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第32話 気づきたくないこと※ロデリック視点
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それから、俺はセラフィナの活躍が気になり始めた。
最初は、ただの好奇心だった。元婚約者が、新しい環境でどうしているのか。軍人貴族の家で、どんなパーティーを開いているのか。それが気になったただけ。
だが、次第に。彼女のことが気になって仕方なくなった。
社交界での話題に注目して、情報を集めた。
「リーベンフェルト家のパーティーが、素晴らしかった」
「セラフィナ嬢は、やはり有能だった」
「例の噂は、間違いだったのでは」
そんな声が、各方面から続々と届いてくる。噂を疑う声。それを、信じてしまったことを後悔しているような貴族たちの反応。セラフィナに対する謝罪の言葉まで。
そして、自然と――。
イザベラと、比較してしまう自分がいた。
イザベラは、三回目でやっと「無難」。
「十分」という評価。
批判はないが、称賛もない。及第点をもらえただけ。合格したが、優秀ではない。そんな評価。
一回目は噴水が暴走し、会場が水浸しになった。参加者は怒り、賠償金は莫大だった。二回目は小さなトラブルが続出し、イザベラは終始指示を出し続けていた。三回目でやっと、トラブルなく終わらせられた。
セラフィナは、新しい環境で移っても話題になっている。
イザベラから離れた後も「画期的」とか「革新的」という評価を得ている。
社交界中が、話題にしている。リーベンフェルト家のパーティーは素晴らしいと、誰もが口を揃えて言う。
結果だけを見れば、どう考えてもセラフィナの方が優秀だ。セラフィナの方が有能だったという可能性。なぜ俺は、それが見えていなかったのか。
答えは、明白だ。
イザベラの可愛さに、目を奪われていた。
涙を流す姿に、心を動かされてしまった。お姉様が私から奪ったと訴える姿に、同情していた。
素直で従順で、頼ってくる姿に魅力を感じていた。ロデリック様、助けてくださいと縋ってくる姿に、男として守りたいという気持ちが湧いた。
でも、今は――。
イザベラに対する感情が、冷めていく。
可愛いと思っていた。魅力的だと思っていた。
疑念ばかりが、大きくなる。本当に、彼女の言葉は真実だったのか。本当に、セラフィナが奪ったのか。もう信じられない。
本当に、イザベラを選んで良かったのか。
ただ、セラフィナに対する問題点も感じていたのは事実。
セラフィナは、完璧すぎて息苦しいと思っていた。何でも完璧にこなす姿に、劣等感を覚えていた。
でも、それは――。
ただ、優秀だっただけなのではないか。
本当に、有能だっただけなのではないか。
俺が、勝手に息苦しく感じていただけで。
セラフィナは、ただ誠実に仕事をしていただけなのではないか。完璧を目指して、努力していただけなのではないか。
頭の中で、過去の光景が蘇る。
セラフィナが開いたパーティー。
参加者の笑顔。自然に会話が弾み、楽しそうな声で溢れていた。
スタッフの完璧な動き。誰もが自分の役割を理解し、自発的に動いていた。指示を出さなくても、全てがスムーズに進んでいた。
何一つ心配する必要がなかった、あの安心感。ただそこにいるだけで、パーティーは成功していた。
そして――。
婚約破棄の日。
セラフィナの冷静な顔を思い出す。あの時、怒りも悲しみも見せなかった。ただ、冷静に俺を見つめていた。
「今は招待した皆様への配慮が――」
あの言葉。
俺は、聞く耳を持たなかった。パーティーの最中に婚約破棄を宣言し、セラフィナを公開の場で責めた。
イザベラの涙を信じて、セラフィナを責めた。「妹から奪った」と断罪した。
でも――。
もしかして、あの時。
セラフィナは、正しかったのではないか。
パーティーの最中に婚約破棄を宣言した俺の方が、間違っていたのではないか。招待客への配慮を優先すべきだったのではないか。
