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第一章
サバンは見た
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「はぁ~体調が悪い気がする」
近頃腰や下腹部に痛みを感じる。一体何が原因だろう?まだ二十歳なのに下半身辺りの調子が悪いとか男として恥ずかしい気もする。
「あ、あっち行きましょう」「そ、そうね」
そして女性から避けられている。これはあの卵が原因に違いない。あの騒動の後、俺は魔術師団長と王宮のお偉いさん達に事情聴取された。
裸の卵が走り回った場所は王宮の大事な会議が行われていた場所で、会議が丁度終了し、たくさんの関係者が廊下を歩いていたそうだ。もちろん俺が咎められる事はなかったが、一度付いたイメージはなかなか覆らないのかもしれない。
「こら、ぴーちゃん一人で出てきちゃ駄目だぞ?」
「シュクルさんはいないのかい?」
「は?」
王宮警備を担当している魔術師が声をかけてきた。
「あ!すみません、サバン魔術師でしたか?失礼しました」
「あぁ。あの、ぴーちゃんとは?」
そこで俺はあの卵がいまだに俺と同じ姿をしている事を知った。あの卵は卵型に戻ったものだと勝手に思っていたのだ。
「魔術塔で次期獣王のシュクルさんが十体の精霊の研究や世話をしています」
「十体もいるのか?」
高魔力保持者の俺でも魔力をかなり持って行かれたのに、うさぎ獣人の子が卵を十体も一人で世話しているのか?まぁ、俺は彼女に軽々とトイレで吹っ飛ばされたし、腕っぷしはめっちゃ強いだろうが、魔力に関しては獣人は無力に近い。ん?そうか、魔力がないからお世話が出来るのかもしれないな。
気になった俺は魔術塔に見に行ってみる事にした。
「こんにちは。ここに精霊がいると聞いたんだが」
「え?ぴーちゃん?会話が上手になったね」「あれ?皆は置いて帰って来ちゃったのかい?」
「⋯⋯私はサバンですが、ぴーちゃんでしたか?その精霊はここにいます?」
「「失礼しました!」」
門番に聞いてみると、先ほどシュクルさんとぴーちゃん達は散歩に出かけたらしい。
林の方へ向かったそうなので追ってみる事にした。しばらく進むと薬草畑の方から声が聞こえたので行ってみた。
『ぴーちゃんは薬草が好きなのか?この薬草か?どれ?これはミントだな』
『すき すき』
なんとなく隠れながら会話を聞いてみると、あの俺そっくりなヤツは多少会話もできるみたいだ。それにミントも好きらしい。俺もチョコミントが好きだから共感してしまう。
『コラァ!何をしとる!』
向こうから猛烈に怒っているご老人がやって来た。どこかで見た事のある方だ。
『お前らエッチな事しとるんじゃろ!!』
『?!はあ?!』
『最近の若いモンは公衆の面前でエッチなぷれえとかするんじゃろう!けしからん!!』
いきなりご老人が検討違いな事を言い出した。 どこからどう見てもエッチな感じなど無いぞ?!
『紐とかで縛ったりして、いかがわしい師従関係でエッチな行為に及ぶのであろう!!』
このご老人は未成年の子に対してなんて事を言うのだ?! あれ?ピーちゃんの腰がロープで結ばれているな?でも逃走防止用だよな。あいつ逃げ足が速いらしいし。
どう考えても、いかがわしさなんて感じないぞ?
『ええい!言い訳するな!!この男の一物が物語っておるわい!!』
一物?俺の顔したぴーちゃんの股間を見ると股間部分がびちょ濡れで粗相をしたみたいだった。俺の顔をしてそんな事は止めて欲しい! それにピーちゃんをよく見たらビラビラなレース付きの、昔の貴族が着ていたシャツを着ている。それ博物館にあるヤツだろ⋯⋯何処で手に入れたんだ⋯⋯誰があんな服を着せたんだ?いやがらせだろ?
