残念ながら、契約したので婚約破棄は絶対です~前の関係に戻るべきだと喚いても、戻すことは不可能ですよ~

キョウキョウ

文字の大きさ
25 / 31

第25話 語った部分 ※ユーグ視点

しおりを挟む
 俺は一人で、アンリエッタのカフェでコーヒーを飲んでいる。店内の雰囲気に浸りながら、過去について振り返っていた。



 パーティーで精霊の契約を結んだアンリエッタを見てから数日後、俺も婚約相手と精霊の契約を結ぶ準備をした。契約書を用意し、相手に事情を説明して、同意を得ることに成功。

「この契約書にサインすれば、あの方と一緒になれるのですね」
「ああ、そうだ。精霊の契約を結んでしまえば、両親も認めるしかなくなるだろう」

 話し合った結果、乗り気の婚約相手に内容を確認させてからサインをしてもらう。あっさりと、精霊の契約を結ぶことにも成功した。お互いの腕に金色の輪が出現したことを確認する。これでもう、後戻りはできない。

「今までありがとう。では、さようなら」

 婚約を破棄して、近いうちにルニュルス家から出ていく予定の俺。だから、彼女とはもう会うこともないだろう。これが最後のお別れ。

「ユーグ様。色々と、ありがとうございました。私には、これを言う権利はないかもしれませんが。お幸せに」
「ああ、そちらもな」

 少し心苦しそうな表情の元婚約相手。俺が、貴族以外の自由な生き方をしたいという願望があったからこそ、こうなってしまった。俺の都合で悪いと思っているけど、後悔はしていない。なので彼女こそ、幸せになってほしいな。

 別れを告げて、その場を後にした。思っていたより、悪くない最後だったと思う。後は、優秀な弟に任せておけばいいだろう。



「本当に、兄さんは僕に任せる気なの?」
「ああ。お前がルニュルス家を継ぐ方が、上手くいくはずだ」
「それでも、兄さんが継ぐべきじゃ?」
「お前は優秀だから、大丈夫。彼女のことも、お前に任せた。好き合っている者同士で一緒になる方が幸せになれるはずだから」

 元婚約者のことを言うと、弟の表情が赤くなる。本気で好きなんだろう。それが、表情に出ていた。だからこそ、彼らは一緒になるべきなんだ。

「……わかった。頑張ってみる」

 弟に任せて、俺の役目はなくなった。これでいい。



 全てを終えて、ルニュルス家の現当主である父親へ報告しに行く。

「ということで、俺は婚約を破棄しました」
「お前はまた、そんな勝手なことを……! お前はッ!!」

 当然、父親は激怒した。勝手な行動をして、現当主の意向など無視して自分たちで決めてしまった。俺は、ものすごく怒られた。その怒りは当然だろう。

 だが、俺は自分の意志を変えるつもりはない。家を出て、当主の座は弟に任せる。余計な家督争い、お家騒動を起こさないためにも。そういう言い訳を用意してきた。

 優秀な弟が継いでくれるのが、最善の選択であること。俺の考えを、怒られながら何度も説明した。

「お前は、自分の意志で精霊の契約を取り消すつもりはないのだな?」
「はい」
「……はぁ」

 現当主の問いに、俺は答えた。重いため息をついて、呆れた表情の現当主。

「……わかった。認めよう。もう、お前の好きにするがよい。跡継ぎを選びなおし、お前の婚約相手だった彼女の意向も尊重しよう」
「ありがとうございます!」

 最終的には納得してくれた。納得というか、俺が絶対に折れないことを悟って諦めたのだろうけど。

 こうして俺はルニュルス家を離れて、自由にすることを認めてもらえた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

平民を好きになった婚約者は、私を捨てて破滅するようです

天宮有
恋愛
「聖女ローナを婚約者にするから、セリスとの婚約を破棄する」  婚約者だった公爵令息のジェイクに、子爵令嬢の私セリスは婚約破棄を言い渡されてしまう。  ローナを平民だと見下し傷つけたと嘘の報告をされて、周囲からも避けられるようになっていた。  そんな中、家族と侯爵令息のアインだけは力になってくれて、私はローナより聖女の力が強かった。  聖女ローナの評判は悪く、徐々に私の方が聖女に相応しいと言われるようになって――ジェイクは破滅することとなっていた。

第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください!

黒うさぎ
恋愛
公爵令嬢であるレイシアは、第一王子であるロイスの婚約者である。 しかし、ロイスはレイシアを邪険に扱うだけでなく、男爵令嬢であるメリーに入れ込んでいた。 レイシアにとって心安らぐのは、王城の庭園で第二王子であるリンドと語らう時間だけだった。 そんなある日、ついにロイスとの関係が終わりを迎える。 「レイシア、貴様との婚約を破棄する!」 第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください! 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

失礼な人のことはさすがに許せません

四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」 それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。 ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。

婚約者をないがしろにする人はいりません

にいるず
恋愛
 公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。  ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。  そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない!」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。

ぱんだ
恋愛
クロエ・エルフェシウス公爵令嬢とガブリエル・フォートグランデ王太子殿下は婚約が内定する。まだ公の場で発表してないだけで、王家と公爵家の間で約束を取り交わしていた。 だが帝立魔法学園の創立記念パーティーで婚約破棄を宣言されてしまった。ガブリエルは魔法の才能がある幼馴染のアンジェリカ男爵令嬢を溺愛して結婚を決めたのです。 その理由は、ディオール帝国は魔法至上主義で魔法帝国と称される。クロエは魔法が一番大切な国で一人だけ魔法が全然使えない女性だった。 クロエは魔法が使えないことに、特に気にしていませんでしたが、日常的に家族から無能と言われて、赤の他人までに冷たい目で見られてしまう。 ところがクロエは魔法帝国に、なくてはならない女性でした。絶対に必要な隠された能力を持っていた。彼女の真の姿が明らかになると、誰もが彼女に泣いて謝罪を繰り返し助けてと悲鳴を上げ続けた。

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福

香木陽灯
恋愛
 田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。  しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。 「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」  婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。  婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。  ならば一人で生きていくだけ。  アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。 「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」  初めての一人暮らしを満喫するアリシア。  趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。 「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」  何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。  しかし丁重にお断りした翌日、 「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」  妹までもがやってくる始末。  しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。 「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」  家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

処理中です...