どうなるのか見てみたかった~婚約破棄された令嬢は、その後の王国がどうなるのか見守ってみることにした~

キョウキョウ

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第5話 美しさの証明※アマリリス視点

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 自分の魅力がどこまで通用するのか、試したいと思った。それは単なる好奇心だけではなく、私の存在証明のようなものだった。

「アマリリス、おまえは美しい。その美しさで、いつか大きな幸せを掴むのだ」
「はい、お父様」

 幼い頃から父に言われ続けてきた言葉。クリムゾン家は三代前に商人から貴族に成り上がった新興貴族である。宮廷では未だに「成り上がり」と蔑まれたりする存在。そんな家に生まれた私に与えられた大きな武器は、この「美しさ」だった。

 学問も政治も外交の勉強も苦手だった私。だけど、鏡に映る自分の姿だけは自信があった。赤い髪と碧い瞳。雪のように白い肌と、しなやかな体つき。これを、上手く活用したい。

 この美しさで何ができるか。試してみたい。

 試すために、私は最高の獲物を選んでみた。ザイン・カルディナル王子だ。王国の次期国王であり、すでに婚約者がいる男性。

 彼の婚約相手よりも、私のほうが魅力的でしょ。

 フローレンス・バーミリオンは確かに名門の令嬢で、教養もある。でも、彼女には私のような輝きはない。堅苦しく、冷たく、魅力に欠ける女性。あれなら、どうにかなりそうだと思った。

 私は自分の美しさを証明するために、私は王子を奪い取ることにチャレンジする。

 とはいえ、魅力だけで男性を奪うのは難しいでしょう。特に、王家の婚約者を奪うなら、もっと深い感情が必要なのは理解している。

 相手を本気で愛することも、計画の一部にしないといけない。魅力と演技だけでは表面的すぎる。本物の感情がなければ、相手の心は本当には動かせない。彼のことを心から愛そうと決めた。そうすれば、私の美しさも最大限に発揮できるはず。それが大事なの。

 王宮での舞踏会。きらびやかなドレスに身を包み、私は意図的に王子の視界に入るように立ち回った。

 驚いたことに、王子に近づくのは予想していたより簡単だった。ここが一番難しいかもしれないと思っていたのに、彼はあっさり私が入り込むのを許してくれた。

「殿下、お会いできて光栄です。本日のパーティーは、とても素敵ですね」

 単純な言葉をかけただけなのに、彼はすぐに反応した。その目には、まるで救いを求めるような光があった。話しかけただけなのに、この反応。よっぽど溜まっているのね。

 でも王家って、もっと警戒心が強いんじゃないの?

 私は内心で思いながら、彼との会話を楽しんだ。本気で楽しむ姿を見せつけるの。そしてすぐ、彼の弱点を見抜いた。

 ザイン王子は認められたがっていた。誰かに理解されたいと望んでいた。そして、婚約者のフローレンスからはそれを得られていないと感じていた。

 これは、私にとって都合がいい状態。

「殿下は、本当に優しい方なのですね。皆が見ている強い王子様だけでなく、本当の繊細な貴方を知ることができて嬉しいです」

 その言葉を口にした時、彼の表情が変わるのを見逃さなかった。

「本当にそう思うのか?」
「もちろんですわ。殿下のお人柄に、心から惹かれています」

 本気の言葉で伝える。すると、彼も嬉しそうな表情を浮かべていた。

 それから、私は計画的に彼との関係を深めていった。

 王宮での偶然の出会いを装った遭遇。
 彼の好きなものを調べ、同じ趣味があると喜びながらの会話。
 彼の愚痴を聞き、常に彼の味方であることを示す本気の態度。

「フローレンス様はあまりに厳格すぎるのではありませんか? 殿下も人間、たまには息抜きも必要ですわ」

 王子の婚約者を直接批判することはなかった。それは逆効果だと知っていたから。代わりに、婉曲的に彼女の欠点を示唆し、私との違いを際立たせた。

「貴方のお話を聞いているだけで、私、心から楽しめています」

 彼の前で、最高の笑顔を見せた。それは作られた笑顔ではなく、本当に彼と一緒にいる喜びからくる笑顔だった。だから、私を選んでほしい。

「殿下のことを、お慕いしています」

 東の離宮での密会。月明かりの下での告白は、計算されたものでありながら、真実の言葉でもあった。本気で恋をする。この顔を、貴方に見せてあげる。



 こうして起こった季節の祝宴での出来事は、私の予想をはるかに超えていた。

 ザイン王子が公衆の面前でフローレンスとの婚約破棄を宣言して、私の名を呼んだ瞬間、本当に驚いた。彼がそこまで大胆な行動を取るとは思っていなかったから。

「アマリリス!」

 彼の呼びかけに、私は優雅に歩み出た。周囲の視線が刺さる中、笑顔を浮かべる。心からの喜び。私は選ばれたんだ。自分の感性は間違いなかった。

「はい、殿下」

 柔らかな声で答えながら、フローレンスの表情をちらりと見てみた。彼女の冷静さは少し意外だったけど、気にしない。大切なのは、王子が私を選んでくれたということだけ。私の魅力が、私の愛が、彼の心を動かしたということ。

 王子の腕に抱かれながら、私は勝利の喜びと愛の充実感で胸が一杯になった。これで証明された。私の魅力は本物だと。私は美しいのよ。最高の答えを得た。

 そして思いがけず、王妃になれるチャンスも手に入れた。これは本当に大きな幸運よね。父が言っていた通り、この美しさで大きな幸せを掴むことができる。このままザイン王子の心を離さず、必ず王妃の座を手に入れてみせるのよ。
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