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第29話 王国からの招待状
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ある日、ジャスター様に呼び出されたので来てみると、差し出されたのは1枚の紙。それを私に見せながら、彼は説明してくれた。
「実は、エレノラ宛にラドグリア王国からパーティーの招待状が送られてきた」
「王国から私宛に? どういうことですか?」
詳しく話を聞いてみると、どうやらラドグリアの王から皇帝陛下に手紙が送られてきたらしい。その内容は、帝国と王国の親交を深める目的のパーティーを開催するので、ぜひ参加してほしいというもの。
「つまり私も、そのパーティーに招待されたのですか?」
「そういうことだ。王国から一緒に来た君の友人たちも名指しで、このパーティーに招待されている」
「リゼットやフローラたちも!?」
そうだ、と頷くジャスター様。どういうことかしら。あんな出来事があったのに、その最中は何もせずに静観するだけだったラドグリアの王が。急に、どうして。
皇帝陛下に送った手紙に私たちの名前を書いて招待するということは、帝国に居ることも把握しているのよね。放っておいてくれたらよかったのに。
王国へ戻るように説得するつもりかしら。皇帝陛下にお伝えしてあるということは、ラドグリアの王も強引な手段に出るつもりはないと思いたいけど。
「もちろん、この話は断ってくれても構わない」
「……いえ、私も参加します」
しばらく考えて、私はパーティーに参加することを決めた。理由は、私や友人たちの家族が今も王国に残っているから。
私たちは正式な手順を踏んでから、帝国に来た。しかし、現当主が領地から離れるのは難しい。領民も置いていけないので、両親や何人かの兄弟姉妹たちは今も王国で暮らしている状況だった。
この招待を断ったら、ラドグリアの王が何をしてくるかわからない。だから、王の目的を知るためにも私はパーティーに参加することを決めた。
私たちの結婚式のときに、家族には帝国まで来てもらっていた。あの時、王国には帰さないで留まってもらうべきだったかしら。まぁ、仕方ない。
「ありがとう。我々としても、君が参加してくれるのは助かるよ。王国は今、かなり不安定な状況だ。追い詰めすぎると何をしでかすか、わからないからね」
ジャスター様も私と同じ考えで、王国は危ないかもしれないと警戒しているようだ。だが、危険な存在だからといって国を亡ぼすには大変な労力が必要になる。舵を取りながら、帝国にとって都合のいい方向に持っていきたいのでしょうね。
「王国には、私も一緒に行くよ」
「ジャスター様も一緒に!?」
「もちろん。愛する妻を一人で行かせるわけにはいかないから。それに、皇帝陛下の代理人に任命されたんだ。任務だよ」
帝国と王国の関係は良好なのもではなく、不穏な状態が続いていた。大きな戦いは何十年も起きていないものの、国境付近でちょっとしたいざこざが何度か起きているという話を聞いたことがあった。
だからこそ、皇帝陛下は代理を立てて参加することに。
「大丈夫なのですか?」
「もちろん、大丈夫さ。王国が今の状況で仕掛けてくる可能性は、低いと思う」
私たちが帝国に移ってきて、5つの主要な貴族家が王族と疎遠になった。関わりを遠ざけた。その影響は大きく、国力が低下しているとジャスター様は予想していた。
そんな状況で戦争をふっかけるような、無謀なことをラドグリアの王がするとは思えない。
「だけど、追い詰めたらどうなるのかわからない、ということですね」
「そうだ。だから、バランスを取りながら。でも、警戒は怠らないように」
「わかりました。気を付けます」
やっぱり、王国は厄介そう。
「幸い、王国側は戦争を回避したいという意思はあるようだし。このパーティーで、どれだけ親交を深めるのに本気なのか確認するための場にもなるだろう」
「なるほど、わかりました」
こうして私は、ジャスター様と一緒に王国へ向かうことになった。もう戻ることはないだろうと思っていたけれど、こんな形で戻ることになるなんてね。
