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貴族学院編
シュクルは名探偵ではない
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「あ!君は次期獣王のシュクルさんかな?グヒ⋯⋯⋯⋯」
いきなり動くから首の紐が食い込んだのか。
「コホッ⋯⋯初めまして。西の獣王であるルシアン・ル・デュックだ。この子は私の息子であるポールだ」
「お前の息子じゃねーよ!馬!フン!」
これが噂の『家族として認めない』か。ルシアンは今は馬レベルらしい。
「⋯⋯⋯⋯シュクル・ラ・パンです。初めまして。ルシアンさんはお忙しいみたいですから、詳しいお話を端的にお聞かせ下さい」
だって彼は今も馬状態だ。独身だった佐藤には分からないが、父親って大変なんだな。最強な獣王なのに⋯⋯
「この町で火災が始まったのは春を過ぎた頃だった――」
最初に町で起こったのは普通のアパートの火災だった。その時は火の不始末として処理されたが、少し経ってから同じエリア内でまた同様な火災が起きた。その日は運悪く、風が強かったせいで火の回りが早かった。それにより隣のアパートも全焼してしまったそうだ。
流石に近場で起きた二度目の火災だ。火災などそう頻繁に起こるものではない。人々は放火、又は火種を起こす何かしらの原因があるのかもしれないと考えたが、火災を起こしたと思われる家の人の話からも、燃えカスからも分かる事は何もなかった。
しばらくして火災はまた同じエリアで起こった。今度は流石に偶然で処理できるものではない。町の人はランド騎士団と魔術師に相談して放火犯の捜査や、火魔法を使った放火魔がいないか調べてもらった。
「そして燃え残った火災跡から魔力痕を見つけたんだよ。だけど魔物の物だった」
えぇ?火魔法を使える魔物が放火しているんかい!
「俺も騎士団も魔獣を結構探したよ?でも見つからないんだ。夜に火災が起きている事から夜行性の魔獣だとは思うのだが⋯⋯」
目撃者もいないので昼間は寝ていると思われる。しかも同じエリアで火災が起きている事から、春過ぎからその周辺をねぐらにしているのだろう。
でも西の獣王ですら見つからないとは。 確かにこれは普通じゃない。
「おい馬!そろそろ家に戻らないと日が暮れるぞ!」
え?まだ五時台だぞ?今日の入りは九時頃のはずだ。
「俺たちはここから二つ先の町に住んでいるんだ。今からだと、ゆっくり進んで丁度九時には家に着くかな?」
え?⋯⋯⋯⋯家まで馬なのか?!まさかそれで来たのか?!
「シュクルさん、君は若いし出会える確率は低いと思うが、番に出会ってしまった獣人はこうなる。そしてこれでも俺は十分に幸せなんだ!」
真っ赤に日焼けした白熊は、首を引っ張られながらも嬉しそうに馬として家路へ向かっていった。
「い、嫌だ!絶対に番になんて出会わない!!あんなの嫌だぁあああ!!!」
シュクルにとって番とは霊より恐ろしい物となった。番なんてモノがこの世にあった事も知らなかった。怖。
シュクルは夕食後、早速火災が頻繁に起こるエリアに行ってみた。
「う~ん⋯⋯わかんない」
家が焼けた匂いは割りと長時間持続するのか、シュクルの鼻を狂わせる。
魔獣の匂いを探索できない。それに民家が密集しているので色々な匂いが混ざり合う。
「魔力探知もしてみたが、マジで分からん」
家庭用魔道具でも家にあるのか、ごく微量な魔力をあちらこちらから感じた。
魔道具が家にあるなんてリッチだな。以前ミカエルさんに聞いた所、魔道コンロやお湯を沸かす魔道具は平民の一般家庭でも出回っているらしい。
うらやましい。シュクルは毎日直火焼きだし、水道すら通っていない。私もお金が貯まったら買ってみようかな?
