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#2:Lonely.
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午後から自由行動だったこの日は、家族からリクエストされたお土産と、美咲さんと瞳さんに可愛らしいシーサーを買ってからホテルに戻った。
制服で行動しなければいけないことも不自由だったけれど、一人に一部屋与えられたことが、この旅唯一の救いだった。
世界文化遺産に登録されている場所も、現地でしか食べることの出来ない料理も、ワタシの思い出に残ることは無さそうだった。
二泊三日の修学旅行も、今日を乗り切れば明日で終わる。
「はやく帰りたいな…」
ベッドに横たわって天井を眺めていると、波の音が聞こえていることに気が付いた。二日目に宿泊したこのホテルは、裏手が砂浜に面していて、静かな部屋の中に心地良い波の音を届けてくれていた。
沖縄まで来たのに、海を見ていなかったことに気が付いたワタシは、何か一つでもこの旅に来た証が欲しくて砂浜へと向かった。
そこに広がっていたのは、想像していた以上の絶景だった。
『青い海』というものは、こういう色のことを言うんだと思った。
ローファーと紺のハイソックスを脱いで、裸足で砂浜に入る。乾いた砂はサラサラして、少しくすぐったかったけど、白い砂浜と青い海のコントラストは、今まで見て来たどんな景色よりも素晴らしいものだった。
「綺麗…」
ポケットからケータイを取り出して、色んな角度から写真を撮った。この景色をワタシの大切な人達にも見せてあげたかった。お母さんに美咲さん、瞳さんに写メールを送りながら、みんなの喜ぶ姿を想像すると頬が熱くなった。
お母さんからは、お父さんと妹が羨ましがっていること、美咲さんからは『ズルいです!!』というリアクションをもらい、瞳さんからは『次の撮影で水着に挑戦しよう!!』と返事がきて、吹き出して笑ってしまった。
このやり取りだけで、この旅が良い想い出に昇華されていく満足感を得ることが出来た。
気が付くと日の入りが近づいていて、波がすぐ目の前まで来ていた。
「あっ…!!」
夢中になって写真を撮りまくっていたワタシは、ハイソックスを押し込んだローファーを、この砂浜のどこかに置いたままだったことを忘れていた。
慌てて立ち上がって辺りを見回すと、制服姿の男子が、ローファーを二足持ってワタシを見つめていた。
地元の高校生だろうか、ズボンは脛の上くらいまで捲りあげていて、足元はワタシと同じで裸足だった。
心ここに在らずのように見えた彼は、ハッと何かを思い出したみたいに口を開き始めた。
「この靴…あなたので合っていますか?」
無表情…?だけど少し照れくさそうに言われて、ワタシも恥ずかしくなってしまった。
「あのっ…わ、ワタシのです」
「良かった」と言って、彼は自分のローファーを砂浜に置いて、ワタシのローファーの底を両手の平に乗せて、取りやすいように差し出してくれた。
今まで靴を拾ってもらった事なんて、経験したことが無かったけれど、自分の手を汚してまで差し出してきた彼の行動は、海の上に浮かぶ太陽よりも眩しく見えた。
「あっ…ありがとうございます」
差し出された自分のローファーを丁寧に受け取ると、彼は手についた砂を名残惜しそうに落としながら、砂浜に腰をおろした。
ワタシも彼にならって腰をおろす。
こんな時に、何の話をしたら良いのか分からない自分が情けなくて、申し訳ない気持ちで俯いていると、彼は海の方を指差して「見て」とワタシに教えてくれた。
太陽が水平線に掛かって、青かった海をキラキラに輝かせていた。
「凄い…」
あれだけ沢山撮った『今まで見て来たどんな景色よりも素晴らしい』と思った青い海を、忘れてしまう程の美しい世界が広がっていた。
「綺麗だね」という彼の言葉は、ワタシのことを言ってくれたみたいに思えてドキドキしてしまった。
静かに海を眺める彼の横顔は、どこか寂しそうだったけれど、とても魅力的で、他の誰にも見せたくなくて、ワタシだけが独り占めしているこの空間が、永遠に続いたら良いなと思うものだった。
どの位の時間、彼のことを見つめていたのか、「どうしたの?」と言われるまで、意識がふわふわと宙を漂っていた。
「ごっ…ごめんなさいっ」
自分でも顔が赤くなっている事が分かった。
それから太陽が水平線の彼方に消えるまで、ひと言も会話は無かったけれど、とても居心地が良くて、幸せってこういう事なのかなと夢見心地にそう感じていた。
「じゃあ…」と立ち上がる彼を見て我に返る。
差し出してくれた手に、ちょこんと手を乗せると、ワタシの体を優しく起こしてくれた。
「あ…ありがとう」
お礼を言うと、とても嬉しそうな顔をしてくれた。
慣れない土地で出逢ったという『特殊効果』がそうさせている訳じゃなく、ワタシは彼を好きになっていた。
彼氏が居たこともない自分が『東京と沖縄の遠距離恋愛もアリかも』なんて妄想をしていると、別れの時がやってきた。
「気をつけて帰ってね」と言う彼に「ありがとう」と返すのが精一杯だった。
