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貴族学院編
シュクルはサバンの家に訪問する
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「早食いはアカン。美味しい物はよく味わって食べるべきだ。そうは思わないかい?ニーチェ?」
「ウー(うん)」
第一騎士団から解放されたシュクルは、ついでに魔法師団棟に寄ったがサバンは今日も欠勤していた。
どうするかねぇ?昨日シュクルはサバンに事実を伝えただけだったが、私の言葉でとどめを刺してしまったみたいだし見舞いに行こうか。
シュクルはニーチェとサバンの巣に行ってみる事にした。ちなみに前もって面会の予約などはしていない。もし門番に追い払われたら潔く帰る所存だ。一応シュクルが来たという事実を伝えてくれればいい。むしろそれだけでいいや。
「糞がぁ!何だこの城は!こんな家に住めるのなら尻の一度や二度レンタルしたって問題ないだろう!!もげろ!」
王宮から出てすぐにサバンの住む公爵家があった。始めは王宮の施設の続きかと思ったが、王宮騎士団ではない騎士服を着た人が門に立っていたので尋ねてみたのだ。こんな感じで。
『すみません。ここはサバン魔術師の家ですか?』
『⋯⋯こちらはロワール公爵家のお屋敷です。サバン様のお知り合いの方でしょうか?』
『いや、別に。ただ『優しいシュクルが心配して門まで来ていましたよ。超~心配していましたよ』とサバンにお伝え下さい。ではさようなら~』
そう伝えたのに、一人の門番がすぐに屋敷に走り、もう一人はシュクルを逃すまいと足止めした。公爵家の専属騎士はシゴデキだ。
そしてほんの数分後、ダッシュで戻って来た騎士にシュクルは大きな城へと案内された。有難迷惑だ。
「いらっしゃいませ。サバン様のご友人の方でしょうか?私、とても嬉しく思います⋯⋯」
城に入るといきなり中年の小さくて丸い執事が現れた。そして泣きそうな顔で近づいて来たので非常に困る。帰りにくい。
「ニーチェは庭で食事でもしておいで」
「ウー(うん)」
サバンの巣へと移動している間、執事からサバンの話を聞かされる。昔から優しいお坊ちゃまだの、最近友人がいなくなってしまっただの、結婚適齢期だの言っているが、シュクルは遊びに来た記念に、廊下にある絵画の一枚でも頂こうかと考えていた。貧乏人に愛の手を。ノブレス・オブリージュだろ?
「このお部屋でございます。昨夜からずっとお部屋から出られないのです」
⋯⋯⋯⋯昨晩からって別働班の家で騒いで帰ってきてからだよな?心配するほど籠ってなくない?
だが仕事に行けない程のショックを受けたのだろう。だからこそシュクルは今日ここに来た。私に任せておけ。
――コンコン――
中にいるくせに返事はない。ちょっと面倒臭い。早く帰りたいな。なら⋯⋯
「サバン!いい物持って来たぞ!おっさん連中に評判な切れ痔の薬を――――」
「おい!大きな声でそんな事言うなよ!」
いきなりドアが開いた。てか、自室が両開きのドアじゃん。金持ち過ぎるだろ。
「お前が尻にショックを受けたと思って薬をだな⋯⋯おいおい、いきなり乱暴だぞ?」
サバンに中へと押し込まれた。辺りを見渡すと サバンの巣は教室位の広さがあった。
「ショックを受けたのは心だ!尻は⋯⋯ポーションで完治している」
「尻治ったの?じゃあ帰ろ」