「は~これからどうしょう。一件一件事情を話し、家の中を確認するなんて無理だろうし」
魔獣はどこかの家の屋根裏にでも潜んでいるのかもしれない。とりあえずシュクルはアパートの屋根に乗り、そのまま屋根伝いに放火エリアを回った。
「一通り見てみたが、屋根には魔獣が出入りする怪しい穴とか匂いもしない。どうしょう?」
シュクルは一番見晴らしのいい家の屋根に乗って上から監視する事にしたが、朝まで不審な魔獣が現れる事はなかった。
朝日を浴びながら宿に戻り、仮眠をとる。昼間は暑くて外に出づらいのでむしろ丁度いい。
そして夕方に起きて身支度を整え、放火があったエリアの人に聞き込みをしてみる。
「すみません、頻発する火事について調べているのですが、何か知っていますか?」
「え?火事?怖いわよね。寝ていて逃げ遅れたら終わりよ。それが怖くて最近は何度も目が覚めてしまうの」
「あ~分かるわ~それに家が燃えたら一巻の終わりよ。財産をすべて失うし。命が助かったとしても、それからどうやって生きていくのよ?」
聞き込みというより主婦の悩み相談になってしまう。結局シュクルは新たな情報を得る事は出来なかった。
屋根からの張り込み二日目。今日も何も進展のないまま終わった。
三日目の今日は違う角度から捜査をしてみよう。少し早めに起き、シュクルはランドの図書館に行ってみる事にした。調べるべきは火を使う魔獣だ。
図書館の入り口でお金を払い、埃っぽい独特な匂いのする結構広めな館内を歩きながら、魔獣の本のあるエリアに向かうが⋯⋯この世界の本はタイトルが背表紙に書かれていない物がある。実に探しにくい。書かれていても超絶小さい字で書かれている本もあるし⋯⋯
これらの本の作者は、自身の手掛けた本を誰かに読んでもらいたいとは思わないのだろうか。私なら背表紙も表紙もガンガン攻める。ちょっといかがわしい感じにすれば男性が手にしてくれる可能性が上がりそうだし、それが駄目なら、〇〇食べると十歳若返る!病気が嫌なら〇〇は食べるな!系の本が老人向けに売れるよな。
女性用には〇〇を使うだけ!シミが消えて美白に成功!しかもマイナス十キロ痩せました!とか書けば売れそうだろ? ついでにスピ系も絡ませればベストセラーか。
おっと、そうじゃない。私は一体何の本を執筆する気だよ。今は魔獣だよ、魔獣。
シュクルは子供用の魔獣図鑑を手にし、誰もいない閲覧室へ向かった。
「火属性の魔獣⋯⋯大きすぎる物はパスだな」
ドラゴンとかはあり得ないので、小型か中型だろう。
「えっと、魔獣の食事⋯⋯そういえば町に潜んでいる魔獣は何を食べているんだ?」
屋根裏にいるネズミや虫とか?人やペットの動物を食らうわけじゃないよな?行方不明者は聞いていないし。
「何故魔獣は火を吐いたんだ?狩りのためか?ネズミ一匹狩るために?ネズミが燃え尽きそうだよ⋯⋯」
魔獣だってできれば体力の温存の為に魔法は使いたくないだろうに。たまたま燃えやすい物に引火しただけで、蝋燭程度の火魔法の可能性もあるが⋯⋯
討伐が面倒なので考えたくはないが、もし魔獣同士の喧嘩で火魔法の攻撃を放ったのだとしたら一頭ではないのかもしれない⋯⋯
「まいったな何も分からない。ギルド長がいない一人での任務がここまで難しいとは思わなかった」
相談できる人がそばにいるだけで心強いものだし、指示を出してもらえる立場は楽だったのだ⋯⋯
私は敵をせん滅するとか捕らえるのは得意だが、学院に通い出してからは農業と芸術の巨匠の道を邁進しており、探偵業は畑違いなのでどうしたものか⋯⋯⋯⋯
