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第四章
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しおりを挟む痛いほどの視線から逃げるように人気の少ない道へと入る。まっすぐに行ったところに、何度か訪れたことのあるチェーン店のカフェがあった。
それなりに有名な店のくせに、場所の問題からか、知り合いに出くわすことは少ない。
カランと音を立てて店に入ると、店内は隠れ家のように、奥にかけて細長くて狭い。一階に広がるカウンター席には誰も座っていなかった。
「いらっしゃいませ。二名様でお間違いないでしょうか」
「はい。あの、できればテーブル席でお願いします」
「かしこまりました。それでは二階の方にご案内いたしますね」
カウンター席では、お店の人たちに話を聞かれそうな気がして、テーブル席を志願する。
店員さんは快く了承してくれ、すぐ目の前の階段を上って案内してくれた。
二階も見渡す限り数人ほどしか客は見当たらない。席ごとに仕切りがあり、話をするにはもってこいの場所だった。
まずは二人でメニューを見て、注文をする。私は甘いイチゴのスムージーを、高羅は抹茶ラテを注文した。
店員が去り、二人の時間になる。落ち着いたジャズらしき曲が、耳の周りで踊っていた。
お互い、何を話せば良いのかわからず、沈黙が続く。私も切り出し方が見つからず、手持ち無沙汰になり、置かれた水に口をつけた。
「今日さ、三時間目体育だったんだけど……」
高羅が先に沈黙を破り、声をかけてきたため、私は驚いて目を見開いた。
「え、うん。それで?」
「……いや、ごめん、やっぱり何でもないかな」
私が聞き返すと、なぜだか視線を逸らし、突然始めた話題を終わらせた。何だかおかしくなって、私は少し吹き出してしまう。
「えぇ? どういうこと? 何でもないわけないでしょ」
少し緊張感がほぐれたように、私が突っ込むと、高羅は口元に手を当て、少し顔を赤らめた。
「いや、大したことじゃないんだけど。……体育をしてる時、空を見たら、たまたま虹と飛行機雲があってさ。春田さんも教室から見たかなぁ、なんて……」
虹と飛行機雲……? それを私も見ていたかって?
「可愛すぎるでしょ高羅!」
つられるように私も口元から頬にかけて両手で押さえるも、思わず本音が漏れてしまった。
高羅の顔が更に赤面する様子を見て、私も頬が熱くなってくるのがわかる。
この歳になって、虹と飛行機雲に感動し、彼女も見ているか考えるだなんて。なんて可愛い人なのだろう。
完全にやられた。胸がぎゅっと掴まれるように、好きが更に増していくのがわかる。
「ほらー、どうでも良いことだったじゃんー。何か話題を出そうと思ったら、パッと出てきたのはそれだけだったんだよ……」
ぐっと悔しげに私を見つめるその姿は、まるで悄げた犬そのものだ。耳と尻尾が地面につく勢いで下がっているように見える。
丁度その時、注文をしていた飲み物が届いた。店員さんが優しくコースターの上にグラスを置いてくれる。
店員さんが来てくれたことにより、一度はこの胸の高まりが落ち着くかと思ったものの、あまりの急上昇に抑えられる気がしない。私はそんな自分を抑制するため、イチゴのスムージーにストローを刺し、勢いよく吸い込んだ。食道から胃にかけて、冷たい感覚が流れ落ちていくのがわかる。
いつだって思ってしまう。こんな人、他にいないと。
今もこの沈黙を何とかするために話題を考えてくれた。かつその話は、聞いた相手を虜にしてしまうような、何とも可愛らしい内容だ。
本当に好きで好きで、堪らないからこそ、やはり込み上げてくる思いは“手離したくない”だ。でも、高羅を選んで本当に良いのだろうか。母のことはもう、自分の思い出として取っておく方が幸せなのだろうか──。
「え、どうしたの?」
高羅が心配そうな表情をして、私の瞳を見つめてきた。
「えぇ? 何が?」
