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6:拙者、刃と一つになるでござる
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ズドオォォン!!
胴から離れたドラゴンの首と共に地面に着地した俺は、手の中のタケミツを呆然として見つめていた。
刃物はその用途により、形と切り口を変える。例えばレイピアの細長さは、鎧の隙間から突くためのものだ。村では罪を犯した者の斬首や儀式に使う道具を見せてもらったけれど、二枚の刃で挟んで斬るという方法に絶句してしまった。刀もその用途に使えると聞いているが、スパンと綺麗に斬り落とせるから苦しみも一瞬だし切り口もガタガタにならない。
そう、ちょうど今みたいな――
(嘘だろ!? 刀はアレン殿下に持って行かれたはずだ。なのに、どうしてこんな……)
『刀とは侍の魂。心を研ぎ澄ませば、ただの木も一本の刃となる』
光り輝く鋼と化したタケミツから、またも声が聞こえてきてぎょっとする。さっき俺を叱咤していたのはもしやこいつか?
「お前は俺が作った偽物じゃなかったのか!?」
『親父殿から聞かされてきたのを忘れたか。主を守る一本の刃となれと。代々受け継がれてきたのはその志や魂も同じ事。たとえ刀剣を手放したとしても、心に秘めた刃がある限り、お主は武士なのだ』
だからブシって何……と言いかけて、俺は親父から地獄のような特訓と一人称や語尾を変えるふざけたしきたりの事を思い出した。まさかあれが、刃と一体化するための修行だったのか? そして今、目覚めたスキルによってただのタケミツを……モチズキマルに変えたのか。
「あんたが、モチズキマル……?」
『その、餅が好きそうな響きはどうにも好かん。名刀望月丸は東方の島国の刀鍛冶、東天満の手より生まれし一振り。拙者は望月丸が蓄積してきた経験も、お主の記憶も持ち合わせておる。言わば一心同体なのだ』
ややこしくて意味が分からないが、要するに守護霊っぽい別人格なのか。ドラゴンを斬った時は信じられないくらい自然に体が動いたもんな。何にせよモチズキ……じゃなかった、望月丸が戻ってきてくれて助かった。
「それはそうと、あの子は無事に逃げられたのか?」
「あ……あのっ!」
刀を鞘に戻しながらキョロキョロと辺りを窺っていると、元いた場所から生贄の少女が恐る恐る近付いてきていた。ドラゴンは倒したとは言え、ついてくるなんて無謀だ。
「お怪我はありませんか? てっきりアタシの身代わりに神様の供物になるんだとばかり……」
「そんな殊勝な覚悟できるほど、まだ人生諦めてもいないよ。ただの通りすがりでほっとけないって、だけ……」
改めて向き直ると、遠目には黒猫のように見えていた彼女はやはり亜人だったようで。頭上の黒い耳はぺたんと伏せられ、潤んだ黄金の瞳は不安が滲み出ている。そして褐色の肌に映える聖衣からは、真っ黒い尻尾が覗いていた。
(か、可愛い……!!)
昔から猫が好きな俺だったが、突如として現れた奇跡のような猫耳美少女に、一瞬で心を奪われてしまっていた。
胴から離れたドラゴンの首と共に地面に着地した俺は、手の中のタケミツを呆然として見つめていた。
刃物はその用途により、形と切り口を変える。例えばレイピアの細長さは、鎧の隙間から突くためのものだ。村では罪を犯した者の斬首や儀式に使う道具を見せてもらったけれど、二枚の刃で挟んで斬るという方法に絶句してしまった。刀もその用途に使えると聞いているが、スパンと綺麗に斬り落とせるから苦しみも一瞬だし切り口もガタガタにならない。
そう、ちょうど今みたいな――
(嘘だろ!? 刀はアレン殿下に持って行かれたはずだ。なのに、どうしてこんな……)
『刀とは侍の魂。心を研ぎ澄ませば、ただの木も一本の刃となる』
光り輝く鋼と化したタケミツから、またも声が聞こえてきてぎょっとする。さっき俺を叱咤していたのはもしやこいつか?
「お前は俺が作った偽物じゃなかったのか!?」
『親父殿から聞かされてきたのを忘れたか。主を守る一本の刃となれと。代々受け継がれてきたのはその志や魂も同じ事。たとえ刀剣を手放したとしても、心に秘めた刃がある限り、お主は武士なのだ』
だからブシって何……と言いかけて、俺は親父から地獄のような特訓と一人称や語尾を変えるふざけたしきたりの事を思い出した。まさかあれが、刃と一体化するための修行だったのか? そして今、目覚めたスキルによってただのタケミツを……モチズキマルに変えたのか。
「あんたが、モチズキマル……?」
『その、餅が好きそうな響きはどうにも好かん。名刀望月丸は東方の島国の刀鍛冶、東天満の手より生まれし一振り。拙者は望月丸が蓄積してきた経験も、お主の記憶も持ち合わせておる。言わば一心同体なのだ』
ややこしくて意味が分からないが、要するに守護霊っぽい別人格なのか。ドラゴンを斬った時は信じられないくらい自然に体が動いたもんな。何にせよモチズキ……じゃなかった、望月丸が戻ってきてくれて助かった。
「それはそうと、あの子は無事に逃げられたのか?」
「あ……あのっ!」
刀を鞘に戻しながらキョロキョロと辺りを窺っていると、元いた場所から生贄の少女が恐る恐る近付いてきていた。ドラゴンは倒したとは言え、ついてくるなんて無謀だ。
「お怪我はありませんか? てっきりアタシの身代わりに神様の供物になるんだとばかり……」
「そんな殊勝な覚悟できるほど、まだ人生諦めてもいないよ。ただの通りすがりでほっとけないって、だけ……」
改めて向き直ると、遠目には黒猫のように見えていた彼女はやはり亜人だったようで。頭上の黒い耳はぺたんと伏せられ、潤んだ黄金の瞳は不安が滲み出ている。そして褐色の肌に映える聖衣からは、真っ黒い尻尾が覗いていた。
(か、可愛い……!!)
昔から猫が好きな俺だったが、突如として現れた奇跡のような猫耳美少女に、一瞬で心を奪われてしまっていた。
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