本日は尻のショックに対するお見舞いだからな。早く帰るべ。心の問題とかは面倒臭いし、失恋した乙女みたいで困るしな。
でもよかった。この痔の薬は別働班の家に落ちていた物で、消費期限も分からない使いかけの薬だったから、使わなくてよかったかもな。あんま触りたくないし。サバンのゴミ箱に捨てとこう。
「話を聞けよ~!!俺恥ずかしくて仕事に行けないんだよ!どうしたらいいんだ?!」
「一つ重大な事を教えてやる。いいか?サバンはすでにGレベルまで嫌われている。これ以上の底辺はない。だから気にするな」
「はぁあああああ?!⋯⋯⋯⋯?」
あ、またサバンが萎びてしまった。早く帰りたいから、何か適当にいい事を言わないと。
「大丈夫だぞ?君には伸びしろしか無いんだ。サバンには現状維持、又は上がるしか選択肢はない。いいか?怖い物は何もない。最底辺だからな!」
これで開き直ればOKだ。カウンセリング料を支払いたまえ。
――コンコン――
「ん?」
ベランダからだろうか?ノックする音がした。シュクルは窓の方へ行ってみる。
すると男の子がベランダに立っていた。
「ん?どうした?どうぞ?」
この城の子だろうか。ドアを開けて勝手に男の子を部屋に招き入れるが⋯⋯
「ギャ」
足を窓枠に引っかけて顔から倒れた。
「お、お前!俺に足掛けしただろ!それに兄さんを泣かして酷い悪だな!!」
「いや、ボクが勝手に窓枠に足を引っかけたんじゃないの。ボクはサバンの弟なのか?」
似ている。滅茶苦茶⋯⋯⋯⋯鈍くさい感じが。
「おい!誰が''ボク''だ!お前騎士科のロリ巨乳だろ!兄さんを誑かして泣かせたな!」
おや?私の事を知っているのか?なら学院の生徒だろうか。随分と小さいが⋯⋯
だがまずは訂正させて欲しい。
「いいか?それは勘違いだ。サバンを泣かせたのはゴリマッチョな男だよ。夜会でお兄さんはお尻を――――」
「ギャァアア!!弟に何を言ってるんだよ!言わないでくれ!」
あ、弟の顔が強張っている。弟の目はエメさんとアデリーンさんがSを見る時の目に似ている。ちょっとヤバイかも。まいっか。
――コンコン――
「失礼いたします。お茶をご用意いたしました。何やら楽しそうなお声が廊下まで聞こえておりましたよ。私も本当に嬉しいです」
この状況を喜んでくれる人がいてよかった。さすがサバンの執事じゃん。お茶にしよう。
いきなりの訪問でもすぐに高級菓子が出てくるなんて流石は公爵家。王宮から近いし、これからは頻繁に遊びに来よう。
「なるほど?フレデリック君は魔術科なのか」
サバンの弟のフレデリック君はシュクルと同じ一年生で魔術科の生徒だった。
「社会科のクラスが一緒だぞ!何で俺の事知らないんだよ!」
残念ながらシュクルはクラスメイトの名前をほとんど覚えていない。みなさんはどうやって覚えているの?教えてよ。
フレデリック君は剣術と魔法陣、それに地経営系の選択科目を選んだそうだ。他人の選択科目を聞くと少し面白い。その人の興味とか将来の目標などが分かる。
いや、分からないかもしれない。少なくともシュクルは当てはまらない。ドンパチやっている攻撃魔法講座は一体何が目的だ?テロリストの養成か?短パン理事長と森のうさぎは露出狂養成講座か?それに薬草学の先生は前科一犯だ。そして家畜顔の生徒が集まった動物学も微妙だ。 まあいっか。
「フレデリック君はどんな魔法が得意なの?」
「俺は土魔法が得意なんだ」
へぇ~?サバンと同じ闇魔法じゃないんだ?
