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店番
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「暇だなー」
カウンターに肘をつきながら雑貨屋を見渡す。
俺は今、母さんの代わりに店番をしている。
所謂、家の手伝いというやつだ。
昨日ぶっ倒れた後、意識を取り戻したら次の日の朝になっていた。
本当は昨日覚えた魔法を今すぐにでも試したかったが、出掛ける用事があるから店番をしろと呼び止められてしまったのだ。
「全然来ないわね、お客」
アトも俺の肩に乗って暇そうにしている。
母さんと店番を代わってから、まだ一度も客が来ていない。
「町唯一の雑貨屋だし、繁盛してないってことはないと思うんだけど」
まぁ、雑貨屋なんてコンビニみたいなものだから、時間帯によっては人なんて来ないよな。
このままだらだらするのももったいないし、何か珍しい物が置いてないか見てみるか。
店内をふらふら歩き、物色していく。
棚には食器などの日用品から、水を入れる革袋や道具入れなどの旅の道具やスコップやクワなどの農作業の道具、後はポーションが入った小瓶などが置かれている。
「そこまで気になる物はないなー」
異世界の雑貨屋自体が珍しいのだが、置いてある商品に関しては日常的に使う物が多く目を惹く物があまりない。
強いて言えばポーションぐらいか。
前は敵に浴びせただけだから、どんな味がしてどのぐらい傷が回復するかとかはその内調べたいと思っている。
味はエナジードリンクかきついハーブとかそんな感じなんだろうか?
そんな事を考えながら色々見て回っていると、ふと棚の隅の方に置いてある物が目に留まる。
「これ何だ?」
そこには手の平に乗せられるぐらいの茶色と白の小袋があった。
手に取ろうとすると、肩に乗っていたアトが素早く離れる。
「どうしたんだ?」
「な、なんでもないわよ」
明らかに様子がおかしい。
小袋を手に取ってアトに近付けてみる。
「ちょ、ちょっと近付けないでよ!」
どうやらこの小袋を嫌がってるらしい。
「これ何なの? さっきから嫌がってるみたいだけど」
「それは魔物のための薬よ。あ、あと別に嫌がってるわけじゃないから!」
魔物のための薬……? 何でそんな物が置いてあるんだ?
「なんでそんなものが?」
「この世界では魔物をテイムして乗り物にしたりペットにしたり出来るのよ。その茶色いのが薬で、横に置いてある白いのがテイム用のエサよ」
ほほー魔物をテイム出来るのか。
それはぜひ試してみたい。
「で、何でお前はこれを嫌がってるわけ?」
「だから、別に嫌がってないってば!」
頑なに理由を教えてくれないので、棚にある茶色い小袋を大量に抱えてアトに近付く。
「へっへっへ、これでも理由を言わない気か?」
「ちょ、それ以上こっちに来ないで!」
アトの制止を無視してどんどん近付いていく。
「わ、わかった! わかったから止まって!」
ふっ、観念したか。
俺は近付くのを止めた。
「……そ、その薬めちゃめちゃ臭いのよ! 魔物は病気を治すためだから仕方なく食べるけど、開封してない状態でも近付くと鼻が曲がりそうだわ!」
そういうことか。
俺は試しに鼻を近付けて嗅いでみる。
「ん? 全然臭くないぞ?」
「その臭いは魔物には悪臭なんだけど、あんたら人間には何故か感知できなくて無臭なのよ」
「ということは、アトってまも――」
「断じてちがーーーーーう! 私は女神の使者で、あんたら人間やましてや魔物なんかとは比べものにならないぐらい高位な存在なのよ! 今度あたしを魔物呼ばわりしようとしたら、頭の中に色々流し込んで廃人にするわよ!」
理由を知られたくなかったのは、魔物と一緒にされたくなかったからか。
思わぬところでアトの弱点がわかったな。これは使えそうだ。
