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第16話 裏側で起きていた出来事
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「あの人が来ていたのですか?」
「ああ。最初は、招待状を持たない者が会場に無理やり入ろうと暴れているとのことだった」
エドワードが現場に向かうと、ブラックソーン公爵家の次期当主だと主張するダミアンが、メイドに対して乱暴な態度で立ち入りを要求していた。会場入り口の大理石の床に、彼の怒声が響き渡る。
エドワードは、彼が例の手紙を送ってきた人物だと察した。手紙の内容を思い出して、不快感をあらわにする。
「さっさと会場に入れろ。私は、ブラックソーン公爵家の次期当主だぞ!」
ダミアンの声には、自分の要求が通らないことへの苛立ちが滲んでいた。しかし、メイドは決して譲らない。
「招待状を持っていない方を会場に立ち入らせるわけにはいきません」
「ならば、ヴィクトリアを呼び出せ! 彼女と話がしたい。ただそれだけだ」
高圧的な態度で迫るダミアンに、メイドは一歩後ずさった。その瞬間、エドワードは毅然とした足取りでメイドの前に立ち、穏やかだが断固とした声で答えた。
「彼女は今、パーティーの運営で忙しいです。なので、あなたに会っている時間はありません」
「なんだと!」
ダミアンは彼をキッと睨みつけた。その目には怒りと共に、自分の立場が通用しない状況への戸惑いも浮かんでいた。しかし、エドワードは平然としていた。目の前の男は、まるでわがままを言う子どもにしか見えない。豪奢な装いとは裏腹に、その態度は公爵家の次期当主とは思えないほど稚拙なものだった。
ダミアンはエドワードをじっくり観察し、ヴィクトリアの新しい婚約相手だと察したのか、唇を歪めた。そして、見下すような言い方で続けた。その声には、明らかな敵意が込められている。
「ヴィクトリアは返してもらう。彼女は、侯爵家の人間なんかには勿体ない」
エドワードは呆れて言葉を失った。自分から婚約を破棄しておきながら、何を言っているのか。ヴィクトリアから事情を聞いていたエドワードは、ダミアンの傲慢な態度に唖然とした。そして、自分勝手な理由でヴィクトリアとの関係を元に戻そうとする彼の考えに腹立たしさを覚えた。その感情を押し殺しながら、冷静に対応を続ける。
「とにかく、招待状を持っていない方を会場には立ち入らせませんし、ヴィクトリアとも会わせません。お帰りください」
エドワードの声には、これ以上の議論を許さない強さがあった。
「なに!? どうしてもヴィクトリアを返さないつもりか! 邪魔をするのならば、容赦しないぞ」
ダミアンは怒りに任せてエドワードを睨みつけ、ヴィクトリアと会わせてくれないのなら容赦しないと脅した。それでも、エドワードは特に危険も感じない。
「おい、お前たち! この男を拘束しろ。公爵家の人間に逆らった罰を与える」
ダミアンが背後の護衛に対し、エドワードを拘束するよう命令すると、護衛たちは困惑した様子を見せた。彼らは互いの顔を見合わせ、どうするべきか悩んでいるようだった。主人の命令とはいえ、この場での実力行使が招く結果を懸念していることは明らかだった。
「なにをしている! グズグズするな。私の命令が聞けないのか!?」
ダミアンが護衛たちを怒鳴りつけると、彼らは仕方なく動こうとした。その瞬間、柱の陰や廊下の曲がり角に待機していたハーウッド家の兵士が現れ、あっという間にダミアンと護衛を拘束した。整然とした動きは、日頃の訓練の賜物だった。
「な、なんだと!?」
ダミアンの反応を見て、エドワードは呆れていた。どうやら、ハーウッド家が軍事貴族であることを把握していないようだ。敵対されれば、たとえ相手が公爵家だったとしても反撃する許可を王家から得ていた。
ハーウッド家には、王国の防衛に関する重要な機密もあるため、剣を抜こうとすれば対処せざるを得ない。それは王家から与えられた特権であり、責務でもあった。
エドワードは、ダミアンたちを王家騎士団に引き渡すよう指示し、会場に戻った。パーティーの雰囲気を乱さないよう、事を静かに収めたのだった。
「――ということがあった」
「まさか、そんな事が起きていたなんて」
ヴィクトリアは、エドワードから一連の出来事を聞き、改めて驚きを隠せなかった。彼が離れていた間に何が起きていたのか分かって、愕然とした。しかし同時に、エドワードの毅然とした対応に安心感を覚えた。