「私は泥人形でサバンを作れるぞ。でも歩かせると尻から崩れて⋯⋯」
サバンが恨みがましい顔で見ている。
「いや、今言った尻は、そういう意味の尻ではなくて――」
「そこじゃない!!」
じゃあ何だよ?察して欲しい女の子か。はっきり言いたまえ。
「コホン、発言よろしでしょうか?サバン様は傷心ですので、お二人に慰めて欲しいそうです。先ほどからシュクル様とフレデリック様のお話が盛り上がっておいでで、お寂しいのですよ」
「「⋯⋯⋯⋯」」
もうこの執事に慰めてもらえばいいじゃん。弟が引き気味だぞ。でも早く帰りたいから何か傷心な心に良い方法を考えなくては。
「そうだ!動物と触れ合うと心が温かくなるかもしれない」
「動物には嫌われるんだよ」
そうだった。猫を吸えない可哀想な野郎だった。じゃあ⋯⋯
「美味いもの食うとか、散歩とか、旅行とか、庭造りとか⋯⋯」
う、爺臭い回答しか浮かばない。 これでは老後の楽しみではないか。
「家の食事はいつも素晴らしいし、庭の森を散歩したら迷子になる。旅行は飽きたし、庭は庭師が完璧に仕上げている」
コイツ⋯⋯⋯⋯毎日いい物食って、敷地内に森がある程大きな家に住んで、小さい頃から旅行し尽くしていて、美しい庭の花々に囲まれていると⋯⋯? ムカつくがお菓子をポロポロと床に落としてしまったので不問としよう。アレクが食べてくれるかな。
多分サバンには庶民っぽい趣味の方がいいのかもしれない。なら⋯⋯
「ぬいを作るとか、お菓子を作るとか、一から花や野菜を育てるとか?」
「!?」
早速公爵家で働く侍女の中で、ぬいに精通しているエミリーさんにご教授を賜った。
――一時間後――
「大変上手ですサバン様!フレデリック様も初めてとは思えない腕前です!シュクル様のは⋯⋯うん〇ですか?」
「ガハァ!!」
ビーバーを作ろうとしたのだ。シュクルのげっ歯類なお友達を⋯⋯それをう〇こって⋯⋯そう言われるとソレにしか見えなくなってきた。これは持ち帰らずサバンの部屋に飾ろう。シュクルはこっそりと目立たなそうな飾り棚にうん〇を置いた。
次は調理室へお邪魔する。さすが公爵家。調理台も清潔で広いし、銅製の鍋がキラキラ光っている。
本日はパティスリーを担当しているドリスさんにアップルパイのご教授を給う。
――二時間後――
「焼き目が素晴らしい美しさですサバン様!フレデリック様も見事なナイフによる細工でリンゴが輝いております。シュクル様のは⋯⋯うん〇ですか?食品でその様な物を作るのは、よろしくありませんよ?」
「ギャアァ!!」
何故だ?!どうして私のアップルパイだけう〇こっぽいんだよ!!陰謀だ!
「シュクルはリンゴを大きく切りすぎな上に欲張ってパイの中に詰め込み過ぎたんだよ。パイ生地も分厚いし、オーブンに入れる前からダンゴムシみたいな形だったじゃん」
一杯入れたら一杯食べられるじゃないか!薄いより厚い方が噛み応えもあるし、腹に溜まるだろ?!
次は庭に出てベテラン庭師のジャルダンさんからご教授を受け給う。いきなりの提案でありながら、 公爵家の庭の一角を使わせてもらえる事になった。
「では色々植えてみましょうかい」
フフフ⋯⋯植物に関して私はプロだ。これならばジャルダンさんからお褒めの言葉を得られるだろう。うん〇な評価とはおさらばだ。
では種を植えて魔力を流す。少々驚かせる為に多めに魔力を使い成長させるか。
「できました!!」
「えぇぇ?!何ですか?この植物は!こんな色は見た事もありません!邪悪な!」
アジサイみたいな花が咲いたのだが花が黒い。確かに黒い花はあまり見た事がないかもしれない。
「この花は土壌の成分や酸の濃度、注いだ魔力によって色が変わるんだよ。シュクルが闇の魔力を注ぎ過ぎたから黒くなったんだね」
へぇ~フレデリック君は詳しいな。さすが魔術科。
「じゃあサバンのは何色だよ?」
「俺は種や苗を植えるだけしかできない。魔力を注いでしまったら枯れてしまう」
