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第43話 醜い言い争い※ロデリック視点
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「お前が、セラフィナ嬢を公開の場で辱めた」
父の声は、冷静だが、重い。一言一言が、鉄槌のように俺の胸を打ち付ける。
「お前がイザベラの言葉を盲目的に信じた」
一つ一つの言葉が、胸に突き刺さる。逃げ場がない。反論の余地もない。
「お前が、周囲の声に耳を傾けなかった」
違う。俺は。
「お前は、判断を誤った」
俺は——被害者じゃないのか。騙されていただけじゃないのか。
「そ、そんな!?」
俺は声を上げた。思わず、という形で。自分でも驚くほど大きな声だった。
「俺は、イザベラのことを報告した。事実を明らかにする手助けをしたんですよ!」
必死に弁解する。そうだ、俺だって行動した。疑念を抱いて、調査を依頼したじゃないか。真実を明らかにしようとしたじゃないか。そのおかげで、今回の事実が発覚したんだ。
「俺だって、騙されていたんです」
声が震えている。喉が渇いて、言葉が上手く出てこない。
「イザベラが嘘をついていたから」
そうだ。俺は悪くない。悪いのはイザベラだ。俺を騙したイザベラが、全て悪いんだ。
「俺は、完全な被害者です」
無実を主張する。けれど父の表情は、変わらなかった。
ただ、冷たく見つめている。失望を隠そうともしない、そんな目で。俺を見下ろしている。かつて、幼い頃に叱られた時のような、あの厳しい視線だ。
「バレたのは、お前のせいか!」
横で聞いていたイザベラが、突然怒りの声を上げる。
彼女が、俺を睨みつけた。涙で濡れていた目が、今は怒りで燃えている。
「お前が父親に告げ口したから、こうなったのね!」
金切り声が、書斎に響く。耳が痛くなるような、甲高い声。
「私を裏切ったのか、お前はっ!」
何を言っているんだ、こいつは。裏切った? 俺が?
「婚約者なのに、私を守ってくれなかった!」
イザベラは完全に感情的になっている。涙すら浮かべて、俺を責め立てる。その顔は、かつて俺が可愛いと思っていた面影すらない。歪んで、醜い。
「私は、自分のものを取り戻そうとしただけ」
「盗んだものが、自分のもの?」
俺は呆れたように言い返した。まだそんなことを言うのか。明らかに模倣していたというのに。
「全部、悪いのはお姉様なのに」
イザベラは泣き叫ぶように言った。両手を握りしめて、震えながら。
「私の功績を奪ったお姉様が悪いのに。なんで私だけが責められるのよ!」
怒りが、再び込み上げてきた。こいつは、まだ分かっていないのか。自分が何をしたのか、全く理解していないのか。
「だから、こんなことをするお前が悪いんだろう! お前は間違ったことをしていた。だから、責められるのは当然だ!」
俺は声を荒げた。イザベラに詰め寄る。
「手柄を奪い取ろうとするなんて。最低の行為だ! やってはいけないことをしたんだ、お前は!」
「あんただって、やっていることは同じでしょ! それよりも最低よ。私の頑張りを横で見ていただけ! 何も手助けしてくれなかったくせに!」
そう言って、イザベラは俺を責めてくる。
「お姉様を公開の場で辱めたのは、あんたでしょ! 私は、そこまでお願いしていない。そうしようと考えて行動したのは、あんた!」
その言葉に、俺は一瞬、言葉を失った。確かに、公開の場で婚約破棄を宣言したのは、俺の判断だった。
「お姉様を傷つけたのは、あんたよ!」
「それは――」
言い返そうとして、言葉が詰まる。
「婚約破棄を告げたのは、あんたの意志! 私は、あんたに話しただけ。実行したのは、あんたよ!」
「だからそれは、お前が嘘をついたからだろう!」
俺は叫んだ。喉が裂けそうなほど、大きな声で。イザベラの主張を押しつぶそうと必死に。
「俺のことを騙した。涙を流して、可哀想な妹を演じて。俺は、それを信じたんだ」
「そんなの! 信じたあんたが、馬鹿なのよ!」
イザベラが叫び返してくる。しつこく、何度も。頭が痛くなるような声で。顔を真っ赤にして、髪を振り乱して。
「なんだと!」
そもそも、俺を責める資格なんて、お前にはない。お前が嘘をついたから、全てが始まったんだ。
