている。ロデリックの書斎に。
お姉様は婚約者だったロデリックに、資料を共有していた。前に一つ、計画書を拝借した。あの時、ロデリックの机から見つけたもの。
もしかしたら、もっと過去の資料がロデリックの書斎に残っているかもしれない。完成版の計画書。実際に使われたもの。成功したパーティーの、使えそうな情報。
ロデリックが外出している時間を狙って、誰にも邪魔されない完璧なタイミングで、書斎に侵入する。
見つかっても、言い訳は考えてある。次のパーティーの準備を進めるために必要だとか言っていれば、彼も納得してくれるでしょ。それに、婚約者の書斎に入ることくらい、おかしくない。
なので緊張感もなく、私は書棚の奥を探り始めた。
引き出しも、一つ一つ確認する。
書類が、適当に重ねられている。整理されていない。ただ、無造作に積まれているだけ。ちゃんと確認しているのかしら。相変わらず、だらしない。
でも、その中に。見覚えのある筆跡を見つけた。
「ふふっ。あった」
お姉様の字。間違いない。丁寧で、真面目ぶった文字。几帳面に、綺麗に書かれている。
資料は一つだけじゃない。次々と見つけた。引き出しの中、書棚の奥、書類の山の中。適当に、保管していたみたいね。
どうやら、中身もよく確認していなかったみたい。でも、こうやって保管してくれていたことには感謝する。捨てずに残してくれてありがとう、ロデリック様。
何の役にも立たない。傍観者で、無能で、理解のない男。そう思っていた。でも、今回は本当に感謝している。
意図してではないだろう。ただ、整理するのが面倒だっただけで、破棄する必要も感じなかっただけかもしれないけれど。それでも、結果的には私の役に立った。
「ふふっ」
笑みが、自然と溢れる。
発見した資料を持って、私は自分の部屋に戻ってきた。それから、中身を一つ一つ確認する。
パーティーの計画書。複数回分。それぞれ、丁寧に作られている。
スタッフへの詳細な指示書。誰が何をするか、細かく書かれている。
料理の手配表。レシピと手順まで書かれている。どの料理を、どのタイミングで、どう提供するか。
装飾の配置図。図解入りで、わかりやすい。寸法まで正確に記されている。
タイムテーブル。分単位のスケジュール。開始から終了まで、全ての流れが書かれている。
予算管理表。詳細な内訳付き。何にいくら使うか、明確に記されている。
トラブル対応マニュアル。想定されるトラブルと、その対処法が書かれている。
私は資料を抱きしめた。これは使える。その確信が胸の中で輝いていた。温かく、力強く、私を満たしていく。
これを使って、私のパーティーを運営するための計画書を作りましょう。
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