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第14話 新たな暮らし
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婚約破棄が成立してから、数か月が過ぎていた。
私は、以前から付き合いのある商人に協力してもらって、バロウクリフ領内の町でカフェを開店した。
本当は別の国へ移り住もうかと考えていたが、家族に説得されてバロウクリフ領内に留まることに。精霊の契約書により、バロウクリフ家からは除籍されたけれども、関係を完全に断ち切ることはできなかった。
まだ親子の縁は残しておきたい。そう言われてしまうと、強くは出られなかった。もう既に、色々と迷惑をかけてしまっているから。両親の気持ちを無視することは、出来なかった。
ということで、今も私はバロウクリフ家の一人娘として王国で暮らしている。
貴族という身分を失って庶民となり、暮らしてきた屋敷から出て、新しい居場所を作り上げた。
店内を見回す。
落ち着いたトーンのイスやテーブル。壁には、私が選んだ草花の絵が掛けられている。上質で希少な銘木で作られたカウンターキッチンに、厨房も完備。
カウンター席の向こうにある窓からは、澄んだ青空が見える。そんな店内に漂う、上品なコーヒーの香り。私が望んでいた空間が、そこにあった。
「うん、美味しい」
口に含むコーヒーは、私が自分で淹れたものだ。酸味と苦味のバランスが良くて、香りも豊かで私好みの味になっている。この味を出せるようになるのに、かなり練習した。まだまだ未熟だけど、お店で出せるぐらいのレベルまで上達していると思う。
いつか、毎日飲んでも飽きない味のコーヒーを淹れられるようになりたい。今は、その夢に向かって一歩ずつ進んでいる。
貴族だった頃には絶対に出来ないような、ゆっくりとした暮らし。なんて、素晴らしいんでしょう。
カランと、入り口のベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
私は立ち上がって、店に入ってきた客に笑顔で声をかける。
「こちらのお席へどうぞ。ご注文は、何になさいますか?」
「コーヒーと、コーヒーに合うお菓子を頼む」
「かしこまりました」
私は注文を受けるとお辞儀をして、コーヒーを淹れる作業に取りかかる。
カウンター席の一つに座った客は、商人風の身なりをした男性だった。顔を覚えている。何度か、この店に来てくれたことがある人だった。常連になってくれたらいいな。
「お待たせしました」
コーヒーと一品をお盆に乗せて、テーブルに置く。コーヒーに合うお菓子は、今朝焼いた作り置きのクッキーだ。小麦と砂糖で焼き上げた、私の手作り。
「うん。いい香りだ」
コーヒーの香りを楽しんでから、客はゆっくりとコーヒーを口へ運ぶ。美味しそうに飲んでくれるから、とても嬉しい。作る甲斐があるというものだわ。
「とても美味しいよ」
「ありがとうございます」
手作りのクッキーも褒めてもらった。その一言が嬉しい。満足感でいっぱいになる。カフェを開いて良かった。コーヒーを飲み終わり、お客様は帰っていく。
「またのお越しを、お待ちしております」
次の来店を楽しみにしながら、私はお客を見送る。
こんな感じで、新しくオープンしたお店は順調だった。
私は、以前から付き合いのある商人に協力してもらって、バロウクリフ領内の町でカフェを開店した。
本当は別の国へ移り住もうかと考えていたが、家族に説得されてバロウクリフ領内に留まることに。精霊の契約書により、バロウクリフ家からは除籍されたけれども、関係を完全に断ち切ることはできなかった。
まだ親子の縁は残しておきたい。そう言われてしまうと、強くは出られなかった。もう既に、色々と迷惑をかけてしまっているから。両親の気持ちを無視することは、出来なかった。
ということで、今も私はバロウクリフ家の一人娘として王国で暮らしている。
貴族という身分を失って庶民となり、暮らしてきた屋敷から出て、新しい居場所を作り上げた。
店内を見回す。
落ち着いたトーンのイスやテーブル。壁には、私が選んだ草花の絵が掛けられている。上質で希少な銘木で作られたカウンターキッチンに、厨房も完備。
カウンター席の向こうにある窓からは、澄んだ青空が見える。そんな店内に漂う、上品なコーヒーの香り。私が望んでいた空間が、そこにあった。
「うん、美味しい」
口に含むコーヒーは、私が自分で淹れたものだ。酸味と苦味のバランスが良くて、香りも豊かで私好みの味になっている。この味を出せるようになるのに、かなり練習した。まだまだ未熟だけど、お店で出せるぐらいのレベルまで上達していると思う。
いつか、毎日飲んでも飽きない味のコーヒーを淹れられるようになりたい。今は、その夢に向かって一歩ずつ進んでいる。
貴族だった頃には絶対に出来ないような、ゆっくりとした暮らし。なんて、素晴らしいんでしょう。
カランと、入り口のベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
私は立ち上がって、店に入ってきた客に笑顔で声をかける。
「こちらのお席へどうぞ。ご注文は、何になさいますか?」
「コーヒーと、コーヒーに合うお菓子を頼む」
「かしこまりました」
私は注文を受けるとお辞儀をして、コーヒーを淹れる作業に取りかかる。
カウンター席の一つに座った客は、商人風の身なりをした男性だった。顔を覚えている。何度か、この店に来てくれたことがある人だった。常連になってくれたらいいな。
「お待たせしました」
コーヒーと一品をお盆に乗せて、テーブルに置く。コーヒーに合うお菓子は、今朝焼いた作り置きのクッキーだ。小麦と砂糖で焼き上げた、私の手作り。
「うん。いい香りだ」
コーヒーの香りを楽しんでから、客はゆっくりとコーヒーを口へ運ぶ。美味しそうに飲んでくれるから、とても嬉しい。作る甲斐があるというものだわ。
「とても美味しいよ」
「ありがとうございます」
手作りのクッキーも褒めてもらった。その一言が嬉しい。満足感でいっぱいになる。カフェを開いて良かった。コーヒーを飲み終わり、お客様は帰っていく。
「またのお越しを、お待ちしております」
次の来店を楽しみにしながら、私はお客を見送る。
こんな感じで、新しくオープンしたお店は順調だった。
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