「俺は——」
「お前が勝手に信じて、勝手に姉を責めたのよ! 私は何も頼んでいない!」
「だから、お前が——」
「あんたが勝手にやったことでしょ!」
とても醜い言い争いが続く。責任のなすりつけ合い。お互いを罵り合う、見るに堪えない光景。
見苦しい。
自分でもわかっている。こんな醜態を、父の前で晒している。でも、止められなかった。イザベラの言葉に、どうしても反論せずにはいられなかった。
「お前が悪い!」
「あんたが悪い!」
「ふたりとも、黙れッ!」
「「……」」
重く、低い、しかし圧倒的な声が、書斎全体に響き渡った。
まるで雷鳴のような、そんな声だった。体が思わず竦む。
俺とイザベラは、同時に黙り込む。
父が、俺たちを見下ろしている。その目には、深い失望と、怒りが滲んでいる。
「馬鹿な言い争いはやめろ」
感情を排した、冷たい声だった。
「見苦しい」
その一言で、俺の体が縮こまった。恥ずかしい。情けない。こんな姿を、父に見せてしまった。
しばらく、誰も何も言わなかった。重苦しい沈黙が、部屋を支配する。
父は、腕を組んで、俺たちを見つめている。その視線から逃れられない。俺は下を向いた。床を、じっと見つめる。横に立つイザベラも、何も言わない。
父は、しばらく沈黙を保っていた。
その沈黙が、余計に重苦しい。何か言ってくれた方が、精神的には楽だった。
「今回の件に関しては、早いうちに処遇を決める」
ようやく口を開いた父の声は、相変わらず低く、重かった。
「それまでは、勝手に行動することは許さない。部屋に戻って考えろ。自分が何をしたのか、その責任の重さ。そして、これからどうするべきかを」
一つ一つの言葉が、鉛のように重い。胸に、ずしりと沈んでいく。
「話は以上だ。下がれ」
有無を言わさぬ命令だった。反論することなんて、当然許されない。
「は、はい……」
俺は力なく返事をして、書斎を出た。
イザベラも、何も言わずに俺の後に続いた。
廊下を歩く。いつもは気にならない廊下が、今日はやけに長く感じる。結局、一言も交わさず部屋に戻ってきた。イザベラとは途中で別れた。彼女は何も言わず、俯いたまま自分の部屋へ向かっていった。
怒りも、悲しみも、何もかもが混ざり合って、ぐちゃぐちゃになっている。何が正しくて、何が間違っていたのか。もう、分からない。
力が抜けて、その場に座り込んだ。
処遇が決まる。どんな罰を与えられるのか。何を言い渡されるんだろう。これから俺は、どうなってしまうんだろう。
頭の中が、ぐるぐると回る。考えは、まとまらない。
父の声は、冷静だが、重い。一言一言が、鉄槌のように俺の胸を打ち付ける。
「お前がイザベラの言葉を盲目的に信じた」
一つ一つの言葉が、胸に突き刺さる。逃げ場がない。反論の余地もない。
「お前が、周囲の声に耳を傾けなかった」
違う。俺は。
「お前は、判断を誤った」
俺は——被害者じゃないのか。騙されていただけじゃないのか。
「そ、そんな!?」
俺は声を上げた。思わず、という形で。自分でも驚くほど大きな声だった。
「俺は、イザベラのことを報告した。事実を明らかにする手助けをしたんですよ!」
必死に弁解する。そうだ、俺だって行動した。疑念を抱いて、調査を依頼したじゃないか。真実を明らかにしようとしたじゃないか。そのおかげで、今回の事実が発覚したんだ。
「俺だって、騙されていたんです」
声が震えている。喉が渇いて、言葉が上手く出てこない。
「イザベラが嘘をついていたから」
そうだ。俺は悪くない。悪いのはイザベラだ。俺を騙したイザベラが、全て悪いんだ。
「俺は、完全な被害者です」
無実を主張する。けれど父の表情は、変わらなかった。
ただ、冷たく見つめている。失望を隠そうともしない、そんな目で。俺を見下ろしている。かつて、幼い頃に叱られた時のような、あの厳しい視線だ。
「バレたのは、お前のせいか!」
横で聞いていたイザベラが、突然怒りの声を上げる。
彼女が、俺を睨みつけた。涙で濡れていた目が、今は怒りで燃えている。
「お前が父親に告げ口したから、こうなったのね!」
金切り声が、書斎に響く。耳が痛くなるような、甲高い声。
「私を裏切ったのか、お前はっ!」
何を言っているんだ、こいつは。裏切った? 俺が?
