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41話 五十鈴と盗賊と斥候
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翌朝早くに、ザッカスは五十鈴を伴って冒険者ギルドへと訪れた。
討伐当日とあってか早朝にも関わらず、マルグリットとチャドとジェフは既にギルドの待合のフロアで待機していた。
ザッカスの姿を見るや否やチャドとジェフは緊張感で張り詰めた表情で頭を下げて挨拶をする。
「おや、随分と早いね。あんたの事だから余裕かまして、もっと遅いかと思ったよ」
ザッカスの後ろに控えて立つ五十鈴に気づいたマルグリットは、満面の笑みを浮かべて駆け寄りハグしようとしたが、当然ザッカスに手で払い退ける。
3度それを繰り返し、2人は無言で睨み合っている。
チャドとジェフが唖然としてそれを眺める。
五十鈴は苦笑いをするしかなく、チャドとジェフを気にしてマルグリットに黙ったまま頭を下げる。
「この2人は大丈夫だから、フードを外して声を出していいよ」
そう言われるものの出していいものかと、ザッカスを見れば頷いたので、マルグリットに言われたようにフードを外す。
「おはようございます。マルグリットさん」
「おはよう。イスズ」
さぁ、おいでとばかりに両手を広げるマルグリットへ近づこうとするが、やはりザッカスがそれをさせなかった。
チャドとジェフが黙って自分を見ているので、マルグリットにしたように「おはようございます」と頭を下げて挨拶すると、2人とも頭を下げて返して来たが、不躾ではないがやはりじっと五十鈴を見ている。
「何度言えばわかる。触れるな。お前もマルグリットばかりに懐くな」
「なんだいザックは懐かれてないんだ?へぇ~」
「あ、あの懐くとか懐かれてないとか、ペットじゃないんですから…」
「あたしはイスズの事はそんな風に思ってないよ。ザックはどう思ってるのか知らないけどね」
「黙れ」
「なんでお2人共いつも喧嘩腰なんですか…」
「態度が悪いからだ」「態度がデカイからだよ」
「お互い様だと思いますよ…」
暫くは挨拶代りの言い合いが続くと思った五十鈴は、2人を微妙な顔して立ったまま見ているチャドとジェフに声をかける。
「座りませんか?多分暫くはあのままだと思いますし…あぁ、お茶の用意されてたんですね。折角ですから冷める前に淹れちゃいますね」
テーブルに置かれたティーセットのポットには既にお湯が入っていたので、手際良くカップにお茶を淹れていく。3客分しかないので、自分とチャドとジェフにへと置いていく。
2人は顔を見合わせると、テーブルの椅子に腰を下ろし、「さぁ、どうぞ」とお茶を勧められ、カップを手に取り口を付ける。
「あっしはチャドっていいます。こっちの若いのはジェフでさ。で……お嬢さん、ザックの旦那の娘さんで?」
「ジェフです」
先ず口を開いたのはチャドだった。
目の前に座っている見た事がない顔立ちで、目がクリクリとした可愛らしい印象の五十鈴に尋ねた。
髪が短いのは重罪人の証ではあるが、どう見てもそんな風には見えない。
「イスズです。娘ではありませんよ。ザックさんに拾われた異国人です。こちらの国の事がよくわかってなくて…」
苦笑いで話をあやふやにしてしまうが、それ以上は深く聞こうとはしないので、内心ホッとする。
ザッカスとはマルグリットはいつの間にか言い合いを止めて、何やら話し込んでいる。
おそらく昨日の件についてなのだろう。
邪魔をしてはいけないと思ったのは、五十鈴だけではなく、チャドとジェフも同じらしい。
「イスズさん、歳は幾つですか?」
五十鈴の正面の席に座っているジェフが頰をほんのり赤くし、鳶色の瞳をキラキラとさせて五十鈴を見て尋ねた。
やめろとばかりにチャドは隣のジェフを肘で突くが、ジェフはその意味をわかっていないようだった。
如何にも純朴そうな青年のジェフに五十鈴は好感を持つ。
「22になります。ジェフさんは?」
「え?17か18ぐらいかと思った…僕は25ですよ。年回りも丁度良いかも…」
「年回りって?」
「な、何でもないです…あ、あの僕、いずれAランクになるんですけど……って、僕は斥候なんですよ」
「そうなんですか?凄いですね!」
「自分で言うのは何ですけど、将来性は高いと思いますっ!」
「はぁ…」
「稼ぎもそこそこいい方だと思うし、贅沢さえしなければ暮らしには不自由はしません」
「そうですか」
「イスズさんは、やっぱり贅沢したいですか?」
「贅沢は敵かと…私は普通に安定した暮らしが1番いいです」
「おぉ!僕もそうなんですよっ!気が合いますねっ!」
なんだか妙な会話の流れだと思いつつも、五十鈴は笑顔を浮かべたままジェフの話を聞き、チャドは渋い顔して横を向き、こりゃダメだと小さく頭を振っている。
ジェフは夢見心地な表情をして、何やら小さくブツブツと独り言を言っている。