そう言った瞬間、生暖かい雫が輪郭をなぞるようにして落ちていく。そこでようやく、自分が泣いていることに気がついた。
ああ、またか。
私の中ではそう冷静に捉えているのに、留まることを知らない涙たちに対し、どうしたらいいのかわからない。だが、これほど何度も涙として、内側から溢れてしまうほどに、私は限界なのだということはわかった。
「ごめん。急にごめんね。どうしたら良いのかわからなくて……高羅に言うかどうかも迷ってたんだけど、もう一人で抱え込むのは限界みたい……」
手の甲で何度も涙を拭う。拭う度に、それがまた、片付けられたばかりの道を流れた。
高羅もただ事ではないと悟ったのか、あわあわと私の方に手を差し伸べてみたり、両手を擦り合わせるなど、明らかに動揺している。
「そんなに辛いことがあったなんて、気づけなくてごめん。もう抱え込まなくて大丈夫だから。何でも話して」
私のことを考えて、必死に言葉を絞り出してくれたのだろう。そんなことを言われてしまえば、どうしたって甘えたくなってしまう。
幼い頃に大人に甘えることができなかった反動が、今になって抑制できないほど大きくなってしまいそうで、そんな自分が怖かった。
「何でも?」
「うん。何でも大丈夫だよ」
できるだけ、堂々と構えようとしているのか、高羅は背筋をピンと伸ばし、膝に手を添えている。
何と反応するかわからない。馬鹿にされるかもしれない。それでも、もう言わずに日々を過ごしていく流れは、きっと帰ってきてはくれないのだと悟った。
「私、お母さんを殺したの」
白昼堂々、私は自分の罪を打ち明けた。目の前から音が消え、私と彼の二人だけの世界になる。
「殺した?」
高羅は絞り出したかのような声で、ただ一言そう尋ねる。表情は険しくなりたいところを必死に抑えるように、眉がピクピクと動いている。私の道徳観を疑いたがっているのだろうなと思った。
「そうだよ」
膝に乗せられた指先が冷たくなって小さな振動を起こす。
本当のことを話すのは怖い。頭がおかしい人だと引かれるかもしれない。気味が悪いからと、別れを言い渡される可能性だってある。
それでも、高羅には言おうと思った。だって、私だけでは決められない。大切な人がこの事実を知って、どんな反応をするか。それによってきっと、私は道を定められる気がするのだ。
「私ね、本当は一度死んでるんだ。だけど、どうしても高羅や友達に会いたかったの。やりたいことが、たくさんあったの。そうしたら、天使おじさ……天使に、死んだ日から約一ヶ月前にやり直させてもらえたんだ」
我ながら、なんてファンタスティックな話だろうと思った。
きっと高羅も、いきなり何を言い出すのだと考えているだろう。そう思い、キョトンとする高羅の表情を想像したが、意外にも高羅は真剣な表情を保ったまま、何も言わなかった。
「でも、それは大切なものがない世界でのやり直しだったの。大切なものが何かは教えてもらえなくて。それでもやり直すことを選んだら、お母さんがいなくなってたの。私が本当に生きていた世界では、高校生になった今でもお母さんがいて、二人でずっと一軒家に住んでいたの。そんな唯一の家族だったのに……」
語尾がどんどん薄くなる。実際、起きたことを言葉にしてみると、より現状に向き合わされている気がして、気持ちが昂ってしまう。
「それなのに……私がやり直しを選んだから、お母さんがいなくなっちゃったの。死ぬ前は喧嘩ばかりで、私の気持ちを全然わかってくれないお母さんが大嫌いで、もしお母さんがいなくなったとしても、別に大丈夫だと思ってた。でも、実際いなくなったら大丈夫なんてことはなくて……。お母さんが私にしてくれていたことの本当の意味がわかったり、私にも良くないところがあったんだって、気がついたの。お母さんは、ずっと私のことを思ってくれていたんだって……それなのに私がやり直しを選んだせいで、お母さんはいなくなっちゃった。私が殺したも同然なの」
思いの丈を一気に外へと吐き出す。私と高羅の二人だけの世界で、忘れていた息継ぎを繰り返した。