「婚約者なのに、私を守ってくれなかった!」
イザベラは完全に感情的になっている。涙すら浮かべて、俺を責め立てる。その顔は、かつて俺が可愛いと思っていた面影すらない。歪んで、醜い。
「私は、自分のものを取り戻そうとしただけ」
「盗んだものが、自分のもの?」
俺は呆れたように言い返した。まだそんなことを言うのか。明らかに模倣していたというのに。
「全部、悪いのはお姉様なのに」
イザベラは泣き叫ぶように言った。両手を握りしめて、震えながら。
「私の功績を奪ったお姉様が悪いのに。なんで私だけが責められるのよ!」
怒りが、再び込み上げてきた。こいつは、まだ分かっていないのか。自分が何をしたのか、全く理解していないのか。
「だから、こんなことをするお前が悪いんだろう! お前は間違ったことをしていた。だから、責められるのは当然だ!」
俺は声を荒げた。イザベラに詰め寄る。
「手柄を奪い取ろうとするなんて。最低の行為だ! やってはいけないことをしたんだ、お前は!」
「あんただって、やっていることは同じでしょ! それよりも最低よ。私の頑張りを横で見ていただけ! 何も手助けしてくれなかったくせに!」
そう言って、イザベラは俺を責めてくる。
「お姉様を公開の場で辱めたのは、あんたでしょ! 私は、そこまでお願いしていない。そうしようと考えて行動したのは、あんた!」
その言葉に、俺は一瞬、言葉を失った。確かに、公開の場で婚約破棄を宣言したのは、俺の判断だった。
「お姉様を傷つけたのは、あんたよ!」
「それは――」
言い返そうとして、言葉が詰まる。
「婚約破棄を告げたのは、あんたの意志! 私は、あんたに話しただけ。実行したのは、あんたよ!」
「だからそれは、お前が嘘をついたからだろう!」
俺は叫んだ。喉が裂けそうなほど、大きな声で。イザベラの主張を押しつぶそうと必死に。
「俺のことを騙した。涙を流して、可哀想な妹を演じて。俺は、それを信じたんだ」
「そんなの! 信じたあんたが、馬鹿なのよ!」
イザベラが叫び返してくる。しつこく、何度も。頭が痛くなるような声で。顔を真っ赤にして、髪を振り乱して。
「なんだと!」
そもそも、俺を責める資格なんて、お前にはない。お前が嘘をついたから、全てが始まったんだ。
「俺は——」
「お前が勝手に信じて、勝手に姉を責めたのよ! 私は何も頼んでいない!」
「だから、お前が——」
「あんたが勝手にやったことでしょ!」
とても醜い言い争いが続く。責任のなすりつけ合い。お互いを罵り合う、見るに堪えない光景。
見苦しい。
自分でもわかっている。こんな醜態を、父の前で晒している。でも、止められなかった。イザベラの言葉に、どうしても反論せずにはいられなかった。
「お前が悪い!」
「あんたが悪い!」
「ふたりとも、黙れッ!」
「「……」」
重く、低い、しかし圧倒的な声が、書斎全体に響き渡った。
まるで雷鳴のような、そんな声だった。体が思わず竦む。
俺とイザベラは、同時に黙り込む。
父が、俺たちを見下ろしている。その目には、深い失望と、怒りが滲んでいる。
「馬鹿な言い争いはやめろ」
感情を排した、冷たい声だった。
「見苦しい」
その一言で、俺の体が縮こまった。恥ずかしい。情けない。こんな姿を、父に見せてしまった。
しばらく、誰も何も言わなかった。重苦しい沈黙が、部屋を支配する。
父は、腕を組んで、俺たちを見つめている。その視線から逃れられない。俺は下を向いた。床を、じっと見つめる。横に立つイザベラも、何も言わない。
父は、しばらく沈黙を保っていた。
その沈黙が、余計に重苦しい。何か言ってくれた方が、精神的には楽だった。
「今回の件に関しては、早いうちに処遇を決める」
ようやく口を開いた父の声は、相変わらず低く、重かった。
「それまでは、勝手に行動することは許さない。部屋に戻って考えろ。自分が何をしたのか、その責任の重さ。そして、これからどうするべきかを」
一つ一つの言葉が、鉛のように重い。胸に、ずしりと沈んでいく。
「話は以上だ。下がれ」
有無を言わさぬ命令だった。反論することなんて、当然許されない。
「は、はい……」
俺は力なく返事をして、書斎を出た。
イザベラも、何も言わずに俺の後に続いた。
廊下を歩く。いつもは気にならない廊下が、今日はやけに長く感じる。結局、一言も交わさず部屋に戻ってきた。イザベラとは途中で別れた。彼女は何も言わず、俯いたまま自分の部屋へ向かっていった。
怒りも、悲しみも、何もかもが混ざり合って、ぐちゃぐちゃになっている。何が正しくて、何が間違っていたのか。もう、分からない。
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