『この!放尿男!あっちに行けい!ここはエッチな事をする場所じゃないわい!』
放尿男⋯⋯俺は色々とショックで呆然としていると、シュクルさんも同様に呆然としていた。
『どこですか~?先代様~?どこですか~?先代様~??』
『チッ⋯⋯は~い』
そうだ!このご老人は先代様ではないか!今ではあんな感じになってしまったのか⋯⋯昔は聡明な王だったはずだが⋯⋯いや、昔から仕事は出来るがエロジジイだったと母が言っていた気がする。
おっといけないシュクルさん達がどこかへ行ってしまった。急いで後を追わなくては。
次は噴水に来た。俺の顔をしたぴーちゃんは噴水に手を入れたり出したりして遊んでいる。すでに服が全身びちょぬれで粗相が目立たなくなったので、むしろ安心した。
先ほどから遠くの木の陰に副団長の気配がする。何をしているのだろうか。あと今年入った双子の美人魔術師もいる。忙しい魔術師が四人も木に隠れている、おかしな状況だった。
程なくして三人の令嬢達がシュクルさんの前にやって来た。
『あらやだ。ここに商売女がいるわ』『本当ね、王宮でお仕事かしら?嫌だわ』
『男も侍らせているわよ』
うわ~あの三人組は確か男漁りで有名な令嬢だ。まだ子供のシュクルさんに言う言葉じゃないだろうに。女は怖いな。
『まだ子供っぽいわね、でもウサギ獣人だしね』『臭いわ~獣臭いわ~』『あら?男好き臭いんじゃない?』
未だに残る獣人差別か。結構女性の方が女獣人に対して厳しいと聞いた事がある。特にうさぎ獣人は美しいから女性に嫉妬されるのだろう。まぁ男のうさぎ獣人はもっと酷い目に合うらしいが⋯⋯
『獣が来る所じゃないのよ』『森に帰りなさいよ』『それかエロ親父の元でもいいんじゃない?』
これはさすがの俺も一言言ってやろうかと思って一足踏み出した瞬間――
『シー!』『シュー!!』『ギー!』『フッー!』『シャッ!』『グッー!』『ウー!』『くッ!』『シッ(殺)』『嫌! 嫌!』
ピーちゃんと精霊がシュクルさんを守りながら魔力を纏って威嚇した。
そして双子もシュクルさんを守る様に前に出てきた。それに――
『⋯⋯去ね』
『『『ギャアー!!!』』』『『『ヒィ』』』
いきなり近くから副団長のデスボイスが発されて、女性全員を阿鼻叫喚の世界に誘った。これは怖い。
そしてシュクルさんがお礼らしき言葉を告げると、副団長は慌てて何かを叫んで消えて行った。何を言ったらあれほど屈強な副団長をビビらせられるのだろうか。気になる。
『『⋯⋯精霊様、その、Sはどうしてここにいるのですか?』』
美人双子がシュクルさんに尋ねる。Sとは何だろう?
『いや、これはぴーちゃんという精霊です。見た目は――S?ですが、温和で氷が好きな精霊です』
『『なんだ、そうでしたか。よかった~』』
「⋯⋯⋯⋯」
え?Sってまさか俺?サバンのS?双子は何が「よかった~」なのだろうか⋯⋯
『ねえ?ぴーちゃん?あなたはシュクル様を守ろうとしたのよね?』
『シュクル様が好きなのね?』
『好き! 好き!』
『『仲間よ!氷あげる!』』
『好き! 好き!』
何?!俺の顔をして女性に好き好き言うな!俺だって言った経験無いんだぞ!
しかも女子に囲まれ過ぎだろ!!俺と同じ顔なのに!俺は誰からも囲まれないぞ!
ぐぬぬ⋯⋯と悔しんでいたら大雨が降り始めたので急いで魔術師棟に帰った。入口には俺と同じく、ずぶぬれの黒い大男がいた。 皆の前から叫んで消えた後もまだ外にいたのか。何してたんだろう?
「朝顔!」
「はい?」
何だ?いきなり俺に花の名前を叫んで消えて行った。副団長はマジで恐ろしいな。
そしてしばらくしたある日。
『ピーちゃんて言うの?』『魔術練習棟に行くの?』『飴食べる?』
『そう そう すき すき』
魔術棟から出た俺はシュクルさんとぴーちゃん達、そして双子を含む女子の群れに遭遇した。
どこに行くのかと思ったら、すぐそばの魔術練習棟だったので少し覗いてみる事にした。
『ピーちゃん飴食べる?』『ピーちゃんは氷がいいかな?』『可愛い~』
『おいし おいし かわい かわい』
『きゃあ~!』『ピーちゃんも可愛い~』『私のクッキーも食べて!』
「⋯⋯⋯⋯」
俺の顔したぴーちゃんが沢山の女子に囲まれてお菓子を食べさせてもらっていた。
ぐぬぬ⋯⋯女子にあ~ん♡してもらっている。許せん。俺なんか女子から逃げられるってのに何でだよ?!元はと言えばピーちゃんが全裸で走り回ったのに!
