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番外編 アンジェリア・フォードの人生
第十四話 一人じゃない
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道の凹凸により、ガタガタと揺れる車内。ユルゲン、ドロシー、アンジェリア、そしてキーランの四人は、小さな町ルシェルから王都にあるフォード伯爵家のタウンハウスへと向かっていた。
町を次々と通り抜ける度に、検問官の確認を受ける。シャーロット捜索の網の目が張り巡らされていることの表れだ。
昼過ぎに出発した一同は途中の宿屋で夜を明かし、翌日の正午、タウンハウスへと到着した。
「テッド、マルセル達は?」
「今朝早くに王宮へ向かわれました」
テッドと呼ばれた男が答える。彼はアンジェリア達の父マルセルが当主になる前から、伯爵家に仕える執事だ。ユルゲンはそんな彼と一言二言やり取りした後、キーランを手招きした。
「この少年は、私の商会所属の商人だ。アンジェリアと一年間共に過ごした子でな。支えが必要かと思って連れてきた」
「さようでございますか」
「シャーロットが無事に帰ってくるまでは、ここにいてもらおうと思う。マルセルには、手紙を出しておく──届く前に、皆帰ってくるかもしれないがな」
それはそうと、とユルゲンは続ける。
「彼のこと、よろしく頼む」
「かしこまりました」
テッドは恭しく腰を折った。ウィルフレッドの様子を見てくる、と告げたユルゲンが去ると、テッドは目の前の少年へと向き直る。
「キーラン様」
「は、はい」
「私はフォード伯爵家の執事をしている、テッドと申します」
「……どうも。商人のキーランです」
人生で初めて接する執事という存在。貴族とは縁遠い少年に、緊張が走った。
「あの……呼び捨てで大丈夫ですよ」
敬われる立場ではないからと告げたが、テッドは優しく首を横に振った。
「私の仕える方々のお連れ様ですから、誠心誠意おもてなしをいたします」
「そ、そうですか」
貴族社会とはそのようなものなのだろうか。それとも、テッドというこの執事の思想ゆえなのだろうか。答えは出ないが、キーランは特に尋ねなかった。豪華な邸宅に意識が向いたからである。
玄関口は大人が十人は楽に立てるほど広く、床は綺麗に磨かれている。案内された部屋へ入ると、横になっても余裕のありそうなソファ、上方がアーチとなっている窓、いかにも高級そうなベージュのカーテンが目に移った。その横にある扉付きの棚の上には不思議な形の花瓶があり、美しい花々が生けられている。
アンジェリアはこういう花瓶を見て芸術作品に惹かれたのだろうか、とキーランが思いを馳せていると、テッドは「少々お待ちください」と言ってどこかへ行った。
「キーラン、来てくれてありがとう」
ふいに、アンジェリアは口を開く。
「突然ごめんね」
「ああ……いや。宿舎の片付けは大体終わったし、俺も心配だとは思ってたから」
誘拐された令嬢だけでなく、アンジェリアのこともだ。
「大丈夫、ではないよな。その……」
「……まあね」
アンジェリアは俯く。
ただただ、彼女は歯がゆかった。すぐにでも捜索に出たいが、成人もしていない元令嬢が必死になって、大した効果を得られるとは思えない。馬に乗った経験はあるものの、一人で馬を走らせることができるほどの経験値があるわけではないのだ。その上、護身術を身に付けているわけでもない。犯人に辿り着いたところで、戦闘になれば自分は必然的に守ってもらう側に立つ。
捜索のための作戦会議に参加できるとしても、王太子のような他の者達より情報収集能力も頭脳も劣っている現状では、姉発見のきっかけを作ることすらできない可能性の方が高かった。
要するに、今の自分は足手まとい。ただ待っていることしかできないのだ。
普段の明るい様子とは対照的な顔色に、キーランは言葉に詰まる。何とか微笑みを浮かべようとするアンジェリア。彼はひどく胸が痛んだ。
どうすれば良い。消えた令嬢が無事に戻るまで、自分に何ができるだろうか──キーランは考えた。
「……あのさ、アンジェリア」
静かに口を開いた彼に、アンジェリアは視線をもって応える。キーランは彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「俺達は確かに無力だ。この状況で、必死に祈ることしかできない」
言葉にするのは、我ながら残酷だとキーランは思った。不安を拭うことは難しいかもしれない。それでも──。
「それでも、一人じゃないだろ。アンジェリアも前に言っていた」
