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14:拙者、敵の侵入を許すでござる
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アピス酋長の話を聞いて驚愕した。このジャングルは海に面していない。一旦国外へ出てそこから海のある国を目指す必要があるのだ。当然短くない距離だし、旅の日数もかかるだろう。
「何日かかるんだ、という顔だな? 安心しろ、最短の道があると言っただろう。このジャングルには商人やハンター、物好きな学者など余所者の行き来が多いんだ。毎回命の危険に晒したままにするはずないだろう。
まあそれについてはまた明日話すとして、今日はゆっくり休め」
そう言われて解散となり、俺たちは宿へと戻ってきた。今まで務めてきた聖女としての役割、そして生贄から解放された事で気が抜けたからなのか、マヤ様は一気に疲れが押し寄せてきてうつらうつらしている。
「そう言えば……イェモンはどこで寝るの?」
「拙者はドアの前で見張っていますので、ご安心を」
「え、何それ」
俺の言った事が突拍子もなかったのか、眠気が吹き飛んでしまった模様。王子の護衛だった俺としては普段通りの習慣だったのだが、マヤ様は面食らっている。
「イェモンも休まなきゃダメだよ」
「しかしこのドア、鍵もありませんし護衛もなしでは不用心故」
不可抗力とは言え、ドラゴンを倒し聖女の役目を放棄させる形になってしまったのだ。気付いたマヤ様の村の連中が行方を追っていないとも限らない。自分が狙われている可能性に顔を青くするマヤ様に、しっかり見張っているからと安心させ、俺は部屋の外の壁にもたれかかった。
結論から言えば、侵入者はいた。ただし真正面から来たそいつの目的はマヤ様ではなかった。
「あんたは……この宿に案内してくれた」
「指定した寝室にいらっしゃらないので探しておりました。酋長からは、くれぐれも満足していただけるおもてなしをと命じられております」
「嘘だな、それなら一言あったはずだ。たとえからかい半分だとしてもな」
刀に手をかけようとするとそれを制し、上着を脱ぎ始める女。
「警戒されるのでしたら、思う存分確認してくださいませ……贅沢を言うならこんな場所ではなく、イェモン様のお部屋で」
「バカか、密室で服に焚きしめたくっせぇ香を充満させるつもりか? この匂いには覚えがある……ハニートラップを仕掛けてきたやつが持ってた催淫剤だったか」
「あら、色っぽい体験はもうお済みでしたのね。心配しなくても楽しい一時を過ごすだけですから、抵抗は――」
バンッ!
女が妖艶な笑みで迫った時、後ろのドアが開いて不機嫌全開のマヤ様が出てきた。
「あ、主!? 危険です、お下がりください」
「危険なのはイェモンでしょ? ずっと聞こえてたんだからね」
ずんずんとこちらに歩いてきたマヤ様は、俺の腕に手を回しキッと女を睨み付けた。
「帰って」
「……ご無礼をお許しくださいませ。くれぐれも酋長には」
「なんだ、やっぱり独断か」
溜息を吐きながら零すと、女はクスリと笑って夜の闇に消えた。
「主、起こしてしまって申し訳ありませんでした」
「アタシが怒ってるのはそんな事じゃないよ。気付いてなかったの?」
マヤ様の言っている意味が分からず、首を傾げていると、ぐいっと室内に引っ張り込まれる。
そのままドアがパタンと閉じられた。
「何日かかるんだ、という顔だな? 安心しろ、最短の道があると言っただろう。このジャングルには商人やハンター、物好きな学者など余所者の行き来が多いんだ。毎回命の危険に晒したままにするはずないだろう。
まあそれについてはまた明日話すとして、今日はゆっくり休め」
そう言われて解散となり、俺たちは宿へと戻ってきた。今まで務めてきた聖女としての役割、そして生贄から解放された事で気が抜けたからなのか、マヤ様は一気に疲れが押し寄せてきてうつらうつらしている。
「そう言えば……イェモンはどこで寝るの?」
「拙者はドアの前で見張っていますので、ご安心を」
「え、何それ」
俺の言った事が突拍子もなかったのか、眠気が吹き飛んでしまった模様。王子の護衛だった俺としては普段通りの習慣だったのだが、マヤ様は面食らっている。
「イェモンも休まなきゃダメだよ」
「しかしこのドア、鍵もありませんし護衛もなしでは不用心故」
不可抗力とは言え、ドラゴンを倒し聖女の役目を放棄させる形になってしまったのだ。気付いたマヤ様の村の連中が行方を追っていないとも限らない。自分が狙われている可能性に顔を青くするマヤ様に、しっかり見張っているからと安心させ、俺は部屋の外の壁にもたれかかった。
結論から言えば、侵入者はいた。ただし真正面から来たそいつの目的はマヤ様ではなかった。
「あんたは……この宿に案内してくれた」
「指定した寝室にいらっしゃらないので探しておりました。酋長からは、くれぐれも満足していただけるおもてなしをと命じられております」
「嘘だな、それなら一言あったはずだ。たとえからかい半分だとしてもな」
刀に手をかけようとするとそれを制し、上着を脱ぎ始める女。
「警戒されるのでしたら、思う存分確認してくださいませ……贅沢を言うならこんな場所ではなく、イェモン様のお部屋で」
「バカか、密室で服に焚きしめたくっせぇ香を充満させるつもりか? この匂いには覚えがある……ハニートラップを仕掛けてきたやつが持ってた催淫剤だったか」
「あら、色っぽい体験はもうお済みでしたのね。心配しなくても楽しい一時を過ごすだけですから、抵抗は――」
バンッ!
女が妖艶な笑みで迫った時、後ろのドアが開いて不機嫌全開のマヤ様が出てきた。
「あ、主!? 危険です、お下がりください」
「危険なのはイェモンでしょ? ずっと聞こえてたんだからね」
ずんずんとこちらに歩いてきたマヤ様は、俺の腕に手を回しキッと女を睨み付けた。
「帰って」
「……ご無礼をお許しくださいませ。くれぐれも酋長には」
「なんだ、やっぱり独断か」
溜息を吐きながら零すと、女はクスリと笑って夜の闇に消えた。
「主、起こしてしまって申し訳ありませんでした」
「アタシが怒ってるのはそんな事じゃないよ。気付いてなかったの?」
マヤ様の言っている意味が分からず、首を傾げていると、ぐいっと室内に引っ張り込まれる。
そのままドアがパタンと閉じられた。
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