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呪われた伯爵編
お昼時の決め事
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次の日、あたしはリューネにディアンジュール伯爵と会った事や、これから教えを請う事などを伝えた。
「今日もお昼休みにご一緒する予定なの」
「そう……それじゃ、これからはお昼を一緒に食べられないわね?」
寂しそうに言うリューネに、あたしは驚く。リューネやロランたちと一緒に食べるのが、学園生活での楽しみの一つだったからだ。
「毎日って訳じゃないのよ? そうだ、リューネも一緒に行く?」
「ダメよ、伯爵にとってはまだ信用できる相手か分からないんでしょ? 詳しくは聞いていないけど、私って外相の娘だから、そこんとこ何となく察しちゃうのよね……
それに、婚約者との仲を深めるのも大事だと思うわ」
そうか……それぞれの家の事情もあるものね。だけど、せっかくできた友達なのに……寂しい。
「分かったわ……せめてアステル様の都合の悪い日は一緒に食べてもいい?」
「いいよ。と言うか、リジーがいないと私、ドロンと食べなきゃいけないから」
ドロン様? ロラン様じゃなくて? ――と言いかけて、リューネの婚約者はドロン様だった事を思い出す。いつもロラン様と仲良さそうだったので、いつの間にか脳内で二人は婚約者って事になっていた。
「リューネはドロン様と……えっと、仲悪いの?」
「別に、普通だけど。ドロンは王子サマのお付きだから、私の方からあんまり寄りたくはないのよね。実家からは友達ができるまでドロンと一緒にいろ、なんて言われるし。だからリジーが友達になってくれて助かってるの」
リューネは本当いい子だなぁ……彼女もまたテセウス殿下を苦手とする同士だったりする。あの人、口では友好的な事を言っておいて、裏では亜人を獣呼ばわりしているから。その血を引いていて外見に特徴が出ているリューネに対しても、推して知るべし。
(だからリューネ以上に人間離れしたアステル様は、特に慎重に身を潜めなきゃいけないんだろうな……)
同じ王族でありながら、殿下自身が「醜い化け物」と扱き下ろしているのだ。どうあってもその外見を受け入れられない者たちからすれば、迫害するための大義名分になってしまっている。ちゃんと彼の人となりを知りさえすれば、そんな事はできないはずなのに。
いつかあたしだけじゃなくて、他のみんなにもアステル様が受け入れられる日が来るといいな……
早朝に寮の厨房で作ったお弁当入りの手提げ鞄を手に、図書館へと足を運ぶ。昼食時なのでまだ閑散としている中、あたしは昨日アステル様と隠れた本棚の列へ入り込み、教えられた通りの本を抜き出して入れ替える。
ゴトンと音がして本棚がスライドすると、そこには隠されたスペースがあった。
「やあ、来たね」
本棚に囲まれた狭い空間の中であたしを招き入れたアステル様は、素顔ではなく普段のまばたき一つしない、見ていて不安定になる仮面を被っていた。
「今日もお昼休みにご一緒する予定なの」
「そう……それじゃ、これからはお昼を一緒に食べられないわね?」
寂しそうに言うリューネに、あたしは驚く。リューネやロランたちと一緒に食べるのが、学園生活での楽しみの一つだったからだ。
「毎日って訳じゃないのよ? そうだ、リューネも一緒に行く?」
「ダメよ、伯爵にとってはまだ信用できる相手か分からないんでしょ? 詳しくは聞いていないけど、私って外相の娘だから、そこんとこ何となく察しちゃうのよね……
それに、婚約者との仲を深めるのも大事だと思うわ」
そうか……それぞれの家の事情もあるものね。だけど、せっかくできた友達なのに……寂しい。
「分かったわ……せめてアステル様の都合の悪い日は一緒に食べてもいい?」
「いいよ。と言うか、リジーがいないと私、ドロンと食べなきゃいけないから」
ドロン様? ロラン様じゃなくて? ――と言いかけて、リューネの婚約者はドロン様だった事を思い出す。いつもロラン様と仲良さそうだったので、いつの間にか脳内で二人は婚約者って事になっていた。
「リューネはドロン様と……えっと、仲悪いの?」
「別に、普通だけど。ドロンは王子サマのお付きだから、私の方からあんまり寄りたくはないのよね。実家からは友達ができるまでドロンと一緒にいろ、なんて言われるし。だからリジーが友達になってくれて助かってるの」
リューネは本当いい子だなぁ……彼女もまたテセウス殿下を苦手とする同士だったりする。あの人、口では友好的な事を言っておいて、裏では亜人を獣呼ばわりしているから。その血を引いていて外見に特徴が出ているリューネに対しても、推して知るべし。
(だからリューネ以上に人間離れしたアステル様は、特に慎重に身を潜めなきゃいけないんだろうな……)
同じ王族でありながら、殿下自身が「醜い化け物」と扱き下ろしているのだ。どうあってもその外見を受け入れられない者たちからすれば、迫害するための大義名分になってしまっている。ちゃんと彼の人となりを知りさえすれば、そんな事はできないはずなのに。
いつかあたしだけじゃなくて、他のみんなにもアステル様が受け入れられる日が来るといいな……
早朝に寮の厨房で作ったお弁当入りの手提げ鞄を手に、図書館へと足を運ぶ。昼食時なのでまだ閑散としている中、あたしは昨日アステル様と隠れた本棚の列へ入り込み、教えられた通りの本を抜き出して入れ替える。
ゴトンと音がして本棚がスライドすると、そこには隠されたスペースがあった。
「やあ、来たね」
本棚に囲まれた狭い空間の中であたしを招き入れたアステル様は、素顔ではなく普段のまばたき一つしない、見ていて不安定になる仮面を被っていた。
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