残念ながら、契約したので婚約破棄は絶対です~前の関係に戻るべきだと喚いても、戻すことは不可能ですよ~

キョウキョウ

文字の大きさ
21 / 31

第21話 戻りたい、わけがない

しおりを挟む
「貴方、レイティアと一緒になったんでしょう?」

 差し出された手を無視して、私は問いかける。あのパーティー会場で、本気で愛している相手で妻にすると宣言していたレイティアのことについて。彼女はどうしたのか。

「彼女のことは、今は別に考えなくていいよ。大切なのは、君と俺の関係を元通りにすることだから」
「いえ、ですから」

 伸ばしていた手を下げて、ランドリックは説明した。露骨に話をそらして、自分の都合を押し付けてくる。

「このままだと、マズいんだよ。次期当主の座も危うい。君に戻ってきてもらわないと困る。だから、俺と一緒に戻ろう」

 人の話を聞かない男だ。私には、戻るつもりは一切ない。

「お断りします。私は王都に戻るつもりなど、ありません。一人で帰ってください」

 そう言うと、彼は苦々しい表情で私を見つめた。それから、小さく舌打ちをする。

「君だって、貴族の生活に戻りたいと思っているはずだ。あの馬鹿な契約を破棄して、元の関係に戻ろう!」
「そんな事、全然思っていませんけど」
「強がる必要はないよ。さあ、一緒に王都へ帰ろう。その方が、君も幸せになれる」
「ちょっと、止めてください!」

 ランドリックが再び手を上げると、強引に私の腕を掴もうとしてくるので避ける。強く拒否した。

「ぐあっ!?」

 すると、彼は自分の手首を掴んで苦しみ始めた。契約した金色の証がある箇所ね。うめき声を上げて、歯を食いしばり顔色が悪くなっていく。いい気味ね。

 精霊の契約には、こんな効果があった。貴族の身分を放棄して一般庶民になった私を、貴族に戻そうとするのは契約違反に抵触する。それで、罰を受けているようだ。

「せっかく優しく言ってやったのに、キミという奴は! ワガママを言っていないで、さっさと帰るんだ! これ以上抵抗するのなら、メディチ公爵家の力を使って、この店を潰してやる! そうなったら、もう逃げられないぞ!」

 本当に馬鹿なのかしら。そんな脅し文句まで口に出して。

 会話だけで済ませようと思ったが、不可能。ここまで話が通じないなんて予想していなかった。この男を、どうやって店から叩き出すか。考えていると、近付いてくる影が見えた。

「あっ」
「そこまでだ」
「ぐはっ!?」

 怒鳴りながら掴みかかろうとしてくるランドリックの背後から、割って入ってくる人が。ランドリックの腕を掴むと、地面に叩きつけるように倒してから、拘束した。一瞬の出来事。

「だ、誰だ……っ! こんな事をして、メディチ家が黙っていないぞッ! さっさと離せっ!」

 地面に這いつくばったまま、喚き散らすランドリック。しかし、男は拘束を解かない。

「店長さん、安心してくれ。もうすぐ、警備兵が駆けつけると思う」
「は、はい……」
「おい!」

 私を助けてくれたのは、常連のユーグ様だった。ランドリックの言葉を無視して、私に教えてくれた。そして彼の言う通り、すぐ警備兵が来てくれた。バロウクリフ家の兵士だ。彼らは、ランドリックを連行していった。

 ようやく、店内が落ち着く。私も、ホッとした。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

「婚約破棄だ」と笑った元婚約者、今さら跪いても遅いですわ

ゆっこ
恋愛
 その日、私は王宮の大広間で、堂々たる声で婚約破棄を宣言された。 「リディア=フォルステイル。お前との婚約は――今日をもって破棄する!」  声の主は、よりにもよって私の婚約者であるはずの王太子・エルネスト。  いつもは威厳ある声音の彼が、今日に限って妙に勝ち誇った笑みを浮かべている。  けれど――。 (……ふふ。そう来ましたのね)  私は笑みすら浮かべず、王太子をただ静かに見つめ返した。  大広間の視線が一斉に私へと向けられる。  王族、貴族、外交客……さまざまな人々が、まるで処刑でも始まるかのように期待の眼差しを向けている。

【完結】急に態度を変えて来られても貴方のことは好きでも何でもありません!

珊瑚
恋愛
太っているせいで婚約者に罵られていたシャーロット。見切りをつけ、婚約破棄の書類を纏め、友達と自由に遊んだり、関係改善を諦めたら一気に激痩せ。今更態度を変えてきましたが私の貴方への気持ちが変わることは金輪際ありません。

悪女の私を愛さないと言ったのはあなたでしょう?今さら口説かれても困るので、さっさと離縁して頂けますか?

輝く魔法
恋愛
システィーナ・エヴァンスは王太子のキース・ジルベルトの婚約者として日々王妃教育に勤しみ努力していた。だがある日、妹のリリーナに嵌められ身に覚えの無い罪で婚約破棄を申し込まれる。だが、あまりにも無能な王太子のおかげで(?)冤罪は晴れ、正式に婚約も破棄される。そんな時隣国の皇太子、ユージン・ステライトから縁談が申し込まれる。もしかしたら彼に愛されるかもしれないー。そんな淡い期待を抱いて嫁いだが、ユージンもシスティーナの悪い噂を信じているようでー? 「今さら口説かれても困るんですけど…。」 後半はがっつり口説いてくる皇太子ですが結ばれません⭐︎でも一応恋愛要素はあります!ざまぁメインのラブコメって感じかなぁ。そういうのはちょっと…とか嫌だなって人はブラウザバックをお願いします(o^^o)更新も遅めかもなので続きが気になるって方は気長に待っててください。なお、これが初作品ですエヘヘ(о´∀`о) 優しい感想待ってます♪

婚約破棄を申し込まれたので快諾したら、信じられないとばかりに逆ギレされました。

香取鞠里
恋愛
婚約者のマークと結婚を前提に一緒に住み始めたクレアだが、マークにより嫌がらせのような扱いを受け、結婚前からうんざりしていた。 このまま結婚して、永遠にこの生活が続くようになるのかと悲観していたある日、マークから婚約破棄の書面を突きつけられる。 内心嬉々としてサインするクレアだが、そんなクレアにマークは逆ギレしてきて!? あなたが言ったから私はここにサインしたんですよ?

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」 アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。 金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。 私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

妹の嘘を信じた婚約者から責められたうえ婚約破棄されましたが、救いの手が差し伸べられました!? ~再会から幕開ける希望ある未来への道~

四季
恋愛
ダリア・フィーオンはある日のパーティー中に王子であり婚約者でもあるエーリオ・ディッセンヴォフから婚約破棄を告げられた。 しかもその決定の裏には、ダリアの妹であるローズの嘘があり。 婚約者と実妹の両方から傷つけられることとなってしまうダリアだった。 ただ、そんな時、一人の青年が現れて……。

【完結・全10話】偽物の愛だったようですね。そうですか、婚約者様?婚約破棄ですね、勝手になさい。

BBやっこ
恋愛
アンネ、君と別れたい。そういっぱしに別れ話を持ち出した私の婚約者、7歳。 ひとつ年上の私が我慢することも多かった。それも、両親同士が仲良かったためで。 けして、この子が好きとかでは断じて無い。だって、この子バカな男になる気がする。その片鱗がもう出ている。なんでコレが婚約者なのか両親に問いただしたいことが何回あったか。 まあ、両親の友達の子だからで続いた関係が、やっと終わるらしい。

処理中です...