セラフィナは、最後まで責任を果たそうとしていた。参加者への謝罪と、賠償の手配。スタッフへの配慮。全てを、丁寧に行っていたようだ。
それに比べて、俺は。
何もしなかった。ただ、イザベラの言葉を信じて、セラフィナを責めただけ。
何かが、決定的に間違っている。
でも、まだ確実な証拠があるわけじゃない。
まだ、はっきりとはわからない。ここまで考えたことは、全て俺の妄想でしかないのかもしれない。そうであってほしいと願ってしまう。
ただ、心の奥底で思っているだけ。俺は間違えた。取り返しのつかない、決定的な間違いをした。
もしかしたら。
いや、考えたくない。
でも、もしかしたら。考えたくなくても、どんどん考えてしまう。
全てが、逆だったのではないか。
セラフィナが奪ったのではなく。
イザベラが、奪ったのではないか。
イザベラが嘘をついていて、セラフィナが真実を語っていたのではないか。
でも、そんなこと。
認めたくない。
認めたら、俺の判断が全て間違っていたことになる。それを認めないといけない。とても苦しいこと。
俺が、愚かだったことになる。
俺が、騙されていたことになる。
公開の場で、無実の人間を責めたことになる。
それでも。
疑念は、消えない。
日を追うごとに、大きくなっていく。押さえ込もうとしても、押さえ込めない。
俺は、どうするべきだ。
これから、注意深く見ていこう。
イザベラのことを。
セラフィナのことを。
そして、真実を確かめよう。
取り返しのつかない間違いを、犯してしまったのか。
疑念が、心の中で渦巻いていた。まだ認めたくない。まだ、信じていたい気持ちもある。イザベラのことを信じ続けたい。
自分が正しかったと、信じたい。
そのために、確定的な証拠を求めた。イザベラが本当に有能なのか。本当に、彼女の言葉が真実だったのか。セラフィナとイザベラの真実。それを確かめるために。
このまま、疑念を抱えたまま生きていくのは、耐えられない。
俺は、真実を知る必要がある。
たとえ、それが俺にとって都合の悪い真実だったとしても。
最初は、ただの好奇心だった。元婚約者が、新しい環境でどうしているのか。軍人貴族の家で、どんなパーティーを開いているのか。それが気になったただけ。
だが、次第に。彼女のことが気になって仕方なくなった。
社交界での話題に注目して、情報を集めた。
「リーベンフェルト家のパーティーが、素晴らしかった」
「セラフィナ嬢は、やはり有能だった」
「例の噂は、間違いだったのでは」
そんな声が、各方面から続々と届いてくる。噂を疑う声。それを、信じてしまったことを後悔しているような貴族たちの反応。セラフィナに対する謝罪の言葉まで。
そして、自然と――。
イザベラと、比較してしまう自分がいた。
イザベラは、三回目でやっと「無難」。
「十分」という評価。
批判はないが、称賛もない。及第点をもらえただけ。合格したが、優秀ではない。そんな評価。
一回目は噴水が暴走し、会場が水浸しになった。参加者は怒り、賠償金は莫大だった。二回目は小さなトラブルが続出し、イザベラは終始指示を出し続けていた。三回目でやっと、トラブルなく終わらせられた。
セラフィナは、新しい環境で移っても話題になっている。
イザベラから離れた後も「画期的」とか「革新的」という評価を得ている。
社交界中が、話題にしている。リーベンフェルト家のパーティーは素晴らしいと、誰もが口を揃えて言う。
結果だけを見れば、どう考えてもセラフィナの方が優秀だ。セラフィナの方が有能だったという可能性。なぜ俺は、それが見えていなかったのか。
答えは、明白だ。
イザベラの可愛さに、目を奪われていた。
涙を流す姿に、心を動かされてしまった。お姉様が私から奪ったと訴える姿に、同情していた。
素直で従順で、頼ってくる姿に魅力を感じていた。ロデリック様、助けてくださいと縋ってくる姿に、男として守りたいという気持ちが湧いた。
でも、今は――。
イザベラに対する感情が、冷めていく。