高羅は黙り込んだままで、私をじっと見つめていた。私の方が気まずくなって視線をずらし、上に乗ったクリームがじわじわと溶けていくスムージーを見つめる。
小刻みに震える指先を使いながら、目の際に溜まった涙を拭き取った。
「そうだったんだね」
高羅が一言、呟いた。否定も肯定もないその言葉に、私は驚いて尋ねてしまう。
「信じるの?」
すると高羅はうーんと悩みながら、抹茶のラテに口をつけた。半透明のストローの中で、ゆっくりと抹茶が吸い上げられていく。
「まあ、そうだね。最初はびっくりしたけど。でも最後まで聞いて、話の筋は納得したし。本当か嘘かは、自分が直接経験したわけじゃないから正直わからない。だけど、春田さんが泣きながらそう言うのなら、そうなんじゃないかなって。例え、嘘だったとしても僕は騙されてあげるよ」
最後は優しく微笑んだ高羅。
私の方が信じられなかった。こんなにも、リアリティのない話を、例え嘘だったとしても騙されてあげると言えるほど、信じてくれるだなんて。
そして何より信じられないのは、高羅の人間性だ。こんなにも人として素晴らしい男性が、私の彼氏だなんて。どうしてそんなにも、人に……いや私に優しくできるのだろう。
なぜ付き合ったのかもわからない相手なのに。
「誰にも言えなくて辛かったよね。でも、春田さんが殺したわけじゃない。だから思い詰めなくて大丈夫」
高羅は私の苦しみを取り除くための、最善の言葉を選んでくれたような気がした。真剣な表情が、じっと私の瞳を貫く。
私が殺したわけじゃない……か。
私はイチゴのスムージーを、ストローで混ぜた。クリームとマーブル状に混ざり合い、やがて白い塊はなくなって、更に薄いピンク色の飲み物になる。
「高羅は優しすぎるよ……。信じてくれて本当にありがとう」
ストローを回す手を止めて、そう答えた。
混ざり終えたスムージーを、一気に飲み干す。グラスの内側についた残りカスのようなものが、張りついて胃に吸収することができなかった。
高羅も嬉しそうに私を見つめた後、同じように抹茶ラテを二回ほど掻き混ぜて吸った。乗っていた抹茶の粉と混ぜ合わせても、当然色は変わらなかった。
「高羅。私、高羅のことめちゃくちゃ好きだよ」
唐突な告白に、高羅は飲んでいた抹茶ラテを吹き出しかける。
私に背を向けて、気管に入り込んだ異物を出そうと、何度も咳き込んでいた。ごめん、と手を伸ばすも、大丈夫だとジェスチャーで返答されたため、私の手は空中を泳いで自分の膝の上に据えられる。
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」
そばにあったペーパーを一枚取り、高羅は口周りを拭いた。
唐突な話題の変更に、高羅も驚いたのだろう。私の中では繋がっているけれど。
高羅の言葉に安心したからか、いつの間にか涙は止まり、乾いた道が頬に生まれた気がした。
「でも、高羅は私のことどう思ってる? この前、聞いちゃったんだ。どうして私と付き合ったのかを、高羅が友達に聞かれていた時、高羅は『なんでだろうね』って言ってたよね。確かに、一度も好きとか聞いたことないし、どうして高羅ほどの人気者でモテモテで、人間性が神様のような人が、私と付き合ってくれたんだろうと思って……」
高羅と目を合わせて話していたが、次第に私の視線は、グラスの結露が集まってできた、水溜まりへと落ちていく。
彼の綺麗な瞳を見つめ続けることができなかったのだ。もし不純な動機で付き合ったとしたら、今ここにいる優しくて思いやりのある高羅は一体何者なのかわからない。
私にかけてくれた嬉しい言葉の数々や、付き合う前から積み上げてきた思い出、そして時間も、何のために費やしてくれたのか。そんなことを考えると、答えによっては人間不信になりそうな心地だった。
高羅は私の問いに対し、「あー」と声を漏らした切り、黙り込んでいる。私も顔を上げられず、そのまま俯いていた。
「本当のこと言ったら、春田さん傷つくんじゃないかな……」
本当のこと?
