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第8話 実験失敗 ※宮廷魔術師の長候補の視点
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アルメルと過ごす日々は、とても楽しかった。彼女と一緒に居ると、研究の疲れが癒えて、新たなアイデアが浮かんでくる。そしてまた、研究に取り組む意欲が湧いてくる。
彼女と出会ってから、研究はとても順調だった。そして今研究している新たな技術も、彼女の影響が大きかった。
本当はもっと、アルメルと一緒に居たい。だけど、宮廷魔術師の仕事も大事だ。だから今は、自分の仕事に集中する。成果を出して王国内での評価を上げて、アルメルに褒めてもらうんだ。
お仕事お疲れ様。研究、がんばったね。と。
しかし、その集中を乱す問題が発生した。
「うわっ!? っと」
研究室内で、小さな爆発が起きた。熱風で顔が焼けそうになるが、とっさに両腕でガードして防ぐ。
予想と違う反応が起きてしまったことに、僕は愕然とした。こんなはずでは。
「クロヴィス様っ!? 大丈夫ですか?」
控えていた侍女たちが騒いでいた。失敗した瞬間を見られてしまった。くそ、面倒な。
「っ! 大丈夫だ。何も問題ない!」
そう答えつつ、内心舌打ちをする。宮廷魔術師である僕には失敗なんて許されないというのに。とりあえず、それ以上の追及は許さず原因の究明に集中する。
「失敗の原因は? 手順を間違えたか? 疲れているのかな。……ったく!」
実験の手を止める。高まっていた集中力が、一瞬で消え去った。こんなことになるなんて、予想外だ。せっかく最高に集中していたのに、邪魔された気分。そのことにイラつきながら、急いで状況を確認する。
魔力が変な反応を起こして、素材が爆発した。魔力が放出されて、かなり危なかった。こんな失敗を起こすなんて、何が原因だろう。新たなアイデアが間違っていたのか。いや、そんなはずはない。失敗が起きたのは、新たに思いついたアイデアとは関係のない部分。
ここまでの手順に、問題は1つもないはず。この部分は、今までに何度も繰り返したことのある工程だ。そもそも、こんな初歩的な部分で失敗が起きるはずないのに。
その後も、失敗の原因究明に時間を費やしていく。こんなことに無駄な時間を割いている場合ではないはずなのに。早く原因を突き止めなければと思うほどイライラしてきて、頭が混乱していく。
それでも、なんとか失敗した原因を突き止めた。
「……はぁ?」
僕は再び呆然とする。判明した、予想外の事実に。
「実験に使用した素材の質が悪い、のか……? いや、なんで?」
実験に失敗した原因、それは実験に使用していた素材に問題があったからだと判明。この素材の質では、魔力を保有する力が足りない。その結果、失敗が起きてしまったのだ。
急いで、研究室に搬入された他の素材の質をチェックした。
「おいおいおい」
結果、実験に使用したら失敗するだろうというレベルの素材ばかりであったことが判明。それらは、僕が発注したものより品質が低いものだった。これでは、実験の結果なんて期待できない。
こんな質の悪い素材を、王国に仕える僕たち宮廷魔術師に持ってくるなんて。今までに一度もなかったこと。それが、なんで起きたのか。いつから、こうなっていたんだ。
信じられない出来事に、僕は憤りを覚えた。知らないまま質の悪い素材で実験するなんて、下手すれば命に関わる事故が起こるかも。
「こんな悪質な素材を用意するなんて。素材の調達班に抗議しないと!」
「クロヴィス様っ! どちらへ!?」
「ちょっと用事だ! すぐ戻る」
侍女たちへ適当に答えながら、研究室から飛び出した。僕は急いで、素材を調達した者たちのところへ向かう。素材の質の悪さを指摘するためだ。用意するべき素材の質の確認を怠ったせいで、こんなことが起きてしまった。
直接、文句を言いに行くのは当然のことだ。
僕は苛立ちを覚えながら、素材の調達班がいる場所を訪れる。そこで、初めて知った。いつの間にか、調達を任せていた商人が変更していたことを。
「取引先の商人が変わった? どうして、変えたんだ? いつもの商会に任せておけば問題はなかったし、そのままでよかっただろう?」
僕がそう言うと、調達班のスタッフたちが驚いた顔で僕の顔を見てきた。その表情には、怒りの感情も浮かんでいた。どうして、怒っているのだろう。僕はただ、当たり前のことを言っただけなのに。
「何を言っているのですか! 取引を断られるようになったのは、貴方のせいでしょう?」
「え? 僕のせい?」
取引を断られた? それで、商人を変えないと素材を調達できなくなった。その原因が僕にあると言われたが、全く心当たりがない。
「どういうことですか? 説明してください」
「どうもこうも、貴方がマリン様との婚約を破棄したからでしょう!」
「え」
なぜ、彼女の名前がここで出てくるのか。確かに僕は、マリンに婚約破棄を告げたけれど。それと、素材の質の悪化に何の関係が?