シュクルさんが俺の存在に気づいて憐れんだ顔をしているが、俺の醜い嫉妬の炎は消えない。
そんな事を考えていたら、土を丸めて作られた不細工な土ダルマが訓練場所にできていた。
『これでいいですかね?私は土を丸めたり耕すくらいしか出来なくて』
『いえいえ!上手ですよ!Sみたいでいいじゃないですか!』
『むしろ攻撃しやすいです!』
気のせいかディスられてる気がした。いや気のせいに違いない。
俺は裕福な公爵家に産まれて家族から愛されて成長した。だが不思議といつもおかしな事が起きるので、神殿の神官長に相談したら『それは試練です。幸せな家庭に産まれ、何一つ不自由のない生活を送れているのですから』と言われて納得した。世の中には生きる事すら困難な人がいるのだし当然だろう。
そんな事を考えていたら俺そっくりな土人形が出来ていた。やたら足が短いが。
『行け~!歩け~』
おや?双子じゃなくてシュクルさんが動かしているみたいだな。獣人なのに土魔法が使えるのか?あんな土がよく動くな。土の中に魔法核でも入れてあるのかな。
『『凄い~!!』』『何アレ?面白いわ!』『あら?そっくりじゃない』『土はちゃんと服を着ているのね』
あれ?女子達が楽しそうだ。俺の形の土人形に喜んでくれているのだろうか? ちょっと嬉しい。
『あらら~ローブが脱げたわ!』『さすがサバン魔術師ね』『やだぁ頭が薄くなっているわよ?ふふ』『お尻部分の土が落ちたわ』『ソコを使い込み過ぎたのかしら?クス』
土人形が変なダンスを始めた。女子が喜ぶ。土人形が崩壊し始めた。女子達が笑う⋯⋯⋯⋯
『いる いる』
俺が試練と期待の狭間を行き来していると、目の前のドアが開きピーちゃんが目の前に現れた。
『『きゃあ!S!』』『本物の方?』『仕事に戻りましょ!』『じゃあね!ぴーちゃん』
ドアの前にいる俺を見て、女子達は違うドアから一瞬で消え去った。
『『⋯⋯⋯⋯』』
『あ~アレですよ。うん』
シュクルさんは俺にかける言葉を探しまくっている。見つかる物なら見つけて欲しい。俺を立ち直らせる言霊を。
そして彼女はポケットに手を入れた。そうか。言葉は見つからず、行動で示すのか。
『サバン魔術師、幸せの青い羽根を差し上げます』
『⋯⋯⋯⋯これで幸せになれるか?』
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯うん?』
シュクルさんは俺への返答をのらりと避けたが、何故か社会の荒波に揉まれて疲れ果てた中年上司の気配を感じた。
近頃腰や下腹部に痛みを感じる。一体何が原因だろう?まだ二十歳なのに下半身辺りの調子が悪いとか男として恥ずかしい気もする。
「あ、あっち行きましょう」「そ、そうね」
そして女性から避けられている。これはあの卵が原因に違いない。あの騒動の後、俺は魔術師団長と王宮のお偉いさん達に事情聴取された。
裸の卵が走り回った場所は王宮の大事な会議が行われていた場所で、会議が丁度終了し、たくさんの関係者が廊下を歩いていたそうだ。もちろん俺が咎められる事はなかったが、一度付いたイメージはなかなか覆らないのかもしれない。
「こら、ぴーちゃん一人で出てきちゃ駄目だぞ?」
「シュクルさんはいないのかい?」
「は?」
王宮警備を担当している魔術師が声をかけてきた。
「あ!すみません、サバン魔術師でしたか?失礼しました」
「あぁ。あの、ぴーちゃんとは?」
そこで俺はあの卵がいまだに俺と同じ姿をしている事を知った。あの卵は卵型に戻ったものだと勝手に思っていたのだ。
「魔術塔で次期獣王のシュクルさんが十体の精霊の研究や世話をしています」
「十体もいるのか?」
高魔力保持者の俺でも魔力をかなり持って行かれたのに、うさぎ獣人の子が卵を十体も一人で世話しているのか?まぁ、俺は彼女に軽々とトイレで吹っ飛ばされたし、腕っぷしはめっちゃ強いだろうが、魔力に関しては獣人は無力に近い。ん?そうか、魔力がないからお世話が出来るのかもしれないな。
気になった俺は魔術塔に見に行ってみる事にした。
