ショボい人生のやり直し?!絶対に消えたくないので真逆の人生でポイント貯める

亀野内アンディ

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貴族学院編

シュクルの次なる仕事

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「シュクル~仕事よ~」 

「⋯⋯次は何でしょう?」 

夜会で起きた媚薬事件の報告書を提出し、一安心した瞬間に次の仕事が入った。 

よい子の夏休みがハードモード過ぎやしないか?もしシュクルが夏休みの絵日記を書いたら、すべて仕事とおっさんの絵のみになるぞ。 

『今日も仕事です。ズッ友であるオネェ系おっさんと中年からの健康法について話し合いました。その後、脳筋おっさんに遭遇したので尻に木の実を投げて逃げました』 

『今日も仕事です。道でキモイおっさんに遭ったので雷を落としてみたら星になりましたが、ダークマター団長系おっさんがそれを見ていたので、怖くて尻にくるみを投げて逃げました。最近よく遭遇するのでクルミを追加しました』 

ほら。仕事とおっさんのみじゃん。華がなさ過ぎる。もっと癒し系な人魚と海で海水浴とか、山で仙人と川釣りしながらキャンプ体験とかあるだろ? 

「王国の西南にある地方都市ランドで~不審火が続いているのよ~」 

「放火ですか?火消し隊に言ってくださいよ」 

火消し隊とは消防隊である。この世界ではそれぞれの地域で、健康な男達が火消し隊を結成しており、火事が起こった際には火消しをする。おばちゃん達曰く、定期的に消防の訓練と言う名の飲み会をしているだけの組織だよ。という話も聞く。 

「私たち獣王に回されるくらいだから~普通の火事じゃないのよ~何か特別な要因アリなのよ~」 

「南西ですよね?その辺りを担当している獣王はどうしているのです?」 

我々は北の担当だろう?どうなっているんだ? 

「北は~私がパックの冒険者ギルドに寄った時に全部解決しているからね~。今、南西の獣王は久々の休暇中なのよ~ちょっと可哀想なのよ~」 

なんと南西の獣王はおっさんのくせに夏休みを満喫中だった⋯⋯イラっとしたので詳しい事情を聞いてみると、いつも家にいないお父さんを『お前なんて家族として認めない!』と、嫁と子供に宣言されたらしい。

う~ん⋯⋯獣王って大変だな⋯⋯ご家族も辛いね。それで休暇を得る為に独身で次期獣王を育てているギルド長に泣きついたらしい。次期獣王でもいいから送っておくれよ。と。 

「そういう訳だから~シュクルお願いね~ポワールちゃんは元気だし~準備万端よ~」 

「⋯⋯はいぃ」 

シュクルが消えてから、ポワールの世話をギルド長の実家である公爵家がすべてしてくれていたのだ。馬の世話は労力も金も掛かる。従ってシュクルにこの仕事を断る道はない。 

気分を入れ変えて自室に戻り旅立ちの準備をする。精霊は暑いので動く気がないのか、久しぶりに卵型になっている。どういう仕組みで大きいマッチョな体が卵の中にはいるのだろうか。不思議だ。 


「ポワール久しぶりだね~!」 

「プシュ(荷馬車)」 

全く変わりのないポワールは、公爵家で働く平民の下働きと共に街へ買い出しに出掛けたり、不要な物を積んだ荷馬車をゴミ捨て場まで引いていたらしい。本当に荷を引くのが好きみたいだ。 

「エロ馬はどうするかな⋯⋯」

一応エロ馬のいる厩舎に寄ってみようか。 


「すみません~うちのエロ馬どうですか?迷惑をかけていますか?」 

「おう!お嬢ちゃん!ロベールがスレイプニルの尻を角で突くから困っているんだよ。柵も超えちゃうし。ほら!あそこだ、見てごらん」 

そういえばロベールって名前だったな。あのエロ馬⋯⋯あ!スレイプニルに向かって行ってる⋯⋯

あぁなんて事だ。あのスレイプニルって確かダークマター団長のじゃないか?あぁ!お尻を鋭い一角で刺して!痛そうだ⋯⋯
どうしてあんな酷い事をするんだろう。スレイプニルは何もしていない、そこにいただけなのに尻を攻撃するなんて。あいつは飼い主に似ず暴力的な馬だ。 

「本当にすみません!今から旅に連れて行きますので、平和は戻るでしょう」 

シュクルは仕方がないのでエロ馬も連れて南西へ向かう事にした。 

「ヒヒン!!(お出かけ!!)」 

「痴漢行為をせず、ポワールの速度に合わせて歩いてくれよ」 

あべこべな二頭立てで旅は始まった。 


 王国の南西にある地方都市ランド。遠い昔には大きな大神殿がこの地にあり、信者が絶えず訪れていたそうな。今では有名な観光地になっている。主な観光は大神殿の遺跡と、横を流れる河川での船遊びや肥沃な大地で育った食物を使った料理である。 

「美食とは芸術だな。皿の上に表現される美術品。匂いよし、見てよし、味わってよし⋯⋯だが値段が高い。素晴らしい芸術品は高いのだ!!」 

質より量を取るシュクルには微妙であった。 

「しかも観光地だけあって物価が高い⋯⋯経費で落としてやるからいいけどね」 

だが少しでも経費を減らすためにランドの町の郊外に宿をとる。ついでに馬を預けられ、森に近い辺りを選んだ。日中はニーチェとエロ馬を森に放つ。到着してすぐ、さらりと森の中を確認したが、小さな森だし危険な生き物はいないみたいなので安心だ。 

馬達を休ませ水をあげる。馬も街中より田舎の方が静かでいいと思う。シュクルは部屋に入り、精霊や荷物を置いた。 

「まずは獣王がこの町に来てくれているらしいので、会って話を聞こう」 

シュクルは昨日ポム経由でギルド長から届いた手紙に『明日の午後五時にランド記念公園で獣王と落ち合ってね!』と書かれていた。 

少し早いが向かってみよう。 


 ランド記念公園は神殿の遺跡がある大きな公園だ。遺跡の周りには暑い中にもかかわらず、数グループの観光客が見学をしていた。
シュクルは公園内を進みながら辺りを見回してみる。ここは全体的に長閑で少しリッチな感じのする町だと思う。多分観光で儲かっているのだろうな。
だがそんなこの町で不審な火災が起きているのだ。ちょっと想像がつかないけど。 


待ち合わせ場所に着き、暑いので日陰の、土から飛び出た岩に座って涼んでいると奇妙な物が目に入った。 

「行け!もっと早く!!ヘタレ馬!!」 

「はぁはぁ⋯⋯はいぃ⋯⋯」 

四つん這いの体勢をした、もの凄く大きな白熊男と背中に乗る少年。この暑い中お馬さんゴッコだろうか。なんとも酔狂な⋯⋯
しかも白熊の首に紐が縛ってある。その紐を少年がグイグイ引っ張って進みたい方向へ指示を出して⋯⋯いない。ただ首を引っ張っている⋯⋯なかなか玄人好みの遊びですな。 

シュクルは先ほど購入したジュースを飲みながら、家族サービスって仕事よりキツくねぇ?と思った。 
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