ワタシの初恋は、この海に残して泡になって消えてしまった。
ホテルの部屋から聞こえる波の音は、温かくて、流れる涙は、とても塩っぱかった。
制服で行動しなければいけないことも不自由だったけれど、一人に一部屋与えられたことが、この旅唯一の救いだった。
世界文化遺産に登録されている場所も、現地でしか食べることの出来ない料理も、ワタシの思い出に残ることは無さそうだった。
二泊三日の修学旅行も、今日を乗り切れば明日で終わる。
「はやく帰りたいな…」
ベッドに横たわって天井を眺めていると、波の音が聞こえていることに気が付いた。二日目に宿泊したこのホテルは、裏手が砂浜に面していて、静かな部屋の中に心地良い波の音を届けてくれていた。
沖縄まで来たのに、海を見ていなかったことに気が付いたワタシは、何か一つでもこの旅に来た証が欲しくて砂浜へと向かった。
そこに広がっていたのは、想像していた以上の絶景だった。
『青い海』というものは、こういう色のことを言うんだと思った。
ローファーと紺のハイソックスを脱いで、裸足で砂浜に入る。乾いた砂はサラサラして、少しくすぐったかったけど、白い砂浜と青い海のコントラストは、今まで見て来たどんな景色よりも素晴らしいものだった。
「綺麗…」
ポケットからケータイを取り出して、色んな角度から写真を撮った。この景色をワタシの大切な人達にも見せてあげたかった。お母さんに美咲さん、瞳さんに写メールを送りながら、みんなの喜ぶ姿を想像すると頬が熱くなった。
お母さんからは、お父さんと妹が羨ましがっていること、美咲さんからは『ズルいです!!』というリアクションをもらい、瞳さんからは『次の撮影で水着に挑戦しよう!!』と返事がきて、吹き出して笑ってしまった。
このやり取りだけで、この旅が良い想い出に昇華されていく満足感を得ることが出来た。
気が付くと日の入りが近づいていて、波がすぐ目の前まで来ていた。
「あっ…!!」
夢中になって写真を撮りまくっていたワタシは、ハイソックスを押し込んだローファーを、この砂浜のどこかに置いたままだったことを忘れていた。
慌てて立ち上がって辺りを見回すと、制服姿の男子が、ローファーを二足持ってワタシを見つめていた。
地元の高校生だろうか、ズボンは脛の上くらいまで捲りあげていて、足元はワタシと同じで裸足だった。
心ここに在らずのように見えた彼は、ハッと何かを思い出したみたいに口を開き始めた。
「この靴…あなたので合っていますか?」
無表情…?だけど少し照れくさそうに言われて、ワタシも恥ずかしくなってしまった。
「あのっ…わ、ワタシのです」
「良かった」と言って、彼は自分のローファーを砂浜に置いて、ワタシのローファーの底を両手の平に乗せて、取りやすいように差し出してくれた。
今まで靴を拾ってもらった事なんて、経験したことが無かったけれど、自分の手を汚してまで差し出してきた彼の行動は、海の上に浮かぶ太陽よりも眩しく見えた。
「あっ…ありがとうございます」
差し出された自分のローファーを丁寧に受け取ると、彼は手についた砂を名残惜しそうに落としながら、砂浜に腰をおろした。
ワタシも彼にならって腰をおろす。
こんな時に、何の話をしたら良いのか分からない自分が情けなくて、申し訳ない気持ちで俯いていると、彼は海の方を指差して「見て」とワタシに教えてくれた。
太陽が水平線に掛かって、青かった海をキラキラに輝かせていた。
「凄い…」
あれだけ沢山撮った『今まで見て来たどんな景色よりも素晴らしい』と思った青い海を、忘れてしまう程の美しい世界が広がっていた。
「綺麗だね」という彼の言葉は、ワタシのことを言ってくれたみたいに思えてドキドキしてしまった。
静かに海を眺める彼の横顔は、どこか寂しそうだったけれど、とても魅力的で、他の誰にも見せたくなくて、ワタシだけが独り占めしているこの空間が、永遠に続いたら良いなと思うものだった。
どの位の時間、彼のことを見つめていたのか、「どうしたの?」と言われるまで、意識がふわふわと宙を漂っていた。
「ごっ…ごめんなさいっ」
自分でも顔が赤くなっている事が分かった。
それから太陽が水平線の彼方に消えるまで、ひと言も会話は無かったけれど、とても居心地が良くて、幸せってこういう事なのかなと夢見心地にそう感じていた。
「じゃあ…」と立ち上がる彼を見て我に返る。
差し出してくれた手に、ちょこんと手を乗せると、ワタシの体を優しく起こしてくれた。
「あ…ありがとう」
お礼を言うと、とても嬉しそうな顔をしてくれた。
慣れない土地で出逢ったという『特殊効果』がそうさせている訳じゃなく、ワタシは彼を好きになっていた。
彼氏が居たこともない自分が『東京と沖縄の遠距離恋愛もアリかも』なんて妄想をしていると、別れの時がやってきた。
「気をつけて帰ってね」と言う彼に「ありがとう」と返すのが精一杯だった。
ワタシの初恋は、この海に残して泡になって消えてしまった。
ホテルの部屋から聞こえる波の音は、温かくて、流れる涙は、とても塩っぱかった。
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