「こんにちは。ここに精霊がいると聞いたんだが」
「え?ぴーちゃん?会話が上手になったね」「あれ?皆は置いて帰って来ちゃったのかい?」
「⋯⋯私はサバンですが、ぴーちゃんでしたか?その精霊はここにいます?」
「「失礼しました!」」
門番に聞いてみると、先ほどシュクルさんとぴーちゃん達は散歩に出かけたらしい。
林の方へ向かったそうなので追ってみる事にした。しばらく進むと薬草畑の方から声が聞こえたので行ってみた。
『ぴーちゃんは薬草が好きなのか?この薬草か?どれ?これはミントだな』
『すき すき』
なんとなく隠れながら会話を聞いてみると、あの俺そっくりなヤツは多少会話もできるみたいだ。それにミントも好きらしい。俺もチョコミントが好きだから共感してしまう。
『コラァ!何をしとる!』
向こうから猛烈に怒っているご老人がやって来た。どこかで見た事のある方だ。
『お前らエッチな事しとるんじゃろ!!』
『?!はあ?!』
『最近の若いモンは公衆の面前でエッチなぷれえとかするんじゃろう!けしからん!!』
いきなりご老人が検討違いな事を言い出した。 どこからどう見てもエッチな感じなど無いぞ?!
『紐とかで縛ったりして、いかがわしい師従関係でエッチな行為に及ぶのであろう!!』
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どう考えても、いかがわしさなんて感じないぞ?
『ええい!言い訳するな!!この男の一物が物語っておるわい!!』
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『どこですか~?先代様~?どこですか~?先代様~??』
『チッ⋯⋯は~い』
そうだ!このご老人は先代様ではないか!今ではあんな感じになってしまったのか⋯⋯昔は聡明な王だったはずだが⋯⋯いや、昔から仕事は出来るがエロジジイだったと母が言っていた気がする。
おっといけないシュクルさん達がどこかへ行ってしまった。急いで後を追わなくては。
次は噴水に来た。俺の顔をしたぴーちゃんは噴水に手を入れたり出したりして遊んでいる。すでに服が全身びちょぬれで粗相が目立たなくなったので、むしろ安心した。
先ほどから遠くの木の陰に副団長の気配がする。何をしているのだろうか。あと今年入った双子の美人魔術師もいる。忙しい魔術師が四人も木に隠れている、おかしな状況だった。
程なくして三人の令嬢達がシュクルさんの前にやって来た。
『あらやだ。ここに商売女がいるわ』『本当ね、王宮でお仕事かしら?嫌だわ』
『男も侍らせているわよ』
うわ~あの三人組は確か男漁りで有名な令嬢だ。まだ子供のシュクルさんに言う言葉じゃないだろうに。女は怖いな。
『まだ子供っぽいわね、でもウサギ獣人だしね』『臭いわ~獣臭いわ~』『あら?男好き臭いんじゃない?』
未だに残る獣人差別か。結構女性の方が女獣人に対して厳しいと聞いた事がある。特にうさぎ獣人は美しいから女性に嫉妬されるのだろう。まぁ男のうさぎ獣人はもっと酷い目に合うらしいが⋯⋯
『獣が来る所じゃないのよ』『森に帰りなさいよ』『それかエロ親父の元でもいいんじゃない?』
これはさすがの俺も一言言ってやろうかと思って一足踏み出した瞬間――
『シー!』『シュー!!』『ギー!』『フッー!』『シャッ!』『グッー!』『ウー!』『くッ!』『シッ(殺)』『嫌! 嫌!』
ピーちゃんと精霊がシュクルさんを守りながら魔力を纏って威嚇した。
そして双子もシュクルさんを守る様に前に出てきた。それに――
『⋯⋯去ね』
『『『ギャアー!!!』』』『『『ヒィ』』』
いきなり近くから副団長のデスボイスが発されて、女性全員を阿鼻叫喚の世界に誘った。これは怖い。
そしてシュクルさんがお礼らしき言葉を告げると、副団長は慌てて何かを叫んで消えて行った。何を言ったらあれほど屈強な副団長をビビらせられるのだろうか。気になる。
『『⋯⋯精霊様、その、Sはどうしてここにいるのですか?』』
美人双子がシュクルさんに尋ねる。Sとは何だろう?