利き手と反対の手で書いた文字のように、ひょろひょろとした弱い口調で彼は言った。それは優しさからか、恐怖からからか。それとも保険としての言葉だからだろうか。
高羅の視線の先には私があることは伝わってくるが、私から彼の表情を読み取ることはどうしてもできず、目の前にある残り少ない抹茶ラテを見るので精一杯だった。
彼の言う「本当のこと」を知ることは怖い。傷つくとわかっていて知るのはもっと怖い。
それでも、何も知らずにこのまま高羅と過ごすのはもっと嫌だ。
「大丈夫。高羅が受け止めてくれたから、今度は私の番だよ。本当のこと、話して」
高羅の目を再び見つめてそう言った。スカートをぎゅっと握って覚悟を決める。
高羅が何を言おうと、全て受け止めよう。彼が私にしてくれたように。
時間にして一分ほどだろうか。沈黙が続く。とてもゆっくりで、長く感じた。
「僕は……恋愛的な意味での、好きって感情がわからないんだ」
そう言葉にした高羅は、本当に申し訳なさそうに眉を下げている。
「好きが、わからない?」
「そう。男子も女子も、みんな自分にとっては大切な人で、言ってしまえば好きな人たちなんだ。中には特別に仲の良い異性もいて、告白されて付き合ったことも何回かある。でも、それは友人としての好きなんじゃないかとか、嫌いじゃなかったら好きなのかとか、会いたくないわけじゃないけれど、会いたいと思わなければ、それは恋愛的に好きとは言わないんじゃないかとか。そういうことを考えていると、恋愛的な意味での好きって、何だかわからなくて。それが言動に出るんだろうね。毎回数ヶ月足らずで振られてばかりだよ」
高羅は自身の過去を笑うように、口角が上がっていた。
意外すぎる過去の話を聞き、私は驚きを隠すことができない。付き合った経験がないとは思わなかったが、高羅ほどの人が毎回振られているなんて信じられなかった。
「付き合う前、春田さんのことは、全力で好いてくれる人だなとか、単純に可愛いと思ってた。そんな春田さんなら、僕も好きになれるかもしれない、好きを知れるかもしれないって思ったから、付き合ったんだ」
覚悟はしていたが、ぐさりとくるものがあった。
不純な動機とは言わないが、私を好きだから付き合ってくれたわけじゃなかったのだと実際言葉にして聞くと、高羅のことが好きな分、苦しくなる。
一方的な思いの球を投げても、そこに人がいるだけでは成り立たない。グローブやバットを持たない人に投げても、ゲームにならず、虚しくなるだけだ。
伝えても伝えても、自分に返ってこない切なさは大きかった。
だが、そんな私を見てか、高羅はまだ続きがあるというように話し出した。
「だけど、いつも元気で笑っている印象だった春田さんが、泣いてるところをさっき初めて見て、ああ、この人を支えたいなって思ったんだ。僕にできることなら、何でもしたいって。笑顔でいてほしいなって。それを恋愛的な意味での“好き”と言うのなら……僕は春田さんのことが好きなんだと思う」
春の花が一気に開花するかのように、ぶわっと体中の熱が弾けた。顔が熱くて堪らない。
高羅は真剣に私の目を見て言ったすぐ後に、わかりやすく顔を下に向け、旋毛を見せてきた。隠しているつもりなのかもしれないが、真っ赤に染まっていく耳が、その理由を物語っている。
高羅が、私のことを好き?
落ち込んでいた心が、天国を超えた先まで飛んで行ったような心地だ。
初めて高羅から『好き』という言葉をもらった。好きな人に好かれるというのは、これほど嬉しいものなのか。
「何それずるいよ……」
ああ、まだ生きていたい。高羅と一緒にいたい。このまま終わりたくない。
「じゃあさ、これから絵美って呼んでよ。苗字呼びだと、まだ壁感じるし」
頬が緩んでいるのがわかる。高羅が顔を伏せているの良いことに、渾身のニヤケ顔を決めてみせた。
高羅はちらりと顔を上げる。影になっていても、顔が赤いことはすぐにわかった。そして、ニヤケ顔も急には元に戻すことはできず、結局しっかりと見られてしまう。
「絵美……はやっぱり個人的にちょっとハードル高いから、とりあえずしばらくは絵美さんって呼んでも良い?」
絵美さん、と初めて下の名前で呼んでくれた高羅に対し、また体が熱くなる。
私は何も言えなくなって、ただ首を縦に何度も振ることしかできなかった。
「……何ニヤニヤしてるの?」
「してないしてない! 嬉しくてニコニコしてたの!」
「それ一緒じゃない?」
二人であははと大きく笑った。酔っ払いのような、真っ赤な顔色だった。
ああ、本当に幸せだ。狂おしいほどに愛しい世界だ。
「高羅。私、全力で生きるね」
高羅は少し取り戻してきた肌色を見せて、優しく頷いた。
高羅とやりたかったこと、全部やろう。行きたかったところには、すぐに行こう。
いつ何が起きるかわからないのだから。
いつの間にか、二人だけの音のない世界は、元の落ち着いた音楽が流れる、少し狭めのカフェに戻っていた。
オレンジ色の細い光が差し込んでくる。大きな目玉焼きのような太陽が、地球の裏側に食べられていった。
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