少しだけ心配なのは、王国にヒロインが居るということ。彼女や、他の男たちは今どうしているのかしら。現地へ向かう前に、ちょっと調べてもらいましょう。
「実は、エレノラ宛にラドグリア王国からパーティーの招待状が送られてきた」
「王国から私宛に? どういうことですか?」
詳しく話を聞いてみると、どうやらラドグリアの王から皇帝陛下に手紙が送られてきたらしい。その内容は、帝国と王国の親交を深める目的のパーティーを開催するので、ぜひ参加してほしいというもの。
「つまり私も、そのパーティーに招待されたのですか?」
「そういうことだ。王国から一緒に来た君の友人たちも名指しで、このパーティーに招待されている」
「リゼットやフローラたちも!?」
そうだ、と頷くジャスター様。どういうことかしら。あんな出来事があったのに、その最中は何もせずに静観するだけだったラドグリアの王が。急に、どうして。
皇帝陛下に送った手紙に私たちの名前を書いて招待するということは、帝国に居ることも把握しているのよね。放っておいてくれたらよかったのに。
王国へ戻るように説得するつもりかしら。皇帝陛下にお伝えしてあるということは、ラドグリアの王も強引な手段に出るつもりはないと思いたいけど。
「もちろん、この話は断ってくれても構わない」
「……いえ、私も参加します」
しばらく考えて、私はパーティーに参加することを決めた。理由は、私や友人たちの家族が今も王国に残っているから。
私たちは正式な手順を踏んでから、帝国に来た。しかし、現当主が領地から離れるのは難しい。領民も置いていけないので、両親や何人かの兄弟姉妹たちは今も王国で暮らしている状況だった。
この招待を断ったら、ラドグリアの王が何をしてくるかわからない。だから、王の目的を知るためにも私はパーティーに参加することを決めた。
私たちの結婚式のときに、家族には帝国まで来てもらっていた。あの時、王国には帰さないで留まってもらうべきだったかしら。まぁ、仕方ない。
「ありがとう。我々としても、君が参加してくれるのは助かるよ。王国は今、かなり不安定な状況だ。追い詰めすぎると何をしでかすか、わからないからね」
ジャスター様も私と同じ考えで、王国は危ないかもしれないと警戒しているようだ。だが、危険な存在だからといって国を亡ぼすには大変な労力が必要になる。舵を取りながら、帝国にとって都合のいい方向に持っていきたいのでしょうね。
「王国には、私も一緒に行くよ」
「ジャスター様も一緒に!?」
「もちろん。愛する妻を一人で行かせるわけにはいかないから。それに、皇帝陛下の代理人に任命されたんだ。任務だよ」
帝国と王国の関係は良好なのもではなく、不穏な状態が続いていた。大きな戦いは何十年も起きていないものの、国境付近でちょっとしたいざこざが何度か起きているという話を聞いたことがあった。
だからこそ、皇帝陛下は代理を立てて参加することに。
「大丈夫なのですか?」
「もちろん、大丈夫さ。王国が今の状況で仕掛けてくる可能性は、低いと思う」
私たちが帝国に移ってきて、5つの主要な貴族家が王族と疎遠になった。関わりを遠ざけた。その影響は大きく、国力が低下しているとジャスター様は予想していた。
そんな状況で戦争をふっかけるような、無謀なことをラドグリアの王がするとは思えない。
「だけど、追い詰めたらどうなるのかわからない、ということですね」
「そうだ。だから、バランスを取りながら。でも、警戒は怠らないように」
「わかりました。気を付けます」
やっぱり、王国は厄介そう。
「幸い、王国側は戦争を回避したいという意思はあるようだし。このパーティーで、どれだけ親交を深めるのに本気なのか確認するための場にもなるだろう」
「なるほど、わかりました」
こうして私は、ジャスター様と一緒に王国へ向かうことになった。もう戻ることはないだろうと思っていたけれど、こんな形で戻ることになるなんてね。
少しだけ心配なのは、王国にヒロインが居るということ。彼女や、他の男たちは今どうしているのかしら。現地へ向かう前に、ちょっと調べてもらいましょう。
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