可愛いと思っていた。魅力的だと思っていた。
疑念ばかりが、大きくなる。本当に、彼女の言葉は真実だったのか。本当に、セラフィナが奪ったのか。もう信じられない。
本当に、イザベラを選んで良かったのか。
ただ、セラフィナに対する問題点も感じていたのは事実。
セラフィナは、完璧すぎて息苦しいと思っていた。何でも完璧にこなす姿に、劣等感を覚えていた。
でも、それは――。
ただ、優秀だっただけなのではないか。
本当に、有能だっただけなのではないか。
俺が、勝手に息苦しく感じていただけで。
セラフィナは、ただ誠実に仕事をしていただけなのではないか。完璧を目指して、努力していただけなのではないか。
頭の中で、過去の光景が蘇る。
セラフィナが開いたパーティー。
参加者の笑顔。自然に会話が弾み、楽しそうな声で溢れていた。
スタッフの完璧な動き。誰もが自分の役割を理解し、自発的に動いていた。指示を出さなくても、全てがスムーズに進んでいた。
何一つ心配する必要がなかった、あの安心感。ただそこにいるだけで、パーティーは成功していた。
そして――。
婚約破棄の日。
セラフィナの冷静な顔を思い出す。あの時、怒りも悲しみも見せなかった。ただ、冷静に俺を見つめていた。
「今は招待した皆様への配慮が――」
あの言葉。
俺は、聞く耳を持たなかった。パーティーの最中に婚約破棄を宣言し、セラフィナを公開の場で責めた。
イザベラの涙を信じて、セラフィナを責めた。「妹から奪った」と断罪した。
でも――。
もしかして、あの時。
セラフィナは、正しかったのではないか。
パーティーの最中に婚約破棄を宣言した俺の方が、間違っていたのではないか。招待客への配慮を優先すべきだったのではないか。
セラフィナは、最後まで責任を果たそうとしていた。参加者への謝罪と、賠償の手配。スタッフへの配慮。全てを、丁寧に行っていたようだ。
それに比べて、俺は。
何もしなかった。ただ、イザベラの言葉を信じて、セラフィナを責めただけ。
何かが、決定的に間違っている。
でも、まだ確実な証拠があるわけじゃない。
まだ、はっきりとはわからない。ここまで考えたことは、全て俺の妄想でしかないのかもしれない。そうであってほしいと願ってしまう。
ただ、心の奥底で思っているだけ。俺は間違えた。取り返しのつかない、決定的な間違いをした。
もしかしたら。
いや、考えたくない。
でも、もしかしたら。考えたくなくても、どんどん考えてしまう。
全てが、逆だったのではないか。
セラフィナが奪ったのではなく。
イザベラが、奪ったのではないか。
イザベラが嘘をついていて、セラフィナが真実を語っていたのではないか。
でも、そんなこと。
認めたくない。
認めたら、俺の判断が全て間違っていたことになる。それを認めないといけない。とても苦しいこと。
俺が、愚かだったことになる。
俺が、騙されていたことになる。
公開の場で、無実の人間を責めたことになる。
それでも。
疑念は、消えない。
日を追うごとに、大きくなっていく。押さえ込もうとしても、押さえ込めない。
俺は、どうするべきだ。
これから、注意深く見ていこう。
イザベラのことを。
セラフィナのことを。
そして、真実を確かめよう。
取り返しのつかない間違いを、犯してしまったのか。
疑念が、心の中で渦巻いていた。まだ認めたくない。まだ、信じていたい気持ちもある。イザベラのことを信じ続けたい。
自分が正しかったと、信じたい。
そのために、確定的な証拠を求めた。イザベラが本当に有能なのか。本当に、彼女の言葉が真実だったのか。セラフィナとイザベラの真実。それを確かめるために。
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俺は、真実を知る必要がある。
たとえ、それが俺にとって都合の悪い真実だったとしても。
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