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第33話 催し物
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翌日、ジャスター様や帝国貴族たちと一緒にとある場所まで案内された。そこで、特別な催し物が行われる予定らしい。そして、これから行われる内容について説明を受けた。それを聞いた私は、すぐに帰りたくなった。
どうやら、王子とヒロインが処刑されるという。それを見届けてほしいとのこと。
「あやつらの愚かな最期を見て、少しでも溜飲を下げてくれたらと思う」
無表情のラドグリアの王はそれだけ言って、自分の席へ戻っていく。なんて勝手な人だろうか。
そんなもの見せられても喜ぶわけない。気分も晴れない。ラドグリアの王は、ずいぶん前からおかしくなってしまったようね。昔は、もっとまともだったと思うけど。私の記憶違いかしら。これも、ヒロインの影響?
「エレノラ。辛いのなら、見る必要はないよ。今日はもう帰るか?」
私の様子に気付いたのか、ジャスター様がそう提案してくれた。だけど、私は首を横に振る。この面倒でしかない付き合いも仕事のうちだもの。
「いいえ、ジャスター様と一緒に居ます」
「わかった。無理だったら、遠慮せずに言ってくれ」
「はい」
そんな会話を交わしながら、私は少し離れた場所にある処刑台をチラリと確認する。そこには、縄で縛られて座らされている男女の姿があった。憔悴した様子で、うなだれている。
王子のルドルフと、ヒロインのアルメル。二人が、捕らえられていた。
処刑台を囲んで、王国民が集まっている。彼らは興奮した様子で、騒ぎ立てていた。これから行われる処刑を期待して、興奮しているようだ。その様子を見ていると、心がザワつくような感じがした。とても嫌な気分だわ。
そう思いながら見ていると、とある一か所が騒がしくなった。そこには、武装した集団が居た。王国の兵士? でも、あれは。
疑問に思っていると、その武装した集団の一人が声を大きくして叫ぶ。
「アルメル! 君を助けてに来たッ!」
その声と、顔に見覚えがある。彼は、トリスタン。あの男は、あそこで何をしようとしているのか。続けて、彼の近くに立っていた男たちが順番に声を上げる。
「処刑なんて認めない!」
「君が殺されるなんて、間違っている!」
クロヴィスにラウルも。攻略対象の男たちだ。そして、数名の兵士も一緒に。その中に、もう一人は居ないみたいだけど。
そこに居ない、トゥーサンの姿を探すが見当たらない。彼らとは別で、どこかに隠れているのかしら。
すると、処刑台で捕らえられていた彼女が嬉しそうな声を上げた。
「トリスタン! クロヴィス! ラウル! みんな、私を助けに来てくれたのね!」
まさか、ラドグリアの王が言っていた特別な催し物ってこれのこと? こんな馬鹿みたいな茶番が?
そう思って私は、ラドグリアの王が座っている席を見た。そこには、頭を抱えている男が居た。
どうやら、王子とヒロインが処刑されるという。それを見届けてほしいとのこと。
「あやつらの愚かな最期を見て、少しでも溜飲を下げてくれたらと思う」
無表情のラドグリアの王はそれだけ言って、自分の席へ戻っていく。なんて勝手な人だろうか。
そんなもの見せられても喜ぶわけない。気分も晴れない。ラドグリアの王は、ずいぶん前からおかしくなってしまったようね。昔は、もっとまともだったと思うけど。私の記憶違いかしら。これも、ヒロインの影響?
「エレノラ。辛いのなら、見る必要はないよ。今日はもう帰るか?」
私の様子に気付いたのか、ジャスター様がそう提案してくれた。だけど、私は首を横に振る。この面倒でしかない付き合いも仕事のうちだもの。
「いいえ、ジャスター様と一緒に居ます」
「わかった。無理だったら、遠慮せずに言ってくれ」
「はい」
そんな会話を交わしながら、私は少し離れた場所にある処刑台をチラリと確認する。そこには、縄で縛られて座らされている男女の姿があった。憔悴した様子で、うなだれている。
王子のルドルフと、ヒロインのアルメル。二人が、捕らえられていた。
処刑台を囲んで、王国民が集まっている。彼らは興奮した様子で、騒ぎ立てていた。これから行われる処刑を期待して、興奮しているようだ。その様子を見ていると、心がザワつくような感じがした。とても嫌な気分だわ。
そう思いながら見ていると、とある一か所が騒がしくなった。そこには、武装した集団が居た。王国の兵士? でも、あれは。
疑問に思っていると、その武装した集団の一人が声を大きくして叫ぶ。
「アルメル! 君を助けてに来たッ!」
その声と、顔に見覚えがある。彼は、トリスタン。あの男は、あそこで何をしようとしているのか。続けて、彼の近くに立っていた男たちが順番に声を上げる。
「処刑なんて認めない!」
「君が殺されるなんて、間違っている!」
クロヴィスにラウルも。攻略対象の男たちだ。そして、数名の兵士も一緒に。その中に、もう一人は居ないみたいだけど。
そこに居ない、トゥーサンの姿を探すが見当たらない。彼らとは別で、どこかに隠れているのかしら。
すると、処刑台で捕らえられていた彼女が嬉しそうな声を上げた。
「トリスタン! クロヴィス! ラウル! みんな、私を助けに来てくれたのね!」
まさか、ラドグリアの王が言っていた特別な催し物ってこれのこと? こんな馬鹿みたいな茶番が?
そう思って私は、ラドグリアの王が座っている席を見た。そこには、頭を抱えている男が居た。
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