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番外編 アンジェリア・フォードの人生
第二十六話 賑わう四人
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「「「「かんぱーーーーい!」」」」
その夜、四人の若者達がテーブルを囲み、盛大な唱和が行われた。と言っても、掲げる金属製のカップの中身は酒ではない。
トリジア王国やロワイユ王国では、一般に十六から十八歳頃に大人と見なされ始める。貴族に至ってはその時期が早まる傾向にあり、十五歳で社交界入りを果たす者が多いため、すでにその年齢が成人だと主張する派閥も存在する。
成人の定義が曖昧な今。アンジェリア達が十六歳になろうという時期とはいえ、ひとまず酒は止めておくべきだとしたのは一行の中で最も真面目であろうフェリクスだった。
「お二人はお酒を飲んでも良いんですよ?私達に合わせていただかなくても」
アンジェリアは、二十三歳の年を迎えた傭兵達にそう言った。
今いるこの店は大衆料理の品揃えが豊富だが、酒やつまみも提供している。所々で若者達が酒器を掲げているのを見ると、飲みたくなることもあるのではないか。
しかし彼らは首を横に降った。
「万が一酔い潰れたら、送別会が悲惨な思い出になりかねませんからね」
フェリクスに続き、うんうん、と頷くミランダ。
「正直お酒はあまり得意じゃなくて」
嫌いなわけではないんですけどね、と彼女は苦笑する。
聞けば、任務終わりに傭兵センター付近にある酒場で飲んだことは何度かあるという。しかし基本的には一杯。もう少し飲むとしても二杯で終わるそうだ。どんちゃん騒ぎをする酔った仲間に混ざりつつも、酒はあまり飲まずつまみを中心に頂くというのが二人の定型らしい。
確かに、今までの道中で彼らが酒を飲んでいる様子は見たことがなかった。二人の中では、酒は気晴らしの選択肢には入っていないのだろう。
「自分から率先して飲むことはない──そういう感じです」
「何だか意外ですね。お酒、好きそうだと勝手に思ってました」
フットワークが軽く快活で、さっぱりとした話し方も特徴的なミランダ。フェリクスはともかく、彼女はどちらかと言えば明るい飲み会の中心にいそうな人物である。女兵士という言葉が似合う者改め、居酒屋が似合う者と呼んでも良いほどだ。
アンジェリアがミランダにそう話すと、彼女は笑った。
「よく言われます。それでお酒を注がれると、フェリクスが代わりに飲んでくれるんです。この人も普段飲まないのに」
「まあ、ミランダは割と早く酔いが回る人のようなので」
昔のよしみで何となく、と呟くフェリクスは視線を落とし、煮物に手を伸ばす。ミランダも焼き魚の皿に目を遣った。
「私は確かにそうだけど、それにしてもあなたは耐性がありすぎると思うわ」
「そうですか?」
「だって二十歳の頃にも──」
昔話を懐かしみながら語る二人。十代の頃から共に過ごし、互いを理解してきた者同士として、様々な思い出が飛び出してくる。その様子を、アンジェリアも目を細めながら聞いていた。
「そうだ、酒と言えば」
ふいにフェリクスがアンジェリア達に尋ねる。
「酒屋のヘクターさんって、いらっしゃいますよね。ルシェルの商会所の」
その名に、アンジェリアはスープを飲む手を止める。まさかここで彼の名が飛び出すとは予想していなかった。どうやら思わぬところで、繋がりがあったらしい。
「お知り合いなんですか?」
「実は以前、彼の店に酒を頼んだことがありまして……それで何度か会ったことはあります」
彼女は隣に座るキーランと顔を見合わせた。しかし思えば、フェリクスとミランダの登録していた傭兵センターはルシェルからそれほど遠くない町にある。
ヘクターは王都にも店を構えているため、ルシェル近辺では名の知れた酒商人だ。アンジェリアが学舎の教育課程の一貫として店を手伝った時に分かったが、酒の品揃えが豊富で、かなり大型の酒屋だった。フェリクス達が彼の店を利用するのも不思議ではない。
「本業の傍ら、学舎で授業もしていると話していました」
彼の言葉に、アンジェリアは過去を回想していく。
「実は私とキーランは、ヘクターさんの授業を受けていたんです」
「そうでしたか。学舎では、どんな授業があったんですか?」
「座学もありますけど、実務も結構あります!それこそ私はヘクターさんのお店を手伝ったこともあって」
それからアンジェリアとキーランは、当時の生活を懐かしみながら護衛達に話した。
「そういえば、偽造貨幣事件もあったな」
ふと呟くキーランに、フェリクスとミランダが瞠目する。
「何ですかそれ!詳しく聞かせてください」
前のめりになるミランダに、二人はさらに語っていく。その他、商業計画を考え始めた頃の焦りや認定審査の際の緊張感など、様々な出来事がまるで昨日のことのように鮮やかに思い出される。