闇魔法とは物を腐食する性質があるそうだ。シュクルは土属性も持っているし、植物魔法は得意だが、サバンは土属性が無いのかもしれない。
「あれ?変だな、芽が出てきた」
魔力を注いでいないサバンの甘芋(さつまいも)から芽が出てきて成長を続ける。そして黒い甘芋の花が咲いた。
「ち、ちょっと!うちの庭!!様子おかしいよ?!」
「うわわわ!!」
先ほどまで綺麗だった庭に植物が無くなり更地になっている。それも十分おかしいが、シュクルの植えた黒いアジサイ風の花と甘芋の蔓がどんどん増えて庭を蹂躙していく。フレデリック君の花すら真っ黒になってしまった。
「あああああああ!!なんて事ですか!わしの育てた庭がぁ!」
ヤベェ魔力を注ぎ過ぎたか。シュクルは遠くの庭にニーチェがいるのを見つけた。
「じゃあなサバン!ぬい作りとお菓子作りの趣味を見つけられてよかったな!これからは趣味に生きろよ。ではさよなら~」
気配を消して一気にニーチェを抱き、公爵家を後にする。
「ニーチェよ、お腹は満たされたか?」
「ウー(うん)」
よかったよかった。
後日サバンから庭に黒いハリネズミが出ただの、大きな蟻が出ただの文句を言われたが、黒い甘芋で作ったお菓子とうさぎのぬいをくれた。
「ウー(うん)」
第一騎士団から解放されたシュクルは、ついでに魔法師団棟に寄ったがサバンは今日も欠勤していた。
どうするかねぇ?昨日シュクルはサバンに事実を伝えただけだったが、私の言葉でとどめを刺してしまったみたいだし見舞いに行こうか。
シュクルはニーチェとサバンの巣に行ってみる事にした。ちなみに前もって面会の予約などはしていない。もし門番に追い払われたら潔く帰る所存だ。一応シュクルが来たという事実を伝えてくれればいい。むしろそれだけでいいや。
「糞がぁ!何だこの城は!こんな家に住めるのなら尻の一度や二度レンタルしたって問題ないだろう!!もげろ!」
王宮から出てすぐにサバンの住む公爵家があった。始めは王宮の施設の続きかと思ったが、王宮騎士団ではない騎士服を着た人が門に立っていたので尋ねてみたのだ。こんな感じで。
『すみません。ここはサバン魔術師の家ですか?』
『⋯⋯こちらはロワール公爵家のお屋敷です。サバン様のお知り合いの方でしょうか?』
『いや、別に。ただ『優しいシュクルが心配して門まで来ていましたよ。超~心配していましたよ』とサバンにお伝え下さい。ではさようなら~』
そう伝えたのに、一人の門番がすぐに屋敷に走り、もう一人はシュクルを逃すまいと足止めした。公爵家の専属騎士はシゴデキだ。
そしてほんの数分後、ダッシュで戻って来た騎士にシュクルは大きな城へと案内された。有難迷惑だ。
「いらっしゃいませ。サバン様のご友人の方でしょうか?私、とても嬉しく思います⋯⋯」
城に入るといきなり中年の小さくて丸い執事が現れた。そして泣きそうな顔で近づいて来たので非常に困る。帰りにくい。
「ニーチェは庭で食事でもしておいで」
「ウー(うん)」
サバンの巣へと移動している間、執事からサバンの話を聞かされる。昔から優しいお坊ちゃまだの、最近友人がいなくなってしまっただの、結婚適齢期だの言っているが、シュクルは遊びに来た記念に、廊下にある絵画の一枚でも頂こうかと考えていた。貧乏人に愛の手を。ノブレス・オブリージュだろ?
「このお部屋でございます。昨夜からずっとお部屋から出られないのです」
⋯⋯⋯⋯昨晩からって別働班の家で騒いで帰ってきてからだよな?心配するほど籠ってなくない?
だが仕事に行けない程のショックを受けたのだろう。だからこそシュクルは今日ここに来た。私に任せておけ。
――コンコン――
中にいるくせに返事はない。ちょっと面倒臭い。早く帰りたいな。なら⋯⋯
「サバン!いい物持って来たぞ!おっさん連中に評判な切れ痔の薬を――――」