彼女と出会ってから、研究はとても順調だった。そして今研究している新たな技術も、彼女の影響が大きかった。
本当はもっと、アルメルと一緒に居たい。だけど、宮廷魔術師の仕事も大事だ。だから今は、自分の仕事に集中する。成果を出して王国内での評価を上げて、アルメルに褒めてもらうんだ。
お仕事お疲れ様。研究、がんばったね。と。
しかし、その集中を乱す問題が発生した。
「うわっ!? っと」
研究室内で、小さな爆発が起きた。熱風で顔が焼けそうになるが、とっさに両腕でガードして防ぐ。
予想と違う反応が起きてしまったことに、僕は愕然とした。こんなはずでは。
「クロヴィス様っ!? 大丈夫ですか?」
控えていた侍女たちが騒いでいた。失敗した瞬間を見られてしまった。くそ、面倒な。
「っ! 大丈夫だ。何も問題ない!」
そう答えつつ、内心舌打ちをする。宮廷魔術師である僕には失敗なんて許されないというのに。とりあえず、それ以上の追及は許さず原因の究明に集中する。
「失敗の原因は? 手順を間違えたか? 疲れているのかな。……ったく!」
実験の手を止める。高まっていた集中力が、一瞬で消え去った。こんなことになるなんて、予想外だ。せっかく最高に集中していたのに、邪魔された気分。そのことにイラつきながら、急いで状況を確認する。
魔力が変な反応を起こして、素材が爆発した。魔力が放出されて、かなり危なかった。こんな失敗を起こすなんて、何が原因だろう。新たなアイデアが間違っていたのか。いや、そんなはずはない。失敗が起きたのは、新たに思いついたアイデアとは関係のない部分。
ここまでの手順に、問題は1つもないはず。この部分は、今までに何度も繰り返したことのある工程だ。そもそも、こんな初歩的な部分で失敗が起きるはずないのに。
その後も、失敗の原因究明に時間を費やしていく。こんなことに無駄な時間を割いている場合ではないはずなのに。早く原因を突き止めなければと思うほどイライラしてきて、頭が混乱していく。
それでも、なんとか失敗した原因を突き止めた。
「……はぁ?」
僕は再び呆然とする。判明した、予想外の事実に。
「実験に使用した素材の質が悪い、のか……? いや、なんで?」
実験に失敗した原因、それは実験に使用していた素材に問題があったからだと判明。この素材の質では、魔力を保有する力が足りない。その結果、失敗が起きてしまったのだ。
急いで、研究室に搬入された他の素材の質をチェックした。
「おいおいおい」
結果、実験に使用したら失敗するだろうというレベルの素材ばかりであったことが判明。それらは、僕が発注したものより品質が低いものだった。これでは、実験の結果なんて期待できない。
こんな質の悪い素材を、王国に仕える僕たち宮廷魔術師に持ってくるなんて。今までに一度もなかったこと。それが、なんで起きたのか。いつから、こうなっていたんだ。
信じられない出来事に、僕は憤りを覚えた。知らないまま質の悪い素材で実験するなんて、下手すれば命に関わる事故が起こるかも。
「こんな悪質な素材を用意するなんて。素材の調達班に抗議しないと!」
「クロヴィス様っ! どちらへ!?」
「ちょっと用事だ! すぐ戻る」
侍女たちへ適当に答えながら、研究室から飛び出した。僕は急いで、素材を調達した者たちのところへ向かう。素材の質の悪さを指摘するためだ。用意するべき素材の質の確認を怠ったせいで、こんなことが起きてしまった。
直接、文句を言いに行くのは当然のことだ。
僕は苛立ちを覚えながら、素材の調達班がいる場所を訪れる。そこで、初めて知った。いつの間にか、調達を任せていた商人が変更していたことを。
「取引先の商人が変わった? どうして、変えたんだ? いつもの商会に任せておけば問題はなかったし、そのままでよかっただろう?」
僕がそう言うと、調達班のスタッフたちが驚いた顔で僕の顔を見てきた。その表情には、怒りの感情も浮かんでいた。どうして、怒っているのだろう。僕はただ、当たり前のことを言っただけなのに。
「何を言っているのですか! 取引を断られるようになったのは、貴方のせいでしょう?」
「え? 僕のせい?」
取引を断られた? それで、商人を変えないと素材を調達できなくなった。その原因が僕にあると言われたが、全く心当たりがない。
「どういうことですか? 説明してください」
「どうもこうも、貴方がマリン様との婚約を破棄したからでしょう!」
「え」
なぜ、彼女の名前がここで出てくるのか。確かに僕は、マリンに婚約破棄を告げたけれど。それと、素材の質の悪化に何の関係が?
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