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女神との出会い
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「ここはどこだ……?」
いつの間にか、暗闇の中にいた。
たしか今日は大好きなゲームが映画化されたのを見るために出掛けていたはずだ。
朝飯を食べてから家を出て、たしか映画館の前までは来ていたような……。
この状況と結びつけるために必死に思い出そうとするが、その先が思い出せない。
とりあえずここがどこなのかを確かめるためにゆっくりと手を広げるが、何かに触れることはない。
地に足がついている感覚はあるので少なくとも自分はどこかに立っていることがわかるが、踏み出した先に地面がある保証がなく動けずにいた。
どうしたものかと考えていると、突然低い破裂音と共に目の前にスポットライトのような光が当てられた。
光の中心には1人の女性が立っていた。
腰まで届きそうな綺麗な金髪で顔立ちは整っており、真っ白な修道服に身を包んでいる。
俺より少し背が低く華奢な体だが、服の上からでもわかるぐらい出るところは出ていて、目の前に女神が現れたと錯覚するぐらい美しい。
「私は女神ストレです」
女神だった。
「えーっと……女神?」
頭がついていかない。
今の状況を冷静に分析すると……映画を見に行ったら誘拐されて、目の前に女神と名乗るコスプレイヤーらしき女性が立っている。
うん、意味がわからない。
「状況を説明する前に、あなたに謝らなければいけません。私はあなたを殺しました」
え……殺した? 俺を?
体を適当に動かしてみるが不自由なく動かせる。
念のため足を見るが、しっかりとついていた。
しばらく俺の行動を見守っていた女神が、ゆっくりと話し始める。
「正確に言うとあなたをこちらの世界に転生させるために、事故死させました」
「異世界転生させるために、事故死に見せかけて殺したってことですか?」
「そうです、せめてもの償いとして事故前後の記憶を消して、痛みや苦しみなどが残らないようにしました」
これが本当の話だと仮定すると、ここはラノベとか漫画とかでよくある異世界転生前に連れて来られる場所で、記憶が曖昧だったのは消されていたからか。
自分の置かれた状況が少しずつわかってきたところで、ある事に気が付く。
「どうしてくれるんですか!」
「本当にすみません。地球でのあなたのこれからの人生を奪ってしまい――」
「そんな事はどうだっていいんですよ! これから楽しみにしていた映画を見に行くところだったんですよ?! 制作決定からずっと楽しみにしていたのに! 本当にどうしてくれるんですか!」
新作ゲームの発売やアニメの放送が発表するたびに、その日までは死ねないって思ってたけど今はそういうのもなく時期的には完璧だったけど、あの映画だけは……あれだけは見たかった!
「え、えっと……怒るところってそこなんですか……?」
女神が困った顔をしていた。
「殺されたことに関しては別にいいですよ。すごいやりたかった事があるわけでもないですし、痛みも恐怖もなく死ねるならそれでもいいかなって思ってましたから記憶を消したくれたことで――」
待てよ? 記憶を消された?
映画館の前まで来た記憶があるということは、映画館には辿り着けていたということだ。
「すみません、質問してもいいですか?」
「はい、何でも聞いてください」
「記憶を消したって言ってましたけど、事故はいつ起きてどのくらいの時間の記憶が消されたんでしょうか?」
「事故を起こしたのは、あなたが『映画館』という建物から出てきてすぐですね。記憶を消した時間は事故の起きた時間の前後2時間といったところですから、合計で4時間ぐらいになりますね」
映画見終わってるじゃん! 俺、映画見てんじゃん!