協力を仰げると思っていたランド騎士団は、ベテラン多数が夏休みで、働いている若手は魔獣狩りと観光客で賑わう町の治安維持に忙しく、この件はシュクル一人で当たっているのだ。
とりあえず条件に合う魔獣をピックアップして夜の見回りに向かった。
いきなり動くから首の紐が食い込んだのか。
「コホッ⋯⋯初めまして。西の獣王であるルシアン・ル・デュックだ。この子は私の息子であるポールだ」
「お前の息子じゃねーよ!馬!フン!」
これが噂の『家族として認めない』か。ルシアンは今は馬レベルらしい。
「⋯⋯⋯⋯シュクル・ラ・パンです。初めまして。ルシアンさんはお忙しいみたいですから、詳しいお話を端的にお聞かせ下さい」
だって彼は今も馬状態だ。独身だった佐藤には分からないが、父親って大変なんだな。最強な獣王なのに⋯⋯
「この町で火災が始まったのは春を過ぎた頃だった――」
最初に町で起こったのは普通のアパートの火災だった。その時は火の不始末として処理されたが、少し経ってから同じエリア内でまた同様な火災が起きた。その日は運悪く、風が強かったせいで火の回りが早かった。それにより隣のアパートも全焼してしまったそうだ。
流石に近場で起きた二度目の火災だ。火災などそう頻繁に起こるものではない。人々は放火、又は火種を起こす何かしらの原因があるのかもしれないと考えたが、火災を起こしたと思われる家の人の話からも、燃えカスからも分かる事は何もなかった。
しばらくして火災はまた同じエリアで起こった。今度は流石に偶然で処理できるものではない。町の人はランド騎士団と魔術師に相談して放火犯の捜査や、火魔法を使った放火魔がいないか調べてもらった。
「そして燃え残った火災跡から魔力痕を見つけたんだよ。だけど魔物の物だった」
えぇ?火魔法を使える魔物が放火しているんかい!
「俺も騎士団も魔獣を結構探したよ?でも見つからないんだ。夜に火災が起きている事から夜行性の魔獣だとは思うのだが⋯⋯」
目撃者もいないので昼間は寝ていると思われる。しかも同じエリアで火災が起きている事から、春過ぎからその周辺をねぐらにしているのだろう。
でも西の獣王ですら見つからないとは。 確かにこれは普通じゃない。
「おい馬!そろそろ家に戻らないと日が暮れるぞ!」
え?まだ五時台だぞ?今日の入りは九時頃のはずだ。
「俺たちはここから二つ先の町に住んでいるんだ。今からだと、ゆっくり進んで丁度九時には家に着くかな?」
え?⋯⋯⋯⋯家まで馬なのか?!まさかそれで来たのか?!
「シュクルさん、君は若いし出会える確率は低いと思うが、番に出会ってしまった獣人はこうなる。そしてこれでも俺は十分に幸せなんだ!」
真っ赤に日焼けした白熊は、首を引っ張られながらも嬉しそうに馬として家路へ向かっていった。
「い、嫌だ!絶対に番になんて出会わない!!あんなの嫌だぁあああ!!!」
シュクルにとって番とは霊より恐ろしい物となった。番なんてモノがこの世にあった事も知らなかった。怖。
シュクルは夕食後、早速火災が頻繁に起こるエリアに行ってみた。
「う~ん⋯⋯わかんない」
家が焼けた匂いは割りと長時間持続するのか、シュクルの鼻を狂わせる。
魔獣の匂いを探索できない。それに民家が密集しているので色々な匂いが混ざり合う。
「魔力探知もしてみたが、マジで分からん」
家庭用魔道具でも家にあるのか、ごく微量な魔力をあちらこちらから感じた。
魔道具が家にあるなんてリッチだな。以前ミカエルさんに聞いた所、魔道コンロやお湯を沸かす魔道具は平民の一般家庭でも出回っているらしい。
うらやましい。シュクルは毎日直火焼きだし、水道すら通っていない。私もお金が貯まったら買ってみようかな?
