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13 教官!
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今日は、新しく出来た防護スーツを研究員に紹介する。
防護スーツ自体は研究員全員に渡されているものなので新機能については全員相手にレクチャーしなくてはならない……のだが。
「で、なんで俺が教官なんだよ」
食堂のスクリーンに表示された教育スケジュールを見つつ俺は言った。
まぁ、教官と言っても多くは教官を教える教官なんだが。
「しょうがないでしょ。暇人……ちゃんと使えるのはリュウと私だけなんだから」
同じく教官になったメリスが言う。
「いま、暇人って言ったよな」
「だってそうじゃない」
「いや、もう少しで悟りを開くところかも知れないだろ?」
「そう。悟りの条件は暇人ってことね?」
そこは譲らないんだ。
* * *
悟りは開かなかったが講習会は開くことになった。
まずは、俺たちがやって都合よかった水中での模擬滑空訓練から始めることにした。
「どうでもいいけど、この研究室ってこんなに人間いたんだな」
俺たちのチーム五名以外に同じ研究室のメンバーが十名程いた。そういえば、そんなこと言ってたな。教官候補者はまた別だ。
「重力加速器チームと陽電子発生装置チームね」
なるほど。全然分からんあれね。多分、頭のいい人たちなんだろうな。
「じゃ、基本動作をデモしますので、それに合わせて付いて来てみてください」
そういって簡単に操作方法を説明した後、俺はプールに飛び込み水中遊泳に入った。
教官とか言ってるが水中で泳ぐのは楽しい。特にこの新型スーツで泳ぐのは。
なにしろフィンが無くても進めるのだ。すいすいと泳ぐ。もう、後ろから誰もついてこなくても知ったこっちゃない。すいすいすいっと。
「きょ~か~んっ。まってくださ~いっ」
「きょ~か~ん、かっこい~っ」
あ、今のはウソ。妄想です。幻聴です。願望です。そんなこと言ってません。
「きょ~か~んっ。はや~いっ」あ、言ってる奴いた。よく見たらユリだった。
まぁ、防護スーツについては俺よりも先輩だ。飛翔モードのコツさえ伝えればいい筈だ。
とりあえず、水中で自在に操作できるようになったところで実際に滑空訓練に入ることにした。
* * *
滑空訓練では研究所の裏庭に移動した。
ここは本来実験場なのだが通常は開放されているようだ。
「では、滑空モードの訓練に入ります」
「助走とか、高台とか必要なんじゃないんですか?」ユリが代表して質問して来た。
「最初の上昇はスーツの重力加速器を使います。このプレート上では、エネルギーが供給されるので発進することができます。上昇後は、滑空して降りてきてください」
実は、これには俺も驚いた。本当にエネルギーだけの問題で飛ぶ機能は既に搭載されているのだ。ルジン恐るべし。
「では、見本を見せます。滑空モードにしてから、斜め上方に向かって発進!」
ブンッッ
発進すると十秒ほどは加速が維持される。
意外と長く加速するのでショックはあまりない。
最高到達点まで上昇したらムササビのように両手両足を開く。こうするとフィルムが展開して滑空できるのだ。
形としては腕はやや前方になるが、アバウトでもちゃんと動作する。
こんな素人の操作でもバランスが崩れないのは、上手く補正してるためだろう。ムササビを真似た膜の浮力は一部だけで、半分以上は重力加速器が担っているのではないかと思う。
俺は、上昇した後は体を左に曲げるようにして、曲線を描いてゆっくり降りて来た。
「すっご~い。おもしろ~いっ」
まぁ、遊びっぽいのは確かだ。
何かあるといけないので最初は一名ずつ飛んでもらった。
メリスも教官なので二手に分かれて講習している。
おかげで訓練はどんどん進む。第一研究室以外からの教官候補生も来ているが問題ない。みんなすぐに上手くなった。これなら、研究所全員がすぐに滑空できるようになるだろう。
まぁ、他の研究室でも滑空モードが必要なのかは知らないが。
* * *
「ねぇ、リュウ」
10回ほど滑空を終えて、すっかりうまくなったユリが声を掛けて来た。
今日の訓練はそろそろ終了だ。
「ヒカリゴケなんだけど」
「うん?」
「転移のどのタイミングで光ったの?」
「ああ、それか」
ユリは研究のことで頭が一杯らしい。
「ちょっと待て。あと三人終わったら今日は終わりだ」