そう、一人じゃない。
『成果を急ぎたいのは、一人だけじゃないよ?』
『私だって不安はある。だから、私も一緒に頑張らせて』
かつて、アンジェリアが自分にかけてくれた言葉。それを今、彼女に伝えたかった。
「大丈夫だと思えなくても良い」
不安な時に「不安だな」と言い合える仲間は、思った以上に絶大な存在だ。およそ三か月前、食品の腐敗を遅らせる方法が思い付かず焦っていたキーランは、彼女の言葉に救われた。
「一緒に祈ろう。不安だが──お姉さんは絶対に、戻ってくる」
言い切ったキーランの瞳には、涙目で頷くアンジェリアの姿が映っていた。
「キーラン様は、アンジェリアお嬢様にとって力強い仲間なんですね」
執事のテッドは、口を開いた。
先程涙を流したアンジェリアは現在、侍女に連れられ席を立っている。心を落ち着かせるため、そして赤くなった目の付近を冷やすためだ。
紅茶を淹れに来たテッドに軽く事情を説明したキーランは、ぼんやりと窓の外を眺めていた。そんな時、テッドは先の言葉を呟いたのだ。
「だと、良いですが。実はこれから、彼女と一緒に国内を練り歩くことになっています」
「さようでございますか」
テッドは柔らかな笑みを浮かべた。
「アンジェリアお嬢様は、帰省された時にそれはそれは楽しそうにお話しになっていらっしゃいました。学舎での勉強や商会のこと、そして、キーラン様のことも」
「え……」
それはつまり、自分とアンジェリアの見習い商人生活を、この執事が知っていることを意味する。もしや初期の頃──印象の良くない言動をしていた自分を責められるのではないか、とキーランは内心焦った。アンジェリア本人には謝ったものの、彼女の周囲の人間が不快に思う可能性はある。
ところが、テッドの口から飛び出したのは真逆の言葉だった。
「私は、初対面ながらキーラン様を信頼しております」
「え?」
不思議な話ですがね、と苦笑しつつテッドは言う。
「この一年間、キーラン様はアンジェリア様と共に勉学に励み、様々なご経験を積んできたことでしょう。きっと私共では決して果たせない役割を、貴方様は担っているはずです」
「……そうですかね」
自分はそれほど大層な役割を果たせていないと言いたげなキーラン。
「実は先程、失礼ながら、お二人のやり取りを聞いてしまいました」
テッドは申し訳なさそうに開口した。
キーランをこの部屋に案内した後、一度退室し、ティーセットを持って戻ってきた時のこと。部屋に入る直前、涙ぐむアンジェリアと、そんな彼女に言葉をかけるキーランのやり取りが耳に入ったのだ。
「貴方様のお言葉から、アンジェリアお嬢様との関係性を感じ取りました」
そしてテッドは過去を辿っていく。
「お嬢様は昔から快活な御方で……貴族社会では、なかなか馴染めなかったのです。ご家族以外の他人と接する際は、どこか一線を引いておられました」
心から楽しいと思えるのは外で遊んでいる時だと幼い頃に話していたことを、テッドは覚えていた。
「伯爵家のご令嬢という立場の手前、他の子供達はよそよそしかったので、お嬢様は我々使用人と遊ぶようになっていました」
いくら走り回っていても、見た目や格好から違いは分かる。キーランが初めてアンジェリアを見た時、貴族だとすぐに理解できたように。
彼女に近付く子供が全くいなかったわけではないが、成長するにつれ出自の格差を悟り、徐々に離れていく。そんな時期を、アンジェリアは過ごしてきた。
生まれは貴族、嗜好は平民。この相反する人格が両存した結果、アンジェリア・フォードという人間はどちらの世界でも深い交遊関係を築けなくなってしまった。あの日、キーランと出会うまでは。
「私共は感謝しているのです。お嬢様の目が生き生きと輝いていらっしゃるのは、もちろん商人生活へと進み始めたことも理由ではありますが──」
推測の中でも、限りなく真実に近い。
「──キーラン様と築くことのできた関係性も、大きな理由だと思いますよ」
その時、侍女と共にアンジェリアが戻ってきた。
「ん?どうかしたの?」
部屋にいた二人から同時に視線を浴び、彼女は怪訝そうな表情を浮かべる。
「いや、何でもない」
「シャーロットお嬢様がお戻りになると良いですねと、話しておりました」
テッドの言葉に、大きく頷くキーラン。
「そうなんだ?お姉様……きっとすぐに会えるよね」
言い聞かせるように呟くアンジェリア。その表情は、先程よりもすっきりと明るかった。
タウンハウスに喜びが溢れたのは、それから数時間後のことだ。
「ん?あれは」
窓の外をふと見たユルゲンが、目を凝らす。
「王家の馬車……?」
呟いて、はっとした。
「もしや、シャーロットか……!」