「おい!大きな声でそんな事言うなよ!」
いきなりドアが開いた。てか、自室が両開きのドアじゃん。金持ち過ぎるだろ。
「お前が尻にショックを受けたと思って薬をだな⋯⋯おいおい、いきなり乱暴だぞ?」
サバンに中へと押し込まれた。辺りを見渡すと サバンの巣は教室位の広さがあった。
「ショックを受けたのは心だ!尻は⋯⋯ポーションで完治している」
「尻治ったの?じゃあ帰ろ」
本日は尻のショックに対するお見舞いだからな。早く帰るべ。心の問題とかは面倒臭いし、失恋した乙女みたいで困るしな。
でもよかった。この痔の薬は別働班の家に落ちていた物で、消費期限も分からない使いかけの薬だったから、使わなくてよかったかもな。あんま触りたくないし。サバンのゴミ箱に捨てとこう。
「話を聞けよ~!!俺恥ずかしくて仕事に行けないんだよ!どうしたらいいんだ?!」
「一つ重大な事を教えてやる。いいか?サバンはすでにGレベルまで嫌われている。これ以上の底辺はない。だから気にするな」
「はぁあああああ?!⋯⋯⋯⋯?」
あ、またサバンが萎びてしまった。早く帰りたいから、何か適当にいい事を言わないと。
「大丈夫だぞ?君には伸びしろしか無いんだ。サバンには現状維持、又は上がるしか選択肢はない。いいか?怖い物は何もない。最底辺だからな!」
これで開き直ればOKだ。カウンセリング料を支払いたまえ。
――コンコン――
「ん?」
ベランダからだろうか?ノックする音がした。シュクルは窓の方へ行ってみる。
すると男の子がベランダに立っていた。
「ん?どうした?どうぞ?」
この城の子だろうか。ドアを開けて勝手に男の子を部屋に招き入れるが⋯⋯
「ギャ」
足を窓枠に引っかけて顔から倒れた。
「お、お前!俺に足掛けしただろ!それに兄さんを泣かして酷い悪だな!!」
「いや、ボクが勝手に窓枠に足を引っかけたんじゃないの。ボクはサバンの弟なのか?」
似ている。滅茶苦茶⋯⋯⋯⋯鈍くさい感じが。
「おい!誰が''ボク''だ!お前騎士科のロリ巨乳だろ!兄さんを誑かして泣かせたな!」
おや?私の事を知っているのか?なら学院の生徒だろうか。随分と小さいが⋯⋯
だがまずは訂正させて欲しい。
「いいか?それは勘違いだ。サバンを泣かせたのはゴリマッチョな男だよ。夜会でお兄さんはお尻を――――」
「ギャァアア!!弟に何を言ってるんだよ!言わないでくれ!」
あ、弟の顔が強張っている。弟の目はエメさんとアデリーンさんがSを見る時の目に似ている。ちょっとヤバイかも。まいっか。
――コンコン――
「失礼いたします。お茶をご用意いたしました。何やら楽しそうなお声が廊下まで聞こえておりましたよ。私も本当に嬉しいです」
この状況を喜んでくれる人がいてよかった。さすがサバンの執事じゃん。お茶にしよう。
いきなりの訪問でもすぐに高級菓子が出てくるなんて流石は公爵家。王宮から近いし、これからは頻繁に遊びに来よう。
「なるほど?フレデリック君は魔術科なのか」
サバンの弟のフレデリック君はシュクルと同じ一年生で魔術科の生徒だった。
「社会科のクラスが一緒だぞ!何で俺の事知らないんだよ!」
残念ながらシュクルはクラスメイトの名前をほとんど覚えていない。みなさんはどうやって覚えているの?教えてよ。
フレデリック君は剣術と魔法陣、それに地経営系の選択科目を選んだそうだ。他人の選択科目を聞くと少し面白い。その人の興味とか将来の目標などが分かる。
いや、分からないかもしれない。少なくともシュクルは当てはまらない。ドンパチやっている攻撃魔法講座は一体何が目的だ?テロリストの養成か?短パン理事長と森のうさぎは露出狂養成講座か?それに薬草学の先生は前科一犯だ。そして家畜顔の生徒が集まった動物学も微妙だ。 まあいっか。
「フレデリック君はどんな魔法が得意なの?」
「俺は土魔法が得意なんだ」
へぇ~?サバンと同じ闇魔法じゃないんだ?