四人の談笑はその後、店が閉まるまで長く続いた。
その夜、四人の若者達がテーブルを囲み、盛大な唱和が行われた。と言っても、掲げる金属製のカップの中身は酒ではない。
トリジア王国やロワイユ王国では、一般に十六から十八歳頃に大人と見なされ始める。貴族に至ってはその時期が早まる傾向にあり、十五歳で社交界入りを果たす者が多いため、すでにその年齢が成人だと主張する派閥も存在する。
成人の定義が曖昧な今。アンジェリア達が十六歳になろうという時期とはいえ、ひとまず酒は止めておくべきだとしたのは一行の中で最も真面目であろうフェリクスだった。
「お二人はお酒を飲んでも良いんですよ?私達に合わせていただかなくても」
アンジェリアは、二十三歳の年を迎えた傭兵達にそう言った。
今いるこの店は大衆料理の品揃えが豊富だが、酒やつまみも提供している。所々で若者達が酒器を掲げているのを見ると、飲みたくなることもあるのではないか。
しかし彼らは首を横に降った。
「万が一酔い潰れたら、送別会が悲惨な思い出になりかねませんからね」
フェリクスに続き、うんうん、と頷くミランダ。
「正直お酒はあまり得意じゃなくて」
嫌いなわけではないんですけどね、と彼女は苦笑する。
聞けば、任務終わりに傭兵センター付近にある酒場で飲んだことは何度かあるという。しかし基本的には一杯。もう少し飲むとしても二杯で終わるそうだ。どんちゃん騒ぎをする酔った仲間に混ざりつつも、酒はあまり飲まずつまみを中心に頂くというのが二人の定型らしい。
確かに、今までの道中で彼らが酒を飲んでいる様子は見たことがなかった。二人の中では、酒は気晴らしの選択肢には入っていないのだろう。
「自分から率先して飲むことはない──そういう感じです」
「何だか意外ですね。お酒、好きそうだと勝手に思ってました」
フットワークが軽く快活で、さっぱりとした話し方も特徴的なミランダ。フェリクスはともかく、彼女はどちらかと言えば明るい飲み会の中心にいそうな人物である。女兵士という言葉が似合う者改め、居酒屋が似合う者と呼んでも良いほどだ。
アンジェリアがミランダにそう話すと、彼女は笑った。
「よく言われます。それでお酒を注がれると、フェリクスが代わりに飲んでくれるんです。この人も普段飲まないのに」
「まあ、ミランダは割と早く酔いが回る人のようなので」
昔のよしみで何となく、と呟くフェリクスは視線を落とし、煮物に手を伸ばす。ミランダも焼き魚の皿に目を遣った。
「私は確かにそうだけど、それにしてもあなたは耐性がありすぎると思うわ」
「そうですか?」
「だって二十歳の頃にも──」
昔話を懐かしみながら語る二人。十代の頃から共に過ごし、互いを理解してきた者同士として、様々な思い出が飛び出してくる。その様子を、アンジェリアも目を細めながら聞いていた。
「そうだ、酒と言えば」
ふいにフェリクスがアンジェリア達に尋ねる。
「酒屋のヘクターさんって、いらっしゃいますよね。ルシェルの商会所の」
その名に、アンジェリアはスープを飲む手を止める。まさかここで彼の名が飛び出すとは予想していなかった。どうやら思わぬところで、繋がりがあったらしい。
「お知り合いなんですか?」
「実は以前、彼の店に酒を頼んだことがありまして……それで何度か会ったことはあります」
彼女は隣に座るキーランと顔を見合わせた。しかし思えば、フェリクスとミランダの登録していた傭兵センターはルシェルからそれほど遠くない町にある。
ヘクターは王都にも店を構えているため、ルシェル近辺では名の知れた酒商人だ。アンジェリアが学舎の教育課程の一貫として店を手伝った時に分かったが、酒の品揃えが豊富で、かなり大型の酒屋だった。フェリクス達が彼の店を利用するのも不思議ではない。
「本業の傍ら、学舎で授業もしていると話していました」
彼の言葉に、アンジェリアは過去を回想していく。
「実は私とキーランは、ヘクターさんの授業を受けていたんです」
「そうでしたか。学舎では、どんな授業があったんですか?」
「座学もありますけど、実務も結構あります!それこそ私はヘクターさんのお店を手伝ったこともあって」
それからアンジェリアとキーランは、当時の生活を懐かしみながら護衛達に話した。
「そういえば、偽造貨幣事件もあったな」
ふと呟くキーランに、フェリクスとミランダが瞠目する。
「何ですかそれ!詳しく聞かせてください」
前のめりになるミランダに、二人はさらに語っていく。その他、商業計画を考え始めた頃の焦りや認定審査の際の緊張感など、様々な出来事がまるで昨日のことのように鮮やかに思い出される。
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