「は~これからどうしょう。一件一件事情を話し、家の中を確認するなんて無理だろうし」
魔獣はどこかの家の屋根裏にでも潜んでいるのかもしれない。とりあえずシュクルはアパートの屋根に乗り、そのまま屋根伝いに放火エリアを回った。
「一通り見てみたが、屋根には魔獣が出入りする怪しい穴とか匂いもしない。どうしょう?」
シュクルは一番見晴らしのいい家の屋根に乗って上から監視する事にしたが、朝まで不審な魔獣が現れる事はなかった。
朝日を浴びながら宿に戻り、仮眠をとる。昼間は暑くて外に出づらいのでむしろ丁度いい。
そして夕方に起きて身支度を整え、放火があったエリアの人に聞き込みをしてみる。
「すみません、頻発する火事について調べているのですが、何か知っていますか?」
「え?火事?怖いわよね。寝ていて逃げ遅れたら終わりよ。それが怖くて最近は何度も目が覚めてしまうの」
「あ~分かるわ~それに家が燃えたら一巻の終わりよ。財産をすべて失うし。命が助かったとしても、それからどうやって生きていくのよ?」
聞き込みというより主婦の悩み相談になってしまう。結局シュクルは新たな情報を得る事は出来なかった。
屋根からの張り込み二日目。今日も何も進展のないまま終わった。
三日目の今日は違う角度から捜査をしてみよう。少し早めに起き、シュクルはランドの図書館に行ってみる事にした。調べるべきは火を使う魔獣だ。
図書館の入り口でお金を払い、埃っぽい独特な匂いのする結構広めな館内を歩きながら、魔獣の本のあるエリアに向かうが⋯⋯この世界の本はタイトルが背表紙に書かれていない物がある。実に探しにくい。書かれていても超絶小さい字で書かれている本もあるし⋯⋯
これらの本の作者は、自身の手掛けた本を誰かに読んでもらいたいとは思わないのだろうか。私なら背表紙も表紙もガンガン攻める。ちょっといかがわしい感じにすれば男性が手にしてくれる可能性が上がりそうだし、それが駄目なら、〇〇食べると十歳若返る!病気が嫌なら〇〇は食べるな!系の本が老人向けに売れるよな。
女性用には〇〇を使うだけ!シミが消えて美白に成功!しかもマイナス十キロ痩せました!とか書けば売れそうだろ? ついでにスピ系も絡ませればベストセラーか。
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シュクルは子供用の魔獣図鑑を手にし、誰もいない閲覧室へ向かった。
「火属性の魔獣⋯⋯大きすぎる物はパスだな」
ドラゴンとかはあり得ないので、小型か中型だろう。
「えっと、魔獣の食事⋯⋯そういえば町に潜んでいる魔獣は何を食べているんだ?」
屋根裏にいるネズミや虫とか?人やペットの動物を食らうわけじゃないよな?行方不明者は聞いていないし。
「何故魔獣は火を吐いたんだ?狩りのためか?ネズミ一匹狩るために?ネズミが燃え尽きそうだよ⋯⋯」
魔獣だってできれば体力の温存の為に魔法は使いたくないだろうに。たまたま燃えやすい物に引火しただけで、蝋燭程度の火魔法の可能性もあるが⋯⋯
討伐が面倒なので考えたくはないが、もし魔獣同士の喧嘩で火魔法の攻撃を放ったのだとしたら一頭ではないのかもしれない⋯⋯
「まいったな何も分からない。ギルド長がいない一人での任務がここまで難しいとは思わなかった」
相談できる人がそばにいるだけで心強いものだし、指示を出してもらえる立場は楽だったのだ⋯⋯
私は敵をせん滅するとか捕らえるのは得意だが、学院に通い出してからは農業と芸術の巨匠の道を邁進しており、探偵業は畑違いなのでどうしたものか⋯⋯⋯⋯
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