ハの国史 「いきなり国家を救えと言わましても! 転生先はまさかの内乱真っ只中!? 俺に何ができるってんですか!」

癸から甲

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二十一話「錯綜する正義の果て」

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 巨大なミサイルが鋭い音を立て風を切り裂きながらこちらへ迫ってくる。空間推進機はすでに損傷し、もはや回避は不可能だった。私は咄嗟に二式小銃を構え射線を定めて迎撃を試みる。だが、見上げた空の彼方、視界の端に何かが飛来しているのが見えた。いや、あの姿…… まさか

 私は即座に小銃を三式飛錨銃へと持ち替えフックショットを放つ。鋭く伸びたワイヤーが宙を切り裂き目標へと突き進む

 ワイヤーに引き寄せられ、私はミサイルの射線から脱出する。

 ミサイルが地面に激突し、凄まじい爆発音が響き渡る。私の体は汗と砂塵でまみれた私が振り替えると目の前に広がるのは巨大なクレーターが作り上げられている。

 その縁に降り降り立ったデナグの表情には充実感と喜びが混じり呟く。

デナグ
「破片一つ残らず吹き飛んだな……」

 その声は自分に言い聞かせるような響きがあった。

 私は視線を銃口の先にいる人物へと向けその名前を呼ぶ。

ミコト
「ユウ!」

 ワイヤーが音を立てながら飛びユウの腕にしっかりと巻き付いてく。ユウはそれを力強くたぐり寄せると、私はその勢いのまま彼の胸元に飛び込む。衝撃とともに彼の腕が私を包み込みその力強さに全身が安心感で満たされる。

ユウ
「無事でよかった……本当に」

ユウの安堵した声が耳元に響き緊張が少しだけ緩む。

ミコト
「さっきはごめんね。傷ついた貴方を置いていってしまって」

ユウ
「俺の事は良いんだ」

ミコト
「どうしてここに来られたの?」

 ユウは端的に告げる。

「スキル〈完全方位指導〉さ。ミコトの位置を特定して最短ルートで駆けつけたんだ」

 ユウの言葉に心から感謝の気持ちが湧く。

ミコト
「一緒に戦って。」

 私はそう提案したがユウは首を横に振る。

ユウ
「すまないミコト、ルマロキと三頭竜を倒して俺の身体はボロボロだ。それにデナグとの決着はミコトだけでつけるべきだ」

 ユウの真剣な瞳を見て私は強く頷く。

ミコト
「分かった!」

 次の瞬間ユウが私の体をデナグに向けて投げ飛ばす。重力に身を任せ一気に彼女の元へと突進する。デナグは気配を察知し私の方を振り向くと同時に空間推進機を起動したがデナグの装備ではその巨体を飛翔させるまでにわずかなタイムラグがあり回避が間に合わない。瞬間、私の飛び蹴りが直撃しデナグはクレーターへと滑り落ちる。

クレーターの縁を駆け下りデナグの巨体に飛び乗った。滑り落ちる勢いを利用し空間推進機から伸びた羽を強引にもぎ取り空間推進機本体に斬撃を叩き込み叫ぶ。

ミコト
「デナグ!あなたがどんな未来を思い描き、地下世界の幸福を願い行動してた事も分かった。だからこそ言える私も同じ思いで戦ってた!」

 私はバランスを崩し吹き飛ばされる。デナグはクレーターの底へと滑り落ちようやく動きを止め私との距離が大きく開く。

 デナグは青龍刀を地面に突き立て体勢を立て直す。私も立ち上がり軍刀の刃をデナグへと向ける言葉を続ける。

ミコト
「でも、あなたがハの国の国権を排除する目的で内戦を引き起こし、さらにドミトリーを招き入れ外観誘致を行ったことは決して許される行為ではない!たとえ、その原因が私たちの国の積み重ねてきた歴史にあったとしても!」

