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第8話
「お姉様!」
用事があって戻っていた実家の廊下を一人で歩いていると、遠くの方から私を呼ぶ声が聞こえてきた。屋敷の中で、私のことをお姉様と呼ぶのは妹ぐらいかな。
立ち止まって振り向く。走り寄ってきたのは、予想通り妹のドゥニーズだった。
「あら、ドゥニーズ。久しぶりね」
彼女は最近とても忙しそうで、顔を合わせて話をするのは久しぶりのことだった。そんな彼女は前置きも無く、突然こう言ってきた。
「助けて下さい!」
「……え? 助けて、って何を?」
いきなりだったので、何のことか分からない。思い当たる事はあるけれども、私はわざと気付かない振りをして話を続けた。
「パーティーに関することです! 私に、上手くやる方法を教えて下さい!」
やっぱり、その事だったか。つい先日、彼女が主催した社交界が大失敗したという噂は耳にしている。
ドゥニーズは、私から婚約相手を奪い取ったという記憶は消え失せてしまったのだろうか。そんな相手に助けを求める、厚顔無恥な妹。
「なぜ私が、貴女に社交界やパーティーについて教えないといけないの?」
「お姉様は、アルフレッド様の元婚約者じゃありませんか! だから、次に主催する時には上手くいくように、アルフレッド様が恥をかかないように手伝って下さい」
ちゃんと、私の婚約者だったことは覚えていたらしい。なら、もっと分からない。なぜ私が、関係も無くなった相手が恥をかかないように手伝う必要があるのか。
「無理よ。新しい婚約者になった貴女が、助けてあげなさい」
「ダメなんです! アルフレッド様は、お姉様が今までしてきた事をやれと無理やり命じてくるんです。そんなの、私には出来ない!」
何を言っているんだ、この妹は。
「私は、貴女が思いついた画期的なアイデアを奪い取った。そういう話になっているんでしょ? 私から功績を奪ったんなら、その責任を果たしなさいな」
妹から、パーティーについての新しいアイデアを奪い取った卑怯な姉。そう思っているらしいアルフレッド。そんな人を助けたいとは思わない。そう仕向けた妹も。
「うっ……そ、それはそうだけど……でも」
それでもドゥニーズは諦めずに、私に助けてもらおうと必死に理由を考え出そうとしている。無駄なのにね。
それに私は忙しくて、彼女たちのことを助けている暇は無かった。
「私も、近いうちに社交パーティーを開く予定だから。そっちの準備が忙しいのよ」
「そんな! ちょっとくらい手伝ってくれても良いではないですか? 姉なのに!」
「何と言おうと、無理なものは無理。せいぜい頑張りなさい」
「ま、待って下さいッ! お姉様! お姉様ッ!」
私は、妹の呼ぶ声を無視して廊下を歩く。
関わっているだけで時間の無駄だから、さっさとフィヨン侯爵家の屋敷に帰ろう。向こうで私達が主催するパーティーの準備を進めるほうが、何千倍も有意義だから。
用事があって戻っていた実家の廊下を一人で歩いていると、遠くの方から私を呼ぶ声が聞こえてきた。屋敷の中で、私のことをお姉様と呼ぶのは妹ぐらいかな。
立ち止まって振り向く。走り寄ってきたのは、予想通り妹のドゥニーズだった。
「あら、ドゥニーズ。久しぶりね」
彼女は最近とても忙しそうで、顔を合わせて話をするのは久しぶりのことだった。そんな彼女は前置きも無く、突然こう言ってきた。
「助けて下さい!」
「……え? 助けて、って何を?」
いきなりだったので、何のことか分からない。思い当たる事はあるけれども、私はわざと気付かない振りをして話を続けた。
「パーティーに関することです! 私に、上手くやる方法を教えて下さい!」
やっぱり、その事だったか。つい先日、彼女が主催した社交界が大失敗したという噂は耳にしている。
ドゥニーズは、私から婚約相手を奪い取ったという記憶は消え失せてしまったのだろうか。そんな相手に助けを求める、厚顔無恥な妹。
「なぜ私が、貴女に社交界やパーティーについて教えないといけないの?」
「お姉様は、アルフレッド様の元婚約者じゃありませんか! だから、次に主催する時には上手くいくように、アルフレッド様が恥をかかないように手伝って下さい」
ちゃんと、私の婚約者だったことは覚えていたらしい。なら、もっと分からない。なぜ私が、関係も無くなった相手が恥をかかないように手伝う必要があるのか。
「無理よ。新しい婚約者になった貴女が、助けてあげなさい」
「ダメなんです! アルフレッド様は、お姉様が今までしてきた事をやれと無理やり命じてくるんです。そんなの、私には出来ない!」
何を言っているんだ、この妹は。
「私は、貴女が思いついた画期的なアイデアを奪い取った。そういう話になっているんでしょ? 私から功績を奪ったんなら、その責任を果たしなさいな」
妹から、パーティーについての新しいアイデアを奪い取った卑怯な姉。そう思っているらしいアルフレッド。そんな人を助けたいとは思わない。そう仕向けた妹も。
「うっ……そ、それはそうだけど……でも」
それでもドゥニーズは諦めずに、私に助けてもらおうと必死に理由を考え出そうとしている。無駄なのにね。
それに私は忙しくて、彼女たちのことを助けている暇は無かった。
「私も、近いうちに社交パーティーを開く予定だから。そっちの準備が忙しいのよ」
「そんな! ちょっとくらい手伝ってくれても良いではないですか? 姉なのに!」
「何と言おうと、無理なものは無理。せいぜい頑張りなさい」
「ま、待って下さいッ! お姉様! お姉様ッ!」
私は、妹の呼ぶ声を無視して廊下を歩く。
関わっているだけで時間の無駄だから、さっさとフィヨン侯爵家の屋敷に帰ろう。向こうで私達が主催するパーティーの準備を進めるほうが、何千倍も有意義だから。
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