自分の世界に浸っているようなので、そっとしてあげようと生暖かい目で見守る事にした。
討伐当日とあってか早朝にも関わらず、マルグリットとチャドとジェフは既にギルドの待合のフロアで待機していた。
ザッカスの姿を見るや否やチャドとジェフは緊張感で張り詰めた表情で頭を下げて挨拶をする。
「おや、随分と早いね。あんたの事だから余裕かまして、もっと遅いかと思ったよ」
ザッカスの後ろに控えて立つ五十鈴に気づいたマルグリットは、満面の笑みを浮かべて駆け寄りハグしようとしたが、当然ザッカスに手で払い退ける。
3度それを繰り返し、2人は無言で睨み合っている。
チャドとジェフが唖然としてそれを眺める。
五十鈴は苦笑いをするしかなく、チャドとジェフを気にしてマルグリットに黙ったまま頭を下げる。
「この2人は大丈夫だから、フードを外して声を出していいよ」
そう言われるものの出していいものかと、ザッカスを見れば頷いたので、マルグリットに言われたようにフードを外す。
「おはようございます。マルグリットさん」
「おはよう。イスズ」
さぁ、おいでとばかりに両手を広げるマルグリットへ近づこうとするが、やはりザッカスがそれをさせなかった。
チャドとジェフが黙って自分を見ているので、マルグリットにしたように「おはようございます」と頭を下げて挨拶すると、2人とも頭を下げて返して来たが、不躾ではないがやはりじっと五十鈴を見ている。
「何度言えばわかる。触れるな。お前もマルグリットばかりに懐くな」
「なんだいザックは懐かれてないんだ?へぇ~」
「あ、あの懐くとか懐かれてないとか、ペットじゃないんですから…」
「あたしはイスズの事はそんな風に思ってないよ。ザックはどう思ってるのか知らないけどね」
「黙れ」
「なんでお2人共いつも喧嘩腰なんですか…」
「態度が悪いからだ」「態度がデカイからだよ」
「お互い様だと思いますよ…」
暫くは挨拶代りの言い合いが続くと思った五十鈴は、2人を微妙な顔して立ったまま見ているチャドとジェフに声をかける。
「座りませんか?多分暫くはあのままだと思いますし…あぁ、お茶の用意されてたんですね。折角ですから冷める前に淹れちゃいますね」
テーブルに置かれたティーセットのポットには既にお湯が入っていたので、手際良くカップにお茶を淹れていく。3客分しかないので、自分とチャドとジェフにへと置いていく。
2人は顔を見合わせると、テーブルの椅子に腰を下ろし、「さぁ、どうぞ」とお茶を勧められ、カップを手に取り口を付ける。
「あっしはチャドっていいます。こっちの若いのはジェフでさ。で……お嬢さん、ザックの旦那の娘さんで?」
「ジェフです」
先ず口を開いたのはチャドだった。
目の前に座っている見た事がない顔立ちで、目がクリクリとした可愛らしい印象の五十鈴に尋ねた。
髪が短いのは重罪人の証ではあるが、どう見てもそんな風には見えない。
「イスズです。娘ではありませんよ。ザックさんに拾われた異国人です。こちらの国の事がよくわかってなくて…」
苦笑いで話をあやふやにしてしまうが、それ以上は深く聞こうとはしないので、内心ホッとする。
ザッカスとはマルグリットはいつの間にか言い合いを止めて、何やら話し込んでいる。
おそらく昨日の件についてなのだろう。
邪魔をしてはいけないと思ったのは、五十鈴だけではなく、チャドとジェフも同じらしい。
「イスズさん、歳は幾つですか?」
五十鈴の正面の席に座っているジェフが頰をほんのり赤くし、鳶色の瞳をキラキラとさせて五十鈴を見て尋ねた。
やめろとばかりにチャドは隣のジェフを肘で突くが、ジェフはその意味をわかっていないようだった。
如何にも純朴そうな青年のジェフに五十鈴は好感を持つ。
「22になります。ジェフさんは?」
「え?17か18ぐらいかと思った…僕は25ですよ。年回りも丁度良いかも…」
「年回りって?」
「な、何でもないです…あ、あの僕、いずれAランクになるんですけど……って、僕は斥候なんですよ」
「そうなんですか?凄いですね!」
「自分で言うのは何ですけど、将来性は高いと思いますっ!」
「はぁ…」
「稼ぎもそこそこいい方だと思うし、贅沢さえしなければ暮らしには不自由はしません」
「そうですか」
「イスズさんは、やっぱり贅沢したいですか?」
「贅沢は敵かと…私は普通に安定した暮らしが1番いいです」
「おぉ!僕もそうなんですよっ!気が合いますねっ!」
なんだか妙な会話の流れだと思いつつも、五十鈴は笑顔を浮かべたままジェフの話を聞き、チャドは渋い顔して横を向き、こりゃダメだと小さく頭を振っている。
ジェフは夢見心地な表情をして、何やら小さくブツブツと独り言を言っている。
自分の世界に浸っているようなので、そっとしてあげようと生暖かい目で見守る事にした。
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