部屋に集まり待ち続けていた一同が、顔を見合わせる。そして皆が、玄関口へ急いだ。アンジェリアは真っ先に外へ出て、二台の馬車が停止するのを見つめる。
心臓がどくどくと鳴り響いているのが分かった。最悪の知らせを届けに来たのだとしたらどうしよう、と嫌な予想がよぎったが、馬車の扉が開くと同時に、その顔色は歓喜へと塗り替えられた。
「お姉様……っ!」
ゆっくりと降り立ったのは、誘拐された姉シャーロット。アンジェリアは一目散に駆け寄り、その存在を確かめるように抱き締めた。
「無事で良かった……!」
感極まりながらそう言うと、姉は微笑みを浮かべて答える。
「ただいま、アンジェリア」
二人の抱擁を皮切りに、皆に安堵の輪が広がっていく。キーランもそんな彼らを後ろから見守っていた。
町を次々と通り抜ける度に、検問官の確認を受ける。シャーロット捜索の網の目が張り巡らされていることの表れだ。
昼過ぎに出発した一同は途中の宿屋で夜を明かし、翌日の正午、タウンハウスへと到着した。
「テッド、マルセル達は?」
「今朝早くに王宮へ向かわれました」
テッドと呼ばれた男が答える。彼はアンジェリア達の父マルセルが当主になる前から、伯爵家に仕える執事だ。ユルゲンはそんな彼と一言二言やり取りした後、キーランを手招きした。
「この少年は、私の商会所属の商人だ。アンジェリアと一年間共に過ごした子でな。支えが必要かと思って連れてきた」
「さようでございますか」
「シャーロットが無事に帰ってくるまでは、ここにいてもらおうと思う。マルセルには、手紙を出しておく──届く前に、皆帰ってくるかもしれないがな」
それはそうと、とユルゲンは続ける。
「彼のこと、よろしく頼む」
「かしこまりました」
テッドは恭しく腰を折った。ウィルフレッドの様子を見てくる、と告げたユルゲンが去ると、テッドは目の前の少年へと向き直る。
「キーラン様」
「は、はい」
「私はフォード伯爵家の執事をしている、テッドと申します」
「……どうも。商人のキーランです」
人生で初めて接する執事という存在。貴族とは縁遠い少年に、緊張が走った。
「あの……呼び捨てで大丈夫ですよ」
敬われる立場ではないからと告げたが、テッドは優しく首を横に振った。
「私の仕える方々のお連れ様ですから、誠心誠意おもてなしをいたします」
「そ、そうですか」
貴族社会とはそのようなものなのだろうか。それとも、テッドというこの執事の思想ゆえなのだろうか。答えは出ないが、キーランは特に尋ねなかった。豪華な邸宅に意識が向いたからである。
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「キーラン、来てくれてありがとう」
ふいに、アンジェリアは口を開く。
「突然ごめんね」
「ああ……いや。宿舎の片付けは大体終わったし、俺も心配だとは思ってたから」
誘拐された令嬢だけでなく、アンジェリアのこともだ。
「大丈夫、ではないよな。その……」
「……まあね」
アンジェリアは俯く。
ただただ、彼女は歯がゆかった。すぐにでも捜索に出たいが、成人もしていない元令嬢が必死になって、大した効果を得られるとは思えない。馬に乗った経験はあるものの、一人で馬を走らせることができるほどの経験値があるわけではないのだ。その上、護身術を身に付けているわけでもない。犯人に辿り着いたところで、戦闘になれば自分は必然的に守ってもらう側に立つ。
捜索のための作戦会議に参加できるとしても、王太子のような他の者達より情報収集能力も頭脳も劣っている現状では、姉発見のきっかけを作ることすらできない可能性の方が高かった。
要するに、今の自分は足手まとい。ただ待っていることしかできないのだ。
普段の明るい様子とは対照的な顔色に、キーランは言葉に詰まる。何とか微笑みを浮かべようとするアンジェリア。彼はひどく胸が痛んだ。
どうすれば良い。消えた令嬢が無事に戻るまで、自分に何ができるだろうか──キーランは考えた。
「……あのさ、アンジェリア」
静かに口を開いた彼に、アンジェリアは視線をもって応える。キーランは彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「俺達は確かに無力だ。この状況で、必死に祈ることしかできない」
言葉にするのは、我ながら残酷だとキーランは思った。不安を拭うことは難しいかもしれない。それでも──。
「それでも、一人じゃないだろ。アンジェリアも前に言っていた」
そう、一人じゃない。
『成果を急ぎたいのは、一人だけじゃないよ?』
