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呪われた伯爵編
女神の正体
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昼食を終えたあたしたちは、シートの上に向き合って座る。椅子も持ち込んだ方がいいかしら……
アステル様はさっそく、この国における『魔法』の存在を明かしてくれた。
「そう特別な存在でもない。『魔力』であれば誰でも持ってるんだ。それこそ動物や植物にも……『咲疹』の原因だって魔力の高いハーブだっただろ? 言い換えれば『生命力』って事になるかな。
魔力をコントロールし操る術が『魔術』、それによって起きる現象が『魔法』だ」
正確に言えばそんなところらしいが、面倒なのでまとめて『魔法』で構わないと言われた。クラウン王国には他に魔法を扱える人間がいないしね。
「では、何故魔法は今までその存在を隠されてきたのでしょうか?」
「一言で言えば、アモレアの性質にある」
「女神アモレアの事ですか?」
あたしがそう聞けば、アステル様の眉間に皺が寄った。何だろう……すごく嫌そうな雰囲気が漂っている。
「女神……女神ね、まあいいや。その女神アモレアの加護により、この国は戦争などの幾多の困難を乗り越えてきた。ただし、何の見返りもなしに、ではない。願いの成就には必ず代償があるんだ。
必ずしも全てに求められている訳でもないが……アモレアは時折、王家の中から気に入った者に『祝福』を与える。王家はその者をディアンジュール伯爵家当主とし、アモレアの住む裏世界『アムリタ』との橋渡しの役目を担わせた。これが伯爵家の興りだ」
余程言いたくないのか、目を泳がせながら説明するアステル様。
願いの代償……『祝福』と言いつつもそれは、あまり良い事ではないのだろう。と言うか、気に入った者を囲って願いを叶えるだなんて、いまいち女神らしくない。それじゃ、まるで……いや、そんな事ってあるの!?
「選ばれた者に与えられるという『祝福』とは?」
「もう予想ついてるだろ? この獣のような姿だよ」
「女神様は何のために、そんな事を……おかげで代々伯爵家は苦労してきたのではないですか?」
「……」
アステル様がもごもご言っているが、聞きづらい。あたしが耳に手を当てて口元まで近付こうとすれば、思いっきり体を逸らされた。
「アステル様、聞こえません。もう少し大きな声でお願いできますか?」
「分かった! 分かったからそんなに近付かないでくれ!
ゴホンッ、アモレアは見目良い男を侍らすのが好きで……その、他の女に美しさが知られるのを嫌い、独占するために魔法をかけたんだ……と言われている。あー、自分で言ってて恥ずかしい」
他人に美しさを知られないための魔法? 女神がそんなせこい真似を? いやいや……いくら伝承とは言っても、今の説明にはおかしい点がある。
「伯爵家の中には、ご結婚された方もいるではありませんか」
「結婚は自由だよ。人間離れした醜い伯爵でもいいって言うなら子供を作る事も可能だ……まあ、そこに愛があったなんて話は聞かないけどね。
最初は政略的な、身分のつり合った者同士が婚約していたんだが、相手の令嬢があまりにも嫌がったものだから、身分や素行に関しては問わない事になっている。君が平民や男爵家でも僕と結婚できるのは、そういう事だ」
一人の男の美貌と愛を独占する女神……そんな俗な神様がいていいの?
あたしの疑問が顔に出ていたのか、アステル様は頷いてみせる。
「そうだよ、本来アモレアは神なんかじゃない。この事が明るみになる訳にはいかないから、その正体ごと魔法の存在も隠すしかなくなったんだ。
人間の欲望を叶える代償として、生贄を要求する……そういうのは『悪魔』と呼ぶべきだろう」
アステル様はさっそく、この国における『魔法』の存在を明かしてくれた。
「そう特別な存在でもない。『魔力』であれば誰でも持ってるんだ。それこそ動物や植物にも……『咲疹』の原因だって魔力の高いハーブだっただろ? 言い換えれば『生命力』って事になるかな。
魔力をコントロールし操る術が『魔術』、それによって起きる現象が『魔法』だ」
正確に言えばそんなところらしいが、面倒なのでまとめて『魔法』で構わないと言われた。クラウン王国には他に魔法を扱える人間がいないしね。
「では、何故魔法は今までその存在を隠されてきたのでしょうか?」
「一言で言えば、アモレアの性質にある」
「女神アモレアの事ですか?」
あたしがそう聞けば、アステル様の眉間に皺が寄った。何だろう……すごく嫌そうな雰囲気が漂っている。
「女神……女神ね、まあいいや。その女神アモレアの加護により、この国は戦争などの幾多の困難を乗り越えてきた。ただし、何の見返りもなしに、ではない。願いの成就には必ず代償があるんだ。
必ずしも全てに求められている訳でもないが……アモレアは時折、王家の中から気に入った者に『祝福』を与える。王家はその者をディアンジュール伯爵家当主とし、アモレアの住む裏世界『アムリタ』との橋渡しの役目を担わせた。これが伯爵家の興りだ」
余程言いたくないのか、目を泳がせながら説明するアステル様。
願いの代償……『祝福』と言いつつもそれは、あまり良い事ではないのだろう。と言うか、気に入った者を囲って願いを叶えるだなんて、いまいち女神らしくない。それじゃ、まるで……いや、そんな事ってあるの!?
「選ばれた者に与えられるという『祝福』とは?」
「もう予想ついてるだろ? この獣のような姿だよ」
「女神様は何のために、そんな事を……おかげで代々伯爵家は苦労してきたのではないですか?」
「……」
アステル様がもごもご言っているが、聞きづらい。あたしが耳に手を当てて口元まで近付こうとすれば、思いっきり体を逸らされた。
「アステル様、聞こえません。もう少し大きな声でお願いできますか?」
「分かった! 分かったからそんなに近付かないでくれ!
ゴホンッ、アモレアは見目良い男を侍らすのが好きで……その、他の女に美しさが知られるのを嫌い、独占するために魔法をかけたんだ……と言われている。あー、自分で言ってて恥ずかしい」
他人に美しさを知られないための魔法? 女神がそんなせこい真似を? いやいや……いくら伝承とは言っても、今の説明にはおかしい点がある。
「伯爵家の中には、ご結婚された方もいるではありませんか」
「結婚は自由だよ。人間離れした醜い伯爵でもいいって言うなら子供を作る事も可能だ……まあ、そこに愛があったなんて話は聞かないけどね。
最初は政略的な、身分のつり合った者同士が婚約していたんだが、相手の令嬢があまりにも嫌がったものだから、身分や素行に関しては問わない事になっている。君が平民や男爵家でも僕と結婚できるのは、そういう事だ」
一人の男の美貌と愛を独占する女神……そんな俗な神様がいていいの?
あたしの疑問が顔に出ていたのか、アステル様は頷いてみせる。
「そうだよ、本来アモレアは神なんかじゃない。この事が明るみになる訳にはいかないから、その正体ごと魔法の存在も隠すしかなくなったんだ。
人間の欲望を叶える代償として、生贄を要求する……そういうのは『悪魔』と呼ぶべきだろう」
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