『いや、これはぴーちゃんという精霊です。見た目は――S?ですが、温和で氷が好きな精霊です』
『『なんだ、そうでしたか。よかった~』』
「⋯⋯⋯⋯」
え?Sってまさか俺?サバンのS?双子は何が「よかった~」なのだろうか⋯⋯
『ねえ?ぴーちゃん?あなたはシュクル様を守ろうとしたのよね?』
『シュクル様が好きなのね?』
『好き! 好き!』
『『仲間よ!氷あげる!』』
『好き! 好き!』
何?!俺の顔をして女性に好き好き言うな!俺だって言った経験無いんだぞ!
しかも女子に囲まれ過ぎだろ!!俺と同じ顔なのに!俺は誰からも囲まれないぞ!
ぐぬぬ⋯⋯と悔しんでいたら大雨が降り始めたので急いで魔術師棟に帰った。入口には俺と同じく、ずぶぬれの黒い大男がいた。 皆の前から叫んで消えた後もまだ外にいたのか。何してたんだろう?
「朝顔!」
「はい?」
何だ?いきなり俺に花の名前を叫んで消えて行った。副団長はマジで恐ろしいな。
そしてしばらくしたある日。
『ピーちゃんて言うの?』『魔術練習棟に行くの?』『飴食べる?』
『そう そう すき すき』
魔術棟から出た俺はシュクルさんとぴーちゃん達、そして双子を含む女子の群れに遭遇した。
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『ピーちゃん飴食べる?』『ピーちゃんは氷がいいかな?』『可愛い~』
『おいし おいし かわい かわい』
『きゃあ~!』『ピーちゃんも可愛い~』『私のクッキーも食べて!』
「⋯⋯⋯⋯」
俺の顔したぴーちゃんが沢山の女子に囲まれてお菓子を食べさせてもらっていた。
ぐぬぬ⋯⋯女子にあ~ん♡してもらっている。許せん。俺なんか女子から逃げられるってのに何でだよ?!元はと言えばピーちゃんが全裸で走り回ったのに!
シュクルさんが俺の存在に気づいて憐れんだ顔をしているが、俺の醜い嫉妬の炎は消えない。
そんな事を考えていたら、土を丸めて作られた不細工な土ダルマが訓練場所にできていた。
『これでいいですかね?私は土を丸めたり耕すくらいしか出来なくて』
『いえいえ!上手ですよ!Sみたいでいいじゃないですか!』
『むしろ攻撃しやすいです!』
気のせいかディスられてる気がした。いや気のせいに違いない。
俺は裕福な公爵家に産まれて家族から愛されて成長した。だが不思議といつもおかしな事が起きるので、神殿の神官長に相談したら『それは試練です。幸せな家庭に産まれ、何一つ不自由のない生活を送れているのですから』と言われて納得した。世の中には生きる事すら困難な人がいるのだし当然だろう。
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おや?双子じゃなくてシュクルさんが動かしているみたいだな。獣人なのに土魔法が使えるのか?あんな土がよく動くな。土の中に魔法核でも入れてあるのかな。
『『凄い~!!』』『何アレ?面白いわ!』『あら?そっくりじゃない』『土はちゃんと服を着ているのね』
あれ?女子達が楽しそうだ。俺の形の土人形に喜んでくれているのだろうか? ちょっと嬉しい。
『あらら~ローブが脱げたわ!』『さすがサバン魔術師ね』『やだぁ頭が薄くなっているわよ?ふふ』『お尻部分の土が落ちたわ』『ソコを使い込み過ぎたのかしら?クス』
土人形が変なダンスを始めた。女子が喜ぶ。土人形が崩壊し始めた。女子達が笑う⋯⋯⋯⋯
『いる いる』
俺が試練と期待の狭間を行き来していると、目の前のドアが開きピーちゃんが目の前に現れた。
『『きゃあ!S!』』『本物の方?』『仕事に戻りましょ!』『じゃあね!ぴーちゃん』
ドアの前にいる俺を見て、女子達は違うドアから一瞬で消え去った。
『『⋯⋯⋯⋯』』
『あ~アレですよ。うん』
シュクルさんは俺にかける言葉を探しまくっている。見つかる物なら見つけて欲しい。俺を立ち直らせる言霊を。
そして彼女はポケットに手を入れた。そうか。言葉は見つからず、行動で示すのか。
『サバン魔術師、幸せの青い羽根を差し上げます』
『⋯⋯⋯⋯これで幸せになれるか?』
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