「ああ。最初は、招待状を持たない者が会場に無理やり入ろうと暴れているとのことだった」
エドワードが現場に向かうと、ブラックソーン公爵家の次期当主だと主張するダミアンが、メイドに対して乱暴な態度で立ち入りを要求していた。会場入り口の大理石の床に、彼の怒声が響き渡る。
エドワードは、彼が例の手紙を送ってきた人物だと察した。手紙の内容を思い出して、不快感をあらわにする。
「さっさと会場に入れろ。私は、ブラックソーン公爵家の次期当主だぞ!」
ダミアンの声には、自分の要求が通らないことへの苛立ちが滲んでいた。しかし、メイドは決して譲らない。
「招待状を持っていない方を会場に立ち入らせるわけにはいきません」
「ならば、ヴィクトリアを呼び出せ! 彼女と話がしたい。ただそれだけだ」
高圧的な態度で迫るダミアンに、メイドは一歩後ずさった。その瞬間、エドワードは毅然とした足取りでメイドの前に立ち、穏やかだが断固とした声で答えた。
「彼女は今、パーティーの運営で忙しいです。なので、あなたに会っている時間はありません」
「なんだと!」
ダミアンは彼をキッと睨みつけた。その目には怒りと共に、自分の立場が通用しない状況への戸惑いも浮かんでいた。しかし、エドワードは平然としていた。目の前の男は、まるでわがままを言う子どもにしか見えない。豪奢な装いとは裏腹に、その態度は公爵家の次期当主とは思えないほど稚拙なものだった。
ダミアンはエドワードをじっくり観察し、ヴィクトリアの新しい婚約相手だと察したのか、唇を歪めた。そして、見下すような言い方で続けた。その声には、明らかな敵意が込められている。
「ヴィクトリアは返してもらう。彼女は、侯爵家の人間なんかには勿体ない」
エドワードは呆れて言葉を失った。自分から婚約を破棄しておきながら、何を言っているのか。ヴィクトリアから事情を聞いていたエドワードは、ダミアンの傲慢な態度に唖然とした。そして、自分勝手な理由でヴィクトリアとの関係を元に戻そうとする彼の考えに腹立たしさを覚えた。その感情を押し殺しながら、冷静に対応を続ける。
「とにかく、招待状を持っていない方を会場には立ち入らせませんし、ヴィクトリアとも会わせません。お帰りください」
エドワードの声には、これ以上の議論を許さない強さがあった。
「なに!? どうしてもヴィクトリアを返さないつもりか! 邪魔をするのならば、容赦しないぞ」
ダミアンは怒りに任せてエドワードを睨みつけ、ヴィクトリアと会わせてくれないのなら容赦しないと脅した。それでも、エドワードは特に危険も感じない。
「おい、お前たち! この男を拘束しろ。公爵家の人間に逆らった罰を与える」
ダミアンが背後の護衛に対し、エドワードを拘束するよう命令すると、護衛たちは困惑した様子を見せた。彼らは互いの顔を見合わせ、どうするべきか悩んでいるようだった。主人の命令とはいえ、この場での実力行使が招く結果を懸念していることは明らかだった。
「なにをしている! グズグズするな。私の命令が聞けないのか!?」
ダミアンが護衛たちを怒鳴りつけると、彼らは仕方なく動こうとした。その瞬間、柱の陰や廊下の曲がり角に待機していたハーウッド家の兵士が現れ、あっという間にダミアンと護衛を拘束した。整然とした動きは、日頃の訓練の賜物だった。
「な、なんだと!?」
ダミアンの反応を見て、エドワードは呆れていた。どうやら、ハーウッド家が軍事貴族であることを把握していないようだ。敵対されれば、たとえ相手が公爵家だったとしても反撃する許可を王家から得ていた。
ハーウッド家には、王国の防衛に関する重要な機密もあるため、剣を抜こうとすれば対処せざるを得ない。それは王家から与えられた特権であり、責務でもあった。
エドワードは、ダミアンたちを王家騎士団に引き渡すよう指示し、会場に戻った。パーティーの雰囲気を乱さないよう、事を静かに収めたのだった。
「――ということがあった」
「まさか、そんな事が起きていたなんて」
ヴィクトリアは、エドワードから一連の出来事を聞き、改めて驚きを隠せなかった。彼が離れていた間に何が起きていたのか分かって、愕然とした。しかし同時に、エドワードの毅然とした対応に安心感を覚えた。
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