心の買い物メモにそっと追加しておいた。
カウンターに肘をつきながら雑貨屋を見渡す。
俺は今、母さんの代わりに店番をしている。
所謂、家の手伝いというやつだ。
昨日ぶっ倒れた後、意識を取り戻したら次の日の朝になっていた。
本当は昨日覚えた魔法を今すぐにでも試したかったが、出掛ける用事があるから店番をしろと呼び止められてしまったのだ。
「全然来ないわね、お客」
アトも俺の肩に乗って暇そうにしている。
母さんと店番を代わってから、まだ一度も客が来ていない。
「町唯一の雑貨屋だし、繁盛してないってことはないと思うんだけど」
まぁ、雑貨屋なんてコンビニみたいなものだから、時間帯によっては人なんて来ないよな。
このままだらだらするのももったいないし、何か珍しい物が置いてないか見てみるか。
店内をふらふら歩き、物色していく。
棚には食器などの日用品から、水を入れる革袋や道具入れなどの旅の道具やスコップやクワなどの農作業の道具、後はポーションが入った小瓶などが置かれている。
「そこまで気になる物はないなー」
異世界の雑貨屋自体が珍しいのだが、置いてある商品に関しては日常的に使う物が多く目を惹く物があまりない。
強いて言えばポーションぐらいか。
前は敵に浴びせただけだから、どんな味がしてどのぐらい傷が回復するかとかはその内調べたいと思っている。
味はエナジードリンクかきついハーブとかそんな感じなんだろうか?
そんな事を考えながら色々見て回っていると、ふと棚の隅の方に置いてある物が目に留まる。
「これ何だ?」
そこには手の平に乗せられるぐらいの茶色と白の小袋があった。
手に取ろうとすると、肩に乗っていたアトが素早く離れる。
「どうしたんだ?」
「な、なんでもないわよ」
明らかに様子がおかしい。
小袋を手に取ってアトに近付けてみる。
「ちょ、ちょっと近付けないでよ!」
どうやらこの小袋を嫌がってるらしい。
「これ何なの? さっきから嫌がってるみたいだけど」
「それは魔物のための薬よ。あ、あと別に嫌がってるわけじゃないから!」
魔物のための薬……? 何でそんな物が置いてあるんだ?
「なんでそんなものが?」
「この世界では魔物をテイムして乗り物にしたりペットにしたり出来るのよ。その茶色いのが薬で、横に置いてある白いのがテイム用のエサよ」
ほほー魔物をテイム出来るのか。
それはぜひ試してみたい。
「で、何でお前はこれを嫌がってるわけ?」
「だから、別に嫌がってないってば!」
頑なに理由を教えてくれないので、棚にある茶色い小袋を大量に抱えてアトに近付く。
「へっへっへ、これでも理由を言わない気か?」
「ちょ、それ以上こっちに来ないで!」
アトの制止を無視してどんどん近付いていく。
「わ、わかった! わかったから止まって!」
ふっ、観念したか。
俺は近付くのを止めた。
「……そ、その薬めちゃめちゃ臭いのよ! 魔物は病気を治すためだから仕方なく食べるけど、開封してない状態でも近付くと鼻が曲がりそうだわ!」
そういうことか。
俺は試しに鼻を近付けて嗅いでみる。
「ん? 全然臭くないぞ?」
「その臭いは魔物には悪臭なんだけど、あんたら人間には何故か感知できなくて無臭なのよ」
「ということは、アトってまも――」
「断じてちがーーーーーう! 私は女神の使者で、あんたら人間やましてや魔物なんかとは比べものにならないぐらい高位な存在なのよ! 今度あたしを魔物呼ばわりしようとしたら、頭の中に色々流し込んで廃人にするわよ!」
理由を知られたくなかったのは、魔物と一緒にされたくなかったからか。
思わぬところでアトの弱点がわかったな。これは使えそうだ。
心の買い物メモにそっと追加しておいた。
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