『私だって不安はある。だから、私も一緒に頑張らせて』
かつて、アンジェリアが自分にかけてくれた言葉。それを今、彼女に伝えたかった。
「大丈夫だと思えなくても良い」
不安な時に「不安だな」と言い合える仲間は、思った以上に絶大な存在だ。およそ三か月前、食品の腐敗を遅らせる方法が思い付かず焦っていたキーランは、彼女の言葉に救われた。
「一緒に祈ろう。不安だが──お姉さんは絶対に、戻ってくる」
言い切ったキーランの瞳には、涙目で頷くアンジェリアの姿が映っていた。
「キーラン様は、アンジェリアお嬢様にとって力強い仲間なんですね」
執事のテッドは、口を開いた。
先程涙を流したアンジェリアは現在、侍女に連れられ席を立っている。心を落ち着かせるため、そして赤くなった目の付近を冷やすためだ。
紅茶を淹れに来たテッドに軽く事情を説明したキーランは、ぼんやりと窓の外を眺めていた。そんな時、テッドは先の言葉を呟いたのだ。
「だと、良いですが。実はこれから、彼女と一緒に国内を練り歩くことになっています」
「さようでございますか」
テッドは柔らかな笑みを浮かべた。
「アンジェリアお嬢様は、帰省された時にそれはそれは楽しそうにお話しになっていらっしゃいました。学舎での勉強や商会のこと、そして、キーラン様のことも」
「え……」
それはつまり、自分とアンジェリアの見習い商人生活を、この執事が知っていることを意味する。もしや初期の頃──印象の良くない言動をしていた自分を責められるのではないか、とキーランは内心焦った。アンジェリア本人には謝ったものの、彼女の周囲の人間が不快に思う可能性はある。
ところが、テッドの口から飛び出したのは真逆の言葉だった。
「私は、初対面ながらキーラン様を信頼しております」
「え?」
不思議な話ですがね、と苦笑しつつテッドは言う。
「この一年間、キーラン様はアンジェリア様と共に勉学に励み、様々なご経験を積んできたことでしょう。きっと私共では決して果たせない役割を、貴方様は担っているはずです」
「……そうですかね」
自分はそれほど大層な役割を果たせていないと言いたげなキーラン。
「実は先程、失礼ながら、お二人のやり取りを聞いてしまいました」
テッドは申し訳なさそうに開口した。
キーランをこの部屋に案内した後、一度退室し、ティーセットを持って戻ってきた時のこと。部屋に入る直前、涙ぐむアンジェリアと、そんな彼女に言葉をかけるキーランのやり取りが耳に入ったのだ。
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生まれは貴族、嗜好は平民。この相反する人格が両存した結果、アンジェリア・フォードという人間はどちらの世界でも深い交遊関係を築けなくなってしまった。あの日、キーランと出会うまでは。
「私共は感謝しているのです。お嬢様の目が生き生きと輝いていらっしゃるのは、もちろん商人生活へと進み始めたことも理由ではありますが──」
推測の中でも、限りなく真実に近い。
「──キーラン様と築くことのできた関係性も、大きな理由だと思いますよ」
その時、侍女と共にアンジェリアが戻ってきた。
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「いや、何でもない」
「シャーロットお嬢様がお戻りになると良いですねと、話しておりました」
テッドの言葉に、大きく頷くキーラン。
「そうなんだ?お姉様……きっとすぐに会えるよね」
言い聞かせるように呟くアンジェリア。その表情は、先程よりもすっきりと明るかった。
タウンハウスに喜びが溢れたのは、それから数時間後のことだ。
「ん?あれは」
窓の外をふと見たユルゲンが、目を凝らす。
「王家の馬車……?」
呟いて、はっとした。
「もしや、シャーロットか……!」
部屋に集まり待ち続けていた一同が、顔を見合わせる。そして皆が、玄関口へ急いだ。アンジェリアは真っ先に外へ出て、二台の馬車が停止するのを見つめる。
心臓がどくどくと鳴り響いているのが分かった。最悪の知らせを届けに来たのだとしたらどうしよう、と嫌な予想がよぎったが、馬車の扉が開くと同時に、その顔色は歓喜へと塗り替えられた。
「お姉様……っ!」
ゆっくりと降り立ったのは、誘拐された姉シャーロット。アンジェリアは一目散に駆け寄り、その存在を確かめるように抱き締めた。
「無事で良かった……!」
感極まりながらそう言うと、姉は微笑みを浮かべて答える。
「ただいま、アンジェリア」
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