祈りのポーズをして、神に心の底から感謝した。
目の前に女神はいるけども。
「あ、あの! その映画を見ていた記憶って戻すことは出来ないんですか?」
見たのなら記憶さえ戻ればいい。
「記憶を戻すことはできますが、その場合は事故の記憶も全て戻すことになるのですがよろしいでしょうか?」
俺は神を心の底から恨んだ。
どうしても映画の内容は思い出したい。でも、事故の記憶を思い出すのは絶対に嫌だ。
「や、やっぱりいいです……」
悩みに悩んだ結果、苦渋の決断をした。
要するに事故の記憶に怖気づいたのだ。
「あのー……話を続けてもよろしいでしょうか?」
項垂れていると恐る恐る女神が話しかけてくるが、全然話が入ってくる気がしない。
「すみません、少しだけ待ってもらえますか……」
しばらく体育座りで地面を見つめた。
いつの間にか、暗闇の中にいた。
たしか今日は大好きなゲームが映画化されたのを見るために出掛けていたはずだ。
朝飯を食べてから家を出て、たしか映画館の前までは来ていたような……。
この状況と結びつけるために必死に思い出そうとするが、その先が思い出せない。
とりあえずここがどこなのかを確かめるためにゆっくりと手を広げるが、何かに触れることはない。
地に足がついている感覚はあるので少なくとも自分はどこかに立っていることがわかるが、踏み出した先に地面がある保証がなく動けずにいた。
どうしたものかと考えていると、突然低い破裂音と共に目の前にスポットライトのような光が当てられた。
光の中心には1人の女性が立っていた。
腰まで届きそうな綺麗な金髪で顔立ちは整っており、真っ白な修道服に身を包んでいる。
俺より少し背が低く華奢な体だが、服の上からでもわかるぐらい出るところは出ていて、目の前に女神が現れたと錯覚するぐらい美しい。
「私は女神ストレです」
女神だった。
「えーっと……女神?」
頭がついていかない。
今の状況を冷静に分析すると……映画を見に行ったら誘拐されて、目の前に女神と名乗るコスプレイヤーらしき女性が立っている。
うん、意味がわからない。
「状況を説明する前に、あなたに謝らなければいけません。私はあなたを殺しました」
え……殺した? 俺を?
体を適当に動かしてみるが不自由なく動かせる。
念のため足を見るが、しっかりとついていた。
しばらく俺の行動を見守っていた女神が、ゆっくりと話し始める。
「正確に言うとあなたをこちらの世界に転生させるために、事故死させました」
「異世界転生させるために、事故死に見せかけて殺したってことですか?」
「そうです、せめてもの償いとして事故前後の記憶を消して、痛みや苦しみなどが残らないようにしました」
これが本当の話だと仮定すると、ここはラノベとか漫画とかでよくある異世界転生前に連れて来られる場所で、記憶が曖昧だったのは消されていたからか。
自分の置かれた状況が少しずつわかってきたところで、ある事に気が付く。
「どうしてくれるんですか!」
「本当にすみません。地球でのあなたのこれからの人生を奪ってしまい――」
「そんな事はどうだっていいんですよ! これから楽しみにしていた映画を見に行くところだったんですよ?! 制作決定からずっと楽しみにしていたのに! 本当にどうしてくれるんですか!」
新作ゲームの発売やアニメの放送が発表するたびに、その日までは死ねないって思ってたけど今はそういうのもなく時期的には完璧だったけど、あの映画だけは……あれだけは見たかった!
「え、えっと……怒るところってそこなんですか……?」
女神が困った顔をしていた。
「殺されたことに関しては別にいいですよ。すごいやりたかった事があるわけでもないですし、痛みも恐怖もなく死ねるならそれでもいいかなって思ってましたから記憶を消したくれたことで――」
待てよ? 記憶を消された?
映画館の前まで来た記憶があるということは、映画館には辿り着けていたということだ。
「すみません、質問してもいいですか?」
「はい、何でも聞いてください」
「記憶を消したって言ってましたけど、事故はいつ起きてどのくらいの時間の記憶が消されたんでしょうか?」
「事故を起こしたのは、あなたが『映画館』という建物から出てきてすぐですね。記憶を消した時間は事故の起きた時間の前後2時間といったところですから、合計で4時間ぐらいになりますね」
映画見終わってるじゃん! 俺、映画見てんじゃん!
祈りのポーズをして、神に心の底から感謝した。
目の前に女神はいるけども。
「あ、あの! その映画を見ていた記憶って戻すことは出来ないんですか?」
見たのなら記憶さえ戻ればいい。
「記憶を戻すことはできますが、その場合は事故の記憶も全て戻すことになるのですがよろしいでしょうか?」
俺は神を心の底から恨んだ。
どうしても映画の内容は思い出したい。でも、事故の記憶を思い出すのは絶対に嫌だ。
「や、やっぱりいいです……」
悩みに悩んだ結果、苦渋の決断をした。
要するに事故の記憶に怖気づいたのだ。
「あのー……話を続けてもよろしいでしょうか?」
項垂れていると恐る恐る女神が話しかけてくるが、全然話が入ってくる気がしない。
「すみません、少しだけ待ってもらえますか……」
しばらく体育座りで地面を見つめた。
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