「うん、わかった」
訓練は何事も無く終了し、俺とユリは喫茶室に移動した。
防護スーツ自体は研究員全員に渡されているものなので新機能については全員相手にレクチャーしなくてはならない……のだが。
「で、なんで俺が教官なんだよ」
食堂のスクリーンに表示された教育スケジュールを見つつ俺は言った。
まぁ、教官と言っても多くは教官を教える教官なんだが。
「しょうがないでしょ。暇人……ちゃんと使えるのはリュウと私だけなんだから」
同じく教官になったメリスが言う。
「いま、暇人って言ったよな」
「だってそうじゃない」
「いや、もう少しで悟りを開くところかも知れないだろ?」
「そう。悟りの条件は暇人ってことね?」
そこは譲らないんだ。
* * *
悟りは開かなかったが講習会は開くことになった。
まずは、俺たちがやって都合よかった水中での模擬滑空訓練から始めることにした。
「どうでもいいけど、この研究室ってこんなに人間いたんだな」
俺たちのチーム五名以外に同じ研究室のメンバーが十名程いた。そういえば、そんなこと言ってたな。教官候補者はまた別だ。
「重力加速器チームと陽電子発生装置チームね」
なるほど。全然分からんあれね。多分、頭のいい人たちなんだろうな。
「じゃ、基本動作をデモしますので、それに合わせて付いて来てみてください」
そういって簡単に操作方法を説明した後、俺はプールに飛び込み水中遊泳に入った。
教官とか言ってるが水中で泳ぐのは楽しい。特にこの新型スーツで泳ぐのは。
なにしろフィンが無くても進めるのだ。すいすいと泳ぐ。もう、後ろから誰もついてこなくても知ったこっちゃない。すいすいすいっと。
「きょ~か~んっ。まってくださ~いっ」
「きょ~か~ん、かっこい~っ」
あ、今のはウソ。妄想です。幻聴です。願望です。そんなこと言ってません。
「きょ~か~んっ。はや~いっ」あ、言ってる奴いた。よく見たらユリだった。
まぁ、防護スーツについては俺よりも先輩だ。飛翔モードのコツさえ伝えればいい筈だ。
とりあえず、水中で自在に操作できるようになったところで実際に滑空訓練に入ることにした。
* * *
滑空訓練では研究所の裏庭に移動した。
ここは本来実験場なのだが通常は開放されているようだ。
「では、滑空モードの訓練に入ります」
「助走とか、高台とか必要なんじゃないんですか?」ユリが代表して質問して来た。
「最初の上昇はスーツの重力加速器を使います。このプレート上では、エネルギーが供給されるので発進することができます。上昇後は、滑空して降りてきてください」
実は、これには俺も驚いた。本当にエネルギーだけの問題で飛ぶ機能は既に搭載されているのだ。ルジン恐るべし。
「では、見本を見せます。滑空モードにしてから、斜め上方に向かって発進!」
ブンッッ
発進すると十秒ほどは加速が維持される。
意外と長く加速するのでショックはあまりない。
最高到達点まで上昇したらムササビのように両手両足を開く。こうするとフィルムが展開して滑空できるのだ。
形としては腕はやや前方になるが、アバウトでもちゃんと動作する。
こんな素人の操作でもバランスが崩れないのは、上手く補正してるためだろう。ムササビを真似た膜の浮力は一部だけで、半分以上は重力加速器が担っているのではないかと思う。
俺は、上昇した後は体を左に曲げるようにして、曲線を描いてゆっくり降りて来た。
「すっご~い。おもしろ~いっ」
まぁ、遊びっぽいのは確かだ。
何かあるといけないので最初は一名ずつ飛んでもらった。
メリスも教官なので二手に分かれて講習している。
おかげで訓練はどんどん進む。第一研究室以外からの教官候補生も来ているが問題ない。みんなすぐに上手くなった。これなら、研究所全員がすぐに滑空できるようになるだろう。
まぁ、他の研究室でも滑空モードが必要なのかは知らないが。
* * *
「ねぇ、リュウ」
10回ほど滑空を終えて、すっかりうまくなったユリが声を掛けて来た。
今日の訓練はそろそろ終了だ。
「ヒカリゴケなんだけど」
「うん?」
「転移のどのタイミングで光ったの?」
「ああ、それか」
ユリは研究のことで頭が一杯らしい。
「ちょっと待て。あと三人終わったら今日は終わりだ」
「うん、わかった」
訓練は何事も無く終了し、俺とユリは喫茶室に移動した。
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