 その時、上空からユウが七式斬艦刀を投げ渡す。

ユウ
「ミコト! これを使え!」

 私は地面に突き刺されたそれを引き抜き構える。

ミコト
「この国を背負う者として、私の友人として告げる! デナグ! あなたが私の死に価値を見出し和平合意後に政府軍主力への奇襲を敢行したのは、自らが掲げてきた理念がもはや国民の多数から支持されず既に死に体となっていること、そしてその理念実現を支えた地下帝国という手段をも失われた現実を理解していたからだろう?! 私はその理念の象徴である、あなたと憎悪に支配されたあなたに従う亡霊を必ず絶つ。それだけではない! 貴方が地下帝国民と共有する理念〈憎悪と暴力の連鎖を生みだす土壌〉に引導を渡そう! そして私が描く未来と思いを! デナグあなたに叩きつける!」

 私とデナグの視線が交差する中、互いに相手の懐へ踏み込む。そして刃が激しくぶつかり合い火花が散る。

ミコト
「私は市場開放そのものを否定するつもりはない! だがそれは国家全体の制度と秩序の中でこそ真に実を結ぶものだ! 一地域が独断で市場を開放を強行した結果、経済成長の名の下に国家が引き裂かれた悲劇を私は決して繰り返させない! それに私がデナグとドミトリーの和平合意を拒んだのは、デナグが書いた和平合意文、第四条が〈我々は共に歩むべき〉という提案ではなく〈我々が赦してやるから地上は生かしてやる〉という地上への服従の前提だったからだ! その実、共生を謳いながら主従の主が地下帝国である時点で支配構造の再編にすぎなかったからだ!」

 私はデナグの青龍刀を弾き飛ばしデナグの左腕が切断し、さらに逆袈裟で深い傷を負わせた。デナグはよろけ膝をつく。

 それでもデナグは、青龍刀を地面に突き立て、立ち上がると吶喊する。その姿を見て、かつての仲間だったデナグの精神的な強さを改めて実感する。

 私はがデナグが放つ真っ向切りを受け止めた瞬間、鋭い音が響き互いの刃が鋭い音を立て折れる。

 デナグは即座に青龍刀を振り払い拳を私に向け放つ。

ミコト
「私は国家の柱たる強さを絶対に手放しはしない! そしてかつて総裁政府が行った正当な権利を要求した地下諸国民に対する一方的な命令や抑圧を決して行わない! 私がドミトリーのミレヤイハ王国とゾンガのハ人民共和国を滅ぼしたのは、この手に握る力を国民の自由と意志そして尊厳を守るためにこそ振う必要があると理念を貫いたからだ!」

 私は咄嗟に一式軍刀に持ち替え、デナグの拳をかわす。

ミコト
「私がこれから築く統一されたハの国の未来は決してただの理想ではない! 私は必ず国民一人ひとりの声をくみ取り共に新たな価値観と理念を共有し全体の利益に結びつく仕組みを築き上げる! そして二度と内戦を起こさせはしない! 私はその未来を創る!」

 私は一式軍刀を握りしめ、デナグの巨体の左膝を蹴り跳び上がりそして渾身の力を込め一気に袈裟斬を放つ。

 ついにデナグが崩れ落ちる。その瞬間デナグは倒れながらもその巨体で私を抱き寄せ耳元で静かに囁く。

デナグ
「私がミコト以外に静かに忘れ去られる未来が訪れるといいな……」

 その言葉とともにデナグは力なく倒れ動かなくなる。

 全身がデナグの返り血で染まった私は彼女に背を向け一式軍刀をゆっくりと鞘に収め、すべてが終わったと確信し静かに空を見上げて、そっと言葉を呟く。

ミコト
「約束しよう。」

 私は頬を伝う涙を感じながら静かに同意を示す。

 その後、戦いの顛末を見届けたユウが私の元へと近づき私は彼の腕の中にそっと抱きかかえられる。

ユウ「ミコト…… いこうか」

 振り返ることなく私とユウは空へと舞い上がる。
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