「私は泥人形でサバンを作れるぞ。でも歩かせると尻から崩れて⋯⋯」
サバンが恨みがましい顔で見ている。
「いや、今言った尻は、そういう意味の尻ではなくて――」
「そこじゃない!!」
じゃあ何だよ?察して欲しい女の子か。はっきり言いたまえ。
「コホン、発言よろしでしょうか?サバン様は傷心ですので、お二人に慰めて欲しいそうです。先ほどからシュクル様とフレデリック様のお話が盛り上がっておいでで、お寂しいのですよ」
「「⋯⋯⋯⋯」」
もうこの執事に慰めてもらえばいいじゃん。弟が引き気味だぞ。でも早く帰りたいから何か傷心な心に良い方法を考えなくては。
「そうだ!動物と触れ合うと心が温かくなるかもしれない」
「動物には嫌われるんだよ」
そうだった。猫を吸えない可哀想な野郎だった。じゃあ⋯⋯
「美味いもの食うとか、散歩とか、旅行とか、庭造りとか⋯⋯」
う、爺臭い回答しか浮かばない。 これでは老後の楽しみではないか。
「家の食事はいつも素晴らしいし、庭の森を散歩したら迷子になる。旅行は飽きたし、庭は庭師が完璧に仕上げている」
コイツ⋯⋯⋯⋯毎日いい物食って、敷地内に森がある程大きな家に住んで、小さい頃から旅行し尽くしていて、美しい庭の花々に囲まれていると⋯⋯? ムカつくがお菓子をポロポロと床に落としてしまったので不問としよう。アレクが食べてくれるかな。
多分サバンには庶民っぽい趣味の方がいいのかもしれない。なら⋯⋯
「ぬいを作るとか、お菓子を作るとか、一から花や野菜を育てるとか?」
「!?」
早速公爵家で働く侍女の中で、ぬいに精通しているエミリーさんにご教授を賜った。
――一時間後――
「大変上手ですサバン様!フレデリック様も初めてとは思えない腕前です!シュクル様のは⋯⋯うん〇ですか?」
「ガハァ!!」
ビーバーを作ろうとしたのだ。シュクルのげっ歯類なお友達を⋯⋯それをう〇こって⋯⋯そう言われるとソレにしか見えなくなってきた。これは持ち帰らずサバンの部屋に飾ろう。シュクルはこっそりと目立たなそうな飾り棚にうん〇を置いた。
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――二時間後――
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「ギャアァ!!」
何故だ?!どうして私のアップルパイだけう〇こっぽいんだよ!!陰謀だ!
「シュクルはリンゴを大きく切りすぎな上に欲張ってパイの中に詰め込み過ぎたんだよ。パイ生地も分厚いし、オーブンに入れる前からダンゴムシみたいな形だったじゃん」
一杯入れたら一杯食べられるじゃないか!薄いより厚い方が噛み応えもあるし、腹に溜まるだろ?!
次は庭に出てベテラン庭師のジャルダンさんからご教授を受け給う。いきなりの提案でありながら、 公爵家の庭の一角を使わせてもらえる事になった。
「では色々植えてみましょうかい」
フフフ⋯⋯植物に関して私はプロだ。これならばジャルダンさんからお褒めの言葉を得られるだろう。うん〇な評価とはおさらばだ。
では種を植えて魔力を流す。少々驚かせる為に多めに魔力を使い成長させるか。
「できました!!」
「えぇぇ?!何ですか?この植物は!こんな色は見た事もありません!邪悪な!」
アジサイみたいな花が咲いたのだが花が黒い。確かに黒い花はあまり見た事がないかもしれない。
「この花は土壌の成分や酸の濃度、注いだ魔力によって色が変わるんだよ。シュクルが闇の魔力を注ぎ過ぎたから黒くなったんだね」
へぇ~フレデリック君は詳しいな。さすが魔術科。
「じゃあサバンのは何色だよ?」
「俺は種や苗を植えるだけしかできない。魔力を注いでしまったら枯れてしまう」
闇魔法とは物を腐食する性質があるそうだ。シュクルは土属性も持っているし、植物魔法は得意だが、サバンは土属性が無いのかもしれない。
「あれ?変だな、芽が出てきた」
魔力を注いでいないサバンの甘芋(さつまいも)から芽が出てきて成長を続ける。そして黒い甘芋の花が咲いた。
「ち、ちょっと!うちの庭!!様子おかしいよ?!」
「うわわわ!!」
先ほどまで綺麗だった庭に植物が無くなり更地になっている。それも十分おかしいが、シュクルの植えた黒いアジサイ風の花と甘芋の蔓がどんどん増えて庭を蹂躙していく。フレデリック君の花すら真っ黒になってしまった。
「あああああああ!!なんて事ですか!わしの育てた庭がぁ!」
ヤベェ魔力を注ぎ過ぎたか。シュクルは遠くの庭にニーチェがいるのを見つけた。
「じゃあなサバン!ぬい作りとお菓子作りの趣味を見つけられてよかったな!これからは趣味に生きろよ。ではさよなら~」
気配を消して一気にニーチェを抱き、公爵家を後にする。
「ニーチェよ、お腹は